87 就業規則のキホン

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 就業規則について、労働基準法では次の事項を定めていますが、この投稿では、それらの定めの内容を条文順にみていきます。そして最後に、自社直営での就業規則の作成・見直しの際のポイントにも触れます。

          

     

就業規則作成・届出の義務

 就業規則の作成と、所轄所轄の労働基準監督署への届出の義務は、常時10人以上を使用する事業主(使用者)に課せられています。
 就業規則として届出をする範囲には、就業規則の本則だけではなく、次のイの規則やロの規程も含みます。
  (→それらの規則や規定も就業規則本体と一体として扱うということ)
  

イ 同じ事業所内で、本則のほかに一部の労働者に適用される就業規則を作成した場合、
   その就業規則

〇 例としては、本則としての正社員就業規則とは別に、パート社員限定で適用するパート社員就業規則を作成
  した場合など

〇 本則とは別に一部の労働者(雇用区分)に適用される別規則を作成するときは、本則に特定の雇用区分を
  就業規則本則の適用対象から除外する規定(適用除外規定)、または別途作成する就業規則の適用対象とする
  規定(委任規定)を設けることが望ましいとされています。
  

ロ 特定の事項について、就業規則とは別に関連規程を作成して定める場合、その社内規程

〇 例としては、給与関係の条文数が多くなったため、就業規則本則とは別に給与規程を作成した場合など

〇 このような社内規程を作成するときに、本則に特定の事項について別規程で定めることとする旨の規定
 (委任規定)を設けることとなります。  

 就業規則に定める事項として、労働基準法では11項目を列挙しています。
 それらは、必ず定めなければならない「絶対的必要記載事項」が3項目、その会社で定める場合は記載が必要な「相対的必要記載事項」が8項目に分かれます。

  

  

 

始業及び終業時刻

 会社所定の始業及び終業時刻に関連して、フレックスタイム、変形労働時間制、みなし労働時間制等を導入する場合はその内容を記載します。
  

休 憩 時 間

 労使協定を締結して一斉休憩の原則の適用除外をするときは、その労使協定の内容を記載します。
   

休 日 関 係

 国民の祝日の取扱い、法定休日の振替や法定休日勤務後の代休付与を行う場合はその旨、会社独自の休日などを記載します。なお、法定休日(毎週1回以上)の曜日を特定することまでは求められてはいません。
  

休 暇 関 係

 年次有給休暇の付与(継続勤務期間と年間付与日数等)、年休の計画的付与や時間年休の付与などを行う場合はその内容、会社独自の特別休暇制度がある場合はその内容、産前産後の休業、育児・介護休業などを記載します。
  

シ フ ト 制

 就業番(例:1番、2番、3番)ごとの始業・終業時刻や休憩時間に止まらず、就業番の転換ルール、一般勤務と交替勤務間の勤務形態の変更に関する事項なども記載します。
  

退 職 関 係

 自己都合、定年といった退職の方法とその取扱いを記載します。そして、解雇をめぐる紛争を未然に防止する観点から、解雇の事由の記載(例えば勤務態度不良、能力不足など)が求められています。  

  

 

退 職 手 当

 退職金の支給対象者の範囲を定めた上で、退職金の算出に使う要素(勤続年数、退職理由等)、それらの要素を使った計算方法、支払方法(支払時期も含めて)を一時金払、年金払のいずれにするのかといったことを記載します。
    

臨時の賃金等

 これらは、賞与、臨時的、突発的事由に基づいて支払われるものなどを指しています。
  

安 全 衛 生

 関係事項で挙げられるのは、安全衛生に関する遵守事項、安全衛生教育、労働者の健康診断、健康診断結果を踏まえた措置、長時間労働者に対する医師による面接指導、ストレスチェックといったものです。
  

制 裁 関 係

 けん責、減給、出勤停止、諭旨解雇及び懲戒解雇といった懲戒の種類を記載し、それらの懲戒処分を行う理由を列挙することが求められています。なお、就業規則に記載されていない理由での懲戒処分はできません。

  

作成・変更手続き(意見聴取)

 就業規則の作成又は変更に際して使用者は、その事業場の過半数労働組合等に対して、その就業規則の内容に関する意見聴取を行うよう定められています。そして、この意見聴取は口頭でのやり取りだけでは足りず、意見書の提出を受けるところまで求められ、就業規則の届出の際には、その意見書の添付が必要となっています。
 なお、その事業場に過半数労働組合がない場合には、法に定められた要件を満たして選出された過半数代表者が意見聴取を受け、意見書を提出します。
 
 反対の意見が出された場合については、就業規則に関する法律上の他の要件を満たしていれば、就業規則の効力には影響がないとされています。ただし、就業規則の変更により、労働契約の内容を労働者に不利益となる形に変更することは、その内容について、労働者と合意することなくできないと、 労働契約法第9条で定められています。
 これについて、労働契約法第10条で、合意なくして労働条件の不利益変更を行える場合の要件が定められていますが、すべて満たすことは難しいケースが多いと考えられます。
  

過半数代表者について

 就業規則の作成や変更に際して意見を聴取する過半数労働組合がない場合には、次の要件を満たす者を意見聴取を受ける過半数代表者として選出します。

 イ 労働基準法上の管理監督者以外のものであること
 ロ 就業規則の作成・変更に際して、労働者代表として意見聴取を受ける者を選出することを明らかに

  した上で、投票や挙手などの方法で選出された者であること。
   加えて、使用者から指名を受ける等、使用者の意向により選出されたものでないこと。

 ですから、事業所の職員親睦のための任意団体の代表者などを、そのまま過半数代表者に充てることはできません。

  (→任意団体の代表者が管理監督者でない場合に、改めてロの手続きを適正に行い選出するならば、
    問題はありません、)

  

制裁規定の制限

 就業規則で減給の制裁を定める場合について、次の制限がかけられています。

1つの事案に対して減給の総額を、平均賃金1日分の半額以下とすること
1賃金支払期に発生した複数の事案に対する減給の総額を、当該賃金支払期における賃金の総額の

  10分の1以内とすること   

 この減給の制裁の制限について、実務上のポイントは、

遅刻や欠勤があったときに、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、勤務しなかった時間(労務の提供がなかった
  時間)に対応する賃金を減額することはここでいう制裁にあたらないが、その対応部分を超えた減額は、制裁
  となり、上記の制限の適用対象となること

上記の制限での「当該賃金支払期における賃金の総額」は、実際に支払う額であることから、当該賃金支払期
  に遅刻や欠勤などでの減額があった場合は、それらの減額後の実際の支払額で10分の1以内の判定をすること

賞与の減額で制裁を行う場合も、上記の「総額の10分の1以内」の制限が適用されること

  (→当該賃金支払期における賃金の総額は、「賞与額」に読み替え)

  

法令、労働協約及び労働契約との関係

法令・労働協約との関係

 就業規則は、法令やその事業場での労働協約に反してはならず、それらに反した就業規則については、所轄労働基準監督署長が文書により変更命令を行うことができます。
  (→法令や労働協約は、就業規則の上位にあるということ)

  

労働契約との関係

 個別の労働契約で定める労働条件が、就業規則で定めるそれを下回っている場合については、労働契約法第12条の定めによるものとされています。
 具体的には、労働契約の該当部分は無効となり、就業規則で定める水準に引き上げられますが、一方で、無効となった部分を除く当該労働契約は有効であり続けます。
  

  

労働者への周知義務

 就業規則について、労働基準法で規定する協定や決議と同様に、次のいずれかの方法で労働者に周知することが義務付けられています。

常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること
書面を労働者に交付すること
磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の

  内容を常時確認できる機器を設置すること  

   

法に違反した場合の罰則

 次の事項に関する法違反は、30万円以下の罰金の対象となります。 

就業規則作成・届出の義務 [第89条]
作成・変更の際の過半数労働組合もしくは過半数代表者からの意見聴取 [第90条第1項]
制裁規定の制限 [第91条]
労働者への周知義務 [第106条]
 
  

  

自社直営での就業規則の作成・見直しの際のポイント

就業規則の適用範囲を明確にする

 契約期間の定めの有無や所定労働時間、仕事の内容や責任の程度が異なる複数の雇用区分(正社員、有期契約社員、パートタイマーなど)がある場合には、まずぞれぞれの雇用区分の定義を明確にしたうえで、雇用区分ごとに適用する条項をどう変えていくか、また、雇用区分ごとの就業規則とする必要があるどうかといった検討は欠かせません。
    

法律関係のチェックはしっかりと行う

 時間的な余裕がないときは、まず厚生労働省のモデル就業規則の関係条文と解説に当たってみることです。それでも判断できないときは、その法規制などに関するリーフレットやパンフレットにも当たって確認してみてください。
  

同業他社などの就業規則を参照するときは注意が必要

 参照した就業規則は、あくまでもそれを作成した同業他社に合わせてカスタマイズされたものですから、自社に合うかどうか漏れなく検討していきます。
 時折みられますが、別の社内規程への委任規定はあるが、その社内規程がまだ定められていないといったことは、同業他社や市販の書籍の就業規則本則をを深く検討せずに下敷きとしてしまうことが原因の一つあると考えられます。

  

10人未満の会社でも就業規則の周知は確実に行う

 労働基準監督署への届出義務の対象にはならないといっても、その就業規則の適用を受ける従業員への内容周知の必要性が変わることはありません。
  

今後、雇用区分間で賃金などの待遇に差をつける場合は注意が必要

 2021(令和3)年4月から中小企業にもパート・有期雇用労働法が適用されていますが、パートタイマーや有期契約社員の賃金などの待遇について、同法中の均等待遇、均衡待遇の考え方に沿った決め方をしているかどうか確認する必要が生じています。
 また、同法では、パートタイマーや有期契約社員から、正社員などとの間での賃金等の待遇差について説明を求められた場合の事業主の説明義務を定めています。この説明は、口頭のみでは足りず、文書などを示して待遇差とその理由を説明することが求められています。その説明ができるものとなっているかどうかの見極めは欠かせません。

  

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東社労士オフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和