今回は、「同一労働同一賃金ガイドライン」の「第2 基本的な考え方」で述べられている使用者の対応での注意点となるものを3つ見ていきます。

■企業内に雇用管理区分が複数ある場合の対応

 この場合でも、すべての雇用管理区分に属する通常の労働者(いわゆる正社員)と短時間・有期雇用労働者(非正規雇用労働者)の間での不合理な待遇の相違の解消が求められます。例えば、正社員に以下のように複数の区分があった場合は、そのすべてと短時間・有期雇用労働者の間に不合理な待遇の相違がない状態にすることで、企業として均衡待遇が実現されたことになります。

  • 総合職正社員(無期雇用フルタイム勤務、36協定特別条項適用あり、職務変更あり、転勤あり)
  • 地域限定正社員(無期雇用フルタイム勤務、36協定特別条項適用あり、職務変更あり、転勤なし)
  • 職務限定正社員(無期雇用フルタイム勤務、36協定特別条項適用あり、職務変更なし、転勤あり)
  • 短時間正社員(無期雇用短時間勤務、36協定特別条項適用なし、職務変更あり、転勤なし)

 既存の正社員区分と短時間・有期雇用労働者の間に、これまでより低い待遇の正社員区分を新たに設けた場合には、短時間・有期雇用労働者からの通常の労働者と比較した待遇(相違の内容やその理由)の説明要求への対応で、その新しい区分は、比較対象となる通常の労働者として使うことはできます。ですが、既存の正社員区分と短時間・有期雇用労働者の間の不合理な待遇を解消が求められることには変わりありません。

 私見になりますが、通常の労働者(いわゆる正社員)と短時間・有期雇用労働者の間の均等・均衡待遇を実現することは、結果として複数の正社員区分間の均等・均衡待遇にもつながります。複数の雇用区分間での均等・均衡待遇を維持するためには、その企業の規模や特性に合わせた無理なく継続運用できる評価システムと賃金テーブルの導入が必要になってくると考えます。そうしない場合、評価に携わる者の負担がこれまでと比べて格段に大きくなり本来業務に支障をきたす可能性が出てくるからです。また、社員が他社と比較した時に評価への納得性を得られるかどうかの問題があり、通常の労働者と比較した待遇(相違の内容やその理由)の説明ができるようにしておく必要もあります。

■通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で職務の内容などを分離した場合

 この場合でも、通常の労働者との間の不合理な待遇の相違の解消が求められます。ここで重視されるのは、両者の間で職務内容を明確に分離したという事実ではなく、分離した後の両者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情から見て不合理な待遇の相違が解消されていると判断できるかどうかです。

 私見になりますが、両者の職務内容の分離が行き過ぎると、人員配置の柔軟性にも欠けるようになり、職務を代替する者が少なくなることによる有給休暇の取りにくさの問題、特定の業務を特定の者が囲い込むことによる業務処理フロー上でのブラックボックス発生の可能性にもつながり、企業経営にとってマイナスになってくるのではと考えます。

■通常の労働者の待遇を引き下げる対応をする場合

 不合理な待遇の相違の解消のために通常の労働者の待遇を引き下げることは、労働条件の不利益変更にあたります。

 労働条件の変更は、使用者と労働者の合意により行うのが原則(労働契約法第8条)です。あえて労働条件の不利益変更を、労働者と合意することなく就業規則の変更で行う場合は、①変更後の就業規則を労働者に周知させること、②次の要素に照らして就業規則の変更が合理的なものであることの2つの要件を満たすことが必要です。

  • 労働者の受ける不利益の程度
  • 労働条件の変更の必要性
  • 変更後の就業規則の内容の相当性
  • 労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情(「その他の就業規則の変更に係る事情」には、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況などが含まれます)

 同一労働同一賃金ガイドラインでは、法律における通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違解消の目的から考えると、その手段として労使で合意することなく通常の労働者の待遇を引き下げることは、基本的に、望ましい対応とはいえないことに留意すべきであるとしています。

 ガイドラインでは、以上の3つの注意点とは別に「第3 短時間・有期雇用労働者」の「1 基本給」の注として、次の2点にも言及しています。

  • 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に賃金の決定基準・ルールの相違がある場合の取扱いについて、将来の期待役割の相違によるといった主観的、抽象的な説明では足りず、均衡待遇を判断する3つの要素に照らして不合理と認められるものであってはならない。
  • 定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者の取扱いについて、通常の労働者との間に、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情の相違がある場合は、その相違に応じた賃金の相違は許容される。また、定年に達した後に継続雇用された者であることは、均衡待遇の判断要素である「その他の事情」として考慮される事情に当たりうる。そして、待遇の相違が不合理と認められるか否かの判断には、様々な事情が総合的に考慮されるものと考えられる。