先日、全国高等学校長協会、主要経済団体、関係省庁により、令和5年3月の高校卒業予定者(就職を希望する者)の採用選考期日の取りまとめが行われました。
〇 6月1日
ハローワークによる求人申込書の受付開始
〇 7月1日
企業による学校への求人申込及び学校訪問開始
(実質的な求人情報の公表日(企業情報解禁日))
高校生を対象とした求人では、ハローワークにおいて求人内容を確認した上で求人票に確認印を押して企業に返却します。そして、確認印のある求人票により、企業から学校に求人の申込みが行われます。
〇9月5日
学校から企業への生徒の応募書類提出開始(沖縄県は8月30日)
〇9月16日
企業による選考開始及び採用内定開始
高校卒業予定者への就職あっせんには、
〇 上記のような全国統一的な採用選考開始の期日を決定した上で、都道府県ごとに状況に応じて具体的運用を行う
〇 選考開始日から一定期間に限り、一人の生徒が応募できる企業を一社として学校推薦を行う「一人一社制」
といった慣行があります。
このような慣行には、景気変動などで求人が少ない状況でも、多くの生徒に応募の機会を与えることができる、短期間でのマッチングが可能であるといったメリットがありますが、
その一方で、
〇 高校生の就職の機会を保障しようとするあまり、かえって当事者の主体性を過度に制限しているのではないか
〇 現行の採用選考のやり方は、当事者である高校生や保護者の希望や意向が十分に反映されていないのではないか
〇 就職後3年以内の離職率が約4割であることなどから、就職後の支援の充実に加えて、採用選考の選択肢を広げる余地
があるのではないか
などの意見や指摘があります。
そのような意見や指摘を考慮して、「骨太方針 2018」や「規制改革推進に関する第5次答申」(2019年6月)で、一人一社制の在り方検討を行うべきとされたことから、関係省庁などによるワーキングチームが作られ、その活動により次のような内容を含む報告書がまとめられました。(2020年2月)
〇 一人一社制については、都道府県ごとにその状況に応じて、
・一次応募から複数応募・推薦を可能とする
・一次応募までは1社のみの応募・推薦とし、それ以降は複数応募・推薦を可能とする
のいずれかを選択するのが妥当。
〇 採用選考期日については、学校教育活動への影響などから一律に早める運用は現時点では難しい。
また、報告書には、民間職業紹介事業者へのヒアリングでの次のような意見もありましたが、今後について考えるヒントになると考えられます。(以下、原文のまま)
〇 高卒求人の動向は、製造業から福祉等のサービス業にシフトしつつある中で、高等学校との関係が薄い新興企業等にと
っては、採用実績がないこと等により、現在の仕組みの下では生徒への紹介・あっせんがされにくい。
〇 一人一社制は採用コストをかけたくない企業にとっても効率的な制度ではあり、地場産業の企業にとってもメリットが
ある制度である。
〇 一方で、これまで採用実績がなかった新興企業(情報通信系企業等)などにとっては人を確保しにくいのではないか。
〇 一人一社制を完全に否定するものではないが、段階的に複数社制にしていくべき。学校種別では、普通科は進学メイン
で就職指導のノウハウもないので一人一社スタートで良いと考える。一方、定時制及び通信制高校についてはほとんど
の生徒が就職するので、初めから複数社の方が良いと思う。