9 雇用保険の見直しについての「雇用保険部会報告書」

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 令和4年1月12日、雇用保険制度等の見直しに方向についての「雇用保険部会報告書」(厚生労働省労働政策審議会の職業安定分科会雇用保険部会)が公表されました。
 雇用保険部会で、令和3年9月から今年1月まで行われた検討での結論が、基本手当、教育訓練給付、求職者支援制度、雇用調整助成金の特例・休業支援金等、財政運営の5項目で述べられています。
  

基本手当について

基本手当の水準(給付率、給付日数等)について

 現時点で改正を行うこととはしない。
 これは、支給状況などの検証の結果、基本手当受給者の再就職状況といった指標について大きな変化がひられなかったこと等による。
    

事業を開始した者に対する基本手当の受給権の確保

 被保険者が離職して基本手当の受給資格を取得した後に、求職活動を行わずに、または求職活動を中止して起業した者が、やむを得ず廃業に至り、改めて求職活動に入る場合にも最大4年間までは、所定給付日数の範囲で基本手当を受給できるよう、制度の趣旨に沿った運用がなされることを前提に、受給期間の特例(※)を設けるべきである。

  (※) 起業から廃業の期間は受給期間の進行を停止(最大3年間)する仕組み
     

令和3年度末で期限が到来する暫定措置について

 コロナ禍以前に厳しい雇用情勢であった時期に設けられた次の暫定措置について、その経緯を考慮しつつ、現在、コロナ渦からの経済の回復途上にあることも踏まえ、令和3年度末の期限を3年間延長すべきである。

・雇止め等により離職した者の所定給付日数の拡充等
・地域延長給付
 
   

コロナ延長給付について

 コロナ禍からの経済の回復途上にあることや、感染の再拡大のリスクに備える観点から、当面は制度として存続させる必要がある。
 その上で、緊急事態宣言の発令ごとに、各都道府県における緊急事態措置が終了してから1年経過後はコロナ延長給付を行わないこととすべきである。
   現行制度では、新型コロナウィルス感染症等の影響を受けた特定受給者等であれば、緊急事態宣言の解除後も
     特段の終期を設けずに適用対象とされている。
  

雇止め等により離職した者の所定給付日数の拡充等

 特定理由離職者のうち「有期雇用契約の更新を希望したが雇止めされた離職者」について、基本手当の給付日数を一般受給資格者(90~150日)より多い「90~330日」とするなどの暫定措置。

地域延長給付

 倒産、解雇や雇止めによる離職者で、雇用情勢が悪い地域に居住し、かつ、重点的に再就職の支援が必要であると公共職業安定所長が認めた受給資格者に対して、基本手当の給付日数を60日(条件によっては30日)延長する暫定措置。

コロナ延長給付

 緊急事態宣言が発令された地域に居住する受給資格者について、その離職日(発令前、発令中、解除後で対象者の範囲が異なる)で見て対象となる場合に、基本手当の給付日数を60日(条件によっては30日 )延長する特例措置。

   

教育訓練給付

指定講座について

 オンライン・土日開催を進めるなど利用しやすい環境整備を図るほか、市場ニーズ、雇用の安定性、労働条件向上の効果などをもとにその内容の充実を図り、教育訓練支援給付金の指定講座の偏りの是正を図るべきである。
  

教育訓練支援給付金

 当該給付金は、令和3年度までの暫定措置となっているが、コロナ禍からの経済の回復途上にあることも踏まえ、3年間延長すべきである。
   当該給付金は、専門実践教育訓練(通信制・夜間制を除く)を受講し、修了する見込みのある45歳未満の若年
    離職者に対して、訓練期間中の受講支援として、基本手当日額の80%を訓練受講中に2か月ごとに支給するもの
  

求職者支援制度

平成3年度に講じられた特例措置について

 コロナ禍からの経済の回復の途上にあることや、以下の要件緩和により、必要な方が受講できる環境整備に取り組んでいる途上であることを踏まえ、令和4年度末まで延長すべきである。 

・職業訓練受講給付金の本人収入要件、世帯収入要件、出席要件の緩和
・訓練対象者の拡大
・訓練基準の緩和
 
   

雇用保険受給者の求職者支援訓練受講について

 雇用保険受給者の訓練受講選択肢の拡大や、これによる早期かつ安定的な再就職を促す観点から、公共職業安定所長による受講指示の対象とすべきである。
   

基本手当、教育訓練給付、求職者支援制度の各給付について、制度利用のボトルネックや制度趣旨に沿った効果を上げているかを含めて、令和4年度に効果検証を行い、その結果を踏まえて必要な見直しを検討すべきである。 
   

   

雇用調整助成金の特例・休業支援金等

雇用調整助成金の特例措置について

 「経済財政運営と改革の基本方針 2021」において「感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減していく」とされていることを踏まえて実施することが適当である。これに伴い、当面の措置として、令和4年度においては、以下のとおりの対応とすべきである。

・雇用調整助成金の活用が困難な企業に対する支援策として創設された休業支援金についても、制度としては存続
 させつつ、雇用調整助成金の特例措置の取扱い等の対応に合わせて制度の在り方を検討する。

・雇用保険臨時特例法により設けられた、「中小企業の基本手当日額の上限を超える部分」について、一般会計に

 より負担する仕組みを延長する 。   
    

 雇用調整助成金の特例措置については、 当部会の議論の中では、

業種によっては未だ厳しい状況にある企業が多いことから当面の特例措置の継続が必要である
感染状況や感染対策の内容が雇用に与える影響にも十分留意しつつ今後の特例措置の取扱いを検討すべき
   

との意見があった一方で、

長期にわたる特例措置が産業の新陳代謝を遅らせている可能性は否めない
労働者のスキルや労働意欲の低下が懸念される
   

といったことから、経済回復のブレーキにならないよう、エビデンスに基づいて縮小を議論する段階に来ているとの意見もあった。
    

雇用保険二事業に積立金から借り入れることができる仕組みについて

 当面の雇用保険二事業の安定的な運営を図るため、3年間継続することとすべきである 。
  

財 政 運 営 (保険料率に関する部分のみ)

失業等給付に係る保険料率

 令和2年度の弾力倍率が保険料率引下げが可能な水準にないことや、法律による暫定的な保険料率引下げ措置が令和3年度末で期限を迎えることから、現行の2/1.000から原則の8/ 1,000 に戻ることとなる。

 しかしながら、全体的に回復途上にあるものの、新型コロナウイルス感染症の経済への影響も未だ残っている状況にかんがみ、激変緩和措置として、次のとおりとすべきである。

・令和4年4月から9月まで       2/ 1,000
・令和4年10月から令和5年3月まで  6/ 1,000

      

育児休業給付に係る保険料率

 従前のトレンドで支出の増加が続くことを前提としても令和6年度まで安定的な運営が可能と確認できたことから、
4/ 1,000 のままとすべきである。
   

雇用保険二事業にかかる保険料率

 原則の率 3.5/1,000に対して、令和3年度までは弾力条項に基づき3/ 1,000 とされている。
 しかし、令和2年度の弾力倍率はマイナス値であり、弾力条項に基づく引下げが可能な水準にはないため、
原則の 3.5/ 1,000 に戻すことが適当である。