79 フレックスタイム(労使協定・就業規則・清算関係)

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 フレックスタイム制は、適用労働者ベースでの普及率が8%程度で、企業規模別では従業員1,000人以上が約15%、同30~99人では約2%という状況です。(出典:厚生労働省「平成31年就労条件総合調査」)
  
 そのメリットは、社員自らが労使協定の範囲内で日々の始業・終業時刻や労働時間を、自分のライフスタイルにあわせて柔軟にセットできるところにあります。

 例えば、小学校入学前の子の育児や、継続的に介護を行う場合などで、会社での働き方を短時間労働に変えるまでではないが、会社所定の始業・終業時刻に合わせるのが厳しくなっている方にとっては働きやすさが増します。そして、会社としても、やむを得ず短時間勤務に移行することなどによる戦力ダウンを小さくすることができ、離職の防止にもつながります。
 ちなみに、会社の判断による始業時間や終業時間の繰上げ、繰下げを就業規則に規定した上で行うことは、フレックスタイム制とは別個のものになります。

  

導入にあたって就業規則・労使協定で定めること

 導入にあたっては、就業規則などで「フレックスタイム制を適用する社員には、日々の始業・終業時刻の決定を委ねる」旨を規定した上で、労使協定で次の事項を定めておく必要があります。

 〇 対象となる労働者の範囲
 〇 清算期間
 〇 清算期間における総労働時間(総所定労働時間)
 〇 標準となる1日の労働時間
 〇 任意事項としてコアタイム、フレキシブルタイム

▼ 以下で、労使協定で定める事項の内容を説明します。
   

対象となる労働者の範囲

 派遣労働者については、派遣元事業所で必要となる就業規則、労使協定を締結した上で、労働者派遣契約で該当する派遣労働者をフレックスタイム制で労働させると定めれば、フレックスタイム制を適用できます。
  

■ 清算期間

 フレックスタイム制の適用期間のことで、3か月以内で任意に設定できます。
 1カ月を超える清算期間を定めた場合は、労使協定を事務所所在地の労働基準監督署長に届け出る必要があります。この「清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届」(様式第3号の3)には、前記の労使協定で定める事項についての記載欄が設けられています。
 厚生労働省パンフレットのQ&Aでは、労使協定にその旨明記すれば、同一事業場内で、対象者や部署ごとに清算期間を変えることも可能としています。

  

清算期間における総労働時間

 清算期間について法定の週40時間換算で算出した労働時間数(清算期間の暦日数/7日×40時間)の範囲内で定めます。
   

標準となる1日の労働時間数

 フレックスタイムを利用する社員が年次有給休暇を取得した時の賃金を計算するのに使います。
つまり、フレックスタイム実施中の社員が年次有給休暇を取得したときは、この標準となる1日の労働時間数の労働をしたという取り扱いになります。

  

コアタイム

 フレックスタイムを利用する社員に一斉勤務を義務付ける時間帯のことで、設定するかしないかはその企業の裁量です。
 コアタイムを定める場合は、労使協定にその開始時刻と終了時刻を明記しますが、これは就業規則の絶対的必要記載事項にあたるものであるため、就業規則への同様の規定の追加が必要となります。
 このコアタイムを設定しないスレックスタイム制を、特に「スーパーフレックスタイム制」と呼ぶことがあります。さらに進めて、勤務日も利用する社員の選択に任せることが制度上は可能です。(週1日もしくは4週4休の法定休日の確保が前提)

   

フレキシブルタイム

 始業もしくは終業の時間設定がフレックスタイムを利用する社員の判断に任されている時間帯のことで、、コアタイムがあるならば、その前後に次のイメージのように設定される形になります。
  
     

 コアタイムとフレキシブルタイムに関連して、次のいずれかに該当するときは、 労働者に始業・終業時刻の決定を委ねたことにはなりません。
 〇 フレキシブルタイムが極端に短い場合
 〇 「コアタイムの開始から終了までの時間」と標準となる1日の労働時間がほぼ一致する場合
  

フレックスタイム制での休憩時間

➤フレックスタイム制の下でも、労働時間が6時間超の場合は少なくとも45分、8時間超の場合は少なくとも1時間を労働時間の途中で一斉に与える必要があります。

➤所定労働が8時間未満で就業規則上の休憩時間を45分としている企業では、実労働時間が8時間を超えるときに15分以上の追加の休憩時間を与えます。

➤休憩の一斉付与の原則が適用除外となっている業種以外で、フレックスタイム制の対象者に対して休憩の一斉付与を適用しない場合には、その旨の内容の労使協定を締結して、就業規則にも明示する必要があります。

➤業務処理の都合などから、従来の就業規則での一斉付与と休憩の時間帯を変更しない場合は、従来からの休憩時間を挟む形でコアタイムを設定します。

 フレックスタイム制での働き方を考えると、従来の就業規則に「会社が業務上の必要があるときは、休憩時間の時間帯を繰上げ、又は繰り下げることができる」という趣旨の規定がないのでしたら、この機会に入れることをお勧めします。
    

労働時間と賃金の清算

 清算期間終了後に、労働時間と賃金の清算をします。
 清算の結果、期間中の実労働時間が、労使協定で定めた総労働時間を上回ったとき、もしくは下回ったときそれぞれで取扱いが、以下のとおり異なります。
 また、清算期間が1カ月を超える場合は、終了後の清算に加えて、1か月ごとの処理も行います。

ここで清算に使う「実際の労働時間」について

 この清算に使う実際の労働時間は、休日労働の時間数を差し引いた時間数です。

 休日労働の時間数は、あくまでも別枠扱いで、次の時点での実績時間数に対して休日労働の割増率で計算した賃金を別途支払います。
  〇 清算期間1カ月以内の場合は、清算期間終了後
  〇 清算期間1か月を超える場合は、清算期間の各月ごと
   (清算期間の開始日から1カ月ごとに区切った期間の終了後)

清算期間終了後に「実際の労働時間 < 総労働時間」のときの取扱い

 実際の労働時間が総労働時間を下回った場合は、次のいずれかの取扱いとなります。
 ① 労働時間不足分の賃金を減額調整して支払う
 ② 減額調整は行わずに総労働時間に相当する賃金を支払ったうえで、不足分の時間を次の清算期間の
   総労働時間に上乗せする

 なお、次の月(次の清算期間)で不足分を上乗せできるのは、法定労働時間と会社所定の労働時間の差分見合いまでです。
 つまり、②の取扱いは、不足分加算後の次の清算期間の総労働時間が、法定の週40時間換算で算出した労働時間数(清算期間の暦日数/7日×40時間)の範囲内である場合に限られます。

   

清算期間終了後に「実際の労働時間 > 総労働時間」のときの取扱い

 実際の労働時間が総労働時間を上回った場合は、清算期間が終了した賃金計算期間の賃金として、上回った時間に相当する割増賃金を支払います。
 なお、上回った労働時間を次の清算期間に繰り越して、次の清算期間の総労働時間から減調整することは認められません。
 仮に、このことを知らずに上回った労働時間を繰り越した場合は、本来、清算期間終了日を含む賃金計算期間の賃金として支払われるべきもの(清算期間内の労働の対価)の一部が未払いとなり、労働基準法第24条違反の状態になります。

   

清算期間が1カ月を超える場合の取扱い

 清算期間が1か月を超える場合は、まず、清算期間の各月ごと(清算期間の開始日から1カ月ごとに区切った期間)に、その月の実労働時間が週換算で50時間(暦日数/7日×50時間)を超えた分の割増賃金をその月の基本給や手当とあわせて支払います。つまり、週換算で10時間以下の時間外労働に対する割増賃金は清算期間終了後にまとめての支払いとなります。

 期間終了後の清算の結果、実際の労働時間が総労働時間を超えた時間数から、割増賃金を支払済みの分(週換算50時間超の部分)を差し引いた時間数が、清算期間終了日を含む賃金計算期間の割増賃金として支払うべきものとなります。

  

フレックスタイム制のもとでの36協定

 フレックスタイム制のもとでも、時間外労働や休日労働を行わせるには、36協定の締結と届出が必要です。

 清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制で次の条件にすべて当てはまる場合は、36協定の締結は要しないといえますが、それは清算期間中に対象者の離職がないという前提での話です。36協定を締結しない状態で清算期間途中での離職があったときには、その者についての離職時点での清算で週換算の労働時間が40時間を超えることが十分にあり得ます。

 〇 休日労働を行わない
 〇 清算期間を通算した実労働時間は法定労働時間内(清算期間の暦日数/7日×40時間)に収まる
 〇 清算期間の各月ごと(清算期間の開始日から1カ月ごとに区切った期間)の週換算の労働時間が
   50時間以下となること

  

清算期間1か月超の場合の労働時間上限規制の考え方

 時間外労働、休日労働それぞれで、次のとおりの考え方です。

【時間外労働】
  〇 清算期間終了後の清算による時間数は、終了月(賃金計算期間)の時間外労働として集計
  〇 清算期間の各月ごと(清算期間の開始日から1カ月ごとに区切った期間)の週換算50時間超の
   労働時間は、その月(賃金計算期間)の時間外労働として集計

【休日労働】
  〇 清算期間の各月ごとに、その月の休日労働として集計


 以上の考え方からすると、これまで年間を通して週換算でおおむね10時間以上の時間外労働(月換算で45時間に近い時間外労働)を行っている企業では、労働基準法の時間外・休日労働の上限規制に違反した状態になるリスクがあります。
 例えば、清算期間3か月で13週にわたって週換算10時間の時間外労働相当分が積み上がると、清算期間終了時には約130時間になります。この積みあがった130時間は清算期間が終了した月の時間外労働としてカウントしますので、月100時間未満の時間外労働規制に違反した状態です。
 そして、この状態を回避するために休日労働を入れると、フレックスタイム制の導入によるメリットが薄れてしまいます。

 1か月を超える期間(特に3か月)のフレックスタイム制は、月別の繁閑差がはっきりしていて勤務時間に長短のメリハリをつけて働くことが可能な企業に適した仕組みということです。ですから、繁忙月の時間外を閑散月の勤務短縮で打ち消せるか、もしくは、「繁忙月1カ月、閑散月2か月」で閑散月には時間外が積み上がらない状況でなければ法違反の状態になるリスクが大きくなります。

 実際に導入する場合は、繁忙月を最初に持ってきて続く閑散月での調整の余地を大きくするような清算期間の設定をしておくとよいでしょう。

  

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東コンサルオフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和