事業再構築補助金は、令和2年度第3次補正予算による新たな補助金で、中小企業の新分野展開、業態転換、事業・業種転換等、事業再編といった取り組みや、それらによる企業規模の拡大への挑戦を支援するものです。
公募開始は令和3年3月中の予定ですが、事業再構築指針や公募要領はまだ公表されていません。なお、この補助事業を実施する事務局は、株式会社パソナに決定しています。
◆ 補助枠(区分)/対象企業・要件/補助内容
この補助金には、次の5つの枠(補助金のコース)が設けられています。このうち、緊急事態宣言特別枠については、通常枠より迅速な審査・採択が行われ、仮に不採択となった場合でも通常枠での再審査を受けることができます。
・中小企業向け通常枠、卒業枠
・中堅企業向け通常枠、グローバルV字回復枠
・緊急事態宣言特別枠(中小企業、中堅企業ともに対象)
各枠の要件、補助額、補助率などを下表にまとめています。
・緊急事態宣言特別枠の対象となった会社又は個人については、①通常枠申請の際の加点措置、
②緊急事態宣言特別枠で不採択となった場合の通常枠での再審査が行われる。
■ 中小企業と中堅企業の範囲
中小企業の範囲は、業種ごとに次表の資本金、従業員数要件のいずれかを満たす会社及び個人です。
ですから、個人事業者もこの補助金の対象となります。このほかに、企業組合、協業組合及び事業協同
組合、収益事業を行うなどの要件を満たすNPOも対象となります。(2/15発表の概要による)
いわゆる「みなし法人」(大企業の子会社、大規模法人の支配下にある法人など)は、この補助金で
の支援の対象外となります。(みなし法人の詳細な要件は、募集要領で公表予定)
中堅企業の範囲は、資本金10億円未満の会社のうち、前表の中小企業の範囲に入らない会社です。
この範囲については、2/15の概要では調整中とされています。
なお、前表の中小企業の範囲にある会社のうち、申告済みの過去3年(事業年度)の課税所得の
年平均額が15億円超の会社及び個人は、中堅企業として支援の対象となります。
■ 上表の対象企業要件①の売上高比較について
①申請前の6か月のうち任意の3か月の売上高合計
②2019年1~3月の合計売上高、2020年1~3月の合計売上高のいずれか
を比較して、①が②より10%(※)以上減少していれば、申請要件を満たします。
(※) グローバルⅤ字回復枠は15%に読み替え。
以下に、図解しています。
■ この補助金での付加価値額
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
この補助金の事業計画は、補助事業終了後3~5年で付加価値額(または従業員1人当たりの付加
価値額)の年平均3%増(※)を達成できるものとする必要があります。
(※) グローバルⅤ字回復枠は5%に読み替え。
◆ 補助対象経費
2/15の概要で、「本補助金は、基本的に設備投資をするもの」と明記されています。
補助対象・対象外の各経費も示され、補助対象経費は、主要経費(設備投資にあたる部分)と、関連経費(設備投資を行った新事業の開始に必要な経費)に分けられています。
関連経費には、上限が設けられる予定です。そして、設備投資をするものですから、関連経費が主要経費を上回る事業計画は策定できないということです。
◆ 事業計画
事業計画に含めるべきポイントの例は。2/15の概要に掲載済みで、提出された事業計画の具体的な審査項目は公募要領に掲載予定です。
事業計画の策定は、認定経営革新等支援機関の相談しながら行うとなっています。
補助事業期間は1年程度、事業計画期間は補助事業期間の属する年度の次年度からで、5年間はフォローアップ期間とされ、年次報告が求められます。
◆ 事前着手制度/概算払
事前着手制度は、「交付決定後の補助事業着手(購入契約の締結など)という原則」の例外です。
この補助金では、2月15日以降の契約締結などについて、公募開始後に事前着手届を提出すれば、申請対象に含めることができます。ただし、補助対象経費に該当するものであることが前提ですし、事前着手届の提出は採択を保証するものではありません。加えて、契約にあたって入札や相見積が必要となる場合があることに注意が必要です。
この補助金では、概算払制度が設けられる予定です。
補助金の支払い(指定口座への振り込み)は、原則として事業完了後の実績報告に基づく確定検査と補助額の決定後に、事業実施者からの請求により行われます。概算払は、その例外として、補助事業実施期間中のある時点における、実施・支払済の経費の一定割合を事業実施者からの請求により先行して支払うものです。
◆ 今後のスケジュールと申請方法
公募開始は令和3年3月の予定です。公募開始(公募要領の公表)から1か月程度の公募期間を置いて、申請受付開始となります。
公募回数は、3月の第1回の後に、令和3年度内に4回の予定です。
申請は、事業者自身が行います。事業計画作成を支援した認定経営革新等支援機関に申請を代行させることはできません。
この補助金を複数回申請することはできませんが、1つの申請(事業計画)に複数の事業を記載することは可能です。
申請方法は、電子申請(jGrants利用)に一本化される予定です。
そのjGrants(Jグランツ)利用のためのアカウント(gBizIDプライムアカウント)の申請からアカウント発行までに2週間以上かかる状況となっていますので、早めのアカウント取得が推奨されています。
公募要領も指針も公表されていない手探りの状況ですが、新分野展開や事業再編などの事業計画の検討を進めておくことはできますし、できるだけ時間をかけて事業計画を練り上げることによって、それを審査する第三者(専門家)から見てもより実現可能性が高いものにすることができます。
第1回での申請を検討しているならば、公募要領や指針の公表を待って着手しては、申請準備の時間が足りなくなる可能性もありますので、早めの対応を強く意識して動くことが重要なポイントとなります。