66 災害時における雇用、賃金、時間外労働について

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 今年の1月17日で阪神淡路大震災から25年となりました。近年は毎年のように記録的な大災害がありますが、それらの災害は、職場での労働条件、場合によっては雇用自体にも大きな影響を与えます。

 今回は、災害時の雇用や賃金、時間外労働について、労働基準法の関連条文と、昨年の台風19号後の対応について厚生労働省が公開した「令和元年台風第19号による被害に伴う労働基準法・労働契約法に関するQ&A」を見ていきます。

■災害時の雇用

 Q&Aでは、災害を理由とすれば無条件に解雇や雇止めが認められるものではないとしたうえで、無期雇用契約、有期雇用契約ごとに説明しています。

・無期雇用契約

 無期雇用契約については、労働契約法第16条で、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされています。なかなか意味が捉えにくい文章ですが、ここでは、「客観的に合理的な理由」は、第三者から見ても道理にかなっているといえる理由、「社会通念上相当」は、世間一般の常識から見て妥当といえるものといった捉え方でいいと思います。

 ここでの解雇が自然災害の直接被災による事業続行不能によるものならば、整理解雇のカテゴリーに入ります。この整理解雇を行うには4つの要件、①人員整理の必要性、②解雇を回避するための措置を講じていること、③客観的・合理的な人選基準(第三者から見ても道理にかなったもので、恣意的な要素がないもの)、④労働者への説明を尽くすなど解雇手続きの妥当性を満たす必要があります。 ※文中下線部は筆者注

・有期雇用契約

 有期雇用契約については、労働契約法第17条で、「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」とされています。
 契約期間自体が、労使合意により決定したものなのだから労使ともに遵守するべきという考え方から、やむを得ない事由が認められる余地は、無期雇用契約についての「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の判断のそれより狭いとされています。

■賃金の非常時払

 労働基準法第25条の「非常時払」は、労働者が、出産や疾病、災害、厚生労働省令で定める非常の場合の費用とするために、給与支払日前でも既に行った労働に対する支払を請求した場合には、使用者はこれを応じる義務があるとするものです。

 Q&Aでは、「災害」には自然災害も含み、労働者又はその家族が被災するなどして住居の変更を余儀なくされる場合の費用は、「非常の場合の費用」に該当するとしています。

■賃金支払いの見込みがないとき

 事業活動が停止し、再開の見込みがなく、賃金の支払の見込みがないなど、一定の要件を満たす場合には、国が事業主に代わって未払賃金を立替払する「未払賃金立替払制度」を利用でき、失業給付が受けられることもあります。

■労働基準法第26条の休業手当

 労働基準法第26条の休業手当は、使用者の責に帰すべき休業をしたときに、使用者は労働者に休業期間中について平均賃金の6割以上の手当を支払う義務があるというものです。

 Q&Aによれば、災害により事業場の施設・設備が直接被害を受けて休業する場合には、使用者の責に帰すべき事由による休業に当たらないとしています。つまり、休業手当の支払い対象にはなりません。

 事業場の施設・設備が直接被害を受けていない場合には、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業になります。ただし、被災した取引先への依存度、原材料などの輸送経路、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力などを総合的に見て判断した結果、例外的に使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないとされる場合もあります。

 東日本大震災時のQ&Aでは、電力会社が実施する地域ごとの計画停電に関連して、停電時間帯のみを休業とするときは、使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないとしています。

■災害時の時間外労働

 労働基準法第33条によれば、「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合」において、所轄の労働基準監督署長の許可を受けて、法定時間外(36協定締結事業所では協定に定める労働時間を超えての意味)、法定休日(週1日もしくは4週4日)に労働させることができます。また、事態窮迫のために事前に許可を得ることができないときは、事後に遅滞なく届け出ます。派遣労働者が、派遣先の事業場でこの労働をするときの許可、事後の届出は、派遣先の使用者が行います。

 労働基準監督署長の認可、事後承認はおおむね次の基準により行います。

 災害後のライフライン復旧作業の範囲について、Q&Aでは、復旧工事現場での作業に限定されるものではなく、地質調査、測量及び建設コンサルタントの業務など、復旧の作業に伴う一連の業務についても該当するとしてします。また、電話回線やインターネット回線等の通信手段の早期復旧のための対応も該当します。

 許可の要件である「臨時の必要のある場合」の「臨時」が、災害発生からどの程度の期間をカバーしているかの具体的な基準はなく、個別事案ごとに判断することになりますが、Q&Aでは、①災害発生から一定期間(1か月等)経過後でも、その事由のため臨時の必要があると認められるならば、許可の対象となり得る、②臨時の必要があると認められる期間が複数月にわたるならば、許可の対象となり得る期間は当該複数月になるとしています。