59 業務改善助成金(通常コース)

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 この助成金は、中小企業・小規模事業者が事業場内で最も低い賃金の引上げと、生産性向上のための設備投資やコンサルティングなどの取り組みをあわせて行ったときに、その設備投資等の経費を助成するものです。
 最低賃金の引上げ関連の支援措置として、昨年8月と10月の2回にわたり特例的な要件緩和・拡充が行われ、令和4年度も拡充後の内容が継続されています。

 さらに令和4年9月から原材料高騰等により利益率が減少した事業主などへの支援措置として、特例対象事業者に「原材料高騰等により利益率が減少した事業者」を追加、最低賃金が低い事業者に対する助成率の引き上げなどの拡充が行われます。

※ 以下の内容は、令和4年9月1日制度拡充後のものです。 

対象となる事業場

 中小企業事業主が日本国内に設置する事業場で、次のイ、ロのいずれにも該当するものが助成対象です。
 この助成金の申請や受給は、事業場単位で行います。

イ 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
ロ 事業場規模100人以下

 この助成金での中小企業事業主は、右表の主たる事業で

① 資本金の額(出資の総額)
② 常時雇用する労働者数

のいすれかで該当している事業主のことです。
 資本金(出資額)がない場合については、②の労働者数のみで判断します。


  

特例事業者

 2021年8月の特例的な要件緩和に伴い新設された事業主区分で、以下の要件イ、ロ、ハのいずれかに該当する中小企業事業者のことです。この助成金での特例的な要件緩和などには、特例事業者限定となっているものがあります。

イ 賃 金 要 件

対象となる事業場の事業場内最低賃金が920円未満であること 
  (⇒ 900円未満から920円未満に下限を引き上げ)

ロ 生 産 量 要 件

新型コロナウイルス感染症の影響により、事業者の生産指標(生産量、生産額または売上高など事業活動を示す指標)の最近3か月間の平均値が、前年、前々年又は3年前の同期に比べ、15%以上減少していること 
  (⇒ 3年前の同期との比較が可能に。減少率要件を30%から15%に緩和)

ハ 物価高騰等要件

原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により 、申請前3か月間のうち任意の1月の利益率が前年同月に比べ3%以上低下していること
 (新設)
  

事業場内最低賃金

 その事業場における雇入れ後3月を経過した労働者の当該事業場で最も低い時間当たりの賃金額。
(助成金交付申請書提出日の状況による)
 その算定方法は、 地域別最低賃金と同様であり、次のものは控除して算定します。

臨時に支払われる賃金
1 月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金
諸手当のうち精皆勤手当、通勤手当及び家族手当 
  

生産指標が15%以上減少したことを判断する「売上高等」

 生産指標は、売上高、生産量、販売量、仕入量の他、例えば、宿泊業であれば「客室の稼働率」「客数」、建設業であれば「工事請負契約数」なども含まれます。
   

物価高騰等要件での「利益率」 

 売上高総利益率または売上高営業利益率
   

事業開始から1年未満の事業主での生産指標

 事業開始から1年に満たない場合で、前年同期と比較することができない場合は、事業開始日以降で労働者を雇ってから申請の前々月までの間の適当な月の指標で判断します。

  

助 成 額

助 成 額

 

  

助 成 率

引上げ前の事業場内最低賃金額による3区分で、事業場内最低賃金が低いほど高率の設定です。
 

(参考)令和4年8月末までの助成率
     ・事業場内最低賃金900 円以上 : 3/4 (生産性要件を満たす場合 4/5)
     ・        900 円未満4/5 (生産性要件を満たす場合 9/10)

  

助成上限額 

 賃金引上げ額別のコースと、引上げ対象者数別の区分の組み合わせに応じた助成上限額が設定されています。

 原則の上限額は、右表のとおり設定されています。
 賃上げ者数は、1人、2~3人、4~6人、7人以上の4区分、助成コースは、賃上げ額に応じて30円、45円、60円、90円の4コースとなっています。

 

 2021年8月に「特例対象者」の上限額の特例が右表の内容で設けられています。
 上記の特例事業者に関するイ~ハの要件のいずれかに該当すれば、この10人以上の上限額区分を利用できます。
(原則の7人以上は7~9人に読み替え)




(⇒物価高騰等要件の該当事業主を対象に追加)

  

   

賃金引上げの要件

 事業場内最低賃金の引上げ等については、雇入れ後3月以上勤務している労働者を対象に助成要件、引上げ人数を判断します。
 

事業場内最低賃金の引上げに関する助成要件

 次のイ、ロが要件になります。

イ 事業場内最低賃金である労働者の賃金を、選択した

 コースの引上げ額以上引上げること

ロ イのの引上げ後の新しい事業場内最低賃金を下回る
 労働者がいれば、その者の賃金をそれ以上に引き上げ
 ること


 右図のケースでは、Dの引上げ後の賃金が、引上げ後の事業場内最低賃金925円を下回っているので、この事業主は助成対象にはなりません。 

助成対象の賃上げ人数

 助成対象の賃上げ人数(上限額を判断するときの人数)は、次のハ、ニに該当する労働者数の合計です。

ハ 上記イで賃金を引上げた労働者数

ニ 上記ロで賃金を引上げた労働者のうち、その引上げ
 額が選択したコースの引き上げ額以上である労働者数

 ただし、上記ロで賃金を引上げた労働者でも、右図のCのように30円コースで15円の賃上げといった場合は、助成対象の賃上げ人数にはカウントしません。

 右図のケースでは、30円コースで引上げ対象者3名(ABD)で、助成上限額は50万円となります。

賃金の引上げと実際の支払い

 両者は別のことであり、

〇 賃金引上げ
  ⇒ 就業規則などの改正と適用のことで、交付申請後から事業実施の完了日までの間に
    行います。

〇 実際の賃金の支払い
  ⇒ 賃金引き上げ後、事業実績報告書の提出日までに支払います
   

定年退職後の再雇用に際して賃金が減少する場合の取り扱い

 賃金規程に基づく賃金の減少については、このケースの他、賃金体系上、高齢期にいわゆる賃金カーブが右肩下がりになっていることによるものについても、要綱でいう賃金引下げには該当しません。
  

人事評価に基づく賃金引下げがあった場合の取り扱い

 要領上、人事評価制度による賃金額の見直し等正当な理由によると所轄労働局長が認めた場合は、賃金の引下げには当たらないとされています。

   

設備投資・教育訓練などでの活用事例

 この助成金では、生産性向上のための設備投資、人材育成や教育訓練、コンサルティングを助成対象としており、次のような活用事例があります。(厚生労働省の公表事例による)
    

〇 食器洗浄機の導入

手作業からの切り替えで、食器の洗浄にかかる時間が大幅に短縮することで作業効率が向上。 [飲食業、配達飲食サービス業、ホテル業、ラーメン店等]
  

〇 スチームコンベクショ
  ンオーブンの導入

仕込み時間・調理時間が短縮されて効率が上がり、他の作業への時間配分もより多く可能となり、一度に製造できる量も増えた 。 [ホテル業、飲食業、居酒屋等]
  

〇 POSレジシステム導入

入金・売上の集計などの清算業務が自動化され時間短縮されることにより、顧客の回転率も向上した。 [飲食業、小売業、美容業、歯科診療所等]
  

〇 引き上げリフト付き福
  祉車両の導入

利用者が車椅子に乗ったまま乗降することが可能となり、送迎にかかる人員の削減や全体の送迎時間の短縮につながった。 [通所介護事業、児童福祉事業等]
  

〇 歯科用チェアユニット
  の導入

自動清掃機能などにより、給水管などの清掃時間が短縮され、作業効率が向上した。
 [歯科診療所]

  

〇 冷凍庫・冷凍冷蔵庫
  の導入

十分な冷凍が行えるため、保存中の食材や製品の品質が改善され、処理作業が軽減され、作業効率が向上した。[食料品製造業、水産食料品製造業、パン・菓子製造業]
  

〇 シャンプーユニット
  の導入

状況に応じて高さ調節や角度調節などが可能になり、ユニットの台数も増え、施術時間の短縮につながった。 [理容業、美容業]
  

〇 レイアウト変更

店内の作業スペース、資材保管棚等の増設と配置換えにより、店内の接客対応とデリバリー・テイクアウト対応のそれぞれの準備作業の効率化を進め、受注から提供までの時間短縮ができた。 [飲食業]
   

〇 経営コンサルタントに
  よる社員教育及び社内
  研修の実施

社員教育、社内研修がスキルアップによる作業内容の改善と作業員の意識改善につながり、労働能率を改善することができた。 [建設業]
  
   

〇 接客等研修の実施、
  業務マニュアルの作成

指示系統や業務分担の明確化、標準化、そして、接客サービスの向上により、業績向上につながった。 [飲食業]

  

助成対象経費

 助成対象経費となるものは、原則として以下の表のとおりです。


 

特種用途自動車

 ナンバープレートの車種を表す数字が8で始まるもの、これに準ずると考えられるもの(福祉車両等)
  

パソコン関連の経費が対象となる場合

 例えば、POSシステム、会計給与システム等、特定業務専用のシステムを稼働させるための目的で導入することが明らかである場合は助成対象とされる場合があります。
  

リース料金、保守料金の取り扱い

 リース、ローン契約、ライセンス契約、保守契約等の経費は、助成実施年度に支払われるものに限り助成対象経費となります。また、複数年分を助成実施年度支払った場合は、助成実施年度を含め3年分が助成対象となります。
  

外注業務の内製化のための設備投資の取り扱い

 外注業務の内製化のための設備投資は、一連の業務全体でみると、通常、生産性の向上や労働能率の増進につながると考えられることから、助成対象となります。

    

対象経費の範囲に関する特例事業者の特例

 特例事業主のうち生産性要件、物価高騰等要件のいずれかを満たす事業主については、上表の機械装置購入費の機器・設備類の範囲が次のとおり拡大されます。
  ⇒ 賃金要件のみを満たす特例事業主は、この特例の対象外です

イ 乗車定員7人以上又は車両本体価格200万円以下の自動車、貨物自動車、特殊用途自動車の購入、製作又
 は改良の費用 
   (⇒これまでの「乗車定員11人以上」の要件を緩和)

ロ パソコンの新規購入の費用(タブレット端末やスマートフォン及びその周辺機器を含む)
  

設備投資等の対象経費から除外されるもの

イ 単なる経費削減を目的とした経費
   ⇒ (例)LED電球への交換等

ロ 不快感の軽減や快適化を図ることを目的とした職場環境の改善経費
   ⇒ (例)エアコン設置、執務室の拡大、机・椅子の増設等

ハ 通常の事業活動に伴う経費
   ⇒ (例)事務所借料、光熱費、従業員賃金、交際費、消耗品費、通信費、汎用事務機器購入費、広告宣伝費等

ニ 法令等での設置や整備の義務を怠っていた場合のそれらの設置等のための経費、事業実施上で必須となる資格の
  取得に係る経費

ホ 交付決定日以前に導入又は実施した経費
   ⇒ 納品は、交付決定後の対応が必須。発注は、申請後であれば、交付決定前でも問題なし。

へ 申請事業場の生産性向上、労働能率の増進が認められないと所轄労働局長が判断したもの

ト 経費の算出が適正でないと所轄労働局長が判断したもの
  

老朽化や破損した機器設備等の取り扱い(上記へ関連)

 老朽化や破損した機器設備等については、

同等性能のものへの更新
  ⇒ 設備投資と認められず対象外

既存機器等より高能力のものへの置き換え
  ⇒ 生産性向上が認められれば助成対象   

 機器の増設は、既存の機器等では対応できない作業量があり、増設により生産性が向上すると認められる場合には、助成対象となります

    

手続き・実施の流れとポイント

 手続き・実施の流れは右図のとおりですが、実務上のポイントは、

〇 交付申請書には2つの計画を記載
   ⇒ 業務改善計画(設備投資などの実施計画)
     ・賃金引上計画(事業場内最低賃金の引上計画)

〇 設備投資として申請した導入機器の発注
   ⇒ 交付申請後であれば、交付決定前でも問題はありません。
     ただし、納品は、交付決定後の実施が必須です。

〇 助成対象経費関連の契約相手先の決定方法
   ⇒ 一般競争によるのが原則
     ただし、事業の運営上、そうすることが困難であるといった場合は、
     指名競争や随意契約によることができます。

〇 契約予定額が10万円以上の随意契約

   ⇒ 同一条件で二者以上の見積もり(相見積)を取り、価格が安い者と契約
     するのが原則

〇 経費の支出は振込払いが原則
   ⇒ クレジットカード、小切手などで支払いを行い、交付決定があった年度の
     3月31日までに口座引き落しがされていない場合は、該当する経費は助成
     対象外となります。

 賃金を引き上げてから次のいずれか遅い日までの期間における解雇等の有無や、引き上げ後6か月の対象労働者の賃金に
  ついての状況報告書を助成金支給後に提出します。
    ・助成金の支払請求手続を行った日の前日
    ・賃金を引き上げてから6月を経過した日


〇 同一年度内に2回まで申請可能
   ⇒ 例えば、年度当初に助成金を活用した賃上げを行い、10月以降に最低賃金改定対応の賃上げを重ねて行う場合
   

令和4年度のスケジュール

〇 申 請 期 限  : 令和5年1月31日
事業完了期限 : 令和5年3月31日
   ⇒ 事業完了期限までに賃金の引上げと設備投資の実施、経費の支払いまでを完了
〇 事業実績報告書の提出期限 : 事業実施計画の完了日から起算して1か月(最終:令和5年4月10日)
   ⇒ 報告書の提出までに引上げた賃金の実際の支払いを完了
  

相見積を取ることができない場合の取り扱い

 二社以上から見積もりを取ることが困難で、一社随契を行い、理由書を提出する取扱いとできる事例として次のものが挙げられています。

 ・特殊な機械であって、製造業者が他になく、かつ、メーカー直販もしくは販売代理人がその地区で
  1社に限られる場合

 ・システム改修の場合で著作権上や契約上他の業者に改修をさせることができない場合

 ・申請者がフランチャイジーであってフランチャイズ契約上、フランチャイザーやその指定業者以外
  の者から機器等を購入できない場合等が考えられます。これらのように、二者以上の見積を取るこ

  とが困難な場合

   

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東社労士オフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和