91 厚生労働省テレワークガイドラインについて

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 テレワークの労務管理面について、厚生労働省でテレワークガイドライン(テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン)を策定しています。
 その中から、労働時間関連の項目を中心に見ていきます。

 テレワークの形態について、ガイドラインでは業務の場所に応じて、
①労働者の自宅で行う「在宅勤務」
②労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用する「サテライトオフィス勤務」
③ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で行う「モバイル勤務」
の3つを挙げており、情報通信技術を利用した「ワーケーション」は、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務の一形態として分類することができるとしています。

   

テレワークの推進に当たって

 テレワークの制度としての導入・実施に当たっては、次のような事項について、労使間での十分な話し合いの上、ルールを定めておくことが重要。
 〇導入目的
 〇対象業務
 〇対象となり得る労働者の範囲
 〇実施場所
 〇テレワーク可能日(労働者の希望、当番制、頻度等)

 〇申請等の手続
 〇費用負担
 〇労働時間管理の方法や中抜け時間の取扱い
 〇通常又は緊急時の連絡方法など

   

テレワークの対象者等

 テレワークの対象者を選定するに当たっては、正規雇用労働者、非正規雇用労働者といった雇用形態の違いのみを理由としてテレワーク対象者から除外することのないよう留意する必要があります。
(パートタイム・有期雇用労働法において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、あらゆる待遇について不合理な待遇差を設けてはならないこととされています。)
  

導入に当たっての望ましい取組

 具体的には、既存業務の見直し・点検、円滑なコミュニケーションなどが挙げられています。
このうち、既存業務の見直し・点検については、不必要な押印や署名の廃止、書類のペーパーレス化、決裁の電子化、オンライン会議の導入等が有効であり、職場内の意識改革をはじめ、業務の進め方の見直しに取り組むことが望ましいとしています。

   

テレワークにおける人事評価制度

 非対面の働き方であるテレワークに対応した評価の手法の工夫として、次のような例示があります。この文中で具体的な評価手法名は出していませんが、目標管理制度、コンピテンシー評価を指していると考えられます。

 例えば、上司は、部下に求める内容や水準等をあらかじめ具体的に示しておくとともに、評価対象期間中には、必要に応じてその達成状況について労使共通の認識を持つための機会を柔軟に設けることが望ましい。特に行動面や勤務意欲、態度等の情意面を評価する企業は、評価対象となる具体的な行動等の内容や評価の方法をあらかじめ見える化し、示すことが望ましい。加えて、人事評価の評価者に対しても、非対面の働き方において適正な評価を実施できるよう、評価者に対する訓練等の機会を設ける等の工夫が考えられる。

 また、テレワーク実施者に対し、時間外、休日等のメールへの非対応などを理由として不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえないとしています。
   

テレワークに要する費用負担の取扱い

 労使いずれの負担か、負担額や請求方法などを労使で話し合い、就業規則等に規定することが望ましいとしています。
 労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定する必要があります。(法律上の相対的必要記載事項)
 なお、在宅勤務関連の費用負担等に関する源泉所得税の課税関係については、国税庁作成の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(令和3年1月15 日)で解説されています。

 

テレワークを効果的に実施するための人材育成

 テレワークの効果的な実施には、勤務時間帯、健康管理、作業能率といった点を考えつつ自律的に働いていくやり方が適しているとしています。
 企業の取組については、自律的に業務を遂行できるような仕事の進め方の工夫や社内教育等での人材育成、管理職のマネジメント能力向上を望ましいものとして挙げています。

 

就業規則の整備

 円滑な実施のため、使用者は労使で協議して策定したテレワークのルールを就業規則に定め、労働者に適切に周知することが望ましい。
 テレワークを行う場所の如何に関わらず、テレワークを行う労働者の属する事業場がある都道府県の最低賃金が適用されることに留意する必要があります。

  

労働時間の柔軟な取扱い

 ガイドラインでは、次の3つの労働時間管理の制度について触れています。
 〇 通常の労働時間制度及び変形労働時間制
 〇 フレックスタイム制
 〇 事業場外みなし労働時間制

 

■ 通常の労働時間制度及び変形労働時間制

 これらの制度では、あらかじめ始業・終業時刻、所定労働時間を必要がありますが、オフィス勤務でない方は、所定労働時間はそのままで、始業・終業時刻の設定で自由度を認めることも考えられます。
   

■ フレックスタイム制

 そもそも労働者が始業・終業時刻を決定できる制度なので、生活サイクルに合わせてこれらの時刻を柔軟に調整したり、労働時間をオフィス勤務日は長く、在宅勤務日は短くといったことも可能。
 設定した労働時間の途中で、業務から「中抜け」する場合でも、中抜け時間分だけ終業時刻を遅くする、同じ清算期間内の他の労働日で調整することが可能。
 また、企業側の対応として、在宅勤務日はコアタイムを設けない取り扱いも可能。

  

■ 事業場外みなし労働時間制

 この制度は、労働時間を算定することが困難な事業所外での労働で、使用者の具体的な指揮監督が及ばない場合に適用される制度なので、テレワークで一定程度自由な働き方をする労働者にとって、柔軟にテレワークを行うことが可能となる。

 テレワークにおいて、この制度を適用できる場合について、具体的に示されています。
(以下の囲み内は、原文のまま)

 テレワークにおいて、次の①②をいずれも満たす場合には、制度を適用することができる。
 
① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと

 この解釈については、以下の場合については、いずれも①を満たすと認められ、情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはない。
 
・勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
・勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
・会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合


② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
  以下の場合については②を満たすと認められる。

・使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合

 

テレワークにおける労働時間の把握

 労働時間の把握の原則的な方法として、「適正把握ガイドライン」(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)では、使用者(勤務時間管理者)による現認、パソコンの使用時間記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認すること等が挙げられています。
 テレワークでは、客観的な記録による把握、労働者の自己申告による把握が考えられます。
  

■ 客観的な記録による把握

 客観性を確保しつつ、簡便に行う方法として、次の2つが考えられるとしています。
① 労働者がテレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録等による把握
② 労働者の入退場記録の把握が可能なサテライトオフィスについては、その入退場記録等による把握

  

労働者の自己申告による把握

 例えば、情報通信機器の使用時間の記録が労働者の始業・終業時刻を反映できないような場合に、労働者の自己申告による労働時間把握が考えられます。
 この場合に必要とされる措置で挙げられているのは、
① 労働者、実際に労働時間を管理する者に十分な説明を行うこと
② パソコンの使用状況など客観的な事実と、自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離がある場合には、必要となる労働時間の補正をすること
③ 自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと です。

 労働者の自己申告での労働時間の簡便な把握方法として、一日の終業時に、始業時刻及び終業時刻をメール等にて報告させるといった方法を用いることが考えられます。

   

テレワークに特有の事象の取扱い

■ 中抜け時間

 中抜け時間については、労働基準法上、使用者は把握することとしても、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握することとしても、いずれでもよい。
 把握する場合には、例えば一日の終業時に、労働者から報告させること、また、その取扱いは、休憩時間として見合い分終業時刻を繰り下げる、時間単位の年休とするなどが考えられます。
 把握しない場合の取り扱いでは、始業・終業時刻の間の時間から休憩時間を除いて労働時間とするなどが考えられます。

   

勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間

 午前中はテレワーク、午後はオフィス勤務といった場合の移動時間のうち、労働者による自由利用が保障されている時間は、休憩時間として取り扱うことが考えられます。
 使用者が急きょオフィスへの出勤と、必要な就業場所間の移動を命じ、その間の自由利用が保障されていない場合は、労働時間に該当します。

   

■ 休憩時間の取扱い

 労使協定により、労働基準法上の一斉付与の原則の適用除外とすることが可能です。
  

■ 長時間労働対策

 テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法として、時間外の業務関連指示や報告でのメール送付などの抑制、所定外深夜・休日のシステムへのアクセス制限、労使の合意により時間外労働が可能な時間帯や時間数等をあらかじめ使用者が設定することなどが挙げられています。
   

テレワークにおける労働災害の補償

 事業場での勤務と同じく、使用者が労働災害に対する補償責任を負います。
 労働契約に基づいて事業主の支配下にあることで生じたテレワークでの災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。