62 賃金支払いの5原則について

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 賃金の支払いについて、労働基準法第24条で5つの原則が定められていますが、今回はそれらを順に見ていきます。
  

通貨払

 賃金は通貨で支払うのが原則であり、現物支給(実物給与)を行う場合はその旨の労働協約を締結する必要があります。ですから、労働組合のない事業所では、通勤定期券の支給をはじめとする現物支給はできません。なお、通勤定期券は労働基準法第11条の賃金であり、6か月乗車券は各月分の前渡しと解釈されます。
 口座振り込みは、対象労働者の同意を得たうえで、労働者名義の預貯金口座、証券総合口座についてできます。振り込まれた賃金は、賃金支給日の午前10時頃までには払い出し可能であることが必要です。また、使用者は賃金支払日に、①賃金の種類ごとの金額、②控除対象の事項とその金額、③振込額を記載した計算書(給与明細)を労働者に交付します。
 退職手当は、対象労働者の同意を得たうえで、①銀行その他の金融機関が振出した自らを支払人とする小切手、②銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手、③株式会社ゆうちょ銀行が発行する普通為替証書及び定額小為替証書のいずれかで支払うことができます。
  

直接払

 賃金は直接労働者に支払うのが原則ですが、その目的は中間搾取の防止にあります。法定代理人(親権者など)、労働者の委任を受けた任意代理人への支払いはいずれも無効で第24条違反となりますが、「使者」に対して支払うことは差し支えありません。この「使者」の定義ですが、「使者であるか否かを区別することは実際上困難な場合もあるが、社会通念上、本人に支払うのと同一の効果を生ずるような者であるか否かによって判断することとなる(厚生労働省本省ウェブサイト、労働基準行政全般に関するQ&A)」とされています。例としては、現金で直接支払う場合に、出張中の対象労働者に代わってその妻が事業所に出向いて受け取る場合が考えられます。
  

全額払

 使用者による賃金からの控除は原則禁止されています。その例外は、法令に定めがある場合と、過半数労働組合もしくは過半数代表者と控除についての労使協定を書面で締結した場合です。
 法令に定めがある場合とは、所得税(所得税法)、個人住民税(地方税法)、労働保険料(労働保険料徴収法)、厚生年金保険料(厚生年金保険法)、健康保険料(健康保険法)です。また、労使協定で定めることができるものは、購買代金、社宅や寮その他の福利厚生施設の費用、社内預金、組合費などの理由が明確なものです。
 賃金の計算に関することでは、前月分の過払い賃金を翌月分で清算する程度であれば第24条違反にはなりません。また、1か月の賃金支払額の端数処理を次の範囲で行っても、賃金支払いの便宜上の取扱いであり法違反となりません。

・100円未満の端数について、50円未満は切り捨て、50円以上は切り上げて支払うこと。
・1,000円未満の端数について、翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。
  

毎月1回以上払

 これは、毎月最低1回は賃金支給日を設定することで、支給日の間隔が大きく開かないようにすることが目的です。実務上は、賃金計算の締切日が下旬で、支払日が翌月上旬という場合には、新規雇用者について雇入れの月は給与支給がない状態が生じます。(違法ではない)
  

一定期日払

 これは、支払期日を特定することで毎月1回以上払とあわせて賃金支払日の間隔が大きく開かないようにすることが目的です。結果として、労働者の生活の資金繰りの計画が立ちやすくなり生活も安定します。
 なお、「毎月第4金曜日」のような設定は、該当日が各月の暦によって変動するため認められません。あくまでも「毎月25日」のように特定する必要があります。
 前項の毎月1回以上払にも共通することですが、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるものは規定の対象外となります。なお、臨時に支払われる賃金などの範囲は次のとおりです。

・1か月超の期間の出勤成績によって支給される精勤手当
・1か月超の一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
・1か月超の期間にわたる事由によって算定される奨励加給または能率手当