94 いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項

  1. ホーム
  2. 事務所ブログ
  3. 94 いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項

 令和4年1月7日付の標題のペーパーとリーフレット(使用者向け、労働者向け)が厚生労働本省サイトで公開されています。

 留意事項のペーパーでは、
 〇 労働契約の締結時に明示すべき労働条件
 〇 就業規則に規定すべき事項
 〇 労働契約に定めることが考えられる事項
 〇 労働者を実際に労働されるに当たっての労働時間等の扱い
といった項目を中心に、関係法令を挙げて説明し、シフト制で留意すべき点を明らかにしています。

 この投稿では、留意事項のペーパーの中で、特にシフト制に着目した留意事項を中心に見ていきます。 

シフト制

 労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態

留意事項のペーパーで想定している勤務形態

 近年、パートタイム労働者やアルバイトで広がっている、あらかじめ具体的な労働日、労働時間を決めず、シフト表等により柔軟に労働日、労働時間が決まる勤務形態

   

労働契約の締結時に明示すべき労働条件

 労働契約締結時に書面で労働者に明示することが法律で定められている労働条件のうち、特に問題になりやすい「始業および終業の時刻」「休日」について、次のような留意事項を示しています。

 〇 労働条件通知書など(※)で「始業及び就業の時刻」を明示するとき、単に「シフトによる」とするだけでは足りず、
  ・書面に労働日ごとの始業及び終業時刻を明記する
  ・書面に原則的な始業及び終業時刻を記載した上で、一定期間のシフト表などを明示の書面とあわせて労働者に交付
  などの対応が必要であること。

 〇 「休日」について、労働契約の締結時に、
  ・休日が定まっている場合は、明示しなければならない
  ・具体的な曜日などが確定していない場合は、休日の設定に関する基本的な考え方を明示しなければならない

   (※) 労働者に交付する書面の様式は自由ですが、厚生労働省がモデル労働条件通知書としてひな形を
     公開しています。また、その労働者に適用する部分を明確にして就業規則を渡す対応も可能です。
  

労働基準法に基づく雇用契約締結時の労働条件の明示

 対象となる項目のうち、次のものは書面により明示しなければならないとしています。
 ・労働契約の期間
 ・有期労働契約の更新の基準(有期雇用労働者のみ)
 ・就業場所・従事すべき業務
 ・始業・終業時刻、所定労働時間超えの労働の有無、休憩時間、休日、休暇、
  2交代制等に関する事項

 ・賃⾦の決定・計算・⽀払⽅法、賃⾦の締切・⽀払時期

 上記の項目の他に、書面以外の方法でも明示できる項目として、昇給に関する事項、退職手当関連事項などがあります。

   

就業規則に規定すべき事項

 シフト制労働者の始業及び終業の時刻や休日について、就業規則上「個別の労働契約による」、「シフトによる」といった記載をするだけでは、就業規則の作成義務(※)を果たしたことにならないこと。
 ただし、基本となる始業及び終業の時刻や休日を記載した上で、「具体的には個別の労働契約で定める」、「具体的にはシフトによる」といった記載とするのは差し支えないこと。

  (※) 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して、過半数組合もしくは過半数代表者の
    意見書を添附して労働基準督署に届け出なければならないこと。
   

シフト制労働者を対象に一か月単位の変形労働時間制を導入する場合

 就業規則において、変形労働時間制導入時の具体的な労働日や各日の始業及び終業時刻(月ごとにシフトを作成する必要がある場合には、全ての始業及び終業時刻のパターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続及びその周知方法等)を定めておかなければならない。

   

労働契約に定めることが考えられる事項

 シフトの作成手続きについて、使用者による一方的な決定は望ましくなく、例えば、使用者と労働者で話し合って、次のようなルールをあらかじめ定めておくことが考えられる。
  ・ シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること
  ・ 確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法

 いったん確定したシフトの変更は、労働条件の変更に該当する。
 そのため、シフトの変更手続きについて、例えば、使用者と労働者で話し合って、次のようなルールを設けることを合意しておくことが考えられる。
  ・シフトの期間開始前に、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等の変更を使用者又は労働者が申し出る
   場合の期限や手続
  ・シフトの期間開始後に、使用者又は労働者の都合で、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等を変更
   する場合の期限や手続
   

労働日、労働時間などの設定に関する基本的な考え方

 例えば、労働者の希望に応じて次のような事項について、あらかじめ使用者と労働者で話し合って合意しておくことが考えられる。
  ・一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯
    (例:「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など)

  ・一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数
    (例:「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」など)
   これらに併せるなどして、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などについて定めることも考えられます。
    (例:「1か月○日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など)
   

その他の事項

【期間の定めのない労働契約への転換】

 シフト制労働者であっても、有期労働契約が繰り返し更新されて契約期間が通算5年を超えた場合において、労働者から使用者に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをしたときは、両者間に無期労働契約(※)が成立することになります(労働契約法第18条のいわゆる「無期転換ルール」)。
 使用者においては、シフト制労働者が期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたことを理由に、当該労働者のシフトの頻度を一方的に減らすことのないようにしてください。

  (※) 申込み時点での有期労働契約が満了した日の翌日から始まる無期労働契約
   

【不合理な待遇差の禁止】

 シフト制労働者がパートタイム労働者又は有期労働契約の労働者である場合、労働条件を設定する際、パートタイム・有期雇用労働法第8条(不合理な待遇の禁止)にも留意する必要があります。
 例えば、通勤手当の支給やシフト減に伴う手当の支払に当たっては、不合理な待遇差に該当しないように留意してください。

  

【シフト制に関するご相談】

 シフトに関するトラブルを未然に防止したい場合や、仮にトラブル(例:「シフトが以前より少なくなった」、「シフトを一方的に減らされた」など)が生じた場合、その解決方法の一つとして、個別労働紛争解決制度があります。
 まずは、お近くの都道府県労働局、各労働基準監督署内などに設置されている総合労働相談コーナーにご相談ください。

  

【雇用保険】

 加入要件のうち1週間の所定労働時間20時間時間以上の判断について、
 〇 労働契約書などに前記の「労働日、労働時間などの設定に関する基本的な考え方」が定められている場合は、

   その内容に沿って判断
 〇 「そのような基本的な考え方が定められておらずシフトが直前にならないと判明しない場合」や、

   「労働契約書などの内容と実際の勤務時間に乖離がある場合」は、実際の勤務時間に基づき平均の労働時間を
   算定して判断

 シフトの減少により臨時的・一時的に20時間を下回った場合でも、直ちに被保険者でなくなることはないが、
恒常的に20 時間を下回る見込みとなった場合は、その時点で被保険者でなくなる。

 シフト制労働者が次に該当する理由により離職した場合、「特定理由離職者」又は「特定受給資格者」と認められ、給付制限を受けないほか、基本手当の所定給付日数が手厚くなる場合があります。
 〇 具体的な就労日数が労働条件として明示されている一方で、シフトを減らされた場合
 〇 契約更新時に従前の労働条件からシフトを減らした労働条件を提示されたため、更新を希望せずに離職した場合

 また、シフト制労働者が次に該当する理由により離職した場合、「特定理由離職者」と認められ、給付制限を受けません。
 〇 新型コロナウイルス感染症の影響により、シフトが減少し、概ね1か月以上の期間、労働時間が20時間を下回った、
   又は下回ることが明らかになったことにより離職した場合

特定受給資格者

 倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者。
 その範囲は、「倒産」等により離職した者もしくは、「解雇」等により離職した者。(いずれもその詳細の定めあり)

特定理由離職者

 特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した者
 その範囲は、「期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないこと」により離職した者もしくは、「正当な理由(6項目のいずれか)のある自己都合」により離職した者 。(いずれもその詳細の定めあり)


 今回のペーパーでは、ここで触れた以外に労働時間、休憩、年次有給休暇及び休業の取り扱い、社会保険などを網羅していますので、シフト制を活用しているのであれば、一度目を通すことをおすすめします。