83 2021・22両年の高齢者雇用・年金の法改正について

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 2021(令和3)、2022(令和4)年と高齢者雇用・年金の法改正が複数ありましたので概要をまとめました。
    

高年齢者就業確保措置の新設

 

 

 原則義務化されている65歳までの継続雇用の先、70歳までの就業機会確保の努力義務が設けられました。
 今回、65歳までと同様の雇用確保措置に加えて、社外での創業支援等措置が新設されていますが、これは、65歳以上になるとそれまでに比べて体力等の個人差が出てきたりする点なども考えての措置です。
   

雇用確保措置

 これは、現在65歳まで義務化の措置を70歳まで延長するイメージであり、次の3つの施策があります。
 ①70歳までの定年延長
 ②70歳までの継続雇用制度 
 ③定年廃止


 このうち、②の継続雇用制度で65歳までのものと異なる点は、
 ・契約を結んで他の事業主の下で継続雇用する場合も含まれること
 ・あくまでも努力義務であり、対象者を限定するための基準(対象者基準)を設けて
  運用することが可能
   

創業支援等措置

 社外での就業機会の確保を企業が支援するイメージであり、次の2つの施策があります。
 ④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度
 ⑤70歳まで継続的に事業主が自ら実施する社会貢献事業などに従事できる制度

 ④の継続的な業務委託契約締結は、従業員が自ら希望して、社外で新たに事業(個人事業等)を始めるとき、その者と業務委託契約を結ぶなどして継続的に支援することです。

 ⑤の社会貢献事業への従事は、次の3つのケースで各事業の実施者と元従業員が、委託契約などを結ぶことになります。
  ・事業主が自ら実施する社会貢献事業
  ・法人その他の団体が事業主から委託を受けて実施する社会貢献事業
  ・法人その他の団体が実施する社会貢献事業で、事業主が必要な資金提供等の

   援助を行うもの
   
 創業等支援措置を実施する場合は、過半数労働組合等の同意を得た上で行うことが望ましいとされています。
 また、事業主に雇用されていたときの業務と内容や働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせることは、法の趣旨に反するものです。 

高年齢者雇用安定法2021年4月施行】
  

マルチジョブホルダー(複数就業者)への雇用保険の適用

 

 

 複数の雇用契約を結び、複数の就業場所で働く「マルチジョブホルダー」のうち、次の4つの要件のいずれにも当てはまる方が雇用保険に任意加入できるようになりました。
 これは、雇用保険適用の要件、一の事業主で「1週間の所定労働時間20時間以上」の例外措置です。

 〇 2つ以上の雇用保険適用事業(事業所)に雇用される65 歳以上の者
 〇 それぞれの適用事業での週所定労働時間が5時間以上20時間未満
 〇 2つの適用事業での週所定労働時間の合計が20時間以上

 〇 上記の2つの適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれること

 任意加入の手続きは、そのマルチジョブホルダー本人が居住地のハローワークに行い、マルチ高年齢被保険者となります。

雇用保険法ほか2022年1月施行】
  

在職定時改定の導入

 

 

 65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映する制度が導入されました。
(従来の退職改定では、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に65歳以降の就労分をまとめて年金額に反映)

厚生年金保険法2022年4月施行】
  

在職老齢年金制度の見直し

 

 

 「在職老齢年金」とは、老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金を含む)の受給権取得後に就労した場合に、老齢厚生年金の額(基本月額)、給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額を支給停止する仕組みのことです。

 基本月額と総報酬月額相当額の合計額に対して支給停止を一部開始する基準額が、60~64歳の在職老齢年金(低在老)で「47万円」に引き上げられて、65歳以後の在職老齢年金(高在老)と同額になりました。

 この引き上げにより、支給停止の対象者が減少します。   

厚生年金保険法2022年4月施行】
  

公的年金受給開始時期の選択肢の拡大

 

 

 従来70歳であった老齢年金の繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられました。
 (65歳から75歳まで繰下げた時の増額率は84%)
  

【国民年金法、厚生年金保険法ほか2022年4月施行】
  

公的年金の繰り上げ受給選択時の減額率の変更

 

 

 老齢年金の繰上げ減額率を従来の 0.5%/月から 0.4%/月に引き下げられました。
  (65歳から60歳まで繰上げた時の減額率は、30%から24%に縮小)
  

【国民年金法、厚生年金保険法ほか2022年4月施行】
  

確定拠出年金(DC)の加入可能要件の見直しなど

 

 

 確定拠出年金(DC)については、この2年で加入可能要件の見直しや制度面・手続面の改善が進められています。
  

加入可能年齢の引上げ

〇 企業型DC
  ⇒ 継続して使用される者に限らず、厚生年金被保険者(70歳未満)が加入
    可能になりました(70歳になるまで加入可能)

〇 個人型DC(iDeCo)
  ⇒ 60歳以上でも国民年金被保険者であれば加入可能とされ、第2号被保険者
    (民間会社員や公務員など)、任意加入被保険者(※)について、65歳にな

    るまでは加入可能になりました

   (※) 日本国籍を有する海外居住の任意加入被保険者を含む。   

【確定拠出年金法ほか2022年5月施行】
  

受給開始時期の選択肢の拡大

 公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に併せて、企業型DC・個人型DC(iDeCo)における老齢給付金の受給開始年齢の上限も75歳に引き上げられました。(→75歳に達するまで資産の運用が可能
 この拡大措置の対象は、1952年4月2日以降に生まれた方です。

【確定拠出年金法2022年4月施行】
  

制度間の年金資産の移換(ポータビリティ)拡大

 次の年金資産の移換が可能となりました。
 ・終了したDBからiDeCoへの移換
 ・加入者の退職等に伴う企業型DCから通算企業年金への移換

【確定拠出年金法ほか2022年5月施行】
  

企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入の要件緩和

 企業型DC加入者について、規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、全体の拠出限度額から事業主掛金を控除した残余の範囲内で、iDeCo(月額2.0万円以内)に加入できるようになります。

【確定拠出年金法2022年10月施行予定】
  

企業型DCにおけるマッチング拠出とiDeCo加入の選択

 マッチング拠出導入企業の企業型DC加入者が、マッチング拠出かiDeCo加入かを加入者ごとに選択できるようになります。
(現在、マッチング拠出導入企業では、企業型DC加入者のiDeCo加入は不可)

【確定拠出年金法2022年10月施行予定】
  

中途引き出し
(脱退一時金)の改善

〇 通算の掛金拠出期間の要件を3年以下から5年以下に見直しています。
   (公的年金と同じ扱いで、短期滞在の外国人を想定)

【確定拠出年金法2021年4月施行】

〇 国民年金被保険者となることができない者(日本国籍がない海外居住者)
  ⇒ 資産額が少額、短い通算掛金拠出期間など一定の要件を満たす場合は、
    脱退一時金の受給が可能となりました

   (公的年金と同じ扱いで、外国籍人材の帰国時等を想定)

【確定拠出年金法2022年5月施行】

  

▼ 今回の期間外ですが、その先に重要なものが1つありますので参考まで

高年齢雇用継続給付の支給水準の見直し

 

 

 令和7年度に60歳以上になる方から、給付率が原則10%に縮小されます。
 なお、令和6年度末までに60歳以上になった方は、現行の給付率(原則15%)が引き続き適用されます。
  

 ▼ 現行・見直し後の給付率の比較

 

【雇用保険法2025年4月施行予定】
  

  

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東社労士オフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和