労働安全衛生法で実施が義務付けられている健康診断は、一般健康診断、特殊健康診断、その他の健康診断に分かれます。このうち、特殊健康診断は、有害な業務(有機溶剤業務、鉛業務など)に従事もしくは従事経験のある労働者の「特殊健康診断」、歯とその支持組織に有害なガスが発散する場所での業務に常時従事する労働者の「歯科医師による検診」です。

今回はそれらのうち、下表の「一般健康診断」について見ていきます。

 短時間労働者のうち、次の2つの要件をいずれも満たす者については、健康診断の実施義務があります。

  • 期間の定めのない労働契約もしくは1年以上の有期雇用契約で雇用される者(特定業務従事者は6月以上)
  • 週労働時間数が同種の業務に従事する通常の労働者(無期雇用フルタイム)の4分の3以上

■健康診断の診断項目

 4つの健康診断の診断項目は、すべて次のとおりです。下線のある項目は、一定の要件に該当するときに医師の判断で省略可能となっています。

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  • 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
  • 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
  • 血中脂質検査( LDLコレステロール、 HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  • 血糖検査
  • 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  • 心電図検査

 海外派遣労働者の健康診断については、腹部画像検査、血液中の尿酸の量の検査など5項目から医師が必要と認めるものを追加します。

■結果の通知と異常所見への対応

 健康診断の結果は、受診した労働者への通知を遅滞なくしなければなりません。なお、通知をしないときは、50万円以下の罰金に処せられます。

 健康診断の結果、異常の所見があった労働者への対応ですが、健康診断実施から3か月以内にその労働者の健康保持に必要な措置(就業上の措置)について医師又は歯科医師の意見を聴くことが義務付けられています。産業医の選任義務がある事業所は産業医、選任義務のない事業所はおおむね監督署管轄区域ごとに設置されている地域産業保健センターの活用などで対応します。

 ここで聴く意見の内容は、就業区分、作業環境管理及び作業管理に関する措置の必要性の有無やその内容です。このうち、就業区分及びその内容に関する医師などの判断を求めるときは下表の区分で行います。

 作業環境管理及び作業管理を見直す必要がある場合には、作業環境測定の実施、施設や設備の設置・整備、作業方法の改善などが意見を求める対象となります。

 これだけの意見を聴取することになるため、事業者は、医師等から意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに提供する必要があります。

 事業者は、医師などの意見に基づいて就業上の措置を決定するときは、就業区分に応じたものでは対象労働者の意見を聴き、作業環境管理及び作業管理に関するものは、衛生委員会などの設置事業場ではそれらでの審議を行うことが望ましいとされています。

■費用と受診時間の賃金について

 健康診断の費用は、その実施が法律上の義務であるため、事業者が負担します。また、検診受診時間の賃金は、労使協議により支払の有無を決めます。これは、この検診の目的があくまでも一般的な健康確保であり、受診時間を労働時間(有給扱い)とする特殊健康診断の目的が、事業遂行のため有害業務に従事する労働者の健康確保であるのとは異なるためです。

 受診時間については、同一労働同一賃金ガイドラインで、「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない」とされています。例えば、同一の健康診断を受診するときに、通常の労働者は有給、短時間・有期労働者は無給という扱いをすることは、短時間・有期雇用労働法第8条で禁ずる不合理な待遇の相違にあたります。

■記録の作成と報告

 事業者は、すべての法定の健康診断の結果について健康診断個人票を作成して5年間保存する義務があります。また、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断について定期健康診断結果報告書の所轄労働基準監督署長への提出が必要です。参考になりますが、特殊健康診断については、歯科医師による健康診断の報告書は常時50人以上の要件で、歯科医師によるもの以外のものは常時雇用する人数にかかわらず提出します。

■派遣労働者の健康診断について

 派遣労働者の一般健康診断は派遣元事業者、特殊健康診断は派遣先事業者が実施するのが原則です。派遣先事業者は、派遣元事業者からの依頼を受けたときには、自社の一般健康診断を派遣労働者に受診させることができます。このときの受診結果の情報は、本来の実施義務者である派遣元事業者が把握するべきものであり、派遣先事業者が把握することはできません。

 派遣労働者に対する一般健康診断の結果に基づく就業上の措置について、派遣先事業者の協力が必要なときはその派遣労働者の同意を得たうえで、派遣元事業者からの要請を行います。逆に、派遣先が行う特殊健康診断の結果に基づく就業上の措置については、派遣元との連絡調整をしたうえで行い、その措置内容の情報を派遣元に提供します。

 特殊健康診断の記録の保存は派遣先事業者が行いますが、派遣労働者への結果の通知は、派遣元事業者が派遣先から写しの提供を受けたうえで行います。