働き方改革・労務管理などのテーマで毎日更新している「TOPICS」のアーカイブです。
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キャリアアップ助成金(正社員化コース) (22.01.15)

 キャリアアップ助成金は、パート・有期契約社員の正社員転換や、給与をはじめとする処遇改善に取り組む事業主を支援するものであり、その中でも広く知られているのが「正社員化コース」です。

 このコースでは、次の①~③のいずれかの転換を行い、転換前に比べて3%以上アップした賃金を6か月間支給した場合に助成対象となります。

 ① 有期雇用(継続雇用6か月以上3年以下)から正規雇用(正社員)への転換
 ② 有期雇用(継続雇用期間は①と同じ)から無期雇用への転換
 ③ 無期雇用(継続雇用6カ月以上)から正規雇用(正社員)への転換

 転換後の賃金アップの要件は、昨年4月に5%から3%に変更され、より取り組みやすくなっています。そして、転換前後の賃金額の比較では、基本給及び定額で支給されている諸手当の額を用います。(賞与や時間外の割増賃金などは含まない)

 このコースでは、「多様な正社員」(勤務地限定正社員、職務限定正社員および短時間正社員)への転換を、正規雇用労働者への転換とみなして助成対象としています。

 中小企業に対する、転換した者1人当たりの助成額は、①が57万円、②と③は28.5万円で、生産性要件を満たすと別途加算があります。
 上記に加えて、転換者の世帯状況や転換前の就業経験等、企業としての新制度導入による加算事項が設定されています。
(以下の項目の( )内は中小企業での加算額で、c)以外は生産性要件での加算の対象です。)

 a) 派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合
    (前記①または③の転換で1人あたり28.5万円)
 b) 母子家庭の母等または父子家庭の父を転換等した場合
    (1人当たり ①9.5万円、②③4.75万円)
 c) 人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正規雇用労働者へ転換した場合
    (1人当たり ①9.5万円、③4.75万円)
 d) 多様な正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換または直接雇用した場合
    (1事業所当たり9.5万円)

 また、紹介予定派遣労働者が派遣先の事業所に正社員として直接雇用された場合にも特例があります。
 具体的には、その紹介予定派遣労働者が、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、就労経験のない職業に就くことを希望する場合に、直接雇用前の派遣労働期間が2か月以上6か月未満でも支給対象(通常6か月以上)とするというものです。

 助成対象となる取り組みを行うにあたっては、事前に管轄の労働局に「キャリアアップ計画書」を提出して認定を受ける必要があります、
 この計画書には、計画期間内(3年以上5年以内で事業主が定める)に実施する取り組みを次の7つのコースから1つ以上選択し、対象者の範囲や措置内容などを記載します。
  ・正社員化コース
  ・障害者正社員化コース
  ・賃金規定等改定コース
  ・賃金規定等共通化コース
  ・諸手当制度等共通化コース
  ・選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  ・短時間労働者労働時間延長コース

 この助成金は、フルタイムでの雇用にこだわらず、短時間や週所定4日以下での雇用をうまく組み合わせてマンパワーの確保をしていこうという企業にとっての支援にもなり得るものです。

➤ 業務改善助成金(特例コース)の申請受付開始(22.01.14)

 厚生労働省の業務改善助成金については、令和3年度補正予算にその特例的な拡充(予算:135億円)が盛り込まれていましたが、1月13日にこれまでのコース(通常コース)とは別に、「特例コース」として交付申請の受付が開始されました。
 このコースでの「特例的な拡充」とは、助成対象経費を通常コースでは対象外となってしまう「設備投資等の関連経費」にまで拡げていることです。

 厚生労働省のペーパーでは、関連経費の活用例として、

〇 デリバリーサービス拡大のためのデリバリー用バイクの導入(本来の助成対象
  である設備投資等)に対して、その関連経費(特例的な助成対象)として、
  広告宣伝費を支出して、デリバリーサービスの宣伝を行う場合


〇 サテライトオフィス新設に伴うテレワーク機器の新規導入(本来の助成対象)
  に対して、その関連経費(特例的な助成対象)として、コピー機、プリンター、
  事務机・椅子等の備品等購入費を支出して、サテライトオフィスの業務環境を
  整備する場合
の2つが挙げられています。

 助成額は、対象経費の3/4で、賃金を引き上げた人数により上限額が設定されています。また、通常コースのように最低賃金の引上げ幅による上限額の差は付けられておらず、シングルレートとなっています。
(1人 30万円、2~3人 50万円、4~6人 70万円、7人以上 100万円)

 このコースの助成対象となるのは、次の①売上高減少、②事業場内最低賃金引き上げの要件をいずれも満たした事業主です。

① 新型コロナウイルス感染症の影響により、「売上高または生産量等を示す指標の令和3年4月から同年12月までの間の

  連続した任意の3か月間の平均値」が、前年または前々年同期に比べ、30%以上減少している事業者
② 令和3年7月16日から同年12月31日までの間に事業場内最低賃金を30円以上引き上げていること
  (引き上げ前の事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内の事業場に限ります。)


 なお、②の引き上げについては、令和3年7月16日から同年12月31日までの間の特定の日に遡って引き上げて、交付申請書提出日以前に引き上げ相当額を支払えば要件を満たしたことになります。

 1月13日から始まった交付申請は、今年3月31日が締め切りで、同じ日までに助成対象の事業(設備投資の実施、関連経費の執行及び支払いまで)を完了しておく必要があります。

 補正予算で新設される事業で時たま見受けられることですが、事業完了までの期間が短期間であることが取り組みを難しくする方向に働くところはあるようです。

➤ 雇用保険の見直しについての「雇用保険部会報告書」(22.01.13)

 昨日(1月12日)、雇用保険制度等の見直しに方向についての「雇用保険部会報告書」(厚生労働省労働政策審議会の職業安定分科会雇用保険部会)が公表されました。
 雇用保険部会で、令和3年9月から今年1月まで行われた検討での結論が、基本手当、教育訓練給付、求職者支援制度、雇用調整助成金の特例・休業支援金等、財政運営の5項目で述べられています。

【基本手当】

〇 基本手当の水準(給付率、給付日数等)について
 現時点で改正を行うこととはしない。

〇 事業を開始した者に対する基本手当の受給権の確保について
 基本手当の受給資格を取得した後に、求職活動を中止するなどして起業した者が、やむを得ず廃業に至り、改めて求職活動に入る場合にも最大4年間までは、所定給付日数の範囲で基本手当を受給できるよう、受給期間の特例を設けるべきである。

〇 令和3年度末までの暫定措置の取り扱い
 次の措置について、現在コロナ渦からの経済の回復途上にあることも踏まえ、3年間延長すべきである。
 ・雇止め等により離職した者の所定給付日数の拡充等
 ・地域延長給付

〇 コロナ延長給付について
 当面は制度として存続させる必要がある。
 その上で、緊急事態宣言の発令ごとに、各都道府県における緊急事態措置が終了してから1年経過後はコロナ延長給付を行わないこととすべきである。

【教育訓練給付】

〇 指定講座について
 オンライン・土日開催を進めるなど利用しやすい環境整備を図るほか、市場ニーズ、雇用の安定性、労働条件向上の効果などをもとにその内容の充実を図り、教育訓練支援給付金の指定講座の偏りの是正を図るべきである。

〇 教育訓練支援給付金
 当該給付金は、令和3年度までの暫定措置となっているが、コロナ禍からの経済の回復途上にあることも踏まえ、3年間延長すべきである。

【求職者支援制度】

〇 平成3年度に講じられた特例措置について
 コロナ禍からの経済の回復の途上にあることなどを踏まえ、令和4年度末まで延長すべきである。
 ・職業訓練受講給付金の本人収入要件、世帯収入要件、出席要件の緩和
 ・訓練対象者の拡大
 ・訓練基準の緩和

〇 雇用保険受給者の求職者支援訓練受講について
 雇用保険受給者の訓練受講選択肢の拡大や、これによる早期かつ安定的な再就職を促す観点から、公共職業安定所長による受講指示の対象とすべきである。

【雇用調整助成金の特例・休業支援金等】

〇 雇用調整助成金の特例措置について
 「経済財政運営と改革の基本方針 2021」において「感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減していく」とされていることを踏まえて実施することが適当である。これに伴い、当面の措置として、令和4年度においては、以下のとおりの対応とすべきである。
 ・雇用調整助成金の活用が困難な企業に対する支援策として創設された休業支援金についても、制度としては存続させつつ、

  雇用調整助成金の特例措置の取扱い等の対応に合わせて制度の在り方を検討する。
 ・雇用保険臨時特例法により設けられた、中小企業の基本手当日額の上限を超える部分 について一般会計により負担する

  仕組みを延長する 。

【財政運営】(保険料率に関する部分のみ)

〇 失業等給付に係る保険料率
 直近年度の弾力倍率の水準が引下げが可能な水準にないことや、法律による暫定的な引き下げ措置が令和3年度末までとなっていることから、現行の2/1.000から原則の8/ 1,000 に戻ることとなる。
 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の経済への影響も未だ残っている状況にかんがみ、激変緩和措置として、次のとおりとすべきである。
 ・令和4年4月から9月まで      2/ 1,000
 ・令和4年10月から令和5年3月まで  6/ 1,000

〇 育児休業給付に係る保険料率
 従前のトレンドで支出の増加が続くことを前提としても令和6年度まで安定的な運営が可能であることが確認できたことから、4/ 1,000 のままとすべきである


雇用保険二事業にかかる保険料率
  原則の率 3.5/1,000に対して、令和3年度までは弾力条項に基づき3/ 1,000 とされているが、令和2年度の弾力倍率はマイナス値であり、弾力条項に基づく引下げが可能な水準にはないため、原則の 3.5/ 1,000 に戻すことが適当である。

健康福祉確保措置(22.01.12)

 「健康福祉確保措置」は、1か月45時間(限度時間)を超えて時間外・休日労働をした者について、過重労働による健康障害の防止を図る観点から行うものです。
 特別条項付の36協定において、定めなければならない事項の一つであり、その措置内容として次の9項目が挙げられています。

① 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。

② 法第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月に
  ついて一定回数以内とすること。
③ 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。
④ 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与
  すること。
⑤ 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。
⑥ 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得
  を促進すること。
⑦ 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
⑧ 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に
  配置転換をすること。
⑨ 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等に
  よる保健指導を受けさせること。

 これら9項目の具体的内容を網羅した省令や指針はありませんが、個別のQ&Aなどを参考にして見ていくと、

 ①は、労働安全衛生法での一般的な実施基準である「月80時間超の時間外・休日労働を行った者が希望したとき」を上回る基準(時間数の要件を緩和するなど)で行うことです。

 ②には、所定労働時間内での深夜業務も含まれ、回数制限の参考としては、労働安全衛生法上の自発的健康診断の要件(1か月あたり4回以上の深夜業従事)が考えられます。

 ③は、実質上「勤務間インターバル制度」の導入を指していると考えられます。

 ④は、休日労働や長時間労働の代償として使用者が与える代休(代償休日)や会社独自の法定外休暇の制度導入などです。

 ⑤は、労働安全衛生法で定める健康診断(年1回の一般健康診断など)とは別に会社独自の健康診断を実施することです。

 ⑥についても、他の項目と同様に特定条項付36協定で定める措置事項であることから、その内容を就業規則もしくは労使協定などに定めておくのが望ましいと考えられます。


 ⑦について、窓口を設置していれば、実際に相談がなかったとしても措置を実施したこととなります。

 ⑧は、対象労働者の健康確保、時間外・休日労働削減につながる抜本的な対策となり得ますが、中小企業にとっては実施へのハードルが高い項目と考えられます。

 ⑨のうち「産業医等による助言・指導」とは、産業医等が使用者又は衛生管理者等に対し、対象労働者の健康管理等について、助言・指導を行うことです。

 関連する指針では、措置事項はこれら9つの項目のうちから選んで協定することが望ましいとしていますが、その他の措置を行うことも可能ですし、36協定届の様式では「⑩その他」という選択肢が設定されています。

  実務上、これらの措置をいつまでに行えば良いかという疑問が生じるかと思いますが、改正労働基準法に関するQ&A(Q2-36)で、この措置は原則として限度時間を超えるたびに講じる必要があり、その実施時期については、措置の内容によって異なるとしながらも、例示として、医師による面接指導は、1か月の時間外労働時間を算定した日(賃金締切日など)からおおむね1か月以内の実施が望ましいとしています。

いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項
 (22.01.11)

 今月7日付の標題のペーパーとリーフレット(使用者向け、労働者向け)が
厚生労働本省サイトで公開されています。

 留意事項のペーパーでは、
 〇 労働契約の締結時に明示すべき労働条件
 〇 就業規則に規定すべき事項
 〇 労働契約に定めることが考えられる事項
 〇 労働者を実際に労働されるに当たっての労働時間等の扱い
といった項目を中心に、関係法令を挙げて説明し、シフト制で留意すべき点を明らかにしています。

 今日のTOPICSでは、このペーパーの中で、特にシフト制に着目した留意事項を見ていきます。 

【労働契約の締結時に明示すべき労働条件】

 労働契約締結時に書面で労働者に明示することが法律で定められている労働条件のうち、特に問題になりやすい「始業および終業の時刻」「休日」について、次のような留意事項を示しています。

 〇 労働条件通知書など(※)で「始業及び就業の時刻」を明示するとき、単に「シフトによる」とするだけでは足りず、
  ・書面に労働日ごとの始業及び終業時刻を明記する
  ・書面に原則的な始業及び終業時刻を記載した上で、一定期間のシフト表などを明示の書面とあわせて労働者に渡す
  などの対応が必要であること。

 〇 「休日」について、労働契約の締結時に、
  ・休日が定まっている場合は、明示しなければならない
  ・具体的な曜日などが確定していない場合は、休日の設定に関する基本的な考え方を明示しなければならない

   (※) 労働者に交付する書面の様式は自由ですが、厚生労働省がモデル労働条件通知書としてひな形を公開しています。
     また、その労働者に適用する部分を明確にして就業規則を渡す対応も可能です。

【就業規則に規定すべき事項】

 シフト制労働者の始業及び終業の時刻や休日について、就業規則上「個別の労働契約による」、「シフトによる」といった記載をするだけでは、就業規則の作成義務(※)を果たしたことにならないこと。
 ただし、基本となる始業及び終業の時刻や休日を記載した上で、「具体的には個別の労働契約で定める」、「具体的にはシフトによる」といった記載とするのは差し支えないこと。

  (※) 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して、過半数組合もしくは過半数代表者の意見書を添附
    して労働基準監督署に届け出なければならないこと。

【労働契約に定めることが考えられる事項】

 シフトの作成手続きについて、使用者による一方的な決定は望ましくなく、例えば、使用者と労働者で話し合って、次のようなルールをあらかじめ定めておくことが考えられる。
  ・ シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること
  ・ 確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法

 いったん確定したシフトの変更は、労働条件の変更に該当する。
 そのため、シフトの変更手続きについて、例えば、使用者と労働者で話し合って、次のようなルールを設けることを合意しておくことが考えられる。
  ・シフトの期間開始前に、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等の変更を使用者又は労働者が申し出る
   場合の期限や手続
  ・シフトの期間開始後に、使用者又は労働者の都合で、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等を変更
   する場合の期限や手続

【労働日、労働時間などの設定に関する基本的な考え方】

 例えば、労働者の希望に応じて次のような事項について、あらかじめ使用者と労働者で話し合って合意しておくことが考えられる。
  ・一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯
    (例:「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など)

  ・一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数
   (例:「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」など)
   これらに併せるなどして、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などについて定めることも考えられます。
   (例:「1か月○日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など)

 今回のペーパーでは、ここで触れた以外に労働時間、休憩、年次有給休暇及び休業の取り扱い、労働契約の終了や社会保険、労働保険などを網羅していますので、シフト制を活用している場合には、一度目を通すことをおすすめします。

勤務間インターバル制度(22.01.10)

 この制度は、「勤務の終業時刻から翌日の始業時間までの間、一定以上のインターバル(休息時間)を設ける」ことを企業内の勤務時間管理の仕組みとして定めて運用するものです。
 そして、その目的は、生活時間や睡眠時間を確保して労働者が健康な生活が送れるようにすることにあります。


【インターバル(休息時間)の長さ】

 この制度で確保するインターバル(休息時間)の長さについて、法令での具体的な定めはありません。
 令和3年1月時点での、1企業平均間隔時間(休息時間)は、おおよそ11時間で、企業規模ごとのデータでも、最短9時間55分、最長が11時間11分です。
(令和3年度就労条件総合調査(厚生労働省))

 実務上は、企業の部門ごとの業務内容とその進め方、顧客との関係などを把握した上で、9時間から12時間の間で、①企業内統一の休息時間を設定、もしくは②部門ごとの実態に合わせて複数の休憩時間を設定して運用のいずれかになると考えられます。


【インターバル(休息時間)が翌日の始業以降に及ぶ場合】

 深夜まで時間外勤務を行った後に休息時間を取った場合、その時間帯が翌日の始業時間を超えて所定労働の時間帯に及ぶことが起こり得ます。

 そのような場合の対応方法は、2つありますが、ここでは、分かりやすくするため、

所定労働が9時~18時までの8時間(休憩時間1時間)、勤務間インターバル(休息時間)が10時間の企業において、24時まで時間外・深夜勤務を行い、「休息時間の終了時刻 = 翌日の始業時間」が翌日の10時となる事例で説明します。

インターバル時間と翌日の所定労働時間が重複する部分を働いたものとみなす方法
 この事例では、翌日の10時勤務開始で所定労働時間働いた場合の勤務終了時刻(終業時刻)が19時となるところを、本来の終業時間である18時で勤務終了とします。そして、18時から19時までの1時間については、働いたものとみなして就労義務を免除します。(翌日の労働時間は7時間で把握)
 この1時間分の賃金について、ノーワーク・ノーペイの原則により支払わないのか、その例外として支払うのかは、各企業が制度の導入内容を検討する中で決定していくことになります。

翌日の勤務開始時刻を繰り下げる方法
 この事例では、翌日の10時始業で所定労働時間をそのまま働いて勤務終了時刻(終業時刻)は19時となります。


【適用除外の規定】

 企業活動を継続していく中で、勤務間インターバルを厳格に適用すると、かえって企業活動に支障が生じてしまうケースがあります。
 事前に想定されるケースで次のようなものを、「インターバル(休息時間)を確保できない」として適用除外にする旨を就業規則等であらかじめ定めておくことは可能とされています。

 〇 重大なクレーム(品質問題・納入不良等)に対する業務
 〇 突発的な設備のトラブルに対応する業務
 〇 予算、決算、資金調達等の業務
 〇 海外事案の現地時間に対応するための電話会議、テレビ会議
 〇 労働基準法第33条の規定に基づき、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合


【現在の導入状況】

 最後に、この制度の現在の導入状況ですが、新しい制度でもあり、導入済は5%(4.6%)に止まっています。
 その一方で、「導入予定はなく、検討もしていない」理由について、「制度を知らなかったため」としたのは2割(19.2%)で4年前に比べて半減しており、制度の認知度は確実に上がってきているといえます。

➤ 人材確保等支援助成金(テレワークコース)の助成内容の拡充(22.01.09)

 人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、中小企業主限定の厚生労働省助成金で、在宅またはサテライトでのテレワーク導入を対象としています。

 事業の流れは、次のとおりですが、テレワークの実施状況の評価と助成金の受給申請を2回ずつ行うことになります。

① 最初に、助成要件を満たすテレワーク制度導入の内容を「テレワーク実施計
  画」にまとめて管轄の労働局に提出して認定を受けます。

② 認定された実施計画により、1回目の評価期間(連続する3か月)内のテレ
  ワークを実施し、加えて、助成対象となる「テレワークを可能にする事業」を
  行います。

③ ②の実施後に1回目の助成金受給申請(機器等導入助成)を管轄労働局に提出します。提出後、審査を経て受給。
  (受給申請の提出は、実施計画の認定日から7か月以内に行います。)
  また、受給申請の提出までに、就業規則または労使協約にテレワーク制度を規定して(企業のテレワーク制度整備)、
  就業規則については労働基準監督署長への届出までの手続きを行います。

④ 1回目評価期間の翌年の同じ連続する3か月を2回目の評価期間としてテレワークを実施します。
  (1回目の評価期間が令和4年1~3月であれば、2回目は令和5年1~3月)
  なお、2回目の評価期間の開始までに、③の就業規則または労使協約を施行しておく必要があります。

④ 1回目の評価期間終了から1年間の離職率が要件を満たしたことを確認して、2回目の助成金支給申請(目標達成助成)を
  管轄労働局に提出します。提出後、審査を経て受給。
  (1回目の評価期間が令和4年1~3月であれば、離職率は令和4年4月~令和5年3月の1年間で評価)

 この助成金の申請マニュアルでの例示では、①のテレワーク実施計画の提出から、⑤の2回目の受給申請(目標達成助成)の提出まで1年6か月余りですが、このほかに労働局での2回目の受給申請の審査と支給に必要な期間もあります。

 対象となる事業主は、これまでは、テレワークを新規に導入する者に限られていましたが、補正予算成立(令和3年12月21日)以降に実施計画が提出される案件では、「試行的に導入中の事業主」、「過去に試行的に導入していた事業主」も対象に加えられています。
 ここでいう「試行的」とは、
 〇 テレワークの対象が、一部の部門や一部の労働者であること
 〇 テレワークの内容や対象労働者について、就業規則や労働協約に規定していないこと
のいずれにも該当する場合のことです。

 助成対象となる「テレワークを可能にする事業」(1つ以上実施が必須)は、
 〇 就業規則、労働協約又は労使協定の作成・変更
 〇 外部専門家によるコンサルティング
 〇 テレワーク用通信機器等の導入・運用
   (ネットワーク機器、サーバ機器、NAS機器及びセキュリティ機器など) 
 〇 労務管理担当者に対する研修
 〇 労働者に対する研修
であり、このうちテレワーク用通信機器等の導入・運用について、補正予算成立後は、次のテレワーク用サービス利用料が追加されています。
  ・リモートアクセス及びリモートデスクトップサービス
  ・仮想デスクトップサービス
  ・クラウドPBXサービス
  ・web会議等に用いるコミュニケーションサービス
  ・ウイルス対策及びエンドポイントセキュリティサービス

 この助成金では、サテライトオフィスでのテレワーク導入も対象としていますが、その関連経費のうち、自社のサテライトオフィスとして利用する物件の賃料等や、サテライトオフィスに設置する機器等の購入費用は助成対象外とされています。

 助成対象とされるテレワークの取組は、評価期間内の実績が、
 〇 テレワーク実施対象労働者全員が1回以上テレワークを実施
 〇 テレワーク実施対象労働者のテレワーク実施回数の週間平均が1回以上
のいずれかに該当するものです。

 受給額は、支給対象経費に対して
① 機器等導入助成(1回目の受給申請) 30%
② 目標達成助成(2回目の受給申請)  20%(生産性要件を満たすときは、35%に嵩上げ)
で算出して、①、②ともに「100万円」、「20万円×対象労働者数」のいずれか低い額が受給の上限額となります。

 これまでの第5波までのコロナの流行への緊急避難的な対応として、すぐにテレワークが可能な業務と一部の社員に限定して「試行的なテレワーク」を実施したものの、準備不足による不具合などもあり、それ切りになってしまっている企業でのテレワークの本格的立ち上げなどにも使える助成金です。

➤ 有期労働契約の「無期転換ルール」について(22.01.08)

 今から10年ほど前、特段の支障のない限り更新を繰り返すことを前提として有期労働契約を利用する企業も少なくなく、有期契約労働者の雇止めの不安が解消されないことなどが問題とされていました。そのような問題への対策として、有期労働契約の更新により通算契約期間が5年を超える場合に、有期契約労働者から使用者への申込みにより無期転換させる仕組み(無期転換ルール)が設けられました。

 関係法令が施行されてから5年経過した2018(平成30)年4月に無期転換申込権が発生し行使できる環境となり、それからもうすぐ4年となります。

 無期転換申込権は、有期労働契約が1回以上更新され、同一の使用者のもとでの通算契約期間が5年を超えたときに発生します。 
 その申込権を行使できる時期は、その期間中に通算契約期間が5年を超えることとなる労働契約の「初日から契約満了日までの間」であり、行使は、無期転換申込権を持つ有期契約労働者から使用者への無期労働契約締結の申入れという形で行います。

 無期労働契約締結の申込みをした時点で、使用者はそれを承諾したものとみなされ、申込み時点での有期労働契約が満了した日の翌日から始まる無期労働契約が成立します。
 例えば、1年契約で更新してきた場合には、5年目までは有期契約、6年目からは無期契約になりますが、2年契約の場合は、6年目まで有期契約、7年目から無期契約になります。

 無期転換後の労働条件について、法律では、無期転換後の労働契約は、期間の定めの有無を除いては、無期転換申込時の有期労働契約と同一の内容のものであるとしています。 
 ただし、有期労働契約と異なる労働条件を労働協約や就業規則であらかじめ定めておいたり、個別の労働契約により使用者・労働者間で合意した場合には、それらで定めたり合意した労働条件とすることができます。

 無期転換申込権が生じている有期雇用契約期間中にあえて行使しなかった場合でも、契約が更新されれば、新しい有期雇用契約期間について新たな無期転換申込権が生じますから、そこで改めて行使するか否かを労働者側で判断することになります。

 そのような「無期転換ルール」ですが、その取り組み状況の公的な調査では、次のような結果でした。
(実質的に転換が進み始めた頃(2018年秋)の調査結果)

 7割超の企業が無期転換できる機会を設けており、ほぼ2社に1社は通算契約期間のみを無期転換の要件とする制度を導入していました。
 そして、無期転換申込権の行使があくまでも労働者の判断によることを受けて、無期転換を希望しない場合には、契約期間を通算して5年を超えても有期契約労働者として働き続けられる仕組みになっている企業が約9割となっていました。


 無期転換後の雇用区分について(複数回答)は、働き方も賃金・労働条件も変化しない「無期契約社員」がほぼ3社に2社。続いて、「正社員」、働き方は変化しないが賃金・労働条件については若干改善する「無期契約社員」、働き方が変化し賃金・労働条件も改善する「限定正社員」の順となっていました。

 最後に、無期転換ルールの導入から9年、無期転換申込権が発生し得る環境となってからほぼ4年が経ちましたが、現在、無期転換ルールの見直しと多様な正社員の雇用ルールの明確化等について、厚生労働省の検討会で報告書とりまとめに向けて議論が行われていますので、そのうちに今後の制度見直しの方向が見えてくるのではないでしょうか。

➤ 裁量労働制実態調査について(22.01.07)

 この厚生労働省実施の調査は、それぞれの裁量労働制(専門業務型、企画業務型)の適用や運用実態などの把握を目的としたもので、令和元年10月末日現在の状況について、同年11~12月に行い、次のとおり有効回答を得ています。

 〇裁量労働を適用している(適用事業所)   6,489事業所  47,390人
 〇裁量労働制を適用していない(非適用事業所)7,746事業所  40,714人

【適用事業所での裁量制適用労働者の割合】
  24.6 %(うち専門型 20 .9 %、企画型3 .8 %)

【裁量労働制の対象業務別での労働者割合】
 上位3業務はいずれも専門型の業務で、「情報処理システムの分析・設計の業務」(22.9%)、「新商品・新技術の研究開発又は人文科学・自然科学に関する研究業務」(22.0%)、大学における教授研究の業務(16.4%)の順。
 企画型である「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」は15.0%で、これら以外の業務は1つを除いて5%以下です。

【適用されているみなし労働時間】
 1日の平均みなし労働時間数は、7時間38分。
 15分刻みのレンジでの回答では、「7時間30分以上7時間45分未満」(24.5%)、「7時間45分以上8時間未満」(20.2%)の2レンジでほぼ半数を占めます。8時間台の4レンジ(8時間以9時間未満)の合計は19.6%。
 (この項のデータは、明確な回答があった労働者分の集計)

【1週間の平均労働時間数】
 専門型適用労働者が45時間18分、企画型適用労働者が45時間13分、そして、裁量労働制未適用労働者が43時間2分となっています。

【1日の平均労働時間数】
 専門型適用労働者が8時間57分、企画型適用労働者が9時間15分、そして、未適用労働者が8時間39分となっています。

【1週間の平均労働日数】
 専門型適用労働者が5.06日、企画型適用労働者が4.89日、そして、未適用労働者が4.97日です。
 (前3項の時間もしくは日数は、階級(例えば、1日では7時間、8時間など)での回答を含めずに集計しています。

  また、1日の平均労働時間数は、労働日数加重平均として算出しています。)

【勤務先における労働時間の状況の把握方法別労働者割合】
 専門型の適用労働者については、「自己申告」(35.5%)、「タイムカード・IC カード」(33.7%)の順です。
 企画型の適用労働者については、「PC のログイン・ログアウト」(39.8%)、「タイムカード・IC カード」(24.6%)の順であり、自己申告は15.8%です。

【業務遂行における適用労働者の裁量の程度】
 業務の目的、目標、期限等の基本的事項については、専門型・企画型ともに「上司に相談の上、自分が決めている」(専門47.8%/企画57.4%)、「自分に相談の上、上司が決めている」(専門20.1%/企画23.1%)の順。
 具体的な仕事の内容・量については、専門型が、「上司に相談の上、自分が決めている」(38.7%)、「上司に相談せず、自分が決めている」(24.9%)の順。企画型は、「上司に相談の上、自分が決めている」(45.4%)、「自分に相談の上、上司が決めている」(25.3%)の順です。

 業務の遂行方法、時間配分等については、専門型が、「上司に相談せず、自分が決めている」(50.8%)、「上司に相談の上、自分が決めている」(37.9%)の順。企画型は、「上司に相談の上、自分が決めている」(48.6%)、「上司に相談せず、自分が決めている」(42.0%)の順です。

【適用労働者の健康状態の認識状況】
 良い(32.2%)、普通(29.4%)、あまり良くない(28.3%)であり、前年から体調変化については、変わらないが8割。
 適用労働者の平均睡眠時間は、仕事のある日は6時間9分、ない日は7時間32分。
 調査の前年度(平成30 年度)に勤め先に苦情を申し出たことがある適用労働者は、2.0%。

【裁量労働制への意見の有無】
 専門型の適用事業所、企画型の適用事業所いずれも、「今のままでよい」「特に意見はない」が合わせて7割程度、「制度を見直すべき」は1割程度。
 見直すべきとした事業所の意見は、「対象労働者の範囲を見直すべき」「手続き負担を軽減すべき」が約5割もしくはそれ以上となっています。

【非適用事業所で裁量労働制を導入していない理由】
 「対象となる労働者がいないと思うから」(40.2 %)、「メリットが感じられないから」( 20.0 %)、「フレックスタイム制など、他の労働時間制度を活用することで足りるから」( 19.3 %)の順でした。

雇用契約締結時の労働条件の明示について(22.01.06)

 使用者(事業主)から労働者への労働条件の明示で法律上義務付けられているものには、
 〇 労働基準法に基づく雇用契約締結時の労働条件の明示
 〇 パートタイム・有期雇用労働法に基づく雇い入れ時の労働条件の明示
 〇 労働者派遣法に基づく就業条件の明示
がありますが、今回は、そのうち労働基準法に基づく明示を見ていきます。

 この雇用契約締結時の明示では、使用者から労働者へ明示しなければならない労働条件を、
 〇 原則として書面の交付により明示するもの
 〇 それ以外で、書面の交付までは求めないもの
の2つに分けて規定しています。

 原則として書面の交付により明示するものは、次のとおりです。
 ① 労働契約の期間
 ② 有期労働契約の更新の基準(有期雇用労働者のみ)
   (更新の有無やその判断基準(業務量、本人の能力など))

 ③ 就業場所・従事すべき業務
   (雇い入れ直後の就業場所、従事すべき業務)
 ④ 始業・終業時刻、所定労働時間超えの労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2交代制等に関する事項
 ⑤ 賃⾦の決定・計算・⽀払⽅法、賃⾦の締切・⽀払時期
   (労働契約締結後初めて支払われる賃金に関するもの)
 ⑥ 退職(解雇を含む)に関する事項
   (退職の事由とその手続き、解雇の事由)

 そして、その他の事項(書面の交付までは求められていない事項)には、昇給、退職金、賞与や臨時に支払われる賃金等、休職などがあります。

 明示に用いる書面の様式は自由ですが、厚生労働省がモデル労働条件通知書としてひな形を公開しています。
 書面を作成する代わりに、その労働者に適用する部分を明確にして就業規則を渡す対応も可能です。

 また、原則として文書の交付で行う明示の項目についても、対象となる労働者が希望すれば、FAX、Webメールサービス、SNSなどで行うことができます。
 なお、Webメール、SNSメッセージなどFAX以外の方法については、対象労働者がその記録を出力して書面を作成できるものに限られます。そして、書面作成を念頭に置いていないSMSなどのサービスは、明示の手段としては例外的なものという位置付けになります。

 明示を受けた後に、その内容と事実が相違していた場合には、労働者側から即時に労働契約を解除することができます。
 そして、その労働者が就業のために住居を変更していて、解約解除の日から14日以内に帰郷する場合には、必要な旅費は使用者が負担することとしています。その旅費には、その労働者の就業のために移転していた家族の帰郷旅費も含みます。

 この法律の明示義務もしくは帰郷旅費の事業主負担の規定に違反した場合は、30万円以下の罰金の対象となります。

自社直営での就業規則作成で留意すること(22.01.05)

 私見も入りますが、次のようなことが言えると考えています。

【就業規則の適用範囲を明確にする】
 正社員だけ、パート社員だけという会社であれば問題はないのですが、正社員、契約社員、パート社員など複数の雇用管理区分がある場合は、雇用管理区分それぞれの定義を職務や雇用形態、労働時間などの違いに着目して明文化したうえで、その就業規則をどの雇用管理区分の社員に適用するのかを明確にしておきます。

【法律関係のチェックはしっかりと行う】
 時間的な余裕がないときは、まず厚生労働省のモデル就業規則の関係条文と解説に当たってみることです。それでも判断できないときは、その法規制などに関するリーフレットやパンフレットにも当たってみる、専門家の助言を受けるなどしてください。

【条文数が過大にならないよう注意する】
 検討を進めていく中で、規定しておいたほうが良いという事項が次々と出てきて条文数が増え続けてしまうのは、就業規則作成でありがちな落とし穴です。
 特に条文数が多くなりやすい服務規定などでは、手間は増えますが、想定される問題の発生頻度、発生した時の影響の度合いを参考にして、単独の条項としては規定せずに、その他の類する事項としてまとめられるものはないか検討してみることをおすすめします。

【同業他社などの就業規則を参照するときは注意が必要】
 参照した就業規則は、あくまでもそれを作成した同業他社に合わせてカスタマイズされたものですから、自社に合うかどうか漏れなく検討していきます。

【10人以上の会社で過半数代表者の意見書を求めるときの手続きは確実に行う】
 過半数代表者の選出は、就業規則について全従業員を代表して意見をする者の選出であることを明確にしたうえで、挙手や投票など民主的な方法で行うこととされています。
 ですから、使用者の意向に基づいて決定した代表者や、前記の選出手続きを経ていない既存の従業員親睦会などの代表者に意見させることはできません。

【10人未満の会社でも就業規則の周知はきちんと行う】
 労働基準監督署への届出義務の対象にならないといっても、その就業規則の適用を受ける従業員への内容周知の必要性が変わることはありません。
 十分周知されていない場合は、就業規則の規定について社長・幹部と社員の間で認識が共有できていない状態になります。
 例えば、そのような就業規則に基づいて、減給や降格など社員の不利益となることを行ってしまうと、その社員の納得は得にくくなりますし、労務トラブルのリスクも大きくなります。

【雇用管理区分間で賃金その他の待遇に差を付ける場合には検証が必要】
 パート・有期雇用労働法で示された均等待遇、均衡待遇などの考え方に沿った賃金その他の待遇の決め方をしているかどうか確認しておく必要があります。
 例えば、業務内容と求められる能力、業務遂行のための権限、業務の成果について問われる責任、クレーム対応の有無、担当業務や部署の変更の有無といった要素で待遇の差を説明できなければ、その規定は再検討せざるを得ないでしょう。

出生時育児休業(22.01.04)

 改正育児・介護休業法で今年10月に新設される「出生時育児休業」について見ていきます。
 この新しい育児休業は、子の出生後8週以内(子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日まで)に4週間まで取得でき、2回に分割して取得することも可能です。また、出生時育児休業給付金の支給対象になる休業です。

 子の出生日が出産予定日から前後することによる取得可能な期間の考え方は、次のとおりです。

【出生日が出産予定日より前】
 「出生日から出産予定日の前日まで」+「出産予定日から起算して8週間を
  経過する日の翌日まで」

出生日が出産予定日より後】
 「出産予定日から出生日の前日まで」+「出生日から起算して8週間を経過
  する日の翌日まで」

 事業主への取得の申出は、休業開始の2週間前までに行います。分割取得するときは、2回分をまとめて初回休業の前に申し出ます。
 有期雇用の方は、子の出生後8週間を経過する日の翌日から6か月以内に労働契約が満了することが明らかでない場合に、申出をすることができます。

 なお、子の出生後8週間で4週間超の育休を取得したいときや、子の出生後8週間を経過する日の翌日をまたいで育休を取得したいときなどには、現行の育休を取得できます。
 この休業の新設に伴い、現行の「パパ休暇」の特例(父親が子の出生後8週以内に育児休業を取得した場合に再度の取得を可能とする特例)は、今年9月末で廃止されます。

 出生時育児休業期間中の就業については、あらかじめ労使協定で定めた、休業期間中の就業が可能な労働者に該当する者に限り、事業主に申出することができます。申出の内容は、就業可能日と時間帯(所定労働時間内の時間帯に限る)、就業の場所(テレワークの可否を含む)に関する事項などです。
 申出を受けた事業主が、申出の範囲内で事業主としての就業希望日・時間帯等を労働者(申出者)に提示して、休業開始予定日の前日までに同意を得ることで、休業中の就業が可能となります。
 この一連の流れから分かるように、事業主からの一方的な命令で就業させることはできません。

 労働者による同意の全部または一部の撤回は、休業開始予定日の前日までは、その理由を問わず可能です。休業開始後は、配偶者の死亡など特別な事情がなければ撤回はできません。

 就業可能な日数は、休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分(休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満)です。具体的には、出生時育児休業の最大取得日数28日(4週間)の場合で10日間、それより短い日数の場合は、その休業取得日数に比例した就業日数となります。
 なお、休業28日(4週間)取得の場合で、就業日数が10日を超えるときでも、就業時間数の合計が80時間以内(例えば、12日で60時間就労)に収まるのであれば、就業させることができます。(休業27日以下の場合は、休業日数に比例した時間数となります。)

中小企業の人事評価制度導入で留意する点について(22.01.03)

 私見が入りますが、次のようなことが言えるのではと考えています。

【制度の導入・運用開始と制度の完成は別】
 制度の導入・運用開始はあくまでも始まりであり、制度の完成ということにはならないです。
 運用開始後に出てくる疑問や問題点を解決し、改善していくことで、評価制度はより使えるものになっていきます。

【人材育成に活かせるようにする】
 低評価を繰り返さないための目標設定とフォローを組みこむこと、従業員ごとに将来のイメージ(やりたい仕事・就きたい職位など)とそこに至るルートを明確にしておくことが重要になります。
 また、社内での昇進、昇格の基準として経験しておくべき仕事や必要なスキルを明確化して評価制度と連動させることは、従業員のモチベーションアップや自己研鑽につながる施策です。

【本人と直属上司の評価を社長・幹部が大きく変えるなどしたときの対応】
 社長・幹部の視点は、本人・直属上司のそれとは異なりますから、社長・幹部段階での評価の修正が必要になるケースが出てきます。
 ただ、修正が頻繁になったり、大きな修正をするなどした場合は、被評価者の従業員、一次評価者の直属上司から、自ら評価を行う意味や評価基準の妥当性などに疑問を持たれるリスクが出てきます。
 ですから、評価を大きく変えるなどしたときは、そのような評価が一次評価者(直属の上司)からなぜ上がってきたのか、評価基準が実態にマッチしていないのか、被評価者に何らかの問題があるのか、第一次評価者のスキルに問題があるのかなど、その原因を把握して必要な対応を取ることが重要になります。

【人事評価を仕事として明確に位置付ける】
 人事評価は、直接目に見える形で売上や利益の増加に貢献しているとは言いにくいため、人事評価は本筋の仕事ではない、余分な手間がかかる作業と見られがちなところがあります。
 その企業の人材活用のインフラとして定着させるのであれば、企業のトップが、人事評価を仕事として明確に位置付け評価することを示すアクションが重要となります。

【制度の運用や改善に使えるリソースを考慮する】
 例えば、人事労務の専担者が居ないか少数である、評価に携わる役職者もプレイヤーであるといったように、制度の運用や改善に使えるリソースが限られている場合は、できるかぎりシンプルな制度にしていくことや、丸投げにならない範囲でのアウトソーシングなどを検討したほうが良いでしょう。

【一次評価者がカギ】
 これから人事評価制度を新たに導入したり、従来の評価方法を大きく変える場合には、一次評価者である直属の上司がカギになります。
 例えば、目標管理制度での期首面談と目標設定、評価期間中の被評価者へのフォロー、期末面談と達成度評価の一連の流れを見ても、一次評価者の役割の重要性が分かります。
 必要なスキルは、専門家が1回レクチャーした程度ではまだ不足で、制度が定着するまでは、一次評価者の試行錯誤への継続的なフォロー体制が必要となります。

【これまでの経営者による評価との関係】
 これまで人事評価制度がなく主として経営者が評価を行ってきた場合でも、これまでの方法と評価を第三者的な視点で分析して、結果として公平・公正であり妥当性が高いものがあったなら、新制度に反映できないか検討してみるのが良いでしょう。

労働生産性(22.01.02)

 働き方改革の成果として期待されるものに「労働生産性の向上」があります。
 その労働生産性(付加価値労働生産性)は、次の計算式で求められます。

 〇 1人当たり労働生産性 = 付加価値額 / 従業員数

 〇 時間当たり労働生産性 = 付加価値額 / 従業員数×労働時間数
                      (総労働時間数)

 1人当たり労働生産性は、次のとおり分解することができます。

 労働生産性 = 従業員1人あたり売上高 × 付加価値率
       = (売上高/従業員数)×(付加価値額/売上高)


 労働生産性 = 従業員1人当たり人件費 ÷労働分配率
       = (人件費/従業員数)÷(人件費/付加価値額)

 また、1人当たりの生産性の物差しとして活用されている「人時生産性」(にんじせいさんせい)は一般的には、
(粗利益高/総労働時間数)で算出されることが多いですが、粗利益高の代わりに売上高、営業利益、付加価値額を用いることもあります。

 「付加価値額」の算出方法については、統一されたものはなく、次の2つが併存していますが、加算法が用いられることが多いです。

【加算法】
 〇 粗付加価値額=営業利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費
  (営業利益の代わりに経常利益、当期純利益などを用いることがある。)


 また、粗付加価値額の加算項目のうち減価償却費を除いた「純付加価値額」が用いられることもあります。
 (純付加価値額 =  営業利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課
  財務省「法人企業統計」では純付加価値額であり、営業純益(営業利益-支払利息等)を用いて、
  支払利息等を別途加算している。)
 

【控除法】
 〇 付加価値額 = 売上高 - 外部購入費用(直接材料費、買入部品費、外注工賃、補助材料費)
  (経済産業省「経済センサス」では、外部購入費用の代わりに費用総額(売上原価+販売及び一般管理費)を用いて、

   給与総額、租税公課を別途加算している。)

 労働生産性の現状は、多くの指摘のあるとおり、厳しい状況が続いていますが、国内、国外それぞれの切り口での分析を見てみます。

1.2021年度版中小企業白書(中小企業庁)

 この年の白書では、「中小企業・小規模事業者の実態」と題して分析を行っていますが、2019年の従業員1人当たり付加価値額(純付加価値額)は、中小企業製造業が535万円、中小企業非製造業が534万円でそれぞれ大企業の4割程度です。

2、労働生産性の国際比較2021(公益財団法人日本生産性本部)
 このレポートでは、OECD(経済協力開発機構)加盟38か国のデータを用いて比較を行っています。


 〇 日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)
   49.5ドル(購買力平価(PPP)換算5,086円)で、OECD加盟38カ国中23位


 〇 日本の一人当たり労働生産性(就業者一人当たり付加価値)
   78,655ドル(購買力平価(PPP)換算809万円)で、同28位
でいずれも主要先進7か国では大きく引き離されての最下位です。

 また、一般的には優位にあると考えられがちな製造業の労働生産性は、ドイツ、韓国を下回る水準で18位。OECD主要加盟国中トップであったのは20年以上前の話です。

 この先、生産性を指標として経営改善を進めていくのであれば、1人当たりではなく、時間当たりの指標を用いる方が良いと考えます。それは、働き方改革、人的コストの増加などで労働時間の削減がこれまで以上に労働生産性改善の重要な要素となることと、同一労働同一賃金を実行し維持していくには、時間当たりでの労働生産性の把握が必要になってくることからです。

働き方改革10年の折り返しの年に(22.01.01)

 新しい年が明けましたが、この年は働き方改革実行計画10年間(2017~2026年度)の折り返し点にもなります。
 再来年(2024年)に時間外・休日労働の上限規制が遅れて適用される建設、運輸、医療業界以外の中小企業では、パワーハラスメント対策の法制化、改正育児・介護休業法がある今年が一つの節目になるのではないでしょうか。

 パワハラ対策も男性育休も、ひと昔前であれば他社より一歩進んだ取り組みだったものが、当たり前のことになりつつあります。
 これらのいずれも、事案発生の有無にかかわらず体制の整備や必要な周知を行わなければならないものであり、相談窓口ひとつ取ってみても、設置後も担当者のスキル維持や、定期的な周知などランニングコスト的な手間がかかります。

 働き方改革に対応するため、ここ数年で企業の労務管理の負担は確実に大きくなっています。
 働き方改革関連でインパクトが大きい新制度・法規制がほぼ出揃う今年は、企業の労務管理のやり方の見直し、具体的には、アプリやシステムに置き換えられるものや、外部にアウトソーシングできるものはないかといった検討をするいいタイミングではないかと考えられます。

 働き方改革の後半5年に向けて注目しておきたいのは、昨年の骨太の方針での「フェーズⅡの働き方改革」のキーワードである、ジョブ型雇用、裁量労働制、選択的週休3日制、兼業・副業、フリーランスに関する国の動き、そして地域経済界や同業他社の動きです。
 また、ジョブ型雇用に関連して「多様な正社員」、フリーランスに関連して「雇用類似の働き方」も頭の片隅に置いておくと良いキーワードです。

 現在、月60時間以上の時間外勤務の実績がある企業については、来年4月の「月60時間超の時間外労働の割増賃金率50%以上」適用への対策を今から進めておくことをおすすめします。
 生産やサービス提供での人的体制を長時間勤務で補う経営手法がコスト面からも難しくなりますし、このような法規制が入ることで、月60時間超の時間外勤務に対する社員の捉え方が変わってくるであろうことも視野に入れた方が良いでしょう。

 最後になりますが、建設業、自動車運転の業務、医師への時間外・休日労働の上限規制適用までは、あと2年余りありますがそろそろ検討やシミュレーションを始めても良い時期です。
 これまでも「自動車運転者の労働時間等の改善基準」があり、行政の指導監督も続けられてきた自動車運転の業務に比べると、建設業や医師の分野では、法規制対応を進めていく中での試行錯誤が多くなるのではと思います。

就職氷河期世代支援に関する行動計画2021(21.12.31)

 政府の就職氷河期支援は、2019年に「就職氷河期世代支援プログラム」が取りまとめられ、3年間で就職氷河期世代の正規雇用者30万人増加の目標も掲げられ集中的な支援が進められています。
 その行動計画である「就職氷河期世代支援に関する行動計画2021」が12月24日に公表されました。
 その中では、4つの項目ごとに施策が列挙されています。

 一つ目の項目である「プラットフォームを核とした新たな連携の推進」としては、全国・都道府県・市町村の各プラットフォームの開催が挙げられています。特に福祉と就労をつなぐ「市町村プラットフォーム」については、小規模な自治体は広域で設置するといった方法も使いながら、原則、令和3年度内の設置・運営を目指すとしています。
 また、地域の自治体と経済団体、就労・福祉の関係機関などが連携した就職氷河期世代支援を後押しするための「地域就職氷河期世代支援加速化交付金」の活用が継続されます。

 二つ目の「相談、教育訓練から就職、定着まで切れ目のない支援」として、主要なハローワークでの就職コーディネーター増員により、事業所が多く立地する地域での求人開拓、伴走型の就職相談・定着支援などが強化されます。
 受けやすく、即効性のある「出口一体型」リカレント教育として、就職氷河期世代の方向けに創設した「短期資格等習得コース」での、訓練と職場体験等を組み合わせ、正社員就職を支援する訓練の実施が挙げられています。
 また、一次産業や、観光業、自動車整備業、建設業などへの新規就業者の確保・育成といった施策もあります。
 そして、採用企業側の受入機会の増加につながる環境整備として、正社員経験やキャリア形成の機会がなかった者を正社員として雇用した事業主への助成金(特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期 世代安定雇用実現コース)や、トライアル雇用や職業訓練関連の助成金活用が挙げられています。

 三つ目の「個々人の状況に合わせた、より丁寧な寄り添い支援」としては、アウトリーチ支援員の配置等による自立相談支援機関の機能強化、地域若者サポートステーションの支援の充実などがあります。
 
 最後の「その他の取組」は、就職氷河期世代への国の支援策に関する積極的な広報の実施、テレワーク関連の施策、国家公務員・地方公務員の中途採用の促進などとなっています。

労基法26条の休業手当(21.12.30)

 休業手当について定める労働基準法第26条は、このような条文です。

 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を払わなければならない。

 この条文中の、使用者の責に帰すべき事由、休業期間と手当額の2つを見ていきます。

【使用者の責に帰すべき事由】

 これを裏返して休業手当の支払義務がない「使用者の責に帰さない事由」は何かといえば、「不可抗力による休業」になります。

 不可抗力による休業と言えるためには、
 ① その原因が事業の外部より発生した事故であること
 ② 事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
という要素をいずれも満たす必要があります。
 (新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(令和3年11月22日現在版 4-問7))

 実際の事例に対する行政の解釈例規を見ると、
〇 下請け工場が、親会社の経営難により資材や資金の供給を受けられず、他の会社からの獲得もできないために休業した
  場合は、「使用者の責に帰すべき理由」に該当する。

〇 計画停電が実施される場合で、停電の時間帯の電力供給がないことによる休業は、「使用者の責に帰すべき理由」に該当
  しない。
といったものがあります。

 また、災害被災により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられるとするQ&Aがあります。

 さらに、災害により事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合は、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられるとしながらも、具体的に、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案した結果、「不可抗力による休業」の2つの要件を満たすときは、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられるとするQ&Aもあります。
 (令和2年(2020 年)7月豪雨による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A Q1-4、1-5)


【休業期間と手当額】

 他の日より所定労働時間が短い日に休業させた場合でも、その日の休業手当は平均賃金の百分の六十相当額を支払います。(日ごとの所定労働時間に応じた減額はできない)
 対象日の一部を休業させた場合(半日休業など)は、対象日に就労した時間に対する賃金額が平均賃金の百分の六十を下回るのであれば、その下回る額(差額)を休業手当として支払います。

➤ 未払賃金立替払事業(21.12.29)

 勤めていた会社が倒産して給与や退職金が未払いのまま退職した場合に、事業主に代わって国がその一部を立替払いするのが「未払賃金立替払制度」です。
 過去5か年では、毎年度2万2千~2万4千人に対して80億円台の立替払の実績があります。

 この制度では、事業者(会社)、労働者(社員)それぞれの要件があります。

【事業主の要件】
 ① 労災保険適用事業として、1年以上の事業実施
 ② 倒産していること
  (法律上の倒産もしくは事実上の倒産(中小企業主のみ))

 法律上の倒産は、裁判所により手続開始の決定もしくは清算開始の命令がされている場合であり、事実上の倒産は、労働基準監督署長が退職した者からの申請により、その企業が「事業活動停止」「再開の見込みなし」「賃金支払能力なし」の状態にあることを認定した場合です。
 なお、事実上の倒産の認定に係る労働者からの申請は、退職日の翌日から6ヶ月以内に行います。立替払の希望者が2人以上のときは、そのうちの1名が申請すれば良いとされています。

【労働者の要件】
 ① 退職日の要件として、破産開始手続き等の申立日もしくは認定申請日の6か月前の日から2年の間に退職していること
 ② 未払賃金額等について、破産管財人等の証明もしくは労働基準監督署長の確認を受けていること

 労災保険適用事業の事業所に雇用されていた労働者は、その事業主の労災保険加入手続きや保険料支払の有無にかかわらず、立替払の対象となります。
 事業主の倒産を事実上の倒産として立替払の手続きを進める場合は、
  イ)「事業活動停止」「再開の見込みなし」「賃金支払能力なし」の状態にあること(事実上の倒産)の認定
  ロ)未払賃金額等についての確認
の順に労働基準監督署長に対して2度の手続きを行います。

【立替払の対象となる未払賃金】
 退職日の6か月前から立替払請求日までに支払日がある定期賃金(基本給、通勤手当、時間外勤務手当、家族手当など)と退職金の2つです。なお、その合計額が2万円未満の場合は、立替払の対象外となります。
 立替払の対象とならないものには、賞与など臨時的に支払われる賃金、解雇予告手当。実費弁済としての旅費などがあります。

【立替払額】
 未払賃金総額の8割で、年齢層別に未払賃金総額の上限額が定められています。
  (45歳以上:370万円、30歳以上45歳未満:220万円、30歳未満:110万円/立替払額はこの8割)

 この制度で立替払を受けた額は、原則として定期賃金分、退職金分のいずれかを問わず全額退職所得として課税されます。

【立替払の請求】
 実施機関である独立行政法人労働者健康安全機構に対して、破産開始手続き等の申立日もしくは認定申請日の翌日から2年以内に請求します。
 この制度に関する問い合わせは、機構と労働基準監督署で受け付けています。

➤ 令和4年度当初予算案で建設業の人材確保・育成関連支援について(21.12.28)

 建設業の人材確保、人材育成、魅力ある職場づくりの推進の3テーマでの国土交通省、厚生労働省の支援策が公表されています。
 建設業に特化した支援は13項目ありますが、ここではそのうち5項目を紹介します。

建設産業の働き方改革の実現(1.4億円/国土交通省)

 市町村での入札契約について、施工時期の平準化、施工確保対策(適正な予定価格の設定、ダンピング対策など)を進めて、建設業の賃金水準の適正化を図ります。
 適正な工期設定に向けた取組のため、建設業での週休2日の確保や時間外労働の状況を調査し、改善策を検討します。
 また、技術者の効率的な現場配置のため、技術者制度の拡充(専門工事一括管理施工制度、監理技術者補佐制度など)や合理化を検討します。

建設キャリアアップシステム(CCUS)普及・活用等を通じた建設技術者の処遇改善(1.8億円/国土交通省)

 CCUSは、技術者の技能・経験を含む就業履歴を蓄積し、その活用により技術者の能力を客観的に評価する仕組みです。

これに新たに技能労働者の労働状況の確認機能を実装して、発注者や使用者が活用することで、週休2日制や処遇改善を進めます。
 近年、入職減・離職増の傾向にある女性技術者へのCCUS普及を進めて、ライフイベントなどでキャリアが途切れた女性技能者の復職などを促進する取り組みをします。

建設事業主等に対する助成金による支援(68.4億円/厚生労働省)


 従来より建設事業主等への支援に特化したコースが、人材確保等支援助成金、人材開発支援助成金、トライアル雇用助成金に設けられていますが、次のような変更があります。

 ① 人材確保等支援助成金に、CCUS普及関連の支援を行う「建設キャリアアップシステム等普及促進コース(仮称)」

   を新設

 ② 人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)における、建設キャリアアップカード登録者への賃金助成額10%

   割増期間の延長(令和4年度まで)

中小建設事業主等への支援(5.2億円)

 業界団体が、建設業での就業希望の離転職者や新卒者等に提供する無償の訓練、就職支援などのパッケージ事業を支援します。また、認定職業訓練などに要する経費の補助を実施します。

建設業許可等の電子申請化に向けた環境整備(3億円/令和3年度第一次補正・デジタル庁一括計上経費)

 建設業許可等の電子申請システムを構築し、令和4年中に試行、令和5年1月に運用開始します。

➤ 在宅勤務と労働時間制(21.12.27)

 在宅勤務を取り入れている企業ではどの労働時間制が多くなっているのか?

 昨年(2020年)の夏から秋にかけての調査(複数回答)ですが、
 〇 通常の労働時間制度    82.7%
 〇 変形労働時間制      47.2%
 〇 フレックスタイム制    34.3%
 〇 事業場外みなし労働時間制 16.5%
 〇 専門業務型裁量労働制   11.8%
 〇 企画業務型裁量労働制    4.5%
という結果でした。

 同じ年度の就労条件総合調査(在宅勤務の有無は問わない調査)では、フレックスタイム制が 6.1%(最も多い規模1,000人以上に限っても28.7%)でしたので、在宅勤務の導入企業では、フレックスタイム制の導入が進む傾向があるようです。

 フレックスタイム制には、通勤時間の節約と心身の負担軽減、リラックスした空間で仕事ができる、勤務者が柔軟な働き方ができるといったメリットがありますが、在宅勤務もフレックスも未導入の状態から始めるのであれば、最初からフレックスにこだわる必要はないと考えます。

 在宅勤務を導入して慣れるまではどうしても残業が多くなりがちですから、導入時は通常の労働時間制度のみとしてオフィス勤務時と同様の管理を行い、一定の期間をおいて、導入初期の様々な不具合が解消して、勤務時間と成果の質量のバランスがオフィス勤務時に近くなったところで、フレックスを導入するのがより現実的な対応でしょう。


 先の調査の結果では、在宅勤務での深夜労働、休日勤務は原則禁止が、いずれも5割程度でした。許可制とする場合は、事前の許可と終業時のメール報告を組み合わせた対応が必要と考えられます。

 事業場外みなし労働時間制は、在宅勤務者の柔軟な働き方を可能にする制度であり、厚生労働省のテレワークガイドラインでは、在宅勤務に適用するときの要件を2つ挙げています。

 ① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
 ② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

 これだけだとイメージしずらいところもありますが、解釈事例が示されています。
 在宅勤務者が業務をする上で迷ったり、なし崩し的な運用になることがないように、実際の業務でのケースを想定した運用を明文化して事前に共有しておくことが必要になります。
 また、みなし時間に見合った質量の業務配分を維持していくための管理者、上司の役割も重要です。

 在宅勤務での労働時間の把握は、使用者などによる現認は困難ですから、ガイドライン(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)の原則では、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録といった客観的な記録をベースにして確認を行い、自己申告制はやむを得ないときに行うものという位置づけになります。

   ※ 労働安全衛生法上の「労働時間の状況の把握」は、労働基準法上の「労働時間の把握」とは異なり、

     事業場外労働のみなし労働時間制の適用者、裁量労働制の適用者、管理監督者等も対象となります。

 しかし、先の調査の結果では、在宅勤務実施企業でも、「電子ファイルの出勤簿等に自己申告で記入する」がパソコンのログ取得やWeb打刻を上回っています。
 自己申告制は、実際の労働時間と合致しているか否について、必要に応じて実態調査を実施することが求められるなど労務管理上の手間がかかる方法でもあります。
 また、在宅勤務での中抜けを認めているのであれば勤務者側でも取り扱いに煩雑さを感じるものです。

 労務管理自体も、働き方改革でやるべきこと、配慮するべきことが増えていますので、「出勤簿+自己申告」は、ICカードやWeb打刻などに置き換える時期に来ていると考えられます。

   ※ この投稿での「調査」は、「令和2年度テレワークの労務管理に関する総合的実態調査研究事業」

     (三菱UFJリサーチ&コンサルティング/厚生労働省委託事業)です。

➤ 特定一般教育訓練給付(21.12.26)

 雇用保険の教育訓練給付の対象となる訓練には、そのレベルなどに応じて3つのカテゴリーがあります。

 〇 専門実践教育訓練
   ……業務独占資格などの取得を目標とする講座
     デジタル関係の講座
     大学院・大学などの課程
     専門学校の課程

 〇 特定一般教育訓練
   ……業務独占資格などの取得を目標とする講座
     デジタル関係の講座

 〇 一般教育訓練
   ……資格の取得を目標とする講座
     大学院などの課程

 このうち、特定一般教育訓練は2019(令和元)年10月からの新しい制度で、従来の一般教育訓練の指定講座のうち、就職実現やキャリアチェンジに直結するような業務独占資格や、一定レベル以上の情報通信技術関連の資格取得に結び付くものなどを指定してより高率の訓練給付の対象とするものです。

 給付対象講座は、今年10月現在で484講座となっており、

例えば、
 〇 大型自動車第一種免許、中型自動車第一種免許、大型特殊自動車免許などの輸送・機械運転関係の資格・講座
 〇 介護職員初任者研修、介護支援専門員などの医療・社会福祉・保健衛生関係の資格・講座
 〇 税理士、社会保険労務士試験など独占業務がある専門的サービス関係の資格・講座
 〇 情報処理技術者試験【基本情報技術者試験】
 〇 職業実践力育成プログラム
が指定されています。

 特定一般教育訓練での給付対象となるのは、講座の受講開始日に、①在職中で雇用保険に加入していること、②雇用保険の加入期間が3年以上あることのいずれにも該当する方です。
 教育訓練給付を初めて受ける方は、雇用保険加入期間の要件が1年に短縮されます。また、以前に給付を受けたことがある方は、加入期間3年の要件を「前回の給付受給日から今回の訓練開始日の間」で見て判断します。

 訓練給付を受けるためには、受講前と受講後の2回手続きが必要です。
 まず、受講開始日1カ月前までに行う受講前の手続きでは、ハローワークで「訓練前キャリアコンサルティング」を受けてジョブ・カードを作成して、受給資格の確認を受けます。
 そして、受講後の手続きとして、給付の受給申請を講座修了日の翌日から1か月以内にハローワークで行います。

 給付額は、受講費用の40%、上限額は20万円です。ここでの受講費用は、申請者自ら支払った入学料と試験料の合計であり、検定試験受験料、補講費、受講のための交通費などは含まれません。

 新設されてからまだ2年余りであり、これから指定講座がさらに増えて取り組みやすくなっていくものと考えられます。

➤ 令和4年度当初予算案での厚生労働省の施策(雇用・働き方関連)について(21.12.25)

【雇用調整助成金等による雇用維持の取り組みへの支援】
 〇 雇用調整助成金等は 5,843億円で、令和4年4月以降の特例措置内容は、

   令和4年2月末までに公表予定
 〇 在籍型出向による雇用維持を支援する産業雇用安定助成金等は488億円

【「人への投資」の強化】
 「人への投資」の強化は、3年間で4,000億円規模の政策パッケージで進められますが、そのうち令和4年度予算は、令和3年度補正予算とほぼ同額の1,019億円で、その半分が人材開発支援助成金を活用したデジタル人材育成強化等(504億円)であり、残り半分が、

 〇 非正規からの正社員転換でのキャリアアップ助成金の加算支給(268億円)
   (人材開発支援助成金を活用しての特定の訓練受講が要件)
 〇 リカレント教育などに対応する教育訓練給付の対象講座拡充(96億円)
 〇 デジタル・グリーンなど成長分野での雇い入れへの高額助成(150億円)
   (特定求職者雇用開発助成金)
に充てられます。

【コロナ禍の影響を受けた離職者の再就職支援】
 〇 無料の職業訓練、給付金、ハローワークでの就職支援を組み合わせて再就職や転職を支援する「求職支援制度」の

   活用推進(278億円)
 〇 就労経験のない職業への就職を希望する離職者を試験雇用する事業主への賃金の一部助成(29億円)
 が予算計上されています。

【紹介予定派遣を通じた正社員化の促進】
 〇 キャリアアップ助成金の活用による正社員化促進を実施(785億円の内数)

【ハローワークの職業紹介業務のオンライン・デジタル化の推進】
 〇 自宅でも求職活動ができるよう、オンラインによる職業紹介を実施するハローワークの拡充などを実施(4.2億円)

【男性の育児休業取得促進】
 〇 育児休業制度の周知・啓発等、男性社員の育児休業制度・育児目的休暇の導入やそれらを取得しやすい職場環境整備を

   行った事業主への助成金での支援などを実施(179億円)

【高齢者の就労促進】
 〇 70歳までの就業機会確保のための定年引上げや継続雇用制度導入などを行った企業への支援等(65億円)
 〇 生涯現役支援窓口(ハローワーク)などでの高齢者再就職マッチング支援(33億円)

【障害者の就業支援】
 〇 障害者雇用ゼロ企業への、採用準備段階から採用後の職場定着までの一貫した雇入れ支援の実施など(135億円)
 〇 精神障害者、発達障害者、難病患者である求職者への障害特性に対応した就労支援としてハローワークへの専門担当者

   配置や大学などと連携した支援を実施(31億円)

【良質なテレワークの導入・定着促進】
 〇 中小企業での導入への助成金による支援実施等(19億円)

【長時間労働の是正】
 〇 生産性を高めながら労働時間短縮などに取り組む中小企業・小規模事業者への助成金での支援等(125億円)
 〇 勤務間インターバル制度の導入促進のため、業種別マニュアルの作成継続、導入を進める中小企業への助成金による

   支援などを実施(27億円)

【総合的なハラスメント対策の推進】
 〇 平日夜間・休日も対応のフリーダイヤル、メール、SNSでの相談窓口設置、シンポジウムなどによる周知啓発等の実施

   (38億円)

【最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等に取り組む企業への支援】
 〇 事業内最低賃金引上げ、生産性向上への設備投資などを行う中小企業・小規模事業者の業務改善助成金での支援

  (12億円/補正予算で135億円計上)

【非正規雇用労働者のキャリアアップの推進】
 〇 キャリアアップ助成金(正社員化コース)の助成対象を正社員転換に重点化するなどして支援(808億円の内数)

➤ 規制改革推進会議「当面の規制改革の実施事項」での働き方関連の事項について
 (21.12.24)

 今月22日の第12回規制改革推進会議(内閣府所管)で「当面の規制改革の実施事項」が公表されました。
 この中では、今後の生産性向上や成長産業に関連した4つの重点分野、①スタートアップイノベーション、②「人」への投資。③医療・介護・感染症対策、④地域産業活性化とすべての分野の共通基盤となるデジタル改革について、当面実施するべき規制改革が取りまとめられています。

 デジタル改革関連での、次のような特定分野の常駐・選任規制の見直しは、企業での働き方に影響を与えるものです。

〇 電力・都市ガス・高圧ガスの分野における保安のテクノロジー化
  (スマート保安)
〇 建設業における技術者等の配置・専任要件及び資格要件
〇 事業用電気工作物に関する電気主任技術者等の選任要件等
〇 バイオマスボイラーの遠隔制御監視基準
〇 サービス付き高齢者向け住宅における有資格者の常駐要件

 これらのうち、建設業関連の規制では、現在、一定以上の規模・金額の公共工事では、品質管理の必要性などから現場ごとに公的資格を保有する技術者を専任で配置することが法律で義務付けられています。
 現状では、現場での技術者不足、建設業の生産性向上などへの対応が必要であり、令和4年春を目途に、デジタル技術の利活用や働き方の多様化を前提とした規制の見直し、建設業の技術者となるための資格取得及び受検の要件見直しについて、結論が出される予定です。


 また、「人」への投資で、雇用・働き方関連の項目が挙げられています。

〇 労働時間制度(特に裁量労働制)の見直し
〇 雇用仲介制度の見直し
〇 育児休業の取得促進

 裁量労働制については、実態調査の結果、適用されている労働者の労働時間が適用外の労働者より長くなる傾向にあること、制度に関して対象労働者の範囲や手続き負担の軽減などの要望があることが分かっています。
 現在、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関して、厚生労働省の検討会で企業・労働者・組合からのヒアリングや検討が進められており、令和4年度中に結論が出される予定です。
 また、労働基準法上の労使協定等に関する届出などの手続きで、より企業の利便性を高めす方策が検討されます。

 雇用仲介サービスについては、従来からの民間の職業紹介や求人メディアに、新しいサービスであるアグリゲーターや利用者DB、SNSなどを加えた形での法的な位置づけを明確にして、安心して利用できる制度となるよう見直しがなされて、令和3年度中に必要な措置や周知が行われる予定です。

 育児休業については、令和4年以降改正法が順次施行されますが、令和4年度に好事例の収集・公表や中小企業の支援が行われ、令和5年度秋には改正後施行後の実態調査が開始される予定です。

➤ 今年上半期の雇用動向は、入職が離職を上回り27.7万人の入職超過(21.12.23)

 先日、令和3年上半期雇用動向調査(厚生労働省)の結果が公表されました。 この調査は、全国の主要産業の事業所で常用労働者(無期雇用及び1カ月以上の有期雇用)を対象として入職者数・離職者数、その属性や離職理由等を年2回調査するもので、今回の調査期間は令和3年の上半期(1~6月)です。

〇令和3年上半期の入職・離職

 全体では、1月1日現在の常用労働者数5,145.9万人から、上半期入職者444.5万人、同離職者416.8万人で差し引き27.7万人(0.5%)の入職超過となり、前年上半期(3.9万人(0.0%)の入職超過)から改善しました。

 男女別では、いずれも入職超過となっています。就業形態別では、一般労働者(パートタイムを除く常用労働者)が31.0万人の入職超過で超過率(0.8%)は前年上半期と同じ。パートタイム労働者は、昨年上半期比で入職者5.9万人増、離職者15,4万人減でしたが、昨年上半期の24.5万人の離職超過から入職超過までの改善には至らず3.3万人の離職超過となりました。

 入職者を職歴別に2つに分解してみると、「転職入職者」(入職前1年間に就業経験のある者)が256.7万人で転職入職率5.0%。「未就業入職者」(入職前1年間に就業経験がない者)が187.8万人で未就業入職率3.7%となっています。

〇産業別の入職と離職

 この調査でいう主要な産業別(16産業)で、入職者数上位3産業は、医療・福祉(76.5万人)、卸売・小売業(68.5万人)、宿泊業・飲食サービス業(59.5万人)の順。また、離職者上位3産業は、宿泊業・飲食サービス業(77.1万人)、医療・福祉(67.0万人)、卸売・小売業(65.3万人)の順で、入職・離職ともに同じ顔ぶれとなっています。

 離職超過となった産業は、昨年上半期の7産業から4産業に減りました。超過の多い順から、宿泊業・飲食サービス業(17.6万人)、製造業(0.7万人)、金融業・保険業(0.4万人)、複合サービス事業(0.1万人)です。

 前年上半期との比較で入職者数が増加したのは、生活関連サービス業・娯楽業(15.4万人)、教育・学習支援業(5.4万人)、学術研究、専門・技術サービス業(4.3万人)の順。また、離職者数が増加したのは、宿泊業・飲食サービス業(5.4万人)、学術研究、専門・技術サービス業(1.7万人)、教育・学習支援業(1.2万人)の順です。

〇転職入職者の賃金変動状況

 前職の賃金との比較で、減少(36.6%)、増加(34.2%)、変わらない(28.2%)の順です。
 年齢層別にみると、「20~24歳」の層より若年では増加が減少を、「45~49歳」の層より高年齢では減少が増加を大きく上回っています。

〇未充足求人の状況

 「未充足求人」とは、6月末日現在で事業所における欠員があり、その仕事に従事する者を補充するために行っている求人のことで、令和3年6月末の未充足求人数は92.9万人(欠員率1.8%)です。
 産業別で未充足求人数が多いのは、卸売業・小売業(19.6万人)、宿泊業・サービス業(15.2万人)、医療・福祉(12.1万人)です。
 欠員率では、建設業(3.3%)、飲食業・宿泊サービス業(3.2%)、生活関連サービス業・娯楽業(2.7%)の順です。

 この調査では、ここで紹介したほかにも、性、年齢階級別転職入職率、転職入職者が前職を辞めた理由などの項目があります。

➤ 災害による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A(21.12.22)

 広範囲での大規模災害が発生したときに、被災地域の事業主向けに労働時間や休業、賃金などの考え方等を厚生労働省がQ&Aとして公表することがあります。
 近年では、令和2年7月豪雨、令和元年台風19号のときの「被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A」があります。

 その中から試しに3つのQ&A(要約)を見てみます。

【Q】今回の災害で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業(平均賃金の6割以上の休業手当の支払が必要な休業)に当たるか。

(A)今回の災害により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。
    

【Q】今回の災害で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業(平均賃金の6割以上の休業手当の支払が必要な休業)に当たるか。

(A)労働基準法には、天災事変などの理由による賃金支払義務の免除に関する規定はありません。
    

【Q】今回の災害により、事業場又は関連事業場が被害を受け、当初の予定どおり1年単位の変形労働時間制を実施できなくなった場合、労使協定を労使で合意解約し、締結し直すことは可能か。

(A)(年単位の変形労働時間制は、本来は労使の合意で対象期間途中での適用中止はできないと解されているとした上で)今回の災害による被害は相当程度に及んでおり、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、労使でよく話し合った上で、1年単位の変形労働時間制の労使協定について、労使で合意解約をする、あるいは協定中の破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能と考えられる。
 
    

 このQ&Aが公表されるときには、派遣労働に関する労働相談Q&A、労働保険の適用徴収に関するQ&Aも公表されるケースが多いようです。 

➤ 補正予算でのキャリアアップ助成金、人材開発支援助成金の制度変更(21.12.21)

 今回の補正予算で、雇用調整助成金以外の厚生労働省助成金では、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善で「キャリアップ助成金」に251億円、デジタル人材の育成などで「人材開発支援助成金」に216億円の計上が目立ちます。

 厚生労働省の補正予算事業で、コロナ禍で影響を受けた非正規労働者について、求職支援制度や紹介派遣、民間会社でのカウンセリングや短期間の研修といったツールを組み合わせて支援することで早期の再就職につなげる枠組みができます。

 この事業を活用して再就職した方の処遇改善を支援するのがキャリアアップ助成金の役割といえ、補正予算では2つのコースで制度変更が行われています。

【正社員化コース】

〇人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正社員化した場合の助成額加算措置を新設
 有期→正社員転換は95,000円加算(無期→正社員はその半額)で他の加算措置との併給も可能です。

〇紹介予定派遣労働者の要件緩和措置を延長
 正社員転換後の雇用期間6カ月以上の助成金受給要件を、コロナ禍による離職者の紹介予定派遣(就労経験のない職業に就くもの)では、2か月以上6か月未満に緩和する措置です。もともと令和3年度末までだった緩和期間を延長して、対象者を紹介派遣を利用する求職者全体にまで拡大しています。

【賃金規定等改定コース】

 このコースは、賃金規定を改定するなどして有期雇用労働者の基本給を2%以上増額すると助成対象になります。これまで、基本給の増額対象を事業所内の有期労働者の一部に限定した場合には、すべての有期雇用労働者を対処とする場合の半額程度の助成額でしたが、今回の制度変更により、全事業者対象の場合と同額となりました。
 併せて、これまで、人数区分別に1事業所あたりの支給額としていたのを1人あたりに変更しています。

 

 人材開発支援助成金については、特定訓練コースの対象拡充、特別育成訓練コースの助成限度額引上げ等が行われています。

【特定訓練コースの対象拡充】

 IT技術の知識・技能を習得するための訓練のうち「ITSSレベル2」の訓練について、これまで一般教育訓練(OFF-JTのみ20時間以上で助成対象。経費助成率30%、賃金助成1時間あたり380円)であったものを、特定訓練コースの生産性向上訓練(OFF-JTのみ10時間以上で助成対象。経費助成率45%、賃金助成1時間あたり760円)としました。

 今回の拡充で、IT技術の知識・技能を習得するための訓練のうち「ITSSレベル2~4」が特別教育訓練、レベル1のみが一般教育訓練という形になります。

【特別育成訓練コースの助成限度額引上げ等】

 有期契約労働者を対象とする特別訓練育成コースのうち、一般職業訓練(OFF-JTのみ)、有期実習型訓練(OFF-JT+OJT)について、経費助成限度額の引き上げや、訓練受講者を支給申請時までに正社員化した場合とそうでない場合で経費助成率に差を付けるなどの見直しをしています。

 この見直しで、経費助成率は、正社員化を行い、生産性要件を達成した場合以外はこれまでより低くなり、限度額引き上げとあわせて、経費と時間をかけてレベルの高い訓練を受けさせた事業主にこれまでより手厚い給付がされる形になっています。

➤ 求職者支援制度の特例措置拡充(21.12.20)

 求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者に、無料の職業訓練、月額10万円の職業訓練受講手当をはじめとする給付金、ハローワークでの就職支援を組み合わせて再就職や転職を支援する制度です。

 既にこの制度では、コロナ禍以降にシフトが減少したり、休職をしている方が訓練を受けやすくなるよう、給付金支給要件のうち本人収入要件と訓練出席要件の特例措置、職業訓練コース設定の柔軟化が行われています。


〇 本人収入要件の特例
 シフト制で働く方、自営業・フリーランス、副業・兼業者などで、固定収入が8万円以下の場合、本人収入要件を月 12 万円以下に緩和する。
 また、地方公共団体等にコロナ対策業務などで臨時的に雇用されている方の本人収入要件を月 12 万円以下に緩和する。

訓練出席要件の特例
 訓練欠席の理由として認められる「やむを得ない理由」について、本来は、本人の傷病、天災、求職者面接、本人や親族の冠婚葬祭などに限っていたところに、「仕事で訓練を欠席せざるを得ない日」を追加する。

〇 職業訓練コース設定の柔軟化
 求職者支援訓練の訓練期間について、本来1コース2~6か月であるところ、最低2週間からに緩和する。また、訓練時間についても、月100時間以上、1日5~6時間であるところ、最低月60時間、1日2時間以上に緩和するなど。



 12月20日成立の令和3年度補正予算では、世帯収入や訓練出席の要件緩和、訓練対象者の拡大が追加措置されます。


〇 世帯収入要件の特例
 現在の40万円以下から「25万円以下」に緩和する。

〇 訓練出席要件の特例(追加)
 欠席日が訓練実施日の2割まで認められる。また、やむを得ない欠席日について、給付金の減額は行わない。

〇 訓練対象者の特例
 本来の訓練対象者である再就職や転職のため求人している方に加えて、特例で次の方も対象者とする。
 (雇用保険被保険者は除く)
   ・働きながら訓練を受けて社内での正社員転換などを目指す方
   ・今の仕事に役立つ能力を身に付けようとする方

 これらの特例は、令和4年3月31日までに訓練を開始した方(訓練対象者特例は申込み)が対象となります。

➤ 同一労働同一賃金の内容を知っている企業は6割超(21.12.19)

 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が実施した同一労働同一賃金の対応状況等に関するアンケート調査と、大企業対象のヒアリング調査の結果が公表されています。

 アンケートは、パートタイム・有期雇用労働法が中小企業に適用されてからほぼ半年後の2020年10~11月実施で、有効回答企業9,027社、そのうち常用雇用者50人以下が4社に3社(73.7%)の割合です。
(出典:調査シリーズN0.214「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」
    /独立行政法人労働政策研究・研修機構)

〇 同一労働同一賃金の認知度
 6割超が同一労働同一賃金ルールの内容まで知っていますが、「言葉は聞いたことがあるが内容まではわからない」も3割ありました。とはいえ言葉は知ってるというレベルでの認知度は9割超と高くなっています。

〇 パートタイム・有期雇用労働者の雇用と活用
 回答企業のうち、調査時点でパートタイム・有期雇用労働者を雇用していたのは、4社に3社(76.2%)。
 その活用状況等について、

正社員(無期雇用フルタイム)と職務(業務内容と責任の程度)が同じ者がいるのは、ほぼ6社に1社(15.8%)、
さらに人材活用(転勤や配置の変更有無・範囲)まで同じ者がいるのはその3分の1に満たない。(4.5%)
 その逆に、業務の内容も、責任の程度もまったく異なる者がいるのは4割(41.3%)です。

〇 同一労働同一賃金ルールへの対応状況
 対応完了(従来どおりで見直しの必要なしを含む)がほぼ半数(49.0%)で、対応中・対応予定が3割(31%)です。
 ちなみに、対応完了企業(従来どおりで見直しの必要なしは除く)で対応に要した期間は、6 ヶ月未満が6 割(60.6%)で、1年未満まで拡げると8割超となっています。

〇 実施した見直しについて(実施予定の企業を含む。複数回答)
 待遇の見直し(差別的取扱い禁止義務、不合理な待遇差禁止義務への対応)、正社員との職務分離や人材活用の違いの明確化といったパート・有期社員に焦点を当てた見直しが回答率上位を占めています。
 一方、正社員にも直接影響が及ぶ見直し(正社員を含めた待遇の整理や人事制度の改定、正社員の待遇の見直し(引下げ等)」は、前者に比べて明らかに少なくなっています。

〇 対応するために行った具体的な見直し内容(待遇要素別)
 待遇要素別の見直し内容は、パートタイム・有期雇用者の基本的な賃金の増額・拡充が4割超(43.4%)で最多、続いて、昇給の増額・拡充、賞与(特別手当)の増額・拡充、通勤手当の増額・拡充、慶弔休暇の拡充などとなっており、基本給・賞与・手当での対応が、休暇・休職、福利厚生での対応を大きく上回っています。

〇 対応に伴う人件費総額の変化について
 ほぼ同じ(プラスマイナス5%未満)が3社に1社、5~10%の増加が4社に1社です。


〇 同一労働同一賃金ルールの対応に当たっての課題(複数回答)
 何らかの課題があるとした企業は8割超で、個別の課題としては、「人件費負担の増加、原資の不足・捻出」、「待遇差が不合理かどうかの判断」のいずれもほぼ半数の企業が該当すると回答しています。続いて、「人件費に見合う生産性の向上」、「ルールの理解」、「待遇差の説明のあり方」、「正社員の待遇の内容整理」などとなっています。

〇 対応に向けた検討時の活用ツール(複数回答)
 社会保険労務士や弁護士といった専門家への相談がほぼ半数(47.0%)、厚生労働省などのホームページ、同一労働同一賃金ガイドラインがそれぞれ3割台です。

〇 対応で得られた(得られると見込む)効果
 回答率上位3項目は、職場の公平・公正化や納得感の醸成、働く意欲や生産性の向上、人材の確保・定着(採用・教育訓練コストの減少を含む)です。
 何らかの効果が得られた(得られると見込む)企業は3社に2社(計 67.3%)であり、その割合は、大規模企業になるほど高まる傾向がみられるのに対し、小規模企業ほど「特にない・わからない」との回答割合が高くなっています。

➤ 成年後見制度の現状と見直しの議論(21.12.18)

 成年後見制度は、
〇 自らの判断能力が十分である時点で、判断能力が低下した場合に備えて任意

  代理人を決め契約しておく「任意後見制度」
〇 判断能力が不十分となった後に、はじめて申立により家庭裁判所が成年後見人

  等を選任する「法定後見制度」
の2種類に分かれ、約23万2千人が利用しています。(令和2年12月末現在)

 令和2年(1~12月)の概況(※1)を見ると、
〇 後見人等選任の申立件数

   37,235件で過去5年(平成28年~令和2年)では約9%増 

〇 申立の種類別
   任意後見監督人選任(あらかじめ契約していた任意代理人の監督人選任の申立)は738件で全体の2%、
   過去5年でも横ばいで、申立ての大部分が法定後見となっています。


〇 法定後見の3つの区分では、
   最も多い後見開始(判断能力が全くない場合) 26,367件で過去5年では微減

   次いで、保佐開始(判断能力が著しく不十分な場合) 7,530件(同41%増)
       補助開始(判断能力が不十分な場合) 2,600件(同100%増)


〇 家庭裁判所への申立人
   最多が市区町村長で23.9%、続いて、子が21.3%、本人20.2%

〇 後見開始の原因は、認知症が最多で64.1%、次いで、知的障害9.9%、統合失調症9.0%

  (※1)成年後見関係事件の概況―令和2年1月~12月―(最高裁判所事務総局家庭局)

 平成29年度から利用促進基本計画に基づいて、利用者がメリットを実感できる成年後見制度の運用改善、地域連携ネットワークづくりなどが進められてきましたが、その一方では、成年後見人等が意思決定支援(※2)や身上保護(※3)を重視しない場合があり、利用者の不安や不満につながっていること、この制度や相談先等の周知がまだ十分でない、特に小規模な市町村で地域連携ネットワークなどの体制整備が進んでいないといった問題が残されているのが現状です。

  (※2)意思決定支援とは、特定の行為に関し本人の判断能力に課題のある局面において、本人に必要な情報を提供し、
      本人の意思や考えを引き出すなど、後見人等を含めた本人に関わる支援者らによって行われる、本人が自らの
      価値観や選好に基づく意思決定をするための活動をいう。

      (意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン/令和2年10月30日:意思決定支援ワーキング・グループ)

  (※3)身上保護とは、介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認などのこと。

 厚生労働書所管の専門家会議で取りまとめられた来年度からの新たな基本計画案には、それらへの対応策が盛り込まれています。
 その中には、次のようなものがあります。

〇 本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透
  (意思決定支援などの専門職のアドバイザー育成、公共団体の専門的助言でのオンライン活用支援など)

〇 家庭裁判所による適切な後見人等の選任・交代の推進
  (本人の状況の変化等を踏まえ、後見人等の柔軟な交代が行われることを可能とする必要があるとする)

〇 不正防止の徹底と利用しやすさの調和等
  (後見人の不正防止や財産管理の負担軽減のメリットがある成年後見制度支援信託、成年後見制度支援預貯金の普及など)

〇 権利擁護支援(※4)の地域連携ネットワークづくり
  (地域に暮らす全ての人が、尊厳のある本人らしい生活を継続し、地域社会に参加できるようにするため、地域や福祉、
   行政などに司法を加えた多様な分野・主体が連携するしくみづくり)

  (※4)権利擁護支援とは、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な人たちの権利を守るために、
      以下のような目的でなされる支援
       ①「人権」としての権利:必要に応じて、適切になされる権利の回復(救済)
          【例】老人福祉法 32 条、知的障害者福祉法 28 条、精神保健福祉法51条の11の2に基づく市町村長

             による申立て
       ②「契約(当事者間の合意)」に基づく権利:必要に応じて、適切になされる権利の行使
          【例】福祉サービスや施設入所などの契約

       (地域における成年後見制度利用促進に向けた体制整備のための手引き/
        平成30年3月:成年後見制度利用促進体制整備委員会)

 今後については、令和4年1月頃の パブリックコメントの実施などを経て、同年3月頃に「次期基本計画」閣議決定というスケジュールになっています。

➤ 助成金と補助金の違いとは?(21.12.17)

 申請の採択までのプロセスの違いに着目すれば、その違いは、

〇 助成金
 助成の条件を満たしていて、事業実施計画などに問題がなければ、先着順に申請が採択されます。
 そのため、締切日前でも予算枠が無くなれば申請の受付を終了します。実際に令和3年度にも複数の助成金・コースで、当初予定の締切日前に予算枠が無くなり申請の受付を終了しています。

〇 補助金
 締切日までに申請されたすべての案件(申請書類の不備などは除く)を審査して評価の高いものから順に採択して、予算枠が無くなった時点で採択終了となります。

  つまり、助成金と異なり申請提出の前後は採択に影響しません。

 ちなみに、採択率を見てみると、経済産業省補助金は、公募回ごとに見れば30%台ということもあり、60%台であれば高めといえるのではないでしょうか。厚生労働省助成金の採択率は公表されていませんが、経産省補助金よりは高いというのが私の実務上の感覚です。

 次に、支給対象と支給額の関係ということになると、主に2つ挙げられます。
 (ここでは、コロナ関係の給付金は除いて考えます。)

① その事業の目的に合った対象経費の合計額に補助率(助成率)を乗じた額を支給するタイプ
 (その額が補助等の上限額を超えるときはその上限額)

 設備投資に重点を置く経産省補助金は主にこのタイプです。中には、設備投資の関連経費について、個別に上限額を設けたり、補助率を本則より低くすることもありますし、逆に、小規模持続化補助金の低感染リスク型ビジネス枠のように、国として緊急性や重要性が高い政策課題に関するものに対して、本来の補助枠と別枠で補助率も嵩上げすることもあります。
 厚労省助成金では、雇用調整助成金がこれに該当しますし、他には、テレワーク、最低賃金引上げ関連などで生産性向上のための機器購入やコンサルティングなどをその内容とするものが該当します。

② 一定の要件を満たした場合に定額を支給するタイプ

 こちらは、厚労省助成金に見られ、事業所あたり、対象者1人あたりでの支給となります。

 例えば、有期契約社員を正社員に転換して要件を満たした場合に1人あたり定額を支給する、法定の健康診断以外に独自の検診制度を導入した場合に事業所あたり定額を支給するといったものです。

 また、厚労省の一般訓練・特別訓練関連の助成金は、OJT、OFF-JTへの1人時間当たり定額の実施助成・賃金助成と、研修経費に対する定率助成から成るので、①と②の混合型といえます。

➤ くるみん助成金(21.12.16)

 中小企業子ども・子育て支援環境整備助成事業(くるみん助成金)の令和3年度分の申請受付が今月1日に始まっています。
 この事業(内閣府所管の助成金)は、「くるみん認定」もしくは「プラチナくるみん認定」の取得を要件として、子育て支援に積極的に取り組む中小企業を支援することを目的としています。


 対象となる事業主は、次の①~③すべてに該当する事業主です。

① 子ども・子育て支援法に規定する一般事業主(事業主拠出金を納付

  している)であること

② 次世代支援対策推進法に規定する中小企業事業主(常時雇用する労働者数300 人以下)であること)
③ 上記①、②に加えて、次のいずれかに該当すること
   a) 前年度または当年度にくるみん認定を受けていること
     (助成申請期間末日までに認定を受ける場合を含む) 
   b) 前年度の3月31 日時点においてプラチナくるみん認定を受けていること

 助成対象となる具体的な取り組み(事業内容)は、次の4つです。

①労働者の育児休業等の取得を促進するための取組
②労働者の子育てを支援するための取組
③労働者の業務負担の軽減や所定外労働の削減などを図るための取組

④その他労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な取組

 助成対象となる経費は、使用目的が事業の遂行に必要なものと明確に特定でき、助成対象年度に実施し、完了報告期日までに支払が完了するものに限ります。
 その項目は次のとおりです。


 〇 職員給与 〇 各種手当
 〇 社会保険料事業主負担金
 〇 厚生費等(役員報酬を除く)
 〇 諸謝金
 〇 備品費(単価50 万円以上の備品を除く)
 〇 消耗品費 〇 印刷製本費
 〇 通信運搬費 〇 光熱水料
 〇 借料及び損料 〇 会議費
 〇 賃金 〇 雑役務費及び委託料

 令和3年度分の申請受付期間は、令和3年12月1日~令和4年2月15日、申請方法は、くるみん助成金ポータルサイトからの電子申請、もしくは郵送となっています。

 これから令和3年度分の申請に向けた取組を立ち上げて申請までもっていくのは、時間的余裕がないケースが多いと考えられますが、この先も続く支援事業ですので来年度以降を視野に入れて検討を始めるのも一案です。

➤ 厚生労働省助成金の生産性要件(21.12.15)

 厚生労働省助成金で、生産性向上の取組み支援を目的に、生産性を向上させた事業所に対して、助成額もしくは助成率の割増を行う制度があります。

 この制度では、基準となる会計年度の生産性が、その3年度前の生産性より6%以上伸びている場合には「生産性要件を満たす」として、割増の対象になります。

 生産性の値は、対象となる企業などの活動の結果生み出された「付加価値」を、その会計年度末の「雇用保険被保険者数」で除して算出します。企業の場合の付加価値は、営業利益+人件費(役員報酬等は除く)+減価償却費+動産・不動産賃貸料+租税公課の合計です。

 2つの会計年度の比較の方法には、

① 対象となる助成金の支給申請の前会計年度とその3会計年度前
対象となる助成金の支給申請の翌々会計年度とその3会計年度前(助成金申請の前会計年度)
  の2パターンがあり、申請予定の助成金がいずれのパターンなのか事前の確認が必要です。
 (生産性要件がない助成金もあります)

 生産性要件に該当する場合の助成金支給申請は、①のケースでは1回(対象となる助成金の申請と生産性要件での加算分をまとめて)、②のケースでは、助成金支給申請が2回(対象となる助成金での1回目申請、生産性要件での加算分での2回目申請)となります。

 なお、生産性要件の比較対象となった期間内に事業主都合による離職者等(退職勧奨を含む)がいた場合には、生産性要件を満たしていても助成額、助成率割増の対象外になってしまうことに注意が必要です。


 実際の助成金加算例ですが、

〇 キャリアアップ助成金の正社員化コース
  有期雇用から正社員への転換で本来1人57万円のところ、生産性要件概要で15万円加算(加算後72万円)


〇 業務改善助成金
   事業所内最低賃金900円の場合、本来補助率2/3のところ、生成性要件該当で4/5にかさ上げ
  といった形になります。

 最後に、生産性を比較して伸び率が6%未満の場合には、申請者と与信取引がある金融機関にその企業の「事業性評価」を労働局が確認して生産性要件を判断する仕組みもありますが、金融機関の了解を得なければならないなど手間はかかります。

➤ 令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&A(21.12.14)

 来年(令和4年)4月から順次施行される改正・育児休業法に関するQ&Aが厚生労働省本省HPで公表されています。
 その最新版(令和3年11月30日時点版)では、改正内容、休業の申し入れ、個別周知・意向確認、ハラスメントなどについて52項目のQ&Aを掲載しています。

 紙幅が限られていますが、特に気になったQ&Aを5つ挙げますと、


●個別周知・意向確認を行わなければならない対象労働者について、子の年齢が育児休業の対象年齢を既に超えているなど、今後育児休業を取得する可能性がない場合を除いて、事業主は、個別周知・意向確認の措置を行う必要があるとされていること。例えば、労使協定で除外している入社1年未満の労働者、雇用契約の更新予定がない有期雇用労働者でも、当該労働者にとって後に育児休業申出が可能になる可能性があるとして、個別周知の措置は行うよう求めていること。

●育児休業の意向確認の際に、「育児休業の取得の意向はない」と回答した労働者でも、法に基づき育児休業の申出を行うことができ、事業主は適法な育児休業申出を拒むことはできないとされていること。

●雇用環境の整備について、育児休業の申出対象となる子には、養子縁組等も含まれており、幅広い年齢の労働者が育児休業申出を行う可能性があることや、法律上、義務の対象となる事業主を限定していないことから、すべての事業主が雇用環境の整備を行う必要があるとされていること。

●子の出生後8週以内の期間は、労働者の選択により、新設の出生時育児休業(産後パパ育休)と通常の育休(現行の育児休業)のいずれも取得可能であること。

●出生時育児休業期間中の就業可能な時間帯等として申出ることがきるのは、所定労働時間内の時間帯に当てはまるものに限られていること。ですから、所定労働時間外の時間帯について、労働者は就業の申出を行うことはできないこと。(例えば、勤務時間外の夜間の2時間でテレワークであれば勤務可能といった申出はできない)
になります。

 新たな育休制度の導入や事業主の義務、出生時育児期間中の就業、分割取得が最大4回目まで可能となるなど、それなりに事務手続きの負担が大きくなると考えられますので、早めの準備が必要でしょう。

➤ 長時間労働が疑われる事業場への労働基準監督署の監督指導結果について
  (21.12.13)

 令和2年度の表題の監督指導結果が厚生労働本省HPで公開されています。
 実施対象となった事業場は、以下に該当すする24,042事業所で、そのうち、37%に当たる8,904事業場で違法な時間外労働がありました。


〇 各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり 80 時間を超えて
  いると考えられる事業場
〇 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた
  事業場

  違法な時間外労働を月時間数で見ると、面接指導の実施ラインである月80時間超が2,982事業場(違反事業場の33.5%)、法定の上限である月100時間超が1,878事業所(同21.1%)、月200時間超は93事業場となっています。

 また、違法な時間外労働の多かった業種は、商業、製造業の順でこの2業種で全体の44.2%、次いで、接客娯楽業、建設業、運輸交通業が10%前後です。

 長時間労働以外では、賃金不払残業が 1,551 事業場(対象事業場の 6.5%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施であったのが 4,628 事業場(同19.2%)があり、是正勧告や指導が行われています。

 指導監督事例として、次の3つが挙げられています。

①36協定で定めた上限時間を超え最長197時間の時間外・休日労働をさせ、加えて、月80時間超の時間外・休日労働を行った労働者の面接制度を未実施であった事業所に対して、是正勧告を行い、月80時間以内とするための具体的な方策を検討・実施するよう指導したもの

②36協定の締結・届出をせずに、最長月235時間の時間外・休日労働を⾏わせ脳・心臓疾患の発症に至り、加えて、一部の労働者の労働時間を把握していなかった事業場に対して、是正勧告を行い、月80時間以内とするための具体的な方策を検討・実施などを指導したもの

③最長月190時間の時間外・休日労働を⾏わせ、加えて、36協定締結での労働者代表を会社が指名していた案件で、是正勧告を行い、月80時間以内とするための具体的な方策を検討・実施するよう指導したもの
 (この事業場では、年5日の年休取得に関する事業主の義務(労働基準法第39条第7項)違反もあり)

➤ 労災保険の特別加入とフリーランス(21.12.12)

 労災保険では、法人や個人事業主に雇用される方(労働基準法上の労働者)の業務上の傷病等、通勤途上で被った傷病等について給付を行うのが原則です。
 その一方で、労働基準法上の労働者でなくとも、業務実態、災害発生状況などから労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしい者に対して、特に労災保険の加入を認める「特別加入制度」があります。

 特別加入制度の対象者は、大きく4つのカテゴリーに分かれます。
① 中小企業主等(役員等を含む)
② 一人親方その他の自営業者等
  (家族従事者を含むが、対象となる事業は運送業、建設業、林業などごく限られている)
③ 特定作業従事者
  (一定の危険有害な農作業や家内労働の従事者、労働組合の常勤役員など)
④ 海外派遣者

 特別加入制度自体、1965(昭和40)年の創設以来、数次にわたり対象者の範囲を拡大してきましたが、近年、労働者以外の働き方での副業者が一定数存在していること、IT関連など昭和の制度創設時にはなかった業種が出てきていることなどもあり、フリーランスへの適用拡大の検討が進められてきました。

 その結果、今年4月と9月の2回に分けてフリーランスへの適用拡大が行われています。
 対象となったのは、次の6業種で、一人親方その他の自営業者等もしくは特定作業従事者のカテゴリーに入っています。
① 芸能関係作業従事者
② アニメーション制作作業従事者
③ 柔道整復師
④ 創業支援等措置に基づき事業を行う方
  (70歳までの就業機会確保の努力義務関連)
⑤ 自転車配達員
⑥ ITフリーランス

 今年8月~9月に、労災保険特別加入制度に係る提案・意見の募集が行われ、追加すべき業種として17業種の提案がありました。このうち、「イラストレーター、漫画家、アート従事者」、「トラック運転手(2トン、4トンダンプカー、ミキサー等)」では、10件以上の提案が集まっています。

 ちなみに、その上位2業種の意見で労働災害の状況として挙げられていたのは、前者では「アトリエへの移動時の事故」、「作品制作中における腱鞘炎」、後者では、「運転席や荷台からの転落」でした。

➤ 50代有期契約社員の無期転換への助成金(21.12.11)

 有期契約社員の無期転換への助成金としては、キャリアアップ助成金の正社員化コースがよく知られていますが、これとは別に特定の有期契約社員を対象としたコースが厚生労働省の助成金で設定されています。

 その「65歳超雇用推進助成金の高年齢者無期雇用転換コース」の対象となるのは、
・有期雇用期間が通算6か月以上5年以内
・50歳以上定年年齢未満であること
・無期転換日に64歳以上でないこと
・その職場で65歳までの高年齢者雇用確保措置(再雇用、定年延長など)を導入済みであること
 などの要件を満たした方です。

 余談になりますが、2017年の調査では、一律定年制を導入している企業で、60歳定年が79.3%、61~63歳定年が2.5%ですから、この助成金は、主に50歳代が対象という形になっているといえます。(平成29年就労条件総合調査/厚生労働省)

 この助成金での手続きの流れは、次のとおりです。
① 高齢者雇用等推進者の選任、高齢者雇用管理に関する措置の実施
② 計画書(無期雇用転換計画書)を(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構に提出して認定を受ける
③ 計画に沿って無期転換を実施
④ 転換後6か月の継続雇用と給与支払
⑤ 支給申請
⑥ 支給決定・助成金の口座振り込み

 ここでいう「高齢者雇用管理に関する措置の実施」とは、
・高齢者(55歳以上)を対象とした短日数勤務・短時間勤務等(勤務時間等の弾力化)
・高齢者対象の人間ドック純真制度、生活習慣病予防検診制度等(健康管理、安全衛生の配慮)
・高齢者を対象とした技能講習・資格取得講座の受講等(職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等)
 など、7つの措置のうちいずれか一つ以上を就業規則等に定めて制度化した上で実施することです。

 また、転換後6か月の給与支払いについては、キャリアアップ助成金の正社員化コースとは異なり、昇給は求められていません。

 例えば、50代の契約社員が在籍し、会社としては正社員化して長期雇用したいが、その社員自身が正社員という働き方を望まない場合の定着促進策としても活用できる助成金です。

➤ 70歳までの就業機会確保の努力義務 (21.12.10)

 現在、義務化が進められている65歳までの継続雇用の先、70歳までの就業機会確保の努力義務が今年4月に施行されています。
 今回の措置には、65歳までと同様の雇用確保措置に加えて、社外での創業支援等措置が新たに設けられています。これは、65歳以上になるとそれまで以上に体力等の個人差が出てきたりする点なども考えて選択肢を多くという措置です。

 具体的には、次のような項目立てとなっています。

■雇用確保措置(現在65歳まで義務化の措置を70歳まで延長するイメージ)

 ①70歳までの定年延長
 ②70歳までの継続雇用制度(契約を結んで他の事業主の下で継続雇用する場合も含む)
 ③定年廃止

■社外での創業支援等措置(社外での就業機会の確保を企業が支援するイメージ)

 ④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
   →その従業員が希望して、自ら社外で事業を始めるとき、その者と業務委託契約を結ぶなどして支援
 ⑤70歳まで継続的に事業主が自ら実施する社会貢献事業などに従事できる制度の導入
   →対象となるパターンは、(イ)事業主の社会貢献事業、(ロ)事業主が外部団体に委託もしくは資金提供
    して行う社会貢献事業の2つです。

 65歳までの雇用確保義務とは異なりあくまでも努力義務であるため、それぞれの措置の対象者の基準を設けることができます。ただ、その基準は、人事評価の結果や、健康状況など能力や適性を客観的に判断できるものであることが必要です。例えば、上司の推薦の有無、単に会社が認めたものに限るといったものは、対象者基準とはなりません。

 この制度に関しては、厚生労働省本省サイトで、制度説明のパンフレット(簡易版、詳細版)、Q&A、創業支援等措置の実施に関する計画の記載方法などが公開されています。

➤ 中小企業の就業規則へのスタンスを2つ考えてみる(21.12.09)

 就業規則の内容で、必ず書き込まなくてはいけないのは、労働時間、賃金、退職関係の3つだけで、あとは、その会社で制度として導入する場合に書き込むものが8つというのが、法律上の決まり事です。実務上は、懲戒に関することなど必須事項に近いものがいくつかあるものの、会社の裁量で動ける範囲は意外と広いです。

 わかりやすくするため、企業の就業規則へのスタンスで対極にあるものを2つ並べて考えてみます。
 実際には、多くの会社は2つのスタンスの中間のどこかに位置する形となります。

現在の労働法規に即した労働条件で雇用し、労務管理をしていると示せれば良いとするスタンス

 このスタンスのもとでは、 就業規則は法律での要件をクリアする項目立てになっていればそれで良いと割り切っていくことになります。

そして、就業規則への支出は収益を生まない費用として捉えられがちで、ゼロとしたい意向が働きます。
 対応としては、厚生労働本省サイトの作成ツールを活用したり、厚生労働省のモデル就業規則をカスタマイズするなどすれば、支出ゼロで法律に照らして問題のない就業規則を作ることは十分可能です。
 また、一部の社会保険労務士法人などが提供している低コストの作成サービスを利用するなどの方法もあります。

法律の要件のクリアに加えて、自社での働き方をフォローしたものにしたいとするスタンス

 このスタンスのもとでは、就業規則には法律での要件をクリアする以上のもの、例えば、テレワーク、副業・兼業などへの目配りをていねいに行う、プロとしての社員の責任や義務、営業秘密や競業避止などのリスクへの対応を盛り込むといったことが考えられます。
 対応としては、自社直営、専門家への全面的な依頼のいずれかで、費用面では、「ゼロ」か「100」かの傾向があると感じていますが、中小企業が作業面、費用面のいずれにおいても無理なくできる第3の方法として自社直営の作業と専門家活用の組み合わせがあると考えています。
 具体的には、最初に専門家にヒアリングや現行規則の診断をしてもらい、問題点と作成方針のレポートを購入する。そして、そのレポートに従い自社直営の作業を進めていくというイメージです。ただ、自社直営で完成してから専門家のチェックを受けるやり方は、大幅な修正で時間と費用が予想外にかかる可能性もありますのであまりお勧めできません。

➤ フェーズⅡの働き方改革(2012.12.08)

フェーズⅡ(ツー)の働き方改革とは、2019年4月から2年間で集中的に進められてきた労働関連の法規制(労働時間、休日、パート・有期雇用者の同一労働同一賃金など)をフェーズⅠ(ワン)と見立てて、その次の段階の施策をというものです。

 そのキーワードは、ジョブ型雇用、裁量労働制、選択的週休3日制、兼業・副業、フリーランスです。

 ジョブ型雇用は、職務限定型の働き方であり、職務記述書などで職務とその内容が明確にされていることがその前提となります。採用や人材登用は、「これから何をさせるかではなく。今何ができるか、どのようなスキルや資格を持っているか」に着目して行われることになります。
 つまり、これまでのメンバーシップ型雇用で、新卒一括採用で採用し、会社の裁量による職務や勤務地の変更が幅広く行われていた(無限定の働き方)のとは逆の雇用のあり方になります。

 裁量労働制の実施は現状では極めて少なく、導入率は30~99人の企業で2%に満たない状況(※)です。今後は、ジョブ型雇用で新商品開発専門の社員を雇用した場合などは、専門型裁量労働制を適用した方が良いケースが出てくる可能性があると考えられます。
 (※) 「令和2年就労条件総合調査」(厚生労働省)

 選択的週休3日制は、選択的というとおり、本人の希望に合わせて柔軟な働き方ができるようにするものです。 その導入方法としては、①週5日勤務の正社員に加えて、週4日勤務の短時間正社員を設けて、本人の希望により正社員・短時間正社員間の転換ができる制度とする場合、②変形労働時間制を使い、週の所定労働時間は変えずに、1日の所定労働時間を延長して週4日勤務とする場合が考えられます。
 賃金は、①では所定労働時間の減少分見合いで減額、②では現状維持となります。なお、①での賃金については、業務改善などで人時生産性を上げることで、時給の上昇を通じて減額を抑える余地はあります。 兼業・副業については、昨年(令和2年)9月に副業・兼業の促進に関するガイドラインが改定され、複数事業労働者への労災保険給付制度が新設されるなどしています。

 労働時間の上限規制に代表される働き方改革のフェーズ1は、罰則付きも含めた法規制中心でしたが、フェーズⅡは、事業主の法的義務が絡むものが少ないため、企業によって、取組のあるなし、取組のスピードにかなり差が出てくるものと考えられます

➤ 令和5年4月、中小企業での月60時間超の時間外割増賃金率を50%以上に引き上げ
  (21.12.07)

月60時間超の時間外割増賃金率50%以上は、大企業には10年以上前(平成22年4月)に適用済みですが、中小企業に対しても令和5年4月から適用されます。
 これにより、深夜(22時~5時)の時間外、深夜の割増率も現行の50%以上から75%以上となります。

 また、引き上げられる60時間超の割増賃金率25%見合い分について、「代替休暇制度」を導入できるようになります。(導入は各企業の任意であり、努力義務化もされていない)
 これは、割増賃金の引上げ分25%を現金で受け取るほかに、1日もしくは半日の休暇として取得できるようにするものです。(いずれを選択するかは従業員)

 休暇の換算率は、「1時間の休暇=60時間超の時間外4時間」です。例えば、月80時間の時間外の場合は、60時間超分の20時間が休暇5時間に相当します。1日の所定労働時間が8時間で時間単位年休を導入している事業所であれば、①年次有給休暇3時間を加えて1日の休暇を取得する、②半日(4時間)休暇を取得し、残り1時間分は25%の割増賃金を現金で受け取るのいずれかになります。(代替休暇を取得した時間数見合いの部分については、現行の割増率25%で計算した割増賃金を支払う)

 2~6カ月平均で時間外・休日労働月80時間以下、 特別条項付き36協定下で時間外月60時間超の年あたり6か月以下の法規制から、月60時間超の時間外があっても繁忙期対応に限られる企業が多くなっているものと考えられます。

 繁閑差には、1年単位の変形労働時間制、複数月のフレックスタイム制の導入という対応もありますが、あくまでもこれらの制度は、対象となる期間平均で所定労働時間週40時間を超えない範囲で労働時間にメリハリを付けて働くためのものです。
 人件費の上昇傾向と長時間労働による生産性の低下という高コスト要因、 経営上のリスクである従業員の疾病リスクの回避を併せて考えると、業務の見直しや生産性向上などにより実労働時間を減らしていくのが経営上望ましい対応となるでしょう。

➤ 雇用保険適用の特例として来月、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を開始
  (21.12.06)

 ここでいうマルチジョブホルダーは、複数の事業場に労働者として雇用されている方のことです。(個人事業主、フリーランスは含まない)

 現在の雇用保険の適用要件は、①週20時間以上の所定労働時間(複数就業の場合は、主たる事業所1か所のみで判定)、②31日以上雇用の見込みであることの2つです。
 そのため現状では、マルチジョブホルダーのうち、複数の事業場での所定労働時間を合わせることで週20時間以上となる方には雇用保険が適用されていません。そのような方(2012年度推計では多くとも30万人)は、本業での所得が100万円未満と考えられ、失業に対するセーフティネットについて検討が続けられてきました。


 令和4年1月施行のこの特例制度では、65 歳以上のマルチジョブホルダーで、①2つの事業場(週5時間以上20時間未満の事業場に限る)での週所定労働時間の合計が20時間以上、②それぞれの事業場で31日以上雇用の見込みであることの2つの要件に該当する方が対象となります。  

 適用の申し出は、雇用保険の原則と異なり、特例の適用を希望する方本人が居住地を管轄するハローワークに行います、その申し入れ日に特例的に雇⽤保険の被保険者(マルチ⾼年齢被保険者)となります。手続に必要な証明(雇用の事実や所定労働時間など)は、本人が事業主に記載を依頼して、必要書類を揃えます。

 マルチ⾼年齢被保険者への給付は、失業給付(⾼年齢求職者給付)での一時金に限らず、育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付などでも対象になります。

➤ 企業の後継者不在は改善傾向、後継者不在率は6割(21.12.05)

 ㈱帝国データバンク調査による、全国の企業の後継者不在率は、61.5%で2011年の調査開始以来最低(これまでのトレンドは65~66%)となり、コロナ禍での事業環境の急激な変化に伴い、高齢代表の企業を中心に後継者決定の動きが強まっています。

 不在率が最も低かったのは三重県で35.8%。2年でほぼ半減という急スピードで改善が進んでいますが。その背景には、地域金融機関などによる密着した支援、経営や商圏が比較的安定している企業も多いことなどがあるようです。
 一方で、不在率70%超は6道県(高い方から鳥取、沖縄、島根、山口、北海道、神奈川)で、このうち、沖縄、北海道は不在率の調査が開始された2011年から継続して70%超となっています。

 業種別に見ると全業種で低下しましたが、不在率1位・2位を建設業、サービス業で占める構図は変わっておらず、特に職別工事、設備工事、情報サービス、専門サービス、病院・医療などで不在率が高くなっています。
 後継者の就任の経緯については、同族承継が最多で38.3%を占めるものの2017年の当項目調査開始以来、一貫して緩やかな減少傾向にあり、内部昇格(31.7%)、M&A(17.4%)、外部招聘(7.4%)といった同族以外への承継にシフトしてきています。


 ちなみに、今年1~10 月の「後継者難倒産」(㈱帝国データバンク集計)は 369 件と、過去最高だった 2019年と同様のペースで推移しています。
最近の特徴として、後継候補者育成などの具体的な計画を進めていたが、コロナ禍による業績急変や後継候補者の退社、代表者の死亡などで事業承継が間に合わない「息切れ型」が目立つと分析されています。

(出典)全国企業「後継者不在率」動向調査(2021 年/㈱帝国データバンク)

➤ 経済産業省、補正予算で事業再構築補助金に6000億円余りを計上。
  令和4年度も募集継続の予定(2021.12.4/12.21加筆)

 12月20日に成立した令和3年度補正予算の経済産業省関係分は、事業復活支援金が、その事業規模(2 兆 8,032 億円)と、地域・業種問わず、固定費負担の支援としてフリーランスを含む個人事業主まで広く対象とすることから注目されていますが、事業再構築補助金についても、6,123 億円が計上され、令和4年度も引き続き募集が行われる予定となりました。

 中小企業庁発表の予算の概要資料では、事業再構築補助金については、生産性向上の成果目標、事業計画を経営革新等認定支援機関と作成する枠組は変わらず、売上高減少の要件は、「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること」とされています。

 この補助金の創設当初の申請類型(補助枠)は、コロナ禍での事業への打撃の程度や再構築で目指すところなどにより、通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠、緊急事態宣言特別枠の4つが設けられていましたが、その後、第3回公募で最低賃金の引上げの支援策として、最低賃金枠、大規模模賃金引上枠が新設されています。

 補正予算成立後(第5回公募以降)の申請類型は、現行のうち通常枠、最低賃金枠、大規模模賃金引上枠に加えて、新設の回復・再生応援枠、グリーン成長枠で5つとなり、制度創設時とは大きく変わります。

 新設の類型のうち、
「回復・再生応援枠」は、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者に対する支援、
「グリーン成長枠」は、研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者に対する支援とそれぞれ説明されています。
 また、グリーン成長枠では、補助上限額が、中小1億円、中堅1.5億円に引き上げられ、売上高減少要件が撤廃されます。


 なお、この補助金の次回、第5回公募は、令和4年1月中に開始される予定です。

➤ 補正予算での業務改善助成金の特例的な拡充 (2021.12.03/12.21加筆)

 12月20日に成立した令和3年度補正予算に業務改善助成金の特例的な拡充(予算:135億円)が盛り込まれました。

 業務改善助成金では、今年度の最低賃金の引き上げ(全都道府県で28円以上、3%以上の増) への対応を支援するため、①今年8月から「45円コース」の新設、②コロナ禍で特に業況が厳しい事業者に限り設備投資の範囲を、乗車定員11人以上の自動車及び貨物自動車等、パソコン、スマホ、タブレット等の端末及び周辺機器(新規導入に限る)まで拡げる措置が行われています。
 今回の補正予算案での「特例的な拡充」では、助成対象経費を現在の生産性向上に資する設備投資などに加えて、「生産性向上に資する設備投資等に関連する費用」まで拡大することとしています。


 具体例として挙げられているのは、
 〇広告宣伝費
 〇執務室の拡大、机、椅子等の増設
 〇汎用事務機器購入費 等です。


 厚生労働省の助成金としては、他に例がないところまで思い切った内容といえます。

 ただ、対象となる事業者の要件は、
 〇前年又は前々年同期比較で売上高や生産量等の指標が30%以上減少していること
 〇事業場内最低賃金を、令和3年7月16日から同年12月までの間に30円以上引き上げること

であり、いずれも満たすことができる事業者は自ずから限られてくると考えられます。

令和4年10月から育児休業がより取得しやすい制度に (2021.12.02)

 現在、育児休業の取得は、原則として1回限りですが、父親の特例(パパ休暇)として、出産後8週間以内に父親が育児休業をした場合には、特別な事情がなくてもその父親は再度の休業取得が可能となっています。

 来年10月以降は、この育児休業の枠組みが大きく変わります。
 まず、男性社員を対象とした「産後パパ育休」が新設されます。これは、男性社員が、子の出生後8週間以内に4週間まで取得できるもので、2回に分けての取得も可能な制度設計となっています。
 加えて、従来からの育児休業についても、2回までの分割取得が可能となります。
(こちらは、父母の別なく適用されます)

 育児休業等の取得状況に関する平成30年度の調査(厚生労働省委託事業)では、男性社員の育児休業時期は、子の出生後8週間以内が46%と最も高くなっており、新設される休暇は実態にマッチした施策になっているといえます。
 男性社員は、原則4回まで育児休業を分割取得できることになり制度としての利用しやすさは格段に向上します。

 その一方で、育児休業を利用しなかった理由に関する令和2年度の調査(厚生労働省委託事業)の結果を見ると、男性社員について最も多かったのが、「収入を減らしたくなかったから」(41%)、次に多かったのが、「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから、または会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから」(27%)であり、これに類似した「残業が多い等、業務が繁忙」「自分にしかできない仕事や担当している仕事があったから」といった企業内での業務上の制約についてもともに20%程度の回答がありました。

 男性社員の育児休業の取得促進策は、国での法制度の整備が形となり、次は、各企業での取り組み如何という段階になったということのようです。

令和4年1月以降の雇用調整助成金の特例措置について(21.12.01/12.21加筆)

 11月19日に令和4年1~3月の補助率、上限額の特例措置(予定)が公表されていますその後、12月20日成立の令和3年度補正予算で8,222億円が措置され財源の裏付けはできています。

 補助率は、原則的な措置、地域特例、業況特例のすべてで令和3年12月までと同じであり、中小企業の原則的な措置の場合でも、2/3(解雇がない場合は4/5)と、通常の補助率1/2から3割強上乗せされた形です。
 1人1日当たり上限額は、地域特例、業況特例に該当する場合は、15,000円が維持されますが、原則的な措置では、令和4年1~2月が11,000円、同3月が9,000円と段階的に引き下げられ、通常の額である日8,265円(雇用保険の基本手当の日額上限と同額)にかなり近づきます。
 また、業況特例に該当して令和3年12月までに業況の確認をした事業主については、令和4年1月1日以降に判定基礎期間の初日を迎えるものが出てきたときに、業況の再確認を受けることとなります。

  令和4年4月以降については、「経済財政運営と改革の基本方針2021」に沿って、雇用情勢を見極めながら具体的な助成内容を検討の上、2月末までに改めてお知らせするとしています。