73 緊急対応期間中(4/1~9/30)の雇用調整助成金での特例措置について(6/30現在)

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 雇用調整助成金では、新型コロナへの対応としての特例措置を1月24日に開始し、その後、数回にわたり特例措置の拡大を行っています。
 ここでは、緊急対応期間中(4月1日~9月30日)の休業等での特例について取り上げます。
 ここでの特例には、緊急対応期間の前(1/24~3/31)の休業等には適用されない「緊急対応期間中のみ適用」のものも含まれている点にご注意ください。
 
 以下の文中では、特例措置がない助成金の本来の支給要件を「本来は、……」と記述します。

 「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」については、別投稿で説明しています。
                          

※厚生労働省が9月30日までの特例措置の年末までの延長を検討している旨の報道が8月5日に
 ありましたが、この件について厚生労働省からの発表は現段階ではまだありません。

  

1.対象事業主(事業所)の拡大

 本来は、対象事業主は、「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由」により、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、その雇用する労働者の雇用維持を図るために、労使間の協定に基づき「雇用調整(休業・教育訓練・出向)」を実施する事業主とされていました。
 そこに、特例の対象となる事業主として「新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主」が加えられました。厚生労働省リーフレット(※)では、前記の「経済上の理由」に当たるものとして、以下の例を挙げています。

 ・取引先が新型コロナウイルス感染症の影響を受けて事業活動を縮小した結果、受注量が減ったため
  に事業活動が縮小してしまった場合
 ・労働者が感染症を発症し、自主的に事業所を閉鎖したことにより、事業活動が縮小した場合
 ・労働者が感染症を発症していないが、行政の要請を受けて事業所を閉鎖し事業活動が縮小した場合

 (※)「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ雇用調整助成金の特例を追加実施します」(令和2年3月10日)

 同じく、雇用調整助成金FAQ(令和2年6月30日現在版)の設問01-04でも例示されています。

 ・観光客のキャンセルが相次ぎ、これに伴い客数が減り売上げが減少した
 ・市民活動が自粛されたことにより、客数が減り売上げが減少した
 ・行政からの営業自粛要請を受け、自主的に休業を行い、売上げが減少した
   

  • 事業所設置後1年未満の事業所、雇用保険未加入の事業所などの取扱い

 本来は、事業所設置後1年以上の事業主(対前年比の生産指標の確認可能な事業主)が対象ですが。
特例(1/24~)では、事業所設置後1年未満の事業主も対象(令和2年1月以降に雇用保険適用事業所として設置されたものも含むとなります。

 雇用保険未加入の事業所であっても、労災保険の適用事業所、暫定任意適用事業所であれば、 緊急対応期間(4/1~9/30)中は、雇用保険被保険者とならない労働者の休業(教育訓練、出向は適用外)が緊急雇用安定助成金の助成対象となり得ます
 ただし、雇用保険被保険者となる労働者を雇用しているにも関わらず未適用だった場合には、別途雇用保険適用の手続きが必要となります。 
 そして、本来は適用対象外の風俗関連事業者も限定なく対象とされます。(緊急対応期間中)
  

2.本来の不支給要件の適用について

 本来の不支給要件のうち助成金の支給に係る事業所おける、①労働保険料の滞納に係るもの、②労働関係法令違反に係るもの(※)は、緊急対応期間(4/1~9/30)中は適用されません。ただ、雇用調整助成金FAQ(令和2年6月30日現在版)の設問03-04のとおり一定の条件がありますので、管轄の労働局への相談をおすすめします。
 不正受給に係る不支給措置がとられている事業主については、緊急対応期間中にある判定基礎期間に限り適用されません。

  (※) 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間の労働関係法令違反
  
  

3.助成対象者(休業する労働者)の拡大

 本来は、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用された方が行った休業等が対象ですが、特例措置(1/24~)では、雇用保険の被保険者としての継続雇用が6か月未満の方も対象となります。雇用調整助成金FAQ(令和2年6月30日現在版)の設問04-01では、「……、内定後、1日も勤務していなかったとしても、助成金の対象となります。」としています。(60%以上の支給率での休業手当支払いが前提)
 雇用保険の加入対象ではない方は、緊急雇用安定助成金の対象(4/1~9/30の特例措置(※))となり得ます。

   (※)この他に北海道での特例措置(2/28~4/2)があります。
   

4.計画届の提出省略とオンライン受付の実施

 本来は、計画届は休業開始前に提出します。具体的には、支給対象期間(1~3つの判定基礎期間を事業主が任意に選択して設定)ごとに、休業等を開始する日の前日(初回は2週間前)までに都道府県労働局またはハローワークへの提出です。
 5月19日から適用される特例では、計画届の提出が不要となり、支給申請の手続きのみです。これまで、計画届に添付していた書類の一部は支給申請の際に提出します。
 また、判定基礎期間の初日が令和2年1月24日から5月31日までにある休業等の申請期限(計画届を提出しない場合)は、8月31日まで延長されました。6月1日以降に判定基礎期間の初日がある場合は、その判定基礎期間の末日から2か月以内の申請です。

 提出方法についても、これまでの窓口、郵送に加えて、
「雇用調整助成金オンライン受付システム」での受付は、6月5日(金)にいったん再開しましたが不具合により再度停止しています。
その説明リーフレットと操作マニュアルへのリンクを置いておきます。

  

  • 対象期間と判定基礎期間

 対象期間とは、本来であれば、初回の計画届を事前届出する際に事業主が指定した雇用調整の初日から起算して1年間です。
 判定基礎期間とは、休業等の実績を判定する1ヶ月単位の期間のことで、原則として、毎月の賃金の締め切り日の翌日から、その次の締め切り日までの期間です。なお、最初と最後の判定基礎期間は、下の図のように分断された賃金計算期間を取り込んで1カ月超となることが想定されています。
     

      出典:雇用調整助成金ガイドブック(令和元年8月1日現在)
  
  

  • 5月19日から適用の特例での「助成金支給までの流れ」

  
  

    出典:厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック(令和元年8月1日版)」P19の図に加筆
  
     

5.生産指標要件の緩和

 本来は、初回の休業等の計画届提出前の3か月間について、生産指標が対前年比で10%以上低下していることを確認します。
 特例措置では、以下のとおり緩和や変更がされています。

 (1) 生産指標の比較期間と低下率
    「3か月 対前年比10%」から「1か月 対前年同月比5%」に緩和
   これは、対象期間(1年間)の初日が緊急対応期間内にある場合の特例です。

 (2) 比較の基準となる月
    「初回の休業等の計画届の3か月間」から「初回の休業等計画届提出の前月」に緩和
    加えて、5月19日以降提出分については、次のいずれかを選択するように変更されています
    初回の判定基礎期間の初日が属する月(判定月)
      (その申請に複数の判定基礎期間を含む場合は、最初の判定基礎期間以外も選択できる)
    判定月の前月
    判定月の前々月

 (3) 比較の対象となる月
    「前年の同じ3か月間」から「前年同月」に緩和
    加えて、指標の比較に用いる月の柔軟化として1月24日からの休業にさかのぼって前年同月
   と比較することが適切ではないときには、前々年の同月との比較が可能となりました。
    また、設置後1年未満の事業所のように、売上ゼロなどの理由で前年同月と比較することが適
   切でない場合や、前年及び前々年の同月と比較することが適切でない場合には、判定月(判定月
   の前月もしくは判定月の前々月)の前月からの直近1年間で適切と認められる1か月分の指標で
   の比較が可能
です。
   (その1カ月は雇用保険適用事業所であり、雇用保険被保険者を雇用している月であること)
   

  • 緊急対応期間の前後の期間における指標の低下率について

 コロナ特例の期間のうち緊急対応期間前の1月24日~3月31日の間に対象期間(1年間)の初日がある場合については、指標の低下率が対前年同月比等で「1か月 10%」に緩和されています。(北海道における2月28日~4月2日の特例は除く)

  • 生産指標について

 生産指標は、雇用調整助成金独自のもので、他の厚生労働省助成金での増額支給の要件である生産性要件とは別個のものです。
 指標として使うのは、原則として生産物品の生産量、販売物品の販売量又は売上高ですが、これらの指標を使うのが不適切である場合などには、雇用量の変動との相関がより高く最適と認められるものを使っても差し支えないとされています。
 売上高や生産量のほかの指標の例として、宿泊業での客室の稼働率、客数、建設業での工事請負契約数、労働者派遣事業での労働者派遣契約の件数、就業中の派遣労働者の数(休業中の者を除く)が挙げられています。(雇用調整助成金FAQ(令和2年6月30日現在版)の設問03-08)
    

6.雇用量要件・クーリング期間の撤廃

 本来は、雇用量要件として、「雇用保険被保険者と受入れ派遣労働者の合計人数」の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べ、大企業は5%を超えてかつ6人以上、中小企業は10%を超えてかつ4人以上増加していないことが求められます。また、この助成金の受給が初めてでないときは、前回の対象期間(1年)が終わってから1年以上経過していなければなりません。この1年間を「クーリング期間」といいます。
 特例措置(1/24~)では、雇用量要件、クーリング期間のいずれも撤廃されています。
  

7.助成率の引き上げ

 本来は、中小企業2/3、大企業1/2であるところ、
特例では、中小企業4/5、大企業2/3に引き上げられます。
加えて、解雇等を行わない場合は、中小企業10/10、大企業3/4にさらに引き上げられます。
なお、1人1日あたりの支給上限額は、15,000円です。(支給額計算の結果、15,000円を超えた場合の1人1日あたりの支給額は、超えた額の多寡にかかわらず15,000円で固定されます。)
 緊急対応期間(4/1~9/30)を1日でも含む賃金締切期間(判定基礎期間)を対象とします。また、申請後に助成率、支給上限額の引き上げがあった場合は、4月1日にさかのぼって増額分を計算し支給します。(追加の手続きは不要で7月から順次支給)
 
  

  • 小規模企業の助成率の算定方法(5月19日以降提出の支給申請に適用)  

 5月19日以降提出の支給申請についての特例である次項「8.助成金算定方法の簡略化」の算定方法のうち、実際の休業手当等の総額による助成額の算定方法を選択した小規模企業(従業員がおおむね20人以下)の事業主の特例です。
 その内容は、実際に休業等を行った日に緊急対応期間内の日(4月1日~9月30日)を1日以上含む場合は、該当する判定基礎期間の助成率は、その期間内で最も高い率とするものです。 
  

8.助成金算定方法の簡略化

 5月19日以降に提出の支給申請について、次の1から3-2までのとおり簡略化されました。
そのうち、1は小規模事業主(従業員がおおむね20人以下)のみの適用ですが、2、3-1及び3-2は小規模事業主以外の事業主にも適用されます。

1.実際の休業手当等の総額による助成額の算定 
   小規模事業主(従業員が概ね20人以下)は、「実際に支払った休業手当等の総額」により算定
  きる。その算定式は、「助成額」= 「実際に支払った休業手当等の総額」×「助成率」
   従来どおり、平均賃金額(1人1日分)に休業手当等の支払率を乗じて得た額に、助成率と休業
  等延べ日数を乗じることにより得た額を助成額をすることも可能です。(いずれかを選択)

2.平均賃金額の算定方法の簡素化
   労働保険確定保険料申告書の代わりに、初回の判定基礎期間の初日が属する年度またはその前の
  年度の任意の月に提出した源泉所得税の納付書(※1)に基づいて算定できる。
  「平均賃金額」(1人1日分)= 納付書の「支給額」÷「人員の数」÷「月間所定労働日数」(※2)が
  算定式。

    (※1) 給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の俸給給料等欄の支給額、人員を用いる
    (※2) 当該計算書の提出月が属する年度の任意の1カ月(2月など小堤労働日数が明らかに少ない月を除く)の日数
       を用いる
  

3-1.所定労働日数の算定方法の簡素化(年間での算定)
    年間所定労働日数は、前年度の任意の1カ月(2月は除く(※))の月間所定労働日数に「12」を
   乗じた日数で算定できる。
    加えて、下表の方法のいずれかで算定することも可能

      (※)2月のように所定労働日数が明らかに少ない月についても、算定対象月から除く。
     
      
  

3-2.所定労働日数の算定方法の簡素化(1カ月単位の算定)
    月間所定労働日数は、対象労働者数と所定労働日数の加重平均で算定できる。
   加えて、下表の方法のいずれかで算定することも可能
     

 なお、週休1日制や週休3日制等の場合についても、3-1、3-2の方法に準じて算定することができます。
    

  • (参考)本来の助成金支給額について

 本来は、休業に対する実際の助成金支給額は、「休業を実施した場合に支払った休業手当に相当する額」の総額に助成率とを乗じて算出します。ここでいう「休業手当に相当する額」(1人1日分)は、実際に社員に支払った額ではなく、次の計算式で算出した額になります。 
  
  
  

9.休業手当支払い率が複数ある場合の算定方法

 5月19日以降に提出の支給申請について適用される特例では、一つの判定基礎期間内で助成金の対象労働者への休業手当の支払い率が複数あるときは、適用人数が最多の支払い率により支給申請をするのが原則です。
 ただし、原則の方法以外にも、下表の方法のいずれかで算定することも可能とされています
  
  

10.支給限度日数について

 本来は、支給限度日数は、1年で100日、3年で150日(通算)ですが、
特例措置では、緊急対応期間中(4/1~9/30)に実施した休業は、1年日、3年の支給限度日数とは別枠の取扱いです。(1年なら100日、3年なら150日に緊急対応期間中の休業日数を加えた日数を支給上限日数とする)
 なお、緊急対応期間外(※)の休業については、対象期間の初日の時点で本来では、過去3年の受給実績日数を150日から差し引いた残日数が100日未満となる場合でも、特例として1年100日の受給限度日数とされます。

 (※)1月24日から7月23日のいずれかの日を対象期間(1年間)の初日とする休業のうち、緊急対応期間(4/1~6/30)
    を除いた期間。
  

11.休業に関する要件緩和

 ここでの要件緩和は、「休業等規模要件の緩和」と「短時間一斉休業の要件の緩和」の2つです。

  • 休業等規模要件の緩和

 本来の休業規模要件では、判定基礎期間ごとに対象労働者の休業、教育訓練の延べ日数が、対象労働者の所定労働延べ日数に対し、中小企業1/20、大企業1/15以上であることを求めています。
 特例措置(1/24~)では、判定基礎期間ごとの、対象労働者の休業等の延べ日数と所定労働延べ日数の比率が中小企業1/40、大企業1/30以上に緩和されました。

 さらに、5月19日以降に提出される支給申請について、小規模事業者の特例として、
「従業員2人あたり1日以上の休業」が確認できれば、規模要件を満たしているものとします

  • 短時間一斉休業の要件の緩和 

 本来は、当該事業所(※1)における対象労働者全員が一斉に1時間以上行う必要があります。
 特例措置(1/24~)では、本来の一斉休業に加えて、所定労働時間内に当該事業所における一定のまとまり(※2)のレベルで行われる1時間以上の短時間休業も認められます  

  (※1)ここでいう「事業所」は、雇用保険適用事業所を指しています。例えば、本社でごく小規模な複数の営業所を保
      険事務処理も考えて、手続上、本社にまとめて一の適用事業所とする場合も考えられます。
  (※2)例えば、部署・部門ごと、職種・仕事の種類によるもの、勤務体制によるもの

 一定のまとまりのレベルで行われる短時間休業の具体例が、雇用調整助成金FAQ(令和2年6月30日現在版)の設問05-01で示されています。

 ・ 立地が独立した部門ごとの短時間休業(部署・部門ごとの休業)
    例)客数の落ち込んだ店舗のみの短時間休業、製造ラインごとの短時間休業
 ・ 常時配置が必要な者を除いた短時間休業(職種・仕事の種類ごとの休業)
    例)ホテルの施設管理者等を除いた従業員の短時間休業
 ・ 同じ勤務シフトの労働者が同じ時間帯に行う短時間休業(勤務体制ごとの短時間休業)
    例)8時間3交替制を6時間4交代制にして2時間分を短時間休業
  

12.育訓練の要件緩和と加算額の引上げ

 特例措置(4/1~9/30)として、本来は対象外である7接遇・マナー研修、パワハラ・セクハラ研修、メンタルヘルス研修などの教育訓練、そして、自宅等で行う学習形態(インターネット利用も含む)なども対象となります。
 また、新規学卒採用者などに休業・教育訓練を実施して休業手当な支払った場合も対象となります。
 教育訓練実施の加算額は、本来は、1人1日あたり1,800円ですが、
特例措置(4/1~9/30)では、1人1日あたり中小企業2,400円、大企業1,800円に増額されます。
 加えて、半日訓練を行い、半日勤務させることも可能(加算額は1日あたりの半額)となります。
    

13.残業相殺について

 本来の残業相殺は、助成金の対象労働者が所定時間外労働、所定休日労働(あわせて「所定外労働等」といいます)を行った場合に、助成金支給額の算出にあたって休業等延べ日数から所定外働等の時間数をあらかじめ差し引く措置です。
 特例措置(1/24~)として、残業相殺の実施は停止されています
  

厚生労働省本省サイトの雇用調整助成金の様式 ダウンロードページへのリンクを置いておきます。
  (緊急雇用安定助成金関係もリンク先で入手できます)

14.出向に関する特例

 出向期間の長さについて、本来は、3か月以上1年以内とされていますが、
緊急対応期間中に開始する場合は、1か月以上1年以内となります。
 なお、出向期間に関する他の2つの要件、
 ・出向の実施期間が、対象期間(1年間)内にあること
 ・一度出向した労働者(雇用保険被保険者)は、前の出向終了の翌日から6か月経過するまで対象外
  となること
には変更はありません。