64 労働者派遣と請負の区分について

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 労働者派遣と請負の区分が今一つ分かりづらいと思ったことはないでしょうか。
 そんな時に両者を区分する基準となるのが、厚生労働省37号告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)です。

1.37号告示の内容

 請負業務に自ら雇用する労働者を従事させる事業主であっても、
 その請負業務の処理について、

 ①雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること
 ②請負業務を自己の業務として契約相手方から独立して処理すること
の2つの項目で見て、

 ①、②のいずれにも該当する場合…………請負業務を行う事業主
 そうでない場合(いずれか、両方が該当しない)……労働者派遣事業を行う事業主
とされます。

 また、請負業務と冠しているものでも、この2つの要件から実質上は労働者派遣業務と判断されることがあります。

 ①、②の要件の内容は、次のとおりとなっています。

雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること

  ※次の3つの項目のすべてを自ら行うことが必要
   
  
  
    

請負業務を自己の業務として契約相手方から独立して処理すること

  ※次の3つの項目のすべてに該当することが必要
   

 イ)業務処理の資金を、すべて自らの責任の下に調達し、支弁すること。

 ロ)業務処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての

   すべての責任を負うこと。

 ハ)次のいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するもので
   ないこと。

   (1) 自己の責任と負担で準備・調達する機械・設備・器材(業務上必要な簡易な工具除く)、
     材料・資材により、業務を処理すること。
   (2) 自ら行う企画又は自己が持つ専門的な技術や経験に基づいて、業務を処理すること。

 
 参考になりますが、
 ①の考え方は、自社の直営で行うものならば、それに従事する労働者に業務処理に関する指示を直接出して、労働条件に関することも自らの判断で措置できるはずというもの、
 ②の考え方は、自社の直営で行うものならば、それに必要な資金繰り、機械や器具の調達なども自らの責任で行うはずであり、そうでないならば、人を発注先に出しているだけ(=労働者派遣)というものです。

2.告示のQ&Aについて

 区分するための基準はあっても、実務の場面で個別具体の判断に悩むことは当然あります。
 この告示については、Q&Aがあわせて30問公開されていますが、そのうち広い範囲で関係しそうなものを見ていきます。
   

■いわゆる「指揮命令」に当たらないケース

➤発注者・請負労働者間の業務に無関係の日常会話
 

■特に問題はないとされるケース

➤作業工程の見直しや欠陥商品の作り直しといった発注に関わる要求や注文を、業務請負契約の当事者間で行う場合

➤請負労働者に対して発注者が直接指示する場合であっても、発注者の機密保護のためのセキュリティー確保、安全衛生上の必要性などの理由であらかじめ請負契約に定めている場合

➤食堂、化粧室といった業務処理に直接必要ではない福利厚生施設や、不特定多数の者が使用可能な場所・設備を発注者と請負事業主が共同で使用すること

➤請負契約の処理に必要な資材の価格が相場変動などのため不明確であり、あらかじめ委託契約の内容とすることが困難なため、請負業務の対価とは別に精算する扱いとする場合
  

■偽装請負と判断されるケース

➤作業工程の見直しや欠陥商品の作り直しといった発注に関わる要求や注文を、発注者から直接、請負労働者に行う場合(直接の指揮命令にあたるため)

➤請負作業場への作業者の配置が1名のみで、その作業者が管理責任者兼任の場合
 (実態上、発注者から管理責任者への注文が、発注者から請負労働者への指揮命令となるため)

➤発注者と請負事業主の作業内容に連続性があり、かつ同一の作業スペースに発注者の労働者と請負労働者が混在しているため、発注者が請負労働者に対して業務の遂行方法について直接指示を行わざるを得なくなる場合

➤発注者が請負業務の作業工程について、仕事の順序・方法等の指示、請負労働者の配置や各自への仕事の割付などの決定を行う場合(これらは本来、請負事業者が自ら行うべきものであるため)
  
➤業務処理に要する労働力(労働者の人数)について受発注を行い、投入した労働力の単価を基に請負料金を精算する場合(発注者に対する単なる労働力の提供であるため)

➤請負労働者に対して発注者が直接作業服の指示をしたり、請負事業主を通じた関与をする場合
 (告示の要件を満たさないものであるため)
  

■偽装請負と判断されないケース

➤同一の作業スペースに発注者の労働者と請負労働者が混在する場合でも、告示の2つの要件を満たしている場合
 

■労働者派遣事業と判断されるケース

➤突発的な発注などへの対応のため、発注先が雇用する労働者が請負事業者の指揮命令により応援業務を行った場合(発注者が派遣元事業主、請負事業主が派遣先の労働者派遣に該当) 
   

■直ちに労働者派遣事業と判断されることはないケース

➤発注者が、災害時など緊急の必要により、請負労働者の健康や安全確保のために必要な指示を直接行った場合

➤発注者・請負事業主間の打ち合わせなどに、管理責任者自身の判断で請負労働者が同席した場合
 (その席上で業務の遂行方法に関する指示を行わない場合)

➤発注者から請負事業主への依頼メールを、管理責任者の了解の下、請負労働者に併せて送付(cc送付)した場合(そのメールが業務の遂行方法に関する指示を含まない場合)

➤請負業務の実施にあたり、発注者側の作業効率化や施設管理の必要上、発注者の就業時間・休日、服務規律、安全衛生規律と同等の内容で、請負事業主が自己の労働者を指揮命令することに結果としてなった場合
   

■請負契約とは別個の双務契約が必要となるケース

➤請負業務に直接必要な機械や資材などの発注者からの借入、購入
 

■請負契約とは別個の双務契約までは必要ないケース

➤請負業務に間接的に必要とされるもの(賃貸料、光熱費)、必要はないが発注者から請負事業主に提供されるもの(更衣室、ロッカー)については、その利用について請負契約に包括的な規定があれば特に問題はない。
 

■「仕事を完成させ目的物を引き渡す」形態ではない請負業務について

➤販売、サービスや保安など、「仕事を完成させ目的物を引き渡す」形態ではない請負業務では、その請負業務の性格により、請負業務を実施する日時、場所、標準的な必要人数などを指定して発注したり、労働者の人数や労働時間に比例する形で料金決定したりすることに合理的な理由がある場合もあります。(あくまでも告示の2つの要件を満たす必要があります)
   

この投稿の執筆者
 札幌・新道東コンサルオフィス代表 塚田 秀和

 元国土交通省の地方機関勤務の国家公務員。役所勤務との二足のわらじでゼロから社会保険労務士、中小企業診断士に挑戦して取得。
 早期退職後、事務所を開き、公務員時代の経験も活かして
「30人までの企業のサポートに特化した町医者コンサル」として、
公的支援の活用から始まる改善コンサルを展開している。

代表 塚田秀和

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