85 助成金Q&A

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 厚生労働省助成金に関するQ&A集です。

  

Q1 厚生労働省の助成金にはどのようなものがありますか?

 厚生労働省の助成金は、その財源と目的によって、雇用関係助成金、 労働条件等関係助成金の2つのカテゴリーに分かれています。そして、雇用維持、再就職支援、人材開発、労働時間等の設定改善条件といった目的別に個別の助成金(コース)が設定されています。

 それらの中から、いくつか挙げてみれば、そのカバーする範囲の広さがわかります。

【雇用関係助成金】

〇 雇用調整助成金

休業、教育訓練や出向を通じて従業員の雇用を維持する

人材確保等支援助成金
  (テレワークコース)

適正な労務管理下でのテレワークの導入・実施により従業員の離職率の低下を図る

通年雇用助成金

積雪寒冷地で冬期間に離職を余儀なくされる季節労働者を通年雇用する

65歳超雇用推進助成金
(65歳超継続雇用促進コース)

65歳以上への定年引上げなどを実施する

〇 キャリアアップ助成金
  (正社員化コース)

有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換または直接雇用する

キャリアアップ助成金
  (障害者正社員化コース)

障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等へ転換する

〇 両立支援等助成金
 (出生時両立支援コース)

中小企業が男性の育児休業取得推進に取り組む

人材開発支援助成金
  (特定訓練コース) 

OJTとOff-JTを組み合わせた訓練、若年者への訓練、労働生産性向上に資する訓練等を実施する 

〇 人材開発支援助成金
  (人への投資促進コース) 

デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施する

【雇用関係助成金】

〇 業務改善助成金
  

事業場内で最も低い労働者の賃金(事業場内最低賃金)を引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行う

〇 働き方改革推進支援助成金
(労働時間短縮・年休取得促進
 コース)

労働時間の短縮や年次有給休暇取得促進に向けた環境を整備する
 
 

〇 エイジフレンドリー補助金
  

高齢者を対象とする安全衛生確保に係る取組や施設整備、機器導入等を実施する 

  

Q2 申請はだれが行うのですか?

 基本的には、事業主が申請を行い、指定した口座への振り込みという形で助成金の支給を受けます。
 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金などでは、労働者本人が申請して支給を受けますが、これはあくまでも例外です。

  

Q3  前のQでの「事業主」とはどのような組織や人ですか?

 ここでの「事業主」は、事業の経営主体となるもので、具体的には次のとおりです。

個人 (個人事業主)
・法人 (株式会社、有限会社、合同会社、医療法人など)
・法人格がない社団 (学会など)
・財団

 また、労働保険の適用事業主、社会保険の適用事業主 (強制適用の場合) であることが必要で、加えて、それぞれの助成金(コース)での要件を満たすことも求められます。

  

Q4 助成金を申請・受給できる「中小企業事業主」の定義は?

 厚生労働省の助成金では、助成対象が中小企業主に限定されたり、大企業と中小企業事業主で助成率や助成額に差が付けられることがあります。
 中小企業事業主としては、右表の条件のうち「資本金または出資金」、「常時雇用する労働者」のいずれかに該当すればよいとされています。
 また、個人事業主や医療法人、NPOなどのように資本金・出資金のない事業主は、常時雇用する労働者の数により判定します。


※「医療・福祉」は、サービス業に含まれる。

  

Q5 事業主または取締役の親族は従業員でも対象とならない?

 対象とならない助成金コースとそうではない(対象となる)ものに分かれますので、申請予定の助成金コースのパンフレットなどで事前の確認が必要です。

 対象とならない例として、キャリアアップ助成金(正社員化コース)で挙げられているのは、「転換等をした事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族」です。
 具体的には、事業主または取締役から見て、曾祖父母、おじおば、おいめい、曽孫(血族ではその配偶者まで)がその範囲となります。
 

  

Q6 助成事業の内容と助成金額の関係は?

 助成事業の内容と助成金額の関係は、次の2つに大きく分けられます。
  

所定の取り組みに対して定額を支給

 賃金を一定率以上引き上げる、男性社員が一定日数以上の育児休業を行う、有期契約社員やパート社員の正社員化といった所定の取り組みを行った場合に、その取り組みに要した額にかかわらず定額を助成するものです。
 支給された助成金(※)の使途についての制限は特にありません。


 (※)厳密には、助成金額から所定の取り組みに要した額を差し引いた残余額
  

助成事業に要した金額の一定割合を支給

 助成対象となる事業メニューを実施した場合に、その実施に要した経費の一定割合を助成するものです。
 支給された助成金は、事業実施に要した経費の一部を後払いで受け取る形になるので、使途は指定されているといえます。雇用調整助成金はこちらに該当します。  
  

  

Q7 他の助成金や補助金を受給している場合の取り扱いは?

 問題となるのは、次の2つのパターンです。
  

同じ年度に、同じ措置内容で、国や地方公共団体から他の補助金の交付を受けている場合

 この場合、厚生労働省の助成金の支給を受けることはできません。

【ここでの「同じ措置内容」の例】
 ・生産性向上のために導入される機器と設置場所が同じ
 ・労働条件改善の対象事業所、対象者及び実施内容が同じ など

  

過去に同一内容の措置内容を対象とした厚生労働省の助成金を受給している場合

 支給対象外とされることがあります。
 対象外となるケースは、助成金ごとに個別に定められていますので、助成金申請の検討を始める前の確認が必要。

【該当する例】
 ・有期契約社員の正社員転換や人事評価制度導入といった目的が同じである過去にあった別名称の助成金

  

Q8 生産性要件とは?

 一部の助成金において、生産性向上の取組み支援を目的に、生産性を向上させた事業所に対して、助成額もしくは助成率の割増を行う制度があります。その制度で生産性向上の度合いを判定する基準が「生産性要件」です。
 
 具体的には、助成金の支給申請をした日からみて、直近の会計年度の生産性の値と、直近会計年度の3年度前の値を比較して、6%以上伸びている場合に割増の対象となります。なお、金融機関から事業性評価を得ている場合には、1%以上6%未満の伸びでも生産性要件を満たすとされることがあります。

 生産性 = 付加価値額 / 事業所の雇用保険被保険者数
   

  

Q9 助成金の支給までの手続きなどの流れは?

 手続きや実施の流れは助成金ごとに異なりますが、一例を右図で示しています。

計画書提出、計画の認定

 助成対象となる取組や事業内容を取りまとめて計画書として提出(都道府県労働局への提出が多い)して、認定を受けます。計画書ではなく交付申請書を提出する助成金も多くあります。また、取り組みにあたっての推進者や管理者を置くことが要件になる場合があります。
 提出期限については、キャリアアップ計画書(キャリアアップ助成金)のように最初の取組の前日までというものもありますが、多くは、最初の取組等を行う月の前々月末、1か月前といった期限になっています。
 そして、助成事業として機器やソフトの導入、外部専門家のコンサルティングなどを行う場合は、見積書を徴収した上で助成対象経費(予定額)を積算するための期間も必要であり、日程的な余裕を持って進めていくことをお勧めします。  
 

取組や事業の実施

 取組や事業の実施にあたって、必要となる制度をあらかじめ就業規則等に規定して導入する必要があります。就業規則等に規定することで、その制度や取組は、会社としての取り組みであり、また、臨時的・一時的なものではないという位置づけになります。
 なお、計画の認定(交付申請の場合は、交付決定)より前に、正社員転換や昇給といった取組や購入等の契約を行ったり、納品やサービス提供を受けた場合は、助成対象外となります。
 取組や事業の内容を変更するときは、軽微なものを除いて、あらかじめ変更申請を行い承認を得ておく必要があります。

  

助成金の支給申請から指定口座への助成金振込まで

 助成金の支給申請の多くは、取組や事業が完了した翌々月の月末といったように2か月程度の申請期間内に行うこととなります。また、助成事業として購入を行ったり、サービス提供を受けた場合は、それらについての実績報告も申請内容に含まれます。
 助成金の対象経費の支払は振込が原則ですが、あえてクレジットカード決済を行い、その引き落としが交付申請(実績報告)の時点で未実施の場合は、関係する経費は支給対象外となります。

 また、電子マネーのうちチャージ型、プリペイド型のものは、助成対象として申請している当該商品の購入等の費用そのものについて、銀行口座からの引落しが確認できず、支払の時点が不明確であるため、原則として 支給対象外となります。

 支給申請の内容審査と助成金の支給決定には、3~4か月以上要することもあると考えてください。
 助成金の口座振込に使うのは、あくまでも申請者(法人、個人事業主等)の口座です。
  

  

Q10 助成対象としての可否判断のパターンは?

 右図は、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の2022年度申請マニュアルに掲載されているものです。

 6つの例のうち助成対象となるのが、〇印の2つ(①、②)で、×印の4つ(③~⑥)は対象外です。

 最上段の①が、交付決定後に契約を行い、事業実施期間内に支払まで完了している原則どおりの対応です。

 ②は、「支払※」が事業実施期間外でイレギュラーながらも許容範囲内の対応です。


※ 上図中の丸数字のみ筆者加筆。

 ②の支払は、事業実施期間中に発生して額も確定しているが、事業実施期間中に支払えない理由があるものです。マニュアルで、「社会保険労務士に支払った謝金から源泉徴収した所得税の納付」を例として挙げています。

 ③~⑥が助成対象外となった理由は、
 ・交付決定前に契約を行った (③)
 ・必要となる就業規則の変更や改善措置を事業期間外に行った (④、⑤)
 ・事業対象期間外かつ支払後に納品を受けた (⑥)

  

Q11  助成金の申請から受給までの期間は?

 助成金より異なってきますが、数カ月から長いものでは1年6か月超となります。
 雇用調整助成金では、特例措置として、本来は休業実施前に提出する計画届が省略され、支給申請も休業実施月の翌々月末まで可能であり、かつ短期間で受給することができますが、あくまでも例外です。
   

  

Q12 助成金を申請するには就業規則の作成が必須ですか?

 従業員数に関係なく、就業規則の作成、事業所内周知と労働基準監督署への届出を求めている助成金もあります。
 その一方で、多くの助成金では、10人未満の事業所については、そのような就業規則の作成・届出等の代わりに、事業所の労働者側の代表者による申立書でも申請可としています。

  

Q13 助成金に取り組む前に確認する書類や労務管理関係事項は?

 最低限確認しておきたいものには、次のようなものがあります。

対象となる従業員について】

〇 労働契約書もしくは労働条件通知書
〇 タイムカード等の勤務状況が確認できる書類
〇 賃金台帳等の賃金、賞与等の支払が確認できる書類
〇 労働保険・社会保険料の控除が確認できる書類

                     など

事業所全体として】

〇 就業規則や関係規程、36協定書など
〇 年次有給休暇管理簿
〇 近年の自己都合以外の退職の有無、あればその内容
〇 労働保険・社会保険料の納入済が確認できる書類

                      など

  

Q14 助成金と補助金の違いとは?

 申請の採択までのプロセスの違いに着目すれば、その違いは次のとおりです。

助 成 金

 助成の条件を満たしていて、事業実施計画などに問題がなければ、先着順に申請が採択されていきます。
 そのため、締切日前でも予算枠が無くなれば申請の受付を終了することがあります。実際に令和3年度にも複数の助成金で、当初予定の締切日前に予算枠が無くなり申請受付を終了しています。

  

補 助 金

 締切日までに申請されたすべての案件(申請書類の不備がある案件などは除く)を審査して評価の高いものから順に採択して、予算枠が無くなった時点で採択終了となります。
  つまり、助成金と異なり申請提出の前後は採択に影響しません。

  

 ちなみに、採択率を見てみると、経済産業省補助金は、公募回ごとに見れば30%台ということもあり、60%台であれば高めといえるのではないでしょうか。厚生労働省助成金の採択率は公表されていませんが、経産省補助金よりは高めであるというのが私の実感です。

  

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東社労士オフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和