84 70歳までの就業機会確保の努力義務

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 65歳までの雇用確保措置の先、65歳から70歳までの「就業機会確保の努力義務」が、2021(令和3)年
4月から中小企業も含めて下図のような形で適用されています。

        

   

雇用による措置

 3つの雇用措置のうち、定年引上げと定年廃止は、65歳までの措置と同じ内容のものですが、継続雇用制度については、異なる点が2つあります。
  

継続雇用制度での対象者基準

 65歳までの継続雇用では希望者全員が対象でしたが、70歳までのものはあくまでも努力義務であるため、対象となる高年齢者についての基準(対象者基準)を設けて運用することができます。また、基準を設けるときは、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。

 対象者基準の内容として想定されているのは、

・就業規則に定める解雇事由や退職事由(例えば、心身の故障、勤務状況の著しい不良など)に該当する場合
・過去の一定期間の人事考課、出勤率など客観的に評価できるもの、定期健康診断結果への産業医の判断など

 でそれらを基準とすることが就業規則等に定められている場合

 ただし、その基準が労使間で十分に協議の上で定められたとしても、次のようなものは認められません。

・恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨に反するもの
他の労働関係法令違反、公序良俗に反するもの

自社以外での継続雇用

 65歳までの継続雇用では、自社以外で継続雇用先として認められるのは、親会社や子会社などの特殊関係事業主に限られていましたが、70歳までのものでは、書面で契約を結んだうえで、特殊関係事業主以外の会社で雇用してもらうことも認められています。

 継続雇用先を派遣会社にしようとする場合には、認められるものとそうでないものに分かれます。
 具体的には、常用型派遣は認められ、登録型派遣は、認められないこととなります。登録型派遣の理由は、常用型と異なり、継続的な雇用機会が確保されていると言えないところにあります。
   

どこまで措置すれば努力義務をみたしたことになるのか?

 定年まで雇用した事業主が、70 歳まで自社以外の会社や団体で働ける制度を定めていれば、努力義務を満たしたことになります。
 対象となる高齢者の希望に合致した条件提示までは求められておらず、事業主が合理的な裁量の範囲での就業条件を提示していれば、仮に就労についての合意に至らず、その高齢者が就労を拒否したとしても、努力義務を満たしていないということにはなりません。

(→創業等支援措置でも、過半数労組等が同意した実施計画に基づき制度導入をしていれば
  同じ考え方になります。)

   

自社以外での継続雇用者が解雇等された場合

 前項のとおり、制度を導入して努力義務を満たしている場合は、その者の70 歳までの残りの期間について、定年まで雇用した事業主が改めて高年齢者就業確保措置を講じる必要はない。
  

対象者基準として不適切とされるものの例

・会社が必要と認めた者に限る (基準がないことと等しく、改正の趣旨に反するおそれ)
・上司の推薦がある者に限る (基準がないことと等しく、改正の趣旨に反するおそれ)
・男性(女性)に限る (男女差別に当たるため)
・組合活動に従事していない者に限る (不当労働行為に当たるため)

特殊関係事業主の範囲

・元の事業主の子法人等
・元の事業主の親法人等
・元の事業主の親法人等の子法人等
・元の事業主の関連法人等
・元の事業主の親法人等の関連法人等

※上記の「法人等」は、会社、組合その他これらに準ずる事業体のことであり、外国における
 これらに相当するものも含みます。

   

創業支援等措置(雇用によらない措置)

 創業支援等措置は雇用によらない措置として、対象となる高齢者が自ら営む事業や、他の団体での就労を支援するもので、「70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」「70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入」の2つのパターンがあります。  

 創業支援等措置の導入手続きの流れは、右図のとおりで、実施計画の作成と過半数組合等の同意は必須であり、いずれかでも欠けている創業支援等措置導入は、法律上の努力義務を満たすものと認められません。
 そして、創業支援等措置の制度に基づいて個々の高年齢者と契約を締結する際には、書面による契約が求められます。継続的に契約を締結していると認められるには、70歳までは原則として契約が更新される条件になっている必要があります。

 元の事業主に雇用されていた時の業務と、業務内容や働き方(勤務時間・頻度、責任の程度など)が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせることは、法の趣旨に反するものです。そのようなものは、本来雇用措置で行うべきものであるというのがその理由です。

 シルバー人材センターやボランティア活動とのマッチングを行う団体などへの登録は、就業機会確保措置として認められません。これらの措置では業務が定まっていないため、従事する業務の内容や支払われる金額の明示を前提に実施計画を作成して制度を導入することができないのがその理由です。

 創業等支援措置での対象労働者との個別の契約(業務委託契約又は社会貢献事業に従事できる契約)について、対象者基準を設ける場合は、予定される業務に応じて具体的な基準を定めることが必要です。
 また、実施計画に定めた契約解除事由や契約を更新しない事由に該当する場合は、契約を継続しないことが可能です。
   

創業支援等措置の実施に関する計画の記載事項

・高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講ずる理由
・高年齢者が従事する業務の内容に関する事項

   ⇒高年齢者の知識・経験・能力等を考慮した上で決定し、契約内容の一方的な決定や不
    当な契約条件の押し付けにならないようにすること

・高年齢者に支払う金銭に関する事項
   ⇒
支払う金銭は、業務の内容や当該業務の遂行に必要な知識・経験・能力、業務量等を
    考慮したものとすること

・契約を締結する頻度に関する事項

   ⇒個々の業務の内容・難易度や業務量等を考慮し、できるだけ過大又は過小にならない
    よう適切な業務量や頻度による契約を締結すること

・契約に係る納品に関する事項
   ⇒成果物の受領に際しては、不当な修正、やり直しの要求又は受領拒否を行わないこと

・契約の変更に関する事項

   ⇒高年齢者に支払う金銭や納期等の取扱いを含め労使間で十分に協議を行うこと

・契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む。)
・諸経費の取扱いに関する事項

・安全及び衛生に関する事項

   ⇒業務委託に際して機械器具や原材料等を譲渡し、貸与し、又は提供する場合には、
    その機械器具や原材料による危害を防止するために必要な措置を講ずること

・災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項・ 社会貢献事業を実施する法人その他の団体に
 関する事項
・創業支援等措置の対象となる労働者の全てに適用される定めをする場合においては、これに

 関する事項

      

70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

 これは、退職して起業する高齢者と、業務委託契約を70歳まで継続的に結ぶ仕組みを導入するものです。

 業務委託等の契約の当事者になるのは、当該高年齢者を定年まで雇用していた事業主です。
 グループ会社を含めた他社から受注については、当該高年齢者を定年まで雇用していた事業主がその業務を受注した上で、当該高年齢者
再委託するのであれば認められます。

 契約する業務の内容、支払う金銭、契約の頻度などは、創業支援等措置の実施に関する計画に基づき、対象となる高齢者との個別の契約の内容とします。

 創業支援等措置による働き方が、家内労働法に該当するものである場合は、創業支援等措置の手続きや留意事項と家内労働法の規定のいずれも遵守して、働き方を定める必要があります。
 (→機械器具や原材料等の譲渡、貸与等がある場合は、実施計画にそれらによる危害防止の措置を定める)
  

70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入

 対象となる高齢者が従事できる社会貢献事業は、「事業主が自ら実施する社会貢献事業」「事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業」の2つです。

 ここでの「社会貢献事業」は、社会貢献活動その他不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業である必要があります。
  (→例えば、特定の政党の推薦・支持等を目的とする事業のように、特定又は少数の者の利益に資することを目的
    とした事業は対象外です。)

 想定されるものとして挙げられている2つのケースは、

・メーカーが自社商品を題材にした小学校への出前授業を行う事業において、定年等退職者が企画立案を行っ
 たり、出張授業の講師を有償ボランティアとして務めること

・希望する定年等退職者が会員となることができるNPO法人に、里山の維持・運営に関する事業を委託し、

 定年等退職者がそれらの事業に関する業務(植樹、ビジターセンターでのガイド等)に有償ボランティアと
 して携わること

 また、明確な基準が定められていないため、社会貢献事業に該当するか否かは、各企業で事業の性質や内容等を勘案して個別に判断していくことになります。

〇 事業主が委託、出資等する団体について、出資等の「等」は、資金の提供、法人その他の団体への事務室の提供又は
  貸与等の援助を指しています。

〇 自社以外も含めた継続雇用などとの兼ね合いで問題となる「労働者性」については、社会貢献活動にいつ参加するか
  といった事項に関して高年齢者に参加の諾否の自由がある旨を定めるなど、労働者性が認められない方法を採る必要
  があります。

〇 社会貢献活動に対して支払われる金銭の具体的な額は、実施計画作成時に過半数労働組合等の同意を得て定めます。
  その際に考慮する点は、

・当該業務の遂行に必要な知識・経験・能力、業務量等を考慮したものとすること
・高年齢者の就業の実態や生活の安定等に留意すること

   

導入・実施上の留意点

〇 この努力義務は、全ての企業に対して一律に適用されるものであるため、当分の間、65 歳以上の労働者が生じない企業も
  含めて、措置を講じるよう努めることとなります。


〇 一つの措置で70歳までの就業機会確保を行うことにこだわらず、68歳までは継続雇用、それ以降70歳までは創業支援等
  措置といったように、複数の措置を組み合わせる対応も可能です。
  また、企業の実情に応じて、職種・雇用形態により措置内容を区別することも可能です。

複数の措置を講じる場合には、個々の高年齢者にいずれの措置を適用するかについて希望を聴取し、これを十分に尊重し
  て決定していきます。

〇 対象者がこれらの措置により定年前とは異なる業務に就く場合には、新しく従事する業務に関して研修や教育訓練などを
  行うことが望ましいとされています。ただし、雇用による措置を講じる場合は、安全衛生のための教育を必ず行います。

〇 事業主が導入した措置(定年の引上げ及び定年の定めの廃止を除く。)の利用を希望する者の割合が低い場合には、
  労働者のニーズや意識を分析し、制度の見直しを検討すること。

〇 契約に基づく業務の遂行に関して高年齢者から相談がある場合には誠実に対応すること。

〇 創業支援等措置により就業する高年齢者が、委託業務に起因する事故等により被災したことをその措置を講ずる事業主が
  把握した場合には、当該事業主が当該高年齢者が被災した旨を厚生労働大臣に報告することが望ましい。

   

65歳以上でも働ける制度の導入状況

 65歳以上の雇用の状況を2020(令和2)年6月のデータで見ると、65歳以上でも働ける制度を導入している企業は3社に1社(34%)でその内訳は、

定年制の廃止   3.0%
・66歳以上の定年 2.6%
・希望者全員について66歳以上の継続雇用 8.0%
・基準該当者について66歳以上の継続雇用 10.9%
・その他の制度で66歳以上まで雇用    9.5%

 その一方で、65歳までの雇用確保措置は、実施率99.9%とほぼ完全実施の状況です。

(データ出典:令和2年高年齢者の雇用状況(厚生労働書))