➤ 人材開発支援助成金(人への投資促進コース)(22.04.12)

 従業員の教育訓練を実施した事業主を支援する厚生労働省の人材開発助成金に、この4月から新コース「人への投資促進コース」が加わりました。

 このコースは、昨年12月から今年1月にかけて「人への投資」に関するアイデアを募集した結果を踏まえて制度設計されたもので、
 〇 定額制訓練
 〇 自発的職業能力開発訓練
 〇 高度デジタル人材等訓練(高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練)
 〇 情報技術分野認定実習併用職業訓練
の4つの教育訓練と「長期教育訓練休暇等制度」の導入・実施に対する助成がその内容です。

 このうち「定額制訓練」は、近年多くみられるようになった定額制の研修サービスを利用した訓練で、このコースで初めて助成対象となったものです。

 「自発的職業能力開発訓練」は、従業員が労働時間外に自発的に行う訓練であり、その経費の全額もしくは一部を事業主が負担した場合に助成の対象となります。

 これら2つの訓練について、職務に直接関連しないもの、マナー講習のように社会人としての基礎的スキルの習得を目的とするものや、法令等において講習等の実施が義務付けられているもの(資格取得に必要なものは除く)などは助成の対象外です。
 また、QCサークル活動も、通常の事業活動として遂行されるものを目的とするものという位置づけとなり、対象外です。

 「高度デジタル人材等訓練」のうち「高度デジタル人材訓練」では、ITSS(ITスキル標準)レベル4または3相当の訓練などを対象に、中小企業では、対象経費の75%、訓練期間中の賃金助成が1時間あたり960円という高率・高額の助成が行われます。対象となる事業主としては、まず「情報通信業」があり、情報通信業以外については、産業競争力競争法に基づく事業適応計画の認定、DX認定(IPA)などのうち1つ以上を受けていることが必要です。

 「成長分野等人材訓練」は、国内の大学院での正規課程、科目等履修制度などによるもの、海外の大学院でのものを対象としていますので、活用されるケースは自ずから限られてくると考えられます。

 「情報技術分野認定実習併用職業訓練」は、情報処理・通信技術者の職種に関連した業務経験がない従業員などを対象に行うOFF-JTとOJTを組み合わせた訓練で、その訓練計画に公的な認定(厚生労働大臣認定)を受けたものです。
 対象となる事業主は、情報通信業、それ以外ではIT関連業務を主に担う組織などを持つものに限られますが、既存の特定訓練コースより高率の経費助成を受けることができます。
 なお、この訓練のみ正規雇用の従業員限定となっています。(他のコースは有期雇用など非正規の利用可)

 このコースの訓練修了後に非正規雇用(有期・無期)から正社員化した場合には、キャリアアップ助成金(正社員コース)での加算対象(1人当たり95,000円で加算後665,000円)となります。

 「長期教育訓練休暇等制度」では、前記の自発的職業能力開発訓練を行う者を対象に、連続30日以上の連続休暇を含む「長期訓練休暇制度」もしくは「教育訓練短時間勤務等制度」(所定労働時間の短縮及び所定外労働免除制度)を導入して実際に適用した事業主に、制度導入経費(20万円)を支給します。また、有給の長期訓練休暇取得に対しては、1日あたり6,000円の賃金助成も行われます。

 これまで、人材開発支援助成金の対象となる訓練は「対面」が原則でしたが、4月から、人への投資促進コースも含めて「eラーニング」「通信制」での訓練が対象に加わえられたことで、受講についての時間的な制約が少なくなり取り組みやすくなっています。

➤ 令和4年度の両立支援等助成金(22.04.03)

 
 令和4年度の「両立支援等助成金」では、今年3月末の女性活躍加速化コースの廃止に伴い、コースは5つとなりました。
 このうち、「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」で内容の大幅な変更、「出生休業等支援コースで加算措置の変更がそれぞれ行われています。

  

出生休業等支援コース

 男性社員の育児休業取得などを支援する事業主に対して助成するこのコースでは、これまで大企業(中小企業以外)も対象でしたが、公表資料を見る限りでは、令和4年度以降は「中小企業主」だけが対象となります。

 大きな変更点は、助成の体系が、

 〇 雇用環境の整備措置、業務体制整備を行い、休業取得の実績(子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の休業)
   が生じた事業主への1回目の助成金支給(第1種)
 〇 第1種を受給した事業主を対象に、その後一定の年数で、男性従業員の育児休業取得率を30%以上上昇させた場合に
  その成果達成に対する2回目の助成金支給(第2種)
の2本立てとなったことです。

 このうち第2種の助成額については、育休取得率達成に要した期間によって額に差が付けられています。
 (1年以内が60万円、2年40万円、3年20万円)
 そして、生産性要件での増額は、第2種のみ対象となります。


 第1種の助成額は、育児休業取得が一律20万円となっています。また、前年度までの個別支援加算、育児目的休暇の導入・利用への助成は廃止され、新たに代替要員加算(派遣を含めた代替要員の新規雇用が対象)が助成額20万円で設定されます。(代替要員3人以上は45万円)

 第1種の要件のうち「育児休業を取得しやすい環境の整備」について、改正育児・介護休業法では、研修の実施や相談窓口設置など4つの取り組みのうち1つ以上の実施を義務付けているのに対して、このコースでは2つ以上の実施を助成の要件としています。
 また、「労使で合意された代替する労働者の残業を抑制するための業務見直しなどが含まれた規定に基づく業務実施体制」は法で義務付けられているものではありません。
 つまり、法を上回る措置をした中小企業主を支援するコースとなっています。
  

出生休業等支援コース

 
 令和3年度までの「代替要員確保時」の助成が「業務代替支援」に名称変更されています。
 この業務代替支援には、「手当支給等」で10万円支給の項目が追加されていますが、これは、代替要員を新規雇用することなく、職場内の他の労働者で業務を代替した場合の手当支給などに対するものです。
 この変更に伴い、令和3年度にあった職場復帰時の「職域支援加算」が廃止されています。
   

➤ 4月からの65歳超雇用推進助成金(22.03.31)

 
 4月新年度からの「65歳超雇用推進助成金」の内容について、厚生労働本省サイトで公開されています。

 この助成金には、3つのコースがありますが、そのうち、定年や継続雇用の上限を66歳以上に引き上げるなどした事業主を助成する「65歳超継続雇用促進コース」で大きな変更があります。

 このコースでは、令和3年度は支給額設定での対象者数ごとの区分が、「10人未満」、「10人以上」の2つでしたが、新年度4月からは、「10名未満」の区分が、①「1~3人」、②「4~6人」、③「7~9人」の3区分に細分化されます。

 新たな区分ごとの支給額は、③「7~9人」の区分がこれまでの「10人未満」と同額、①と②の区分では、③の額から見て人数見合いの額に設定し直されています。

 例を挙げると、
 70歳以上への継続雇用の上限年齢引上げで、①30万円、②50万円、③80万円
となっています。

 また、「70歳以上への定年引上げ」については、これまで「定年廃止」と同額でしたが、4月以降は、「66~69歳への定年引上げ(5歳以上引上げ)」の額まで減額されます。その結果として、定年を66歳以上になるよう5歳以上引き上げる場合は、引上げ後の定年年齢にかかわらず同額となります。
 加えて、70歳以上への定年や継続雇用の上限引き上げ、定年廃止については、70歳未満からの引上げや廃止に限定されることとなりました。具体的には、70歳から75歳への定年引き上げや、70歳定年からの定年廃止といった取り組みは、4月以降は対象外となります。

 このコースの支給受付期間は、これまでは定年引上げ等の実施後2カ月以内でしたが、今回、「定年引上げ等の実施の翌月から4カ月の月初から5開庁日(土日祝日、年末年始除く)」に変更されます。
 具体例を挙げると、
 定年引上げを令和4年4月に実施した場合は、
 ① 令和4年5月2日~11日
 ② 令和4年6月1日~7日
 ③ 令和4年7月1日~7日
 ④ 令和4年8月1日~5日
が受付期間となります。(いずれも土日祝日除く)

 令和3年度のこのコースの受付は、支給申請件数が多かったことから、当初予定より大幅に早い令和3年9月下旬で終了しており、その際も告知から終了日まで1週間ほどしかない状態でした。
 そのようなこともあってか、令和3年10月までの取組についての経過措置として、次のア、イのいずれにも該当する場合は、今年4月11日~5月11日の期間に限り申請を受け付け、令和4年度の額を支給する経過措置が発表されています。

 ア 令和3年7月25日~10月31日までの間に、定年引上げ等支給対象となる措置を行っていること
 イ アの措置後2カ月以内に就業規則の届出、対象経費の支払いもしたが、令和3年9月24日(前倒しされた締切日)

  までに支給申請ができなかったこと

 なお、残り2つのコース、50歳以上の有期雇用労働者の無期転換を支援する「高年齢者無期雇用転換コース」と、高年齢者向けの雇用管理制度の整備などを支援する「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」については、支給対象と支給額、申請期間に関する変更はありません。

➤ 4月からのキャリアアップ助成金(正社員化コース)(22.03.27)

 キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、昨年4月に、転換もしくは直接雇用後6か月の賃金アップ率が5%から3%になるなど変更がありましたが、この4月にも大きな変更があります。

 その大きな変更とは、これまで対象となっていた3つの転換パターンのうち、「有期から無期へ」の転換や直接雇用に対する助成が廃止されて、「有期から正社員」「無期から正社員」の2つに絞られることです。(ここでの直接雇用は派遣労働者についてのもの)
 これにより例えば、本人の都合でフルタイム勤務ができない有期・パート社員の処遇については、無期契約への転換は助成の対象外、短時間正社員など多様な正社員への転換は助成の対象ということになります。
 ちなみに、短時間正社員、勤務地限定正社員などを新たに制度導入して転換を行った場合には、事業所単位で助成額の加算があります。

 なお、障害者正社員化コースでは、「有期から無期へ」の転換等は、4月以降も引き続き助成の対象です。

 4月からは、このコースの対象となる正社員と非正規雇用労働者(有期雇用、無期雇用)の定義が変わり、これまでより細かく定められます。
 具体的には、
 「正社員」については、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限られます。
 「非正規雇用労働者(有期雇用、無期雇用)」については、賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けている者とされます。

 この2つの定義の変更は、障害者正社員化コースにも適用されます。

 これらの他には、時期未定としながらも、昨年12月に新設した「人材開発支援助成金の特定の訓練修了者を正社員化した場合の加算」の対象となる訓練を追加するとしています。
 現在この加算の対象となっているのは、
 ①特定訓練コースのうち、IT技術の知識・技能を習得するための訓練(ITSSレベル2~4)
 ②特別育成訓練コースのうち、一般職業訓練または有期実習型訓練
の2つです。

 教育訓練や学び直しというテーマに関しては、国で「人への投資を抜本的に強化するための3年間で4,000億円規模の施策パッケージ」がセットされ、昨年12月から今年1月にかけて内閣官房HPで施策アイデアの募集が行われました。
 4月からの人材開発支援助成金の変更に関する厚生労働省リーフレットでは、その募集での有効と思われる提案を踏まえてメニュー化した訓練を高率助成の対象とするなどの見直しを行うことを検討するとしていますので、その関係の追加・変更が行われるものと考えられます。

➤ 4月からの人材開発支援助成金(22.03.18)

 新年度4月からの人材開発支援助金について、厚生労働本省サイトでリーフレットが公開され、雇用保険法施行規則などの一部改正案への意見公募も行われています。
(以下の内容は、3/18時点での公表資料によるもので、今後変更の可能性があります。)

 4月以降継続されるコースのうち、
 「特定訓練」(正社員に訓練効果の高いものを10時間以上実施)
 「一般訓練」(正社員に職務関連の訓練を20時間以上実施)
 「特別育成訓練」(有期契約労働者など(非正規)の訓練)
の3コースで共通の見直しが行われます。

 具体的には、次の2つです。
 ①「訓練施設の要件の変更」として、事業主・事業主団体の設置施設のうち次の4つの施設を対象から除外
  ・申請事業主(取締役を含む)の3親等以内の親族が設置する施設
  ・申請事業主の取締役・雇用する労働者が設置する施設
  ・グループ事業主が設置する施設で、不特定の者を対象とせずに訓練を実施する施設
  ・申請事業主が設置する別法人の施設

 ②「訓練講師の要件の変更」として、外部講師の要件を次のとおり変更
  ・公共職業能力開発施設などに所属する指導員を追加
  ・指導員免許保有者や1級技能検定合格者以外の者について、「訓練分野の指導員・講師経験3年以上もしくは実務経験

   10年以上」を新たに求める

 現行は、その教育訓練の科目、職種等の内容について専門的な知識・技能を有する者でも可ですから、訓練の質の確保などのための要件厳格化の方向に進んでいます。

 3コース共通の見直し以外のものを見ていくと、

 特定訓練、特別育成訓練両コースでのOJT関連で、助成額の算出方法が、現行のOJT1時間当たり単価による方法から、1訓練当たりの定額制による方法に変更されます。
 なお、支給対象となる訓練の時間数の下限や、1労働者が1年間に受講できる訓練数の変更があるかどうかは、新年度のパンフレット、支給要領での確認待ちの状態です。
 加えて、OJTの訓練指導者1人1日あたりの受講者数が3名までとされますが、これは、前記の外部講師の要件と同じく、訓練の質を確保するためのものと考えられます。

 この他、特定訓練コースでの見直しとしては、
 ① グローバル人材育成訓練(海外関連業務に従事する従業員に対する訓練)の廃止
 ② 特定分野認定実習併用訓練(建設、製造及び情報通信業での認定実習併用職業訓練)に対する経費助成率15%の上乗せ措

   置を廃止して、認定実習併用訓練に統合
 ③ セルフ・キャリアドック制度(雇用者全員へのキャリアの節目ごとの定期的なキャリアコンサルティング実施)導入での

   経費助成率15%上乗せ措置を廃止して、同制度導入を支給要件化
などが行われます。

 ②、③により経費助成率の上乗せ措置はなくなり、特定訓練コースでは、中小企業45%、大企業30%に一本化されます。

 特別育成訓練コースでは、接遇・マナー訓練といった職業人として共通して必要となる訓練が、訓練時間数の50%未満に制限されます。(現行は職務関連の内容であれば制限なし)

 また、中小企業等担い手育成訓練(建設業や製造業などでの業界団体を活用した、Off-JTとOJTを組み合わせた最大3年の職業訓練)が廃止されます。
 該当する訓練について、4月以降は、有期実習型訓練(Off-JTとOJTを組み合わせた2~6か月の職業訓練)の枠組での実施を考えていくこととなります。

 これまで触れた3コース以外では、「教育訓練休暇附与コース」(有給教育訓練休暇、30日以上の長期教育訓練休暇制度の導入・利用への助成)において、
 ① 教育訓練短時間勤務制度の新設
 ② 対象に有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者を追加
の見直しが行われます。

 今回の見直しには、パート・有期雇用労働者法での教育訓練に関する定めや、同一労働同一賃金ガイドラインでの考え方も関係しているものと考えられます。

 教育訓練や学び直しというテーマに関しては、国で「人への投資を抜本的に強化するための3年間で4,000億円規模の施策パッケージ」がセットされ、昨年12月から今年1月にかけて内閣官房HPで施策アイデアの募集が行われています。
 厚生労働省リーフレットでは、その募集での有効と思われる提案を踏まえてメニュー化した訓練を高率助成の対象とするなどの見直しを行うことを検討するとしています。

➤ 多様な正社員(22.03.10)

 従来からのフルタイム勤務の正社員について、会社の裁量による職務の変更や転居を伴う勤務地の変更、長時間労働(時間外・休日勤務)が幅広く行われてきたのに対して、勤務時間や勤務地、職務といった労働条件で限定を設けた正社員が「多様な正社員」です。

 ちなみに、今から8年ほど前、2013(平成25)年12月の規制改革会議「ジョブ型正社員の雇用ルール整備に関する意見」では、職務、勤務地、労働時間いずれかが限定される正社員である「ジョブ型正社員」は、専門性に特化したプロフェッショナルな働き方、子育てや介護との両立、正社員への転換を望むも無限定な働き方は望まない非正規社員、等の受け皿として重要であるとしています。

 また、従来の「無限定契約」と「ジョブ型(限定)契約」との相互転換を円滑化し、ライフスタイルやライフサイクルに合わせた多様な就労形態の選択を可能にすること、また、両契約類型間の均衡処遇を図ることが必要であるとしています。

 多様な正社員それぞれについて見ていくと、
 「勤務地限定正社員」は、勤務エリアの限定、転居を伴う転勤がない、転勤自体一切ないといった労働条件の正社員で、育児・介護などで転勤が困難な者の他に、地元での就業を希望する者、無期転換ルールでの無期雇用転換者の受け皿となるものです。

 「職務限定正社員」は、担当する職務内容や仕事の範囲が他の業務と明確に区別され、限定されている正社員で、国家資格が必要な職務などでの活用が考えられます。
 また、外資系企業やグローバル企業などで、特に高度な専門性を必要とし、その能力を期待して外部労働市場から採用される者もこの中に含まれます。そのような者は、職務の内容が職務記述書などで明確にされ、必ずしも長期雇用を前提とせず、企業横断的にキャリア・アップを行うなど、企業にとっては、通常見られる正社員とは異なる活用の仕方となっています。

 「勤務時間限定正社員(短時間正社員)」は、所定労働時間がフルタイムではない正社員と、残業が免除されている正社員です。
 育児や介護などで長時間労働が困難な者の他に、キャリア・アップに必要な能力を習得するために勤務時間の短縮が必要な者による活用が考えられます。

 前記の規制改革会議の意見からも、従来の無限定契約(パートナーシップ型)が「ジョブ型(限定)契約」に一方的に置き換えられることが意図されているのではないことがわかります。
 その時々の条件などに応じて働くことができる環境づくり、とりわけ労働契約、転換制度と均衡処遇が重要です。
 そして、無限定契約(パートナーシップ型)も従来のままということはなく、労働条件の改善は、働き方改革での新たな規制や仕組みにより進められて行くでしょう。

➤ パワハラ6類型(22.03.09)

 職場におけるパワーハラスメントの防止措置が、この4月から中小企業主についても法律上義務化されます。

 ここでは、職場におけるパワーハラスメントの定義とパワハラの6類型を見ていきます。
 まず、職場におけるパワーハラスメントとされるものは、次の3つすべてに該当するものと整理されています。


 ① 優越的な関係を背景とした言動
 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
 ③ 労働者の就業環境が害されるもの

 ①の「優越的な関係」は、上司など職場で上位の地位にあるものに限らず、業務上必要な知識や豊富な経験を持っているため、業務処理のため協力を得なければならない位置にある同僚や部下とのものも含まれます。

 ②の「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」には、必要性がないことが明らかなもの、業務目的を大きく逸脱したものなどが含まれます。


 ③の「就業環境が害される」とは、言動を直接受けた者の感じ方を基準とした判断ではなく、その他一般の労働者が同様の状況でその言動を受けたときに、就業する上で無視できない支障が生じたと感じるどうか(平均的な労働者の感じ方)を基準に判断します。


 そして、関係指針(パワーハラスメント防止のための指針)で、職場におけるパワーハラスメントのうち代表的な言動として6つの類型、①身体的な攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し、④過大な要求、⑤過小な要求、⑥個の侵害が挙げられています。

 具体的には、
 ① 「身体的な攻撃」は、殴打や足蹴りをしたり、物を投げつけたりするなど、暴行・傷害にあたるものです。


 ② 「精神的な攻撃」は、脅迫、名誉棄損、侮辱やひどい暴言にあたるもので、人格を否定するものであったり、必要以上

   の長時間にわたる叱責、他の労働者の面前で大声で威圧的な叱責を繰り返すなどです。

 ③ 「人間関係からの切り離し」は、隔離、仲間外しや無視にあたるもので、意に沿わない者を仕事から外して長期間別室
   に隔離する、特定の者を集団で無視し孤立させるなどです。

 ④ 「過大な要求」は、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害にあたるものであり、長期間の
   過酷な環境下での勤務に直接関係のない肉体的苦痛を伴う作業、業務に関係のない私的な雑用の処理の強制などです。

 ⑤ 「過小な要求」は、業務上の合理性なくその者の能力・経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、気にくわない
   者に仕事を与えないことで、管理職を退職させるために誰でもできる業務をさせる、嫌がらせのために仕事を与えない
   などが当てはまります。

 ⑥ 「個の侵害」は、私的なことに過度に立ち入ることであり、職場外での継続的な監視や私物の写真撮影、労働者の機微
   情報(性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の個人情報)の本人了解なしでの暴露などが当てはまります。

 関係指針では、「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」を、その差が明確になるように示しており、双方の間のグレーゾーンについては、該当するしないは個別に判断、場合によっては、裁判によることもあるという形になっています。(同一労働同一賃金ガイドラインと同じ形)

➤ 脳・心臓疾患の労災認定基準(22.03.08)

 この労災認定基準の対象となる脳血管疾患及び虚血性心疾患等(脳内出血、心筋梗塞など9つの疾病)は、日々生活していく中で受ける負荷により、長い時間をかけて進行し、悪化していくという自然経過をたどり発症するものです。
 そこに、業務による明らかな過重負荷が加わることで、そのような自然経過を超えて病変が進行し、悪化して発症に至ることがあります。
 業務と発症との強い関連が疑われるものについて、この労災認定基準に照らして、業務が相対的に有力な発症原因であると判断された場合に、労災として支給決定されます。

 業務に起因する疾病(労災)としての認定要件である「業務による明らかな過重負荷」には、①長期間の過重業務、②短期間の過重業務、③異常な出来事の3つがあります。

 3つの加重負荷を順に見ていくと、
 ①「長期間の過重業務」は、発症前おおむね6か月に、所定労働時間の所定業務と比較して、著しい疲労の蓄積をもたらす「特に過重な業務」を行ったことです。
 そこでの負荷要因である労働時間について、発症前1か月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働があれば、発症との関連性が強いと評価できます。また、月45時間を超えて長くなるほど、関連性は強まります。
 労働時間以外の要因としては、拘束時間の長い勤務、休日の少ない勤務、勤務間インターバルの少ない勤務、出張が多い勤務などが挙げられています。
 そして、前記の労働時間を超えずともそれに近い水準の実績と、労働時間以外の要因による一定の負荷があれば、関連性が強いと判断できます。


 ②「短期間の過重業務」は、発症前おおむね1週間に、特に過重な業務を行ったことです。
 労働時間について、発症直前から前日までに特に過度の長時間労働、発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働が行われていた場合は、関連性が強いと評価できます。
 また、労働時間以外の要因も含めて総合的に判断するのは、長期間の加重業務と同様です。

 ③「異常な出来事」は、発症直前から前日までの間に、時間や場所を特定できる異常な出来事に遭遇したことです。
 発症との関連性が強いと評価できる事例としては、業務関連の重大な人身事故、著しい負荷のかかる救助活動や事故処理、生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルなどが挙げられています。

 ちなみに、脳・心臓疾患の労災補償状況(令和2年度)を見ると、労災としての認定の可否を決定した件数が665件で、そのうち労災認定され支給対象となったのが3割の194件です。
 件数自体は過去5年で減少傾向にあるものの、労災認定された案件に関連して亡くなられた方が67人というのが現在の状況です。

➤ 長時間労働者に対する医師による面接指導(22.03.07)

 長時間労働者に対する医師による面接指導は、高度プロフェッショナル制度の適用者以外の労働者すべてについて、1か月の時間外・休日労働時間が80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる方が対象となります。そして、その対象者が申出をしたときに面接指導が行われます。

 高度プロフェッショナル制度の適用者については、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間が、1か月100時間超の方について、面接指導の実施が義務化されています。(研究開発業務従事者についても、月100時間超の場合の実施義務があります。)

 この面接指導の目的は、長時間労働による疲労の蓄積との関連性が強いとされる脳・心臓疾患を予防することにあります。

 面接指導で医師が確認するのは、
 業務の過重性に関して、仕事による負担の有無、裁量度、職場の支援状況、対象者の考える長時間労働発生の理由や今後の見通しなど。
 心身及び生活の状況に関して、睡眠の状況、仕事以外の一般生活におけるストレス・疲労の有無などです。
 そして、それらの確認で把握したことなどにより、必要な指導を行います。

 事業者は、面接後に医師の意見を受けて、必要があるときは、該当する長時間労働者の就業場所の変更、作業の変更(転換)、労働時間の短縮、深夜業の回数減少などの措置を講じなければならないとされています。

 なお、疲労の蓄積が認められる労働者の面接指導の申出を促すために、1か月の時間外・休日労働時間が80時間超となった労働者に対して、事業主からその月の時間外・休日労働時間を通知することが義務化されています。

 その方法は、メールや書面などで、給与明細に時間外・休日労働時間数が記載することで代えることもできます。
 この通知は産業医に対しても行われ、産業医はその情報に基づいて対象労働者に申出の勧奨を行うことができます。

➤ 産業雇用安定助成金、創設から1年で対象者1万人超(22.03.06)

 在籍型出向により労働者の雇用維持に取り組む事業主を支援する「産業雇用安定助成金」の対象者が、昨年2月の創設から1年で1万人を超えています。

 この助成金では、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動を一時的に縮小する中での雇用維持と出向元企業への復帰を前提として、出向元事業主および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費などについて一定の割合を助成金として支給します。


 助成金の実施計画書ベースで、1年間の対象者10,440人、その出向元が1,063事業所、出向先が1,746事業所です。

 企業規模別で出向者の流れを見ると、「中小企業から中小企業」が4割超(43%)を占め、「大企業から大企業」はその半分の2割超(22%)となっています。

 産業別に見ると、出向元は、「運輸業、郵便業」が4割と突出して多く、「製造業」、「宿泊業、飲食サービス業」が1割超で続いています。
 出向先は、「製造業」、「サービス業(他に分類されないもの)」が2割程度ですが、サービス業の方の区分には、職業紹介・労働者派遣業、廃棄物処理業などが含まれています。
 出向者の送り出しと受け入れの差を産業別に見ると、送り出し超過は、「運輸業、郵便業」が最多、受け入れ超過では、「サービス業(他に分類されないもの)」となっています。

 在籍型出向のメリットとして、出向元からは、労働者の勤労意欲の維持、キャリア形成・能力開発、確実に復帰してくることが挙げられています。また、出向先については、4社に3社が人手不足解消と自社従業員の負担軽減と回答しています。
 また、出向後の復帰について出向者者の立場から、「出向が終わっても会社に戻れる保証があったため、安心して出向先で勤務することができた。」という話も出ています。

 先日(2月28日)の報道発表資料で参考に9事例が紹介されていますが、企業のマッチングの方法は、産業雇用安定センターへ相談が多く、他には、出向元企業からの働きかけ、関係しているコンサルタント会社の紹介、事業主同士が知人のケースがあります。
 出向期間中の出向者へのケアについては、情報提供から一歩進めて、出向元から出向先の就労場所を直接訪問する対応をしている事例も見られます。
 また、同業種の企業間の出向では、「中途採用者が教育に数カ月かかるのに対して、出向者は即戦力となった」(受入企業)、「同じ作業工程でも、使⽤する機械などが異なり、技術⾯で得るところが多かった」(出向者)といった声がありました。

➤  社長の平均年齢は31年連続で過去最高を更新(22.03.05)

 標記のデータは、㈱帝国データバンクが実施した全国「社長年齢」分析調査(2021)からです。この分析調査は、2021年12月現在で企業概要データベース COSMOS2(約147万社)から企業の社長データを抽出し、集計・分析を行ったものです。

 過去最高を更新した社長の平均年齢は60.3歳で前年度比で0.2歳高くなっています。
 年代別では、50代(27.6%)、60代(26.9%)、70代(20.2%)の順です。

 5年前の2016年調査では、60代が50代を大きく上回っていました(約8%差)が、50代の増加と60代の減少が一貫して続いて今回シェアが逆転しています。70代は、5年前と比較して約5%増加しています。

 世代交代のスピードを示す社長交代率は、4%を下回っています(3.92%)が、これは、この調査が始まった1990年以降の推移を見ても低い水準です。
 ちなみに、社長が交代した企業では、平均16.5歳の若返りが図られています。(交代前平均68.6歳 → 交代後平均52.1歳)

 業種別の平均年齢は、不動産業が最も高く(62.4歳)で、70代以上が3人に1人(33.6%)となっています。最も低いサービス業(58.8歳)でも、70代以上が2割を超えています。

 都道府県別では、最も若い三重県でも59.0歳であり、調査を開始した1990年に比べると6~8歳高くなった都道府県が多く見られます。また、平均以上が東日本、平均以下が西日本にそれぞれ多い東高西低の傾向です。

 そして、レポートでは、事業の将来的な存続に欠かせない後継者の選定と育成にかかる時間を見誤ると、不測の事態が起きた際に円滑な移行に失敗する危険性があり、今後は経営リスクの低減に向けて、事業承継や後継者の選定・育成がさらなる課題になるだろうと指摘しています。

➤  中小企業活性化パッケージ(22.03.04)

 今月4日に、経済産業省、金融庁及び財務省の三省庁連携による中小企業活性化パッケージが発表されました。
 このパッケージには、①コロナ資金繰り支援の継続、②中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援の2つのテーマであわせて10項目以上の関連施策が盛り込まれています。
   

① コロナ資金繰り支援の継続

 目先の年度末の資金需要への対応として、経営の安定に支障が生じている中小企業を対象としたセーフティネット保証4号の期限が今年6月1日まで延長されます。
 また、年度末の資金繰り支援等の徹底について、関係各大臣から金融機関に要請が行われます。

 来年度(今年4月以降)の資金需要への対応として、政府系金融機関による実質無利子・無担保融資、危機対応融資について、運転資金の融資期間の20年への延長と、6月末までの延長があわせて行われます。
 そして、日本政策金融公庫の資本性劣後ローンも来年度末(来年3月末)まで継続されます。
   

② 中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援

 中小企業の収益力改善の支援策として、経営改善計画策定支援事業(通称405事業)で4月から、計画実行までの伴走支援(フォローアップや助言等)を強化されます。これに伴い、従来から補助対象であったモニタリング費用が「伴走支援費用」に改められて別枠の補助上限額100万円が設定されます。
 また、経営者保証の解除に向けた金融機関との交渉に弁護士等(認定経営革新等支援機関)を活用する場合も新たに補助対象(上限額10万円)となります。(現在の上限額計200万円→310万円)
 現在、中小企業再生支援協議会が、コロナ禍対策で緊急的に実施している特例リスケ支援は、4月からポストコロナを見据えて収益力改善支援にシフトしたものとなります。

 中小企業の事業再生支援として、債務超過企業の債務買取や支援を行う中小企業再生ファンドを拡充して、コロナの影響が大きい業種(宿泊、飲食等)を重点支援するファンドの組成やファンド空白地域の解消が進められます。
 事業再構築補助金では、通常枠よりも補助率を引き上げた「回復・再生応援枠」(補助率3/4(中堅2/3))が新たに設けられ、審査での再生事業者の加点も行われます。
 また、ものづくり補助金でも、再生事業者の補助率引き上げ(2/3)と審査時の加点が行われます。

 このパッケージと同日に公表された「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」では、平時・有事における中小企業と金融機関の対応、私的整理検討時の留意点、再生計画成立後のフォローアップ、中小企業の事業再生等のための私的整理手続が取りまとめられています。この新たなガイドラインに関連して、4月以降、数百人規模の民間専門家(弁護士等)を活用した支援、ガイドラインに基づく計画策定費用の支援制度の創設が予定されています。

 再チャレンジの支援として、中小企業の廃業時における経営者の個人破産回避に向けて、『廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方』が3月4日に公表されました。その中では、「保証債務整理の申出を受けた場合には、金融機関が誠実に対応する」との考え方が明確化されています。
 また、中小機構の人材支援事業の対象を廃業後の経営者まで拡大すること、日本政策金融公庫の融資での創業に再挑戦する方への支援措置などが行われます

 支援体制関連では、中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合し、4月から「中小企業活性化協議会」に改組されます。この他には、地域金融機関から100名規模のトレーニーを受け入れ、地域の支援専門家の育成が実施されます。

➤  固定残業代(22.03.03)

 固定残業代は、一定の時間数の時間外労働、深夜労働または休日労働について、あらかじめ定めた額(定額)で割増賃金を支払うもので、その形態としては、
 ① 基本給に含めて支払うもの
 ② 基本給とは別に諸手当として支払うもの
の2つがあります。

 割増賃金の支払い方法として固定残業代を導入する場合は、次の3つの事項に合った仕組みであり、また、そのように運用していくことが必要です。

 ① 固定残業代相当の時間外労働等の時間数や金額を書面で示すなどして、基本給や諸手当のうち、通常の労働時間の賃金
   部分と割増賃金部分とを明確に区別できるようにすること
 ② ①の割増賃金部分の金額が、労働基準法などの規定により算出した額を下回っていないこと
 ③ 時間外労働等の実績が、固定残業代相当の時間数を上回った場合は、超過分を清算して支払うこと


 この①~③について問題がある固定残業代の仕組みやその運用を巡ってのトラブルが多くあり、最高裁まで争われたものも複数あります。

 現在、ハローワークの求人票にも固定残業代の欄があり、固定残業代「あり」の場合は、その額のみならず、「時間外労働の有無にかかわらず固定的に支給されるものであること」、「超過分が法定どおり追加で支給されること」も必ず明記することとなっています。
 基本給や特定の諸手当に固定残業代を含む場合は、募集要項や求人票などで、固定残業代を除いた基本給の額、特定の諸手当のうち固定残業代とそれ以外の額が分かるようにします。


 固定残業代を導入しているのであれば、その地域の同業者や採用で競合している業種の求人での固定残業代の状況を一度確認して、自社の状況がその地域や業種での一般的なものから離れたものになっていないか検証してみるのが良いでしょう。

➤  補助金活用で事前に織り込んでおきたい2つのこと(22.03.02)

 ここ数年で、企業を取り巻く環境が大きく変わり、この先も変化が続くと見られる中での企業の次の一手は、生産性のさらなる向上や、既存の製品・サービスの強化などによる「本業強化」 、新事業や思い切った業態転換といった方法での「事業再構築」など、さまざまです。

 その資金調達について、自己資金と金融機関からの融資に加えて、補助金を活用することで、資金調達面でのリスクと負担を大きく抑えることができますが、活用にあたって事前に織り込んでおきたいことが2つあります。

 一つ目は、事業実施の自由度が大きく制限されることです。
 全額自己資金であれば、当初と見込み違いがあればすぐに事業計画を変えて軌道修正ができますし、場合によっては、撤退も選択肢に入ってきます。そして、設備投資をしているのなら、一部もしくは全部を処分することも可能です。
 融資との併用の場合は、それなりの厳しさがありますが交渉の余地はあります。

 対して、補助金の場合は、大規模災害や今回のコロナ禍のようなケースは別として、採択された内容を大きく変更したり、継続を断念することに伴い、設備投資で取得していたものを処分すると、補助事業期間中はもとより、補助事業期間終了後5年以内でも補助金返還の問題が出てきます。

 ですから、補助事業に採択されて交付申請するまでの間に、市場環境、必要な人材の確保、新技術の導入や新商品の開発といったところについて、事業計画策定時からの変化の把握、今後の見通しの見極めを確実に行うことが重要となります。

 それらの把握と見極めの結果、実施することに大きな問題があるならば、現在の事業を壊さないために交付申請しないこともあり得ます。

 二つ目は、事業計画の作成、申請や事業実績関係の書類作成、 一連の契約手続き、補助事業期間中の補助経費とそれ以外を分けての出納処理などに、多くの時間と労力を割かざるを得ないことです。これに加えて、補助事業のスケジュール管理もありますので、特定の方に過度に業務が集中することがないよう、事業計画策定時の役割分担と体制づくりが重要となります。

 そのような点を知ったうえで活用するのであれば、補助金は企業の設備(モノ)、資金(カネ)を改善強化して、本業強化や事業再構築の成果を上げるのに大きく貢献します。また、事業計画が公的支援の対象として認められたこと自体が、その企業の信用度にも良い影響を与えます。

➤ カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(22.03.01)

 先月下旬に、厚生労働省本省サイトで標記のマニュアルが公開されています。これは、昨年1月から関係省庁の連携会議での労働者団体、消費者団体、鉄道業、小売業(スーパーマーケット)などからのヒアリングや実態調査の結果に基づいて作成されたものです。

 その中で、カスタマーハラスメントの判断基準について、企業ごとに違いが出てくる可能性があることから、各社であらかじめカスタマーハラスメントの判断基準を明確にした上で、企業内の考え方、対応方針を統一して現場と共有しておくことが重要と考えられるとしています。

 判断する際の観点としては、①顧客等の要求内容に妥当性はあるか、②要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲であるかの2つが挙げられています。

 また、企業が適切な対応をしていない場合には、被害を受けた従業員から責任を追及される可能性があるとした上で、企業の対策について、①カスタマーハラスメントを想定した事前の準備、②実際に起こった場合の対応に分けて整理しています。
 このうち、事前の準備について、企業として職場におけるカスタマーハラスメントをなくす旨の方針を明確にし、トップ自ら発信することが重要であり、そうすることで、企業が従業員を守り、尊重しながら業務を進めるという安心感が出て、従業員がトラブル事例や解消に関して発言がしやすくなるとしています。

 事前の準備関連では、この他に、相談対応者または相談窓口の設置と周知、あらかじめ現場での初期対応例を準備しておくことの重要性、顧客等からの迷惑行為や悪質なクレームへの対応のための従業員への研修などにも触れています。

 実際に起こった場合の対応としては、事実関係の正確な確認、従業員の安全の確保や精神面への措置、再発防止のための取組などを挙げています。

 そして、取組に当たっての課題に関して、「カスタマーハラスメントを社会通念に照らして不相当と定義するが、社会通念というのが抽象的で具体性がない。」、「(企業での対応が)一般的な対応と乖離していると批判を受けることがある。」、「放っておくと、業務や適常の生活に支障が出るなど、従業員に対する心のケアが以前にも増して必要と感じる。」、「顧客第一主義を掲げるとお客様の言いなりになってしまう事案が多い。」といった意見が出されています。

➤ パパ休暇で始めて今年10月以降に続く育児休業について(22.02.28)

 改正育児・介護休業法の今年10月1日施行分では、出生時育児休業(産後パパ育休)が創設され、育児休業の2回までの分割取得が可能となりますが、現行のパパ休暇は9月末で廃止されます。

 出生時育児休業も現行のパパ休暇の1回目も、子の出生後8週間以内に開始・終了することは同じですが、それ以外の点では、
 出生時育児休業は、2回目まで分割取得できるが、あわせて4週間までが限度である一方、パパ休暇の1回目は、分割取得はできないが、期間の制限はないといった違いがあります。
 そのような違いに加えて、今年9月までに開始したパパ休暇で、対象となる子の1歳の誕生日が10月以降である場合の取り扱いが問題となりますが、改正育児・介護休業法の附則で次の取り扱いが定められています。

  令和4年10 月1日前(9月30日まで)に開始したパパ休暇については、改正後の

  育児休業の可能回数(2回まで)と、出生時育児休業の取得可能回数・日数などの
  規定の適用にあたっては出生時育児休業とみなす。

 令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&A(令和3年11月30日時点)のQ5-6では、次の6つの例を挙げて解説しています。

【例1】施行日前にパパ休暇を取得し、施行日後に育児休業を2回取得することは可能。
    (施行日前のパパ休暇の日数が28日を超えていても可)

【例2】施行日前にパパ休暇と通常の育児休業を取得し、施行日以後に出生時育児休業を1回、育児休業を1回取得すること

    は可能。
    (この例では、出生後8週間の期間が施行日後まで続いているので、出生時育児休業の2回目取得が可能。育児休業

     の2回取得のカウントでは、施行日前の育児休業を1回目とするため、施行日後の育児休業は残り1回。)

【例3】施行日前にパパ休暇を14日間取得し、施行日以後に出生時育児休業を1回(残り14 日)取得し、その後に育児休業を

    2回取得することは可能。
    (施行日前のパパ休暇を1回目とみなして出生時育児休業を分割取得する場合でも期間は通算するので、ここでのパ

     パ休暇と出生時育児休業で合計28日まで。なお、パパ休暇(期間27日以下)が施行日をまたいだ場合でも、2回目
     の出生時育児休業は可能。)

【例4】施行日前にパパ休暇を10日間取得し、施行日以後に出生時育児休業を合計18日以内で2回取得することは不可能。
    (パパ休暇と2回の出生時育児休業の合計が27 日以下であっても、施行日前のパパ休暇が1回目の出生児育児休業と

     みなされるため、施行日以後の出生時育児休業の取得は1回のみ可能。)

【例5】施行日前にパパ休暇を開始し、施行日をまたいでパパ休暇を取得した後、育児休業を2回取得することは可能。
    (この例では、出生後8週間の期間が施行日以後まで続いているので、パパ休暇が28日を超える日数でも可。)

【例6】施行日後にパパ休暇を開始することはできない。
    (休業開始日が施行日以後であるため、パパ休暇としての取得は不可。出生時育児休業または改正後の育介法に基づ

     く育児休業(分割取得可能)としての取得となる。)

➤ 今年4月以降の雇用調整助成金の特例措置について(22.02.27)

 今年4~6月分の雇用調整助成金の特例措置については、今年3月の内容を同じとする予定である旨、厚生労働省本省サイトで今月25日に公表されています。

 具体的には、
 〇 地域特例、業況特例に該当する場合は、中小企業、大企業ともに、助成率が4/5

   (解雇等がない場合は10/10)、1人1日当たり上限額が15,000円。

 〇 上記以外の原則的な特例措置は、

   中小企業が、助成率4/5(解雇がない場合9/10)、1人1日当たり上限額
   9.000円。大企業が、助成率2/3(解雇がない場合3/4)、同上限額9.000円。

 令和4年7月以降については、「経済財政運営と改革の基本方針2021」に沿って、雇用情勢を 見極めながら具体的な助成内容を検討の上、5月末までに改めて公表される予定です。

 上記の地域特例の対象となる事業主は、緊急事態措置を実施すべき区域や重点措置区域において、新型インフルエンザ等対策特別措置法の基本的対処方針に沿った知事による要請を受けて営業時間の短縮等に協力する事業主。(遊興施設等、大学、学習塾等、運動、遊技施設、劇場等、集会・展示施設、商業施設で特措法施行令第11条で定めるものに限る。)
 その適用期間は、各区域での緊急事態措置や重点措置の実施期間が終了した月の翌月末まで。


 業況特例の対象となる事業主は、生産指標が最近3か月の月平均で前年又は前々年同期比30%以上減少している全国の事業主です。なお、令和4年4月以降は、毎月業況を確認する取り扱いとなります。
 助成率での解雇等の有無の判断については、原則的な措置、地域・業況特例ともに、令和3年1月8日以降の解雇等の有無で判断します。



 同じ日に小学校休業等対応助成金・支援金について、今年3月と同じ内容で今年6月まで延長する予定である旨も公表されています。

 今年3~6月に取得した特別の有給休暇や仕事を休まざるを得なかった日に対する支給内容は、
 〇 小学校休業等対応助成金(事業主が申請)は、助成率10/10で、1人1日当たり上限額は、原則的な措置が9,000円、

   特例は15,000円。
 〇 小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方が申請)は、1人1日当たり定額で、原則的な措置が4,500

   円、特例が7,500円。

 ここでの「特例」は、緊急事態宣言の対象区域又はまん延防止等重点措置を実施すべき区域であった地域に事業所のある事業主等に対するものです。
 また、小学校休業等対応支援金の対象には、小学校休業等対応助成金を活用しない事業主に雇用されている労働者が、休業支援金・給付金の仕組みにより自ら直接申請する場合を含みます。

➤ 老齢年金の繰上げ受給(22.02.26)

 先日の繰下げに続いて、繰上げ受給について見ていきます。
 実際に繰上げを選択されている方は、令和2年度で、老齢基礎年金が約400万人(全体の11.7%)、老齢厚生年金が約13万人(全体の0.5%)であり、老齢基礎年金では人数、受給権者全体に占める割合ともに減少傾向にあります。 
(令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況/厚生労働省年金局)

 また、繰上げでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰上げなければならないのが、繰下げでの取り扱いと大きく異なる点です。(繰下げでは、それぞれ別時期の請求手続きが可能)

   

【老齢基礎年金の繰上げ】

 60歳になれば、繰上げ受給ができ、繰上げの請求を行った翌月分から繰上げた月数に応じて減額された年金が支給されます。
 年金の減額率は、繰上げ1か月当たり0.5%で、1年で6%、5年で30%が最大の減額率です。その月数は、繰上げ請求をした月から65歳になる前月まででカウントします。

 繰上げ受給をした場合、本来であれば65歳になるまでできる手続きができなくなったり、特定の年金が受け取れなくなってしまうといったことがいくつかあります。

 一つ目は、65歳までは遺族厚生年金、遺族共済年金と繰上げ受給の老齢基礎年金を同時に受け取ることはできず、いずれか一つのみの受給となることです。
 遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4であり、生計を同じくしている18歳未満の子などがいない場合には、65歳までの間は中高齢寡婦加算もあるため、繰上げ支給の老齢基礎年金を上回る額になるケースは多く出てくるものと考えられます。


 二つ目は、障害基礎年金の「事後重症による請求」ができなくなることです。
 これは、障害はあるがその程度が障害基礎年金の支給対象である1級、2級には該当しない方(3級以下の方)について、症状が悪化して1級または2級に該当したときに年金の請求を行うもので、本来であれば老齢基礎年金の支給開始年齢である65歳になるまで可能な手続きです。

 三つ目が、寡婦年金が受け取れなくなってしまうことです。
 寡婦年金は、10年以上婚姻関係にあった夫が死亡した場合で、その夫が国民年金の第1号被保険者(自営業者・農業者とその家族、学生など)で保険料を10年以上納付等していた方であったときに、その妻に60歳から65歳までの5年間支給されるものです。

 最後四つ目が、国民年金への任意加入や保険料の追納ができなくなることです。
 これは、繰上げの請求をした時点で、減額前の老齢年金支給額に対応する保険料納付済月数等が確定するためです。

    

【老齢厚生年金の繰上げ】

 60歳から特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢までの間であれば、繰上げ請求ができますが、年金の減額率は、老齢基礎年金と同じで、その月数は、繰上げ請求をした月から特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢になる前月まででカウントします。繰上げ支給の老齢厚生年金の額は、65歳からの本来支給の老齢厚生年金の額に減額率を乗じて算出します。
 なお、複数の老齢厚生年金(一般の企業、公務員、私学教職員など)を受け取れる場合は、そのすべてについて同時に繰上げ請求をすることとなります。

 参考ですが、昭和36年4月2日以降に生まれた男性、昭和41年4月2日以降に生まれた女性については、特別支給の老齢厚生年金の支給はなく、65歳からの本来支給の老齢厚生年金のみとなります。

 繰上げをした場合には、障害厚生年金の「事後重症による請求」はできなくなり、また、65歳までは遺族厚生年金、遺族共済年金と繰上げ受給の老齢厚生年金を同時に受け取ることはできず、いずれか一つのみの受給となります。

 今年4月から、1か月当たりの減額率が0.4%に引き下げられ、年で4.8%、5年で24%となりますが、繰下げの検討にあたっては、これまで見てきたようなデメリットや、在職老齢年金制度も考慮していく必要があるでしょう。

➤ 2月からの業務改善助成金(通常コース)について(22.02.25)

 厚生労働省の業務改善助成金(通常コース)は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げと、生産性向上のための設備投資やコンサルティングなどを行った事業主に、その設備投資等の経費を助成するものです。
 当初は今年1月末が今年度の申請期限でしたが、3月末まで延長されています。
 また、申請期限延長のリーフレットに、新年度予算成立を前提として、令和4年度においても、「令和4年2月1日からのコース」を、引き続き実施する予定とのコメントがありました。
 これから3月末まででの取組はさすがに難しいですが、次年度を視野に入れてということで、現在の内容を見ていきます。

 この助成金では、最低賃金引上げ額別のコース区分と、賃金を引き上げた人数の組み合わせで支給される上限額が決まりますが、このうち最低賃金引上げ額別のコース区分については、現在、30円、45円、60円、90円の4コースとなっています。  例えば、30円コースの場合であれば、引上げ人数2~3人は上限額50万円、4~6人で70万円、7人以上で100万円です。

 また、①事業場内最低賃金900円未満、②売上高などの指標の直近3ヶ月平均値が前年又は前々年の同じ月に比べて30%以上減少のいずれかを満たす「特例事業者」については、昨年8月に特例で設けられたより上限額の高い「賃金引上げ人数10人以上」の区分での申請も可能です。

 助成対象となる経費は、機械装置などの購入据付費、専門家謝金や旅費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング経費などで、生産性向上のためのものです。
 機器などの導入事例を見ると、業務用冷凍庫や冷蔵庫、スチームコンベクションオーブン、食器洗浄機、シュリンク包装機、フォークリフト、POSレジシステムや顧客管理システムといったものがあります。
 コロナ禍のもとでニーズの高い宅配用バイクや自転車、非接触型自動検温器、Web会議システムなども対象となります。
そして、前記②の売上高等30%減の要件を満たす特例事業者については、機械装置購入費の機器・設備類の範囲が昨年8月に拡大され、
 〇 乗車定員11人以上の自動車、貨物自動車の購入、製作又は改良の費用
 〇 パソコンの新規購入の費用(タブレット端末やスマートフォン及びその周辺機器を含む)
も対象となります。

 昨年10月に、専門家謝金の上限が5回、人材育成・教育訓練費の上限が50万円に緩和されていますが、その活用事例として、飲食店での多機能レジスターの導入とIT研修、建設業での経営コンサルタントによる社員教育と社内研修、理美容業での団体が実施する教育研修の受講などが挙げられています。

 助成金の支給額は、助成対象経費に助成率を乗じて算出した額で、上限額を超える場合は上限額となります。
 助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金(時給換算)で決まり、900円未満では4/5、900円以上は3/4です。
 仮に平成4年度の地域別最低賃金が今年度と同じ3%程度上昇すると、今年10月以降に900円未満の助成率4/5が適用できなくなる道県(地域別最低賃金900円以上)が複数出てくることが予想されます。

 Q&Aを見ると、外注業務の内製化のための設備投資や、老朽化や破損した機器設備等を同等性能のものではなく、既存のものより高能力のものに置き換える場合なども助成対象になり得ますので、計画的な賃上げが視野に入っているのであれば、活用できるところが多い助成金です。

➤ 複数就業者の労災保険給付(22.02.24)

 複数の事業所で雇用される方の労災保険給付については、一昨年(2020年)9月の労働者災害補償保険法改正で法制化されています。

 対象となる「複数事業労働者」は、 負傷したり、疾病となった時点で、事業主が異なる複数の事業場に雇用されている方に限らず、
 〇 一の事業場に雇用され、他の就業について特別加入している方
 〇 複数の就業について特別加入をしている方
が含まれます。


 特別加入の対象は、昨年2度にわたって拡大され、柔道整復師、創業支援等措置に基づく高年齢者(以上、一人親方その他の自営業者等)や、監督や俳優などの芸能関係作業従事者、アニメーション制作作業従事者、ITフリーランス(以上、特定作業従事者)が加えられています

 労災保険での給付のうち金銭での給付額の算定に用いる「給付基礎日額」について、複数業務労働者の労働災害では非災害発生事業所(労働災害が発生した事業場以外の事業場)も含めたすべての事業所について算出した額の合計額を用いることとされました。
 例えば、A株式会社とB株式会社に雇用されている者について、A株式会社で勤務中の被災で負傷した場合でも、災害が発生したA社での賃金額と、非災害発生事業所であるB社の賃金額を合算した額に基づいて給付基礎日額を算出します。

 また、特別年金や特別一時金の基礎となる「算定基礎日額」についても、同様の取り扱いとなります。

 給付の対象となる災害についても、新たな労災認定の仕組みがあります。
 それは、複数事業労働者が雇用される事業所のうち1つの事業場での業務上の負荷(労働時間やストレス等)を評価して業務災害に当たらない場合に、複数の事業場の業務上の負荷を総合的に評価して、労災認定できるか否かを判断するというものです。(これを「負荷の総合的評価」といいます。)
 
 負荷の総合的評価によって労災認定された災害を「複数業務要因災害」といい、脳・心臓疾患や精神障害などが対象となります。
 例えば、脳血管疾患について長時間労働での負荷を評価する場合に、2つの事業場での発症前1か月の時間外勤務がそれぞれ55時間、45時間であるとき、個別に評価すれば発症前1か月としては業務と発症との関連性が強いとまでは評価できませんが、あわせて総合的に評価すれば、100時間となり、業務と発症との関連性が強いと評価できます。

 保険料の負担については、非災害発生事業所の賃金額を給付の基礎とすることもあり、非業務災害分として全業種一律賦課により算定する仕組みとされています。
 現在の非業務災害分の労災保険料率は全業種一律の0.6/1,000です。

 また、非災害発生事業場での賃金に基づく保険給付額については、その業種の保険料の算定基礎や、その事業所のメリット収益率の算定基礎には含めない取り扱いとなっています。
 この扱いは、疾病が複数業務要因災害として労災認定された場合の、すべての事業場の保険給付額についても同じです。

➤ 特定理由離職者(22.02.23)

 雇用保険の「特定理由離職者」区分では、契約の更新がないことにより離職した者(雇止め)と正当理由離職者に該当する方を対象として、

 〇 受給資格要件の緩和として、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月

   あれば受給可能
 〇 給付制限期間はなし
という取り扱いをしています。

 この取り扱いは、倒産や解雇による離職者を対象とした特定受給資格者と同じ内容です。

 加えて、契約の更新がないことにより離職した方について、基本手当の給付日数が特定受給資格者と同じ90~330日に暫定的に拡充されています。(※1)
 この暫定的な拡充措置は、2009年の雇用保険法改正で特定理由離職者区分が創設されて以来続いているものです。

 現在、国会に提出されている法案(雇用保険法等の一部を改正する法律案)が成立して、公布、施行されれば、2025年3月末(令和6年度末)まで延長されます。

 (※1) 30歳未満・被保険者期間1年以上5年未満の方のみ、一般受給資格者と同じ(90日)

 以下で、特定理由離職者の要件を、契約の更新がないことにより離職した者と正当理由離職者それぞれについて見てみます。

【契約の更新がないことにより離職した者】

 有期労働契約の期間が満了し、更新されなかったこと(雇止め)により離職した方で、次のイ、ロのいずれにも該当することが要件です。

 イ その有期労働契約で更新または延長が可能性としてあることは明示されている(例:契約を更新する(しない)場合が

  ある、○○○の場合は契約を更新するなど)が、実際に更新または延長することまでは確約されていないこと
  (更新することが確約されていた(契約締結時に明示されていた)場合は、特定受給資格者となります。)

 ロ 自ら更新または延長を希望したものの、それらについて合意できなかったこと

 ですから、その有期労働契約で「契約の更新なし」など契約の更新がないことが明示されている場合は、特定理由離職者に該当しません。
 なお、上記イ、ロのいずれも満たす方のうち、有期労働契約を更新して3年以上継続雇用されている方(※2)は、特定受給資格者となります。


 (※2) 定年退職後の再雇用で契約更新の上限が定められている場合などあらかじめ定められていた再雇用期限による
    ものは除く。
  

【正当理由離職者】

 自己都合退職した方が、以下のいずれかに該当する場合です。

 イ 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により退職した方
 ロ 妊娠、出産、育児等により離職した後、基本手当の受給期間延長措置を受けた方

 ハ 家庭の事情が急変したことにより離職した方
   具体的な理由としては、
  ・父もしくは母の死亡、疾病、負傷等で、父もしくは母を扶養する必要が生じたため
  ・常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のため

 二 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となった方

 ホ 通勤不可能又は困難となった方
   具体的には、次の理由により、通勤困難(通常の方法による通勤での往復所要時間がおおむね4時間以上など)となっ

  た場合が該当します。
  ・結婚に伴う住所の変更
  ・育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用または親族等への保育の依頼
  ・事業所の通勤困難な地への移転
  ・自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
  ・鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
  ・事業主の命による転勤または出向に伴う別居の回避
  ・配偶者の事業主の命による転勤や出向または配偶者の再就職に伴う別居の回避

 へ その他、企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した方(以下の該当するものは除く)など
  ・人員整理等に伴う退職勧奨などを受けて離職した場合
  ・人員整理を目的とした希望退職制度で、導入時期が離職者の離職前1年以内、その募集期間が同3か月以内であるもの

   に応募して離職した場合

➤ 賃金支払いの5原則について(22.02.22)

 賃金の支払いについては、労働基準法第24条で5つの原則が定められています

【通 貨 払】

 賃金は、通貨で支払うのが原則で、現物支給(実物給与)を行う場合は、あらかじめその旨の労働協約を締結しておく必要があります。ですから、労働組合のない事業所では、通勤定期券をはじめとする現物支給はできません。
 ちなみに、6か月乗車券は各月分の前渡しという取り扱いです。

 退職手当は、上記の例外で対象労働者の同意を得たうえで、小切手や普通為替証書、定額小為替証書を用いて支払うことができます。

 

【直 接 払】

 賃金は、直接労働者に支払うのが原則で、その目的は中間搾取の防止にあります。
 親権者などの法定代理人や、労働者の委任を受けた任意代理人への支払いは、いずれも無効で法違反となります。

   

全 額 払】

 使用者による賃金からの控除は原則禁止されています。その例外は、法令に定めがある場合と、過半数労働組合もしくは過半数代表者と控除についての労使協定を書面で締結した場合のみです。

 法令に定めがある場合とは、所得税(所得税法)、個人住民税(地方税法)、労働保険料(労働保険料徴収法)、厚生年金保険料(厚生年金保険法)、健康保険料(健康保険法)です。
 労使協定で定めることができるものは、購買代金、社宅や寮その他の福利厚生施設の費用、社内預金、組合費などの理由が明確なものです。

  

【毎月1回以上払】

 これは、毎月最低1回は賃金支給日を設定することで、支給日の間隔が大きく開かないようにすることが目的です。
 実務上は、賃金計算の締切日が当月下旬で、支払日が翌月上旬という場合には、新規雇用者について雇入れの月は給与支給がない状態が生じますが、この場合に限っては、違法ではないと解釈されています。

   

【一定期日払】

 これは、支払期日を特定することで、毎月1回以上払とあわせて賃金支払日の間隔が大きく開かないようにすることが目的です。結果として、労働者の生活の資金繰りの計画が立ちやすくなり生活も安定します。
 例えば、「毎月第4金曜日」のように、各月の暦によって変動する場合は認められず、あくまでも「毎月25日」のように特定する必要があります。


 前項の毎月1回以上払にも共通することですが、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるものは規定の対象外となります。

➤ 小学校休業等対応助成金の個人申請での手続き改善について(22.02.21)

 小学校休業等対応助成金は、子どもが新型コロナ感染症に感染したり、通学する小学校等が休校したために、その子の看病や世話のために仕事を休まざるを得なくなった親を雇用している事業主で、その親に特別の有給休暇(年次有給休暇以外のもの)を取得させた者に支給されるものです。

 事業主がこのような休業について、欠勤扱いとしている場合が問題となります。
 このような場合に、対象となる従業員(労働者)自ら「休業支援金・給付金」として申請する仕組みがあります。(休業支援金・給付金の仕組みによる直接申請)

 その直接申請の手続きの運用が、以下のとおり改善されています。

 まず最初に、対象となる方から各都道府県の労働局に設置されている「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」に、休業の事実があることや有給の休暇として扱われなかったことなどを伝え相談します。

 続いて、相談窓口から事業主に対して以下の①、②の働きかけを順に行います。
 ① 特別休暇制度導入・助成金活用の働きかけ
 ② (①の働きかけに応じない場合に)対象となる方から直接、休業支援金・給付金の支給申請ができるよう必要な協力の

   働きかけ

 事業主が、①、②の働きかけのいずれにも応じなかった場合は、対象となる方からの直接申請について働きかけを行い、
 a) 対象となる方が学校休業などのために休んだこと
 b) 無断欠勤でないこと(上記 a)の休みを事業主として認めたこと)
の2点について確認がとれた場合は、直接申請で「休業させた」として取り扱うことになります。

 そして、上記 a)、b)の確認が取れなかった場合でも、労働局で直接申請を受け付けたうえで、確認を続けていくこととなります。(改善前の取り扱いでは、上記 a)、b)の確認が取れなければ、個人からの直接申請はできなかった。)

 このような取り扱いに変更されるということは、欠勤扱いとして直接申請にも協力しない事業主に関する相談が多くなっているものと考えられます。

 また、厚生労働省のリーフレットにあるQ&Aの回答では、
 〇 助成金について事業主との相談を経ずに労働局に相談することが可能
 〇 休業支援金の支給要件確認書の記載に事業主が協力しない場合には、労働局にそのまま申請書を提出して、労働局から

   事業主に確認を行うことも可能
とされています。

 休業支援金・給付金は、休業手当(平均賃金の60/100以上)が事業主から支払われないことを前提に組み立てられている制度であり、厚労省のリーフレットで言われているとおり、休業手当の支払い義務(労働基準法第26条)の有無の判断を伴うことはありません。
 また、小学校休業等対応助成金や雇用調整助成金のように事業主が休業した日について賃金や休業手当を支払ったことに対する助成とは異なり、事業主の金銭的な負担はありません。

➤ 時間単位年休(22.02.20)

 1日、そして半日よりもさらに短い1時間単位での年休取得を認めるこの制度は、2010
(平成22)年4月の労働基準法改正で法制化されてから10年あまりの比較的新しいものです。

 時間単位年休は、全事業所適用の1日単位の年休とは異なり、導入しようとする事業所(使用者)が、基本的な事項を労使協定で定めた上で導入する形を取ります。

 労使協定で定める事項のうち、1年間に取得できる日数については、5日以内で定めます。週4日勤務者などで、年次有給休暇の日数が週所定の労働日数で比例配分されている場合は、それと同じ方法で年間に取得できる日数を定めることとなります。
 なお、導入2年目以降で前年度からの繰り越し時間数がある者が出た場合でも、当年度分と合わせて5日までの範囲で労使協定により定めた日数とする考え方です。

 時間単位年休の法制化が検討された2000年代は1990年代に比べて有休取得率は10%ほど下がって40%台、取得日数も1日以上減少した状態であり、取得率と取得日数の向上策が必要とされていました。
 その一方で、年次有給休暇の本来の目的である、労働者の心身の疲労回復などのためのまとまった日数の休暇の取得との兼ね合いもあり、原則となる日単位での年休取得の例外という位置づけで、年5日の上限が設けられました。

 1日の時間単位年休の時間数は、その事業所の1日の所定労働時間となりますが、1時間未満の時間がある場合、例えば、7時間30分といったときには、30分を1時間に切り上げて8時間で設定します。
 また、1時間単位での取得に限らず、労使協定に定めたうえで、2時間、3時間といった会社独自の運用が行われることも想定されています。

 労使協定で次のような制限を設けることは、認められません。
 〇 時間単位年休を取得できない時間帯を設けること
 〇 所定労働時間の途中での時間単位年休の取得(中抜け)を制限すること
 〇 1日に取得できる時間単位年休の時間数を制限すること など
 また、対象となる労働者の範囲を、育児などの利用目的により定めることもできないとされています。

 あくまでも例外として認められた取得方法であり、労働者が時間単位による取得を請求した場合のみのものです。
 そのため、年5日の年休取得義務への対応として事業主が計画的に付与することはできません。

 労働者が時間単位年休の取得を希望する日時について、事業主が変更する場合の考え方は、1日単位の年休と同様ですが、労働者の時間単位の請求を日単位に変更することや逆に日単位の請求を時間単位に変更することは認められません。

 時間単位年休の取得時の賃金については、1日単位の年休取得時の賃金額を、労使協定で定めた1日の時間単位年休の時間数で除して算出した額となります。実務上は、勤務したものとみなす取り扱いが多いものと考えられますが、年休取得の都度、賃金額を計算している場合は、そのベースとなる額(平均賃金、通常の賃金、標準報酬日額のいずれか)は、日単位年休と同じものとします。

 時間単位年休は、事業主にとっては、休暇の管理が煩雑になるデメリットがありますが、従業員にとっては、小学校入学以降の子供の世話、病院への定期的な通院など活用できる場面が結構あるものです。

➤ 無期転換ルールでの無期転換申込権を行使したのは、対象者の3割以下(22.02.19)

 表題のデータは、「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)」(厚生労働省実施)からのもので、この調査では、有期契約労働者や、無期転換ルールにより転換した後の無期契約労働者の状況について、令和2年4月1日現在で5,562件の有効回答を得ています。
 ここでは、主に有期契約労働者の状況を見ていきます。

   

有期契約労働者の雇用状況】

 有期契約労働者を雇用している事業所は4割(41.7%)で、常用している従業員に対する人数比は2割(22.4%)です。
 業務のタイプで見ると、軽易な業務に従事する者が6割超(64.1%)、正社員と同様の業務に従事する者が2割(19.1%)となっています。

   

無期転換ルールによる無期転換申込権の行使状況

 ここでいう「無期転換ルール」とは、有期労働契約の更新により通算契約期間が5年を超える場合に、有期契約労働者から使用者への申込みにより無期転換させる仕組みで、平成25年4月1日以降に締結された有期労働契約を対象とします。

 過去2年間(平成30・31年度)で「無期転換ルールによる無期転換を申込む権利が生じた者」のうち、3人に2人(65.5%)が無期転換を申込む権利を行使せず継続して雇用されています。
 無期契約への転換権を行使した者は3割に届かない状況(27.8%)でしたが、その無期転換後の社員区分は、「無期転換社員」が9割(89.4%)で、そのうちほぼ9割(87.3%)が業務量や賃金等の労働条件がともに変化なしでした。

   

【契 約 更 新】

 1回当たりの契約期間は、半数以上の企業(55.9%)で「6か月超~1年以内」であり、「3か月超~1年以内」まで広げると7割(72.1%)になります。

 勤続年数の上限を設定している企業は1割台(14.2%)に止まっていますが、実際の勤続年数(該当する労働者が最も多い年数)は、「3年超~5年以内」(29.2%)、「1年超~3年以内」(22.0%)、「5年超~10年以内」(20.4%)、「10年超」(13.4%)の順となっています。

 回数の上限設定をしている企業も1割(11.0%)であり、実際の契約更新回数(該当する労働者が最も多い回数)は、多いものから順に「3~5回」(36.4%)、「6~10回」(20.4%)、「11回以上」(16.8%)となっており、契約更新を重ねてできるだけ長く雇用したいという企業が一定数あることが分かります。

 契約更新の形態については、
 〇 更新の都度、契約期間等について詳しく説明を行った上で、労働者の署名又は記名押印を求めている 55.8%
 〇 更新の都度、労働者の署名又は記名押印を求めているが、詳しい説明は行っていない 15.7%
 〇 自動的に更新している 14.1%
となっています。

 なお、この項目の回答はその企業にとって最も重要と考える有期雇用労働者の「職務タイプ」についてものです。
 「職務タイプ」とはこの調査独自のもので、正社員と同様の職務を行う「正社員同様職務型」、正社員よりも高度な内容の職務を行う「高度技能活用型」、正社員よりも軽易な職務を行う「軽易職務型」など5つのタイプが設定されています。
  

【雇 止 め】

 過去2年間(平成30・31年度)に雇止めを行ったことがある企業は1割(10.7%)であり、
 その理由については複数回答で、
 〇 更新上限を設定していたため 28.4%
 〇 労働者の勤務態度の不良のため 24.9%
 〇 業務量の減少のため 22.0%
でしたが、業種別に他より目立って多い理由を見ると、建設業での更新上限の設定(75.4%)、プロジェクトなどの終了(65.5%)、医療、福祉での勤務態度不良(54.0%)、卸売業、小売業での業務量の減少(45.1%)などがあります。

 雇止めに先立つ手続き(複数回答)は、契約を更新しない旨を口頭で伝えた(56.9%)が書面で伝えた(40.6%)を大きく上回っています。雇止めする労働者との個別は半数の企業(54.0%)が行っていました。

   

今後の有期契約労働者の活用方針】

 ほぼ2社に1社が「現状を維持する」であり、「積極的に活用する」は1割程度(11.6%)にとどまりましたが、従業員1,000人以上の企業では26.1%と有期契約労働者の活用意欲が強くなっています。

➤ 令和5年3月高卒者の採用選考のスケジュールについて(22.02.18)

 先日、全国高等学校長協会、主要経済団体、関係省庁により、令和5年3月の高校卒業予定者(就職を希望する者)の採用選考期日の取りまとめが行われました。

 〇 6月1日
    ハローワークによる求人申込書の受付開始
 〇 7月1日
    企業による学校への求人申込及び学校訪問開始
    (実質的な求人情報の公表日(企業情報解禁日))

 高校生を対象とした求人では、ハローワークにおいて求人内容を確認した上で求人票に確認印を押して企業に返却します。そして、確認印のある求人票により、企業から学校に求人の申込みが行われます。

 〇9月5日
   学校から企業への生徒の応募書類提出開始(沖縄県は8月30日)
 〇9月16日
   企業による選考開始及び採用内定開始

 高校卒業予定者への就職あっせんには、
 〇 上記のような全国統一的な採用選考開始の期日を決定した上で、都道府県ごとに状況に応じて具体的運用を行う
 〇 選考開始日から一定期間に限り、一人の生徒が応募できる企業を一社として学校推薦を行う「一人一社制」
といった慣行があります。

 このような慣行には、景気変動などで求人が少ない状況でも、多くの生徒に応募の機会を与えることができる、短期間でのマッチングが可能であるといったメリットがありますが、
 その一方で、
 〇 高校生の就職の機会を保障しようとするあまり、かえって当事者の主体性を過度に制限しているのではないか
 〇 現行の採用選考のやり方は、当事者である高校生や保護者の希望や意向が十分に反映されていないのではないか
 〇 就職後3年以内の離職率が約4割であることなどから、就職後の支援の充実に加えて、採用選考の選択肢を広げる余地が

   あるのではないか
などの意見や指摘があります。

 そのような意見や指摘を考慮して、「骨太方針 2018」や「規制改革推進に関する第5次答申」(2019年6月)で、一人一社制の在り方検討を行うべきとされたことから、関係省庁などによるワーキングチームが作られ、その活動により次のような内容を含む報告書がまとめられました。(2020年2月)

 〇 一人一社制については、都道府県ごとにその状況に応じて、
    ・一次応募から複数応募・推薦を可能とする
    ・一次応募までは1社のみの応募・推薦とし、それ以降は複数応募・推薦を可能とする
のいずれかを選択するのが妥当。

 〇 採用選考期日については、学校教育活動への影響などから一律に早める運用は現時点では難しい。

 また、報告書には、民間職業紹介事業者へのヒアリングでの次のような意見もありましたが、今後について考えるヒントになると考えられます。(以下、原文のまま)

 〇 高卒求人の動向は、製造業から福祉等のサービス業にシフトしつつある中で、高等学校との関係が薄い新興企業等にとっ

   ては、採用実績がないこと等により、現在の仕組みの下では生徒への紹介・あっせんがされにくい。

 〇 一人一社制は採用コストをかけたくない企業にとっても効率的な制度ではあり、地場産業の企業にとってもメリットがあ

   る制度である。
 〇 一方で、これまで採用実績がなかった新興企業(情報通信系企業等)などにとっては人を確保しにくいのではないか。

 〇 一人一社制を完全に否定するものではないが、段階的に複数社制にしていくべき。学校種別では、普通科は進学メインで

   就職指導のノウハウもないので一人一社スタートで良いと考える。一方、定時制及び通信制高校についてはほとんどの生
   徒が就職するので、初めから複数社の方が良いと思う。

➤ 人材確保支援助成金でのコースの休止・廃止について(22.02.17)

 フルタイムの正規従業員(正社員)などを対象とした雇用環境の整備等の取り組みを行った事業主を支援する人材確保等支援助成金(厚生労働省所管)において、今年3月31日で2つのコースが休止、1つのコースが廃止となります。このうち、休止となるコースは廃止の予定はないものの、再開時期は未定とされています。

 なお、いずれのコースについても、3月31日までに整備計画等を労働局に提出した場合は、計画の認定後、令和4年度に制度整備や改善の実施をして、その他必要な要件を満たせば助成金を受給できます。

 今回休止または廃止される3つのコースの場合、整備計画等の提出は、整備計画期間の開始日からさかのぼって6か月前~1か月前の日の前日までとなっていますので、実務上は3月に計画提出、8月に計画期間開始といったことも可能です。

 以下のコースの内容に合致する労務管理の改善やテコ入れの計画が既にあるのであれば、これらのコースの活用を検討する余地はまだあります。
  

【休止】雇用管理制度助成コース

 雇用管理制度を導入・実施して、その後12か月間の離職率が、計画認定時に示した目標値を達成していた場合に助成金が支給(57万円)されます。

 雇用管理制度は、次の制度のうちから選択します。
 ・新たな諸手当等制度(退職金制度、賞与を含む)の導入
 ・新たな教育訓練制度、研修制度の導入
 ・法定の健康診断に加え、健康づくり制度としてがん検診、歯周病検診、腰痛健康診断などのいずれかを実施
 ・新たなメンター制度の導入
 ・新たな短時間正社員制度の導入(保育事業主限定の項目)
(3月31日で雇用管理制度整備計画の受付を休止)

  

【休止】人事評価改善等助成コース

 人事評価制度と2%以上の賃金のアップを含む賃金制度を整備・実施した上で、3年経過後に生産性の向上、労働者の賃金の2%以上のアップ、離職率の低下に関する目標のすべてを達成した場合、助成金(80万円)が支給されます。
 昨年度までは、当初の人事評価制度と賃金制度の整備と、2%の賃金アップの達成時点でも助成金が支給(50万円)されていましたが、今年度からは3年後の目標達成助成の1回のみとなっています。
(3月31日で人事評価制度等整備計画の受付を休止)

   

【廃止】雇用管理制度助成コース(建設分野)

 建設事業主限定の2つの助成があり、一つは目標達成助成で、上記の雇用管理制度助成コースの目標達成に加えて、若年及び女性労働者の入職率目標を達成した場合に2回にわたり助成金が支給されるものです。(助成額1回目:57万円、2回目:85.5万円)
 雇用管理制度助成コースの整備計画と同時または2カ月以内に雇用管理改善計画の提出が必要です。

 もう一つは登録基幹技能者等の処遇向上支援助成で、建設キャリアアップシステムのレベル4相当に該当する者の賃金引上げを、増額改定整備計画に基づく就業規則等の変更による、賃金テーブルの増額改定もしくは登録基幹技能者等手当の増額改定で行った場合に助成金が支給されるものです。(助成額は登録基幹技能者1人あたり、「10万円/年」以上の処遇向上の場合:6.65万円、「5万円/年」以上の処遇向上の場合:3.32万円)
(3月31日で雇用管理改善計画、増額改定整備計画の受付を終了)

➤ 在職老齢年金と在職定時改定(22.02.16)

60~64歳の在職老齢年金制度(低在老)

 現行の60~64歳の在職老齢年金制度(低在老)では、総報酬月額相当額(ボーナス込みの月収)と基本月額(特別支給の老齢厚生年金(加給年金額を除く)の月額)の合計額が28万円を超えると支給停止(年金の減額)が始まります。
 支給停止額は、上記の合計額について28万円を超えた額の1/2(基本月額が28万円超の場合は、総報酬月額相当額の1/2)で算出します。(算出a)
 そして、総報酬月額相当額が47万円を超えている場合は、(算出a)で総報酬月額相当額を47万円として算出した額と、総報酬額相当額から47万円を差し引いた額の合計が支給停止額となります。

 つまり、総報酬月額相当額と基本月額の値により、4つの計算パターンがあります。

 ここでの28万円は、夫婦2人の標準的な年金額相当を基準として、そして47万円は、現役男子被保険者の平均月収 (ボーナスを含む。) を基準として設定されています。また、総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額と、その月以前1年間の標準賞与額の1/12の合計額です。

 今年4月からこの支給停止の仕組みが、65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)と同じ形に変更されます。具体的には、総報酬月額相当額と基本月額の合計額が47万円を超えた場合に、その超えた額の2分の1の額を停止額にします。


 低在老での支給停止についての2022年度末での推計を見ると、現行の2段階の停止基準では、60~64歳の在職受給権者の半数に当たる37万人が受給停止の対象となり、さらに2割にあたる16万人が全額支給停止となります。その一方で、4月以降の1段階の停止基準では、支給停止対象が11万人、全額停止が5万人といずれも3分の1以下に減少します。

 低在老が対象としている65歳までの特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金の支給開始年齢の65歳への段階的引上げ完了(男性は2025年度、女性は2030年度)後には対象者がいなくなるため、この制度も2030年度限りとなります。
 なお、本来支給の老齢厚生年金を在職のまま繰上げ受給する場合の支給停止の考え方は、65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)のものとなります。
  

【在職定時改定】

 老齢厚生年金の受給権を取得した後(65歳以降)に厚生年金保険の被保険者として働き続けた場合には、退職時もしくは70歳到達時の改定(退職改定)で、65歳以降その改定までの加入期間と報酬をまとめて年金額に反映するのが現在の取り扱いです。
 この取り扱いでは、在職中(70歳以降も働き続ける場合は70歳到達時まで)には、加入期間も報酬も年金額に反映されることはありません。

 今年4月からは、その点が変更されて、65歳以降についても年1回、10月に定時改定を行い、加入期間と報酬額を年金額に反映していくこととなります。
 この在職定時改定導入のメリットについては、65歳以降に1年間就労して在職時改定を行った場合の老齢厚生年金への反映額の推計(2018年度末のデータによる)があり、
 ・標準報酬月額10万円で年7,000円程度
 ・標準報酬月額20万円で年13,000円程度
 ・標準報酬月額30万円で年20,000円程度
という結果になっています。

➤ 老齢年金の繰下げ受給(22.02.15)

 老齢年金の繰下げ受給は、現行は、65歳から70歳までの最大5年の繰下げが可能で、その場合の増額率は42%(1月あたり0.7%)です。

 今年4月から老齢年金の受給開始年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられ、最大10年の繰下げが可能となりますが、この場合の増額率は84%(1月あたり0.7%×120ヶ月)です。なお、この変更は、今年4月1日以降に70歳に達する方(昭和27年4月2日以降生まれの方)に適用されます。

 この繰下げ受給の仕組みでは、繰下げの申出は66歳以降に可能となります。
 また、厚生年金や共済組合等による年金のうち老齢・退職給付以外のもの、遺族基礎年金(老齢基礎年金ではこれらに障害基礎年金も加わる)の受給権が、66歳までの間に発生した場合には、繰下げ自体ができず、65歳時の本来請求の額での受給のみとなります。
 そして、66歳以降にそれらの受給権が発生した場合は、その時点で繰下げ月数と増額率が固定されます。

 老齢基礎年金、老齢厚生年金それぞれ別の繰下げ期間を選択できますが、複数の老齢厚生年金(退職共済年金、日本年金機構から支給される年金、基金等からの年金)がある場合は、それらの老齢厚生年金について同時に繰下げの申出をする必要があります。

 繰下げ受給のデメリットに、繰下げ後の年金支給開始までの間(繰下げ待機期間中)は加算額も支給されず、増額の対象にもならないことがあります。具体的には、老齢基礎年金の振替加算額、老齢厚生年金の加給年金額のことです。

 この他に、繰下げで注意しておくべき点は、65歳以降も仕事を続けて厚生年金保険に加入している場合で、老齢厚生年金の在職支給停止額が生じるときの取り扱いです。
 この場合は、停止額を差し引いた年金額が、繰下げによる増額対象となりますが、

具体的には、繰下げ加算額に平均支給率を乗じて算出します。
 平均支給率 = 月単位での支給率の合計 ÷ 繰下げ待機期間
 月単位での支給率 = 1 -(在職支給停止額 ÷ 65歳時の老齢厚生(退職共済)年金額)

 停止額は、賃金(ボーナス込み月収)と老齢厚生年金(月額)の合計額が47万円を上回った場合に、その上回った額の2分の1の額となりますが、65歳以降の収入によっては。繰下げ受給を行うメリットが小さくなっていくことがあります。

➤ 事業場外労働のみなし労働時間制とテレワーク(22.02.14)

 事業場以外での業務で使用者の直接的な指揮監督が及ばないため、その労働時間の把握が困難な場合に適用されるのが、「事業外労働のみなし労働時間制」です。

 適用対象として想定されるのは、自宅から取引先に直行して営業活動をする外勤営業マンや報道機関の取材記者、出張のような臨時の事業場外労働によって労働時間の算定が困難となる場合などです。

 みなし労働時間を適用するにあたっては、その業務に通常必要とされる時間(みなす時間)を決めます。この時間は、労働日ごとの状況や労働者ごとの能力差がある中で、平均的に見ればどの程度の時間が必要かというものです。

 テレワークも事業場外での労働ですから、要件を満たせはみなし労働時間制を適用できますし、一定程度自由な働き方を指向する労働者にとって、柔軟にテレワークを行うことを可能とするものになります。

 テレワークで適用するための要件は2つで、
 一つは、勤務時間中に、テレワークを行う者が自分の意思で通信回線自体を切断することができること、もしくは、切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を使って行われるが、テレワークを行う者がその機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを自ら判断できることです。
 もう一つは、テレワークを行う者が随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと。具体的には、使用者からの指示が、業務の目的、目標、期限といった基本的な事項であり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法を具体的に特定するものではないということです。


 事業場外みなし労働時間制について懸念されることが多いのは、長時間労働の温床、隠れみのになるのではないかということです。

 実際にそうなるのは、業務業が通常必要とされる時間に対して過大となっている場合ですから、必要に応じて、実態に合ったみなし時間となっているかを確認して、その結果に応じて業務量を見直していくことが重要となります。
 また、所定労働時間を通常必要とされる時間にしているにもかかわらず、所定労働時間外間等に業務に関する指示や報告をメールなどで行うことは意識して避けていく必要があります。