77 キャリアアップ助成金(正社員化コース)

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 キャリアアップ助成金は、パート・有期契約社員の正社員転換や、給与をはじめとする処遇改善に取り組む事業主を支援するものであり、その中でも広く知られているのが「正社員化コース」です。

助成対象・支給要件

助成対象となる事業主

 助成対象となるのは、以下のいずれにも該当して、助成対象となる取り組みを行った事業主(事業場)です。

〇 雇用保険の適用事業所であり、キャリアアップ管理者を置いていること
〇 キャリアアップ計画書を作成して、労働局長の認定を受けていること
  

キャリアアップ計画書

 事業場の有期契約労働者等について、事業主が定める計画期間(3~5年)内に実施する処遇改善関連の措置項目とその内容、対象者、キャリアアップ管理者などを記載した計画書で、最初の措置項目を実施する前に都道府県労働局に提出して、労働局長の認定を受けます。
 なお、ここでの措置項目は、キャリアアップ助成金の各コースのことです。

 

キャリアアップ管理者

 有期契約労働者等のキャリアアップに取り組む者として、必要な知識及び経験を有していると認められる者を、その事業所に雇用されている者から選任してキャリアアップに向けた管理体制の整備を行うこととされています。
 適当な者を配置できない場合には、その事業所の事業主または役員を管理者とすることが可能です。 

   

助成対象となる取り組み

 その事業主が直接雇用している
 ・有期契約社員(継続雇用:6か月以上3年以下)
 ・無期契約社員(継続雇用:6か月以上)
のいずれかの社員について、

 イ 正社員(正規雇用)転換等を行ったうえで、
 ロ 転換前6か月の賃金から3%以上昇給させて、
 ハ その昇給後の賃金額を転換後6か月間支給すること

が、この助成金での助成対象となる取り組みです。

 ここでの正社員には、「多様な正社員」も含まれています。
   ⇒ ただし、転換日時点で対象事業場に通常の正社員が1人以上在籍していることが必要というのが原則
 また、転換前の継続雇用期間に昼間学生であった期間は含みません。
  

正社員(正規雇用労働者)

 無期労働契約を締結しており、同じ事業主に雇用される通常の労働者と比較して勤務地や職務の限定がなく、所定労働時間も同じである者。また、賃金、賞与、退職金、定昇や昇格の有無等についても、通常の労働者と同様の正社員待遇を受けている者です。
  

多様な正社員

 次の3つの類型があります。

〇 勤務地限定正社員

勤務地が同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の勤務地に比べ限定されている労働者

職務限定正社員

職務が同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の職務に比べ限定されている労働者

短時間正社員

所定労働時間が同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の所定労働時間に比べ短い労働

 上記の3つの類型に属する多様な正社員は、
 ・すべて無期労働契約を締結している
 ・限定されている一つの労働条件以外のものは正社員(正規雇用労働者)と同じ
 ・賃金、賞与、退職金、定昇や昇格の有無等では、正社員待遇を受けている

  

派遣労働者の直接雇用について

 以下のいずれにも該当する派遣労働者を、無期契約社員または正社員(正規雇用)として直接雇用した場合は、助成対象になります。

・同一の派遣労働者が派遣先で6か月以上の期間、同一の組織単位での業務に従事していること
・有期派遣労働者の場合は、派遣元事業主に雇用された期間が3年以内の者であること
    

過去に同じ事業主の下で無期雇用労働者であった「有期雇用労働者」について

 正規雇用労働者への転換対象の有期雇用労働者が以下に該当する場合、無期雇用労働者とみなします。

 ・転換日の前日から過去3年以内に、同じ事業主の下で6か月以上無期雇用労働者であった者

   

事業主等の親族の取り扱い

 事業主または取締役の3親等以内の親族である有期契約労働者等を転換した場合は、助成対象外です。
   

求人応募の際の雇用区分について

 正社員求人に応募し、有期雇用労働者又は無期雇用労働者で雇用された者が、その雇い入れの際に正規雇用労働者等として雇用することを約束していた場合には、助成対象外です。
  

定年制との関係

 正規雇用へ転換後、定年までの期間が1年に満たない場合は、助成対象外です。  

    

紹介予定派遣労働者の要件緩和措置(暫定措置)

 対象労働者が新型コロナウイルス感染症の影響を受け、就労経験のない職業(紹介予定派遣先の職業)に就くことを希望する者であって、紹介予定派遣の後、その者を派遣先の事業所に正社員として直接雇用する場合には、派遣期間が2か月以上~6か月未満で助成対象(通常6か月以上)となります。

 なお、当該派遣期間中に派遣元事業主が実施するOFF-JTを8時間以上受講することが求められます。
(当該派遣期間の開始日の前日起算で過去6か月以内に、公共職業訓練又は求職者訓練を修了している場合は除く。)

  

令和4年10月からの支給要件の変更

 令和4年10月1日以降に実施される正社員転換について、次の3点で支給要件が変更されます。

1.正規雇用労働者定義の変更

 「同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者」というところは、これまでと同じですが、次の2つの点で定義が厳格化されます。

〇 「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る
〇 正規雇用労働者としての試用期間中の者は、転換等したものとはみなさない

   ⇒ 2022年9月末までは、「正社員待遇が適用されていない(試用期間中は賃金が低いなど)
     試用期間中の者に限り、正社員とみなさないこととしている。

 賞与については、就業規則等に「原則として支給する」と明記することが求められます。
  ⇒ 「原則として支給、業績等によっては支給しないことがある。」は、支給対象となり得る。
   
 昇給については、就業規則等に客観的な昇給基準に基づいた賃金据え置きや減給の規定を置いている場合は、支給対象となり得ます。

  

2.対象となる労働者要件の変更

 転換前の有期雇用もしくは無期雇用での6か月以上継続雇用の間、賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受けていたことも新たに要件となります。

 今年10月以降、基本給、賞与、退職金、各種手当等については、いずれか一つ以上で正規雇用労働者と異なる制度を就業規則等に定めていれば、支給対象となり得ます。
 ただし、就業規則等で「個別の雇用契約書で定める」としていた場合は、就業規則等での賃金の額または計算方法の確認ができないため、支給対象外となります。

   

3.転換前の雇用形態を無期雇用労働者とする場合について

 転換前の有期雇用労働者等に適用される就業規則等に契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態は無期雇用労働者として取り扱うことになります。  

  

助成金支給額・加算措置

※ 以下の助成金支給額は、中小企業の金額です。また、( )書きは生産性要件を満たした場合の額です。

支 給 額

① 有期契約社員から正社員(正規雇用)への転換

57万円

(72万円)  

無期契約社員から正社員(正規雇用)への転換

28.5万円

(36万円)  

※支給人数の上限は上記①、②をあわせて、1年度1事業所当たり20人
    

加 算 措 置

〇 派遣労働者の転換

派遣労働者を派遣先で正社員(正規雇用)として直接雇用した場合
  ⇒ ①、②いずれの転換でも、1人あたり28.5万円(36万円)

母子家庭、父子家庭

母子家庭の母等または父子家庭の父を転換等した場合
  ⇒ 1人あたり ①の転換 9.5万円(12万円)、②の転換 4.75万円(6万円)

〇 人材開発支援助成金関連

人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正社員化転換した場合
  ⇒ 1人あたり ①の転換 9.5万円(12万円)、②の転換 4.75万円(6万円)

人材開発支援助成金の「特定の訓練」

① 特定訓練コースの労働生産性向上訓練のうち、
  IT技術の知識・技能を習得するための訓練 ITSS レベル2~4)

② 特別育成訓練コースにおける一般職業訓練又は有期実習型訓練

③ 人への投資促進コースのうち以下の訓練
  ・定額制訓練
  ・自発的職業能力開発訓練
  ・高度デジタル人材等訓練(高度デジタル人材訓練及び成長分野等人材訓練)
  ・長期教育訓練休暇等制度を活用し、労働者が自発的に取り組んだ訓練

〇 多様な正社員制度

多様な正社員制度を就業規則等に新たに規定し、有期雇用労働者等をその雇用区分に転換または直接雇用した場合
  ⇒ 1事業所あたり9.5万円 (12万円) (1事業所1回限りの措置)

  

転換後・転換前6か月の賃金の比較について

転換前・転換後6か月の賃金

 転換前・転換後6か月における、基本給及び定額で支給されている諸手当を含む賃金の総額のことです。
 ただし、次のものは含まれません。

・実費弁償的なもの(旅費など)
・毎月の状況により変動することが見込まれる手当

・賞与、臨時に支払われた賃金   

比較の方法

 原則は、所定労働時間1時間当たりの賃金で比較します。
 例外的に、転換前6か月、転換後6か月それぞれの賃金総額で比較できるのは、次の2つのケースのみです。

・転換前後において所定労働時間に変更がなく、支給形態がいずれも月給である場合
・変形労働時間制であって所定労働時間と支給形態に変更がない場合
   

 以上の方法で比較して、転換後6か月の賃金が転換前6か月より3%以上増加している場合、助成対象です。
  

算定に含めることのできない手当の例

・就業場所までの交通費を補填する目的の「通勤手当」
・家賃等を補填する目的の「住宅手当」
・就業場所が寒冷地であることから暖房費を補填する目的の「燃料手当」
・業務に必要な工具等を購入する目的の「工具手当」
・繁閑等により支給されない場合がある「休日手当」「時間外労働手当(固定残業代含む )」
・本人の営業成績等に応じて支払われる「歩合給」
・本人の勤務状況等に応じて支払われる「精皆勤手当」
・食費を補填する目的の「食事手当」 等

    

固定残業代の取り扱い

 固定残業代の総額又は時間相当数を減らしていて、かつ転換前後の賃金に固定残業代を含めて比較した場合に、賃金が3%以上増額していないのであれば、助成対象外です。

  

手続き・実施の流れとポイント

 手続き・実施の流れは右図のとおりですが、実務上のポイントは、

〇 キャリアアップ計画書の提出期限
   ⇒ 最初の措置項目(助成金のコース)の実施日前日まで

〇 就業規則改定のタイミング
   ⇒ 正社員への転換は、就業規則等の定めに基づいて行うものであるため、
     1人目の転換を実施する前に就業規則等を改定して転換制度について
     定めておく必要があります。

〇 支給申請の期限
   ⇒ 転換後6か月の賃金を支給した日(6か月分最後の賃金支給日)の翌日
     起算で2か月以内

就業規則等の規定により、時間外手当を実績に応じ基本給等とは別に翌月等に
 支給している場合は、6か月分最後の時間外手当の支給日を賃金を支給した日
 の翌日起算で2か月以内(時間外勤務の実績がなく、支給もない場合を含む)

〇 対象労働者が転換後に、休職している場合、育児・介護休業や事業主都合の休業
  (出勤なし)をしている場合

   ⇒ その期間は勤務をした日に含みません。

転換後、「勤務をした日が11日以上ある月」の6か月分の賃金を支給するまで
 は助成金の支給申請をすることはできません。
 ただし、勤務していない日であっても給与が満額(通常の出勤日と同額)支払

 われている場合は、勤務をした日に含む取り扱いになります。