59 業務改善助成金(通常コース)

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 この助成金は、中小企業・小規模事業者が設備投資やコンサルティングなどの取り組みにより生産性を向上させ、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを行ったときに、その設備投資等の経費を助成するものです。
 最低賃金の引上げ関連の支援措置として、昨年8月と10月の2回にわたり特例的な要件緩和・拡充が行われ、令和4年度も拡充後の内容が継続されます。

 また、令和3年度補正予算で設けられた「特例コース」については、当初3月末まで申請受付期間が、今年7月29日まで延長されています。  

➤ 令和3年度補正予算で設けられた「特例コース」は別投稿で説明しています。

対象となる事業場

 右表で①、②のいずれかに該当する「中小企業事業主」が日本国内に設置する事業場で、
 イ 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
 ロ 事業場規模100人以下
のいずれにも該当するものが助成対象事業場となります。


 この助成金の申請や受給は、事業場単位で行います。
   

特例事業者


   

 以下の(1)、(2)のいずれかの要件に該当する中小企業事業者のことです。そして、令和3年8月以降のこの助成金での特例的な要件緩和などには、特例事業者に限定されているものがあります。

(1) 賃金要件
  対象となる事業場の事業場内最低賃金が900 円未満であること

(2) 生産量要件
  新型コロナウイルス感染症の影響により、事業者の生産指標(生産量、生産額または売上高など事業活動を示す指標)

 の最近3か月間の平均値が、前年又は前々年同期(※)に比べ、30%以上減少していること

 いずれかの要件に該当していればよいので、事業場内最低賃金900円以上の事業場でも、(2)の生産量要件を満たせば、特例事業者の扱いとなります。

  

事業場内最低賃金

 その事業場における雇入れ後3月を経過した労働者の当該事業場で最も低い時間当たりの賃金額。(助成金交付申請書提出日の状況による)
 その算定方法は、 地域別最低賃金と同様であり、臨時に支払われる賃金、1 月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金、諸手当のうち精皆勤手当、通勤手当、家族手当は、控除して算出します。

生産指標が30%以上減少したことを判断する「売上高等」

 生産指標は、売上高、生産量、販売量、仕入量の他、例えば、宿泊業であれば「客室の稼働率」「客数」、建設業であれば「工事請負契約数」なども含まれます。

事業開始から1年未満の事業主

 事業開始から1年に満たない場合で、前年同期と比較することができない場合は、事業開始日以降で労働者を雇ってから申請の前々月までの間の適当な月の指標で判断します。

  

助 成 額

 助成対象経費に、引き上げ前の事業場内最低賃金に応じた助成率を乗じて算出した額について、引上げ額別のコース(30円、45円、60円、90円)と助成対象となる賃金引上げの人数により決まる上限額を限度として助成金が支給されます。
  

助 成 率

 引き上げ前の事業場内最低賃金が、
 ・900 円以上の場合  3/4(生産性要件を満たす場合 4/5)
 ・900 円未満の場合  4/5(生産性要件を満たす場合 9/10)


 なお、助成対象経費が下限額10万円に満たないときは、助成金は支給されません。
  

コース区分と賃上げ人数別の助成上限額

   
    

特例事業者についての上限額の特例

 特例事業主のみの特例として、賃上げ人数10人以上の区分と上限額が設けられています。
  
   
   

賃金引上げの要件

 事業場内最低賃金の引上げに関する要件は次の2つです。
(1) 事業場内最低賃金である労働者の賃金を、選択したコースの引上げ額(30円、45円、60円、90円)以上引上げること
(2) (1)の引上げ後の新しい事業場内最低賃金を下回る労働者がいれば、その者の賃金をそれ以上に引き上げること


 助成対象となる賃上げ人数(上限額を判断するときの人数)は、次の(3)、(4)に該当する労働者の合計です。
(3) 上記(1)で賃金を引上げた労働者

(4) 上記(2)で賃金を引上げた労働者のうち、その引上げ額が選択したコースの引き上げ額(例えば、30円コースであれば
  30円)以上である労働者

  (上記(2)で賃金を引上げた労働者でも、30円コースで20円の賃上げといった場合は、人数をカウントしません。)
    

賃金の引上げと実際の支払い

 両者は別のことであり、
 〇 賃金引上げ
   ……就業規則などの改正と適用のことで、交付申請後から事業実施の完了日までの間に行います。
 〇 実際の賃金の支払い

   ……賃金引き上げ後、事業実績報告書を労働局に提出する日までに支払います
   

フルタイム勤務労働者の賃金額の引上げ

 事業開始から1年に満たない場合で、前年同期と比較することができない場合は、事業開始日以降で労働者を雇ってから令和3 年4 月から令和3 年12 月までの間の適当な月の指標で判断します。

定年退職後の再雇用に際して賃金が減少する場合の取り扱い

 賃金規程に基づく賃金の減少については、このケースの他、賃金体系上、高齢期にいわゆる賃金カーブが右肩下がりになっていることによるものについても、要綱でいう賃金引下げには該当しません。

人事評価に基づく賃金引下げがあった場合の取り扱い

 要領上、人事評価制度による賃金額の見直し等正当な理由によると所轄労働局長が認めた場合は、賃金の引下げには当たらないとされています。

   

助成対象経費

 助成対象経費となるものは、原則として以下の表のとおりです。
 
 
  

特種用途自動車

 ナンバープレートの「車種を表す数字」が8で始まるもの及びこれに準ずると考えられるもの(福祉車両等)。

パソコン関連の経費が対象となる場合

 例えば、POSシステム、会計給与システム等、特定業務専用のシステムを稼働させるための目的で導入することが明らかである場合は助成対象とされる場合があります。

リース料金、保守料金の取り扱い

 リース、ローン契約、ライセンス契約、保守契約等の経費は、助成実施年度に支払われるものに限り助成対象経費となります。また、複数年分を助成実施年度支払った場合は、助成実施年度を含め3年分が助成対象となります。

外注業務の内製化のための設備投資の取り扱い

 外注業務の内製化のための設備投資は、一連の業務全体でみると、通常、生産性の向上や労働能率の増進につながると考えられることから、助成対象となります。

    

生産量要件を満たす特例事業者の特例

 特例事業主のうち生産性要件を満たす者については、上表の機械装置購入費の機器・設備類の範囲が次のとおり拡大されます。

(1) 乗車定員11人以上の自動車、貨物自動車、特殊用途自動車の購入、製作又は改良の費用
(2) パソコンの新規購入の費用(タブレット端末やスマートフォン及びその周辺機器を含む)

  

設備投資等の対象経費から除外されるもの

(1) 単なる経費削減を目的とした経費((例)LED電球への交換等)
(2) 不快感の軽減や快適化を図ることを目的とした職場環境の改善経費
   (例:エアコン設置、執務室の拡大、机・椅子の増設等)

(3) 通常の事業活動に伴う経費
   (例:事務所借料、光熱費、従業員賃金、交際費、消耗品費、通信費、汎用事務機器購入費、広告宣伝費等)
(4) 法令等で設置が義務づけられ、当然整備すべきとされているにもかかわらず義務を怠っていた場合における、当該法令

   等で義務づけられたものの整備に係る経費及び事業を実施する上で必須となる資格の取得に係る経費
(5) 交付決定日以前に導入又は実施した経費

   (導入機器等の納品は、交付決定後でなければならないが、発注は、申請後であれば、交付決定前でも問題はない
(6) 申請事業場の生産性向上、労働能率の増進が認められないと所轄労働局長が判断したもの
(7) 経費の算出が適正でないと所轄労働局長が判断したもの


上記(6)に関連して、
 ・老朽化や破損した機器設備等の同等性能のものへの更新は設備投資と認められず対象外
  ただし、既存機器等より高能力のものに置き換え、生産性向上が認められれば助成対象となる
 ・機器の増設は、既存の機器等では対応できない作業量があり、増設により生産性が向上すると認められる場合には、
  助成対象となる
     

助成対象となる設備投資の事例

    

一連の手続きについて

 手続き・実施の流れは右図のとおりですが、留意する点は、

〇 交付申請書に「業務改善計画」(設備投資などの実施計画)と「賃金引上計画
 (事業場内最低賃金の引上計画)の2つの計画を記載します。

〇 設備投資として申請した導入機器の発注は、交付申請後であれば、交付決定前で
  も問題はありません。ただし、納品は、交付決定後でなければなりません。


〇 助成対象経費関連の契約相手先の決定は、一般競争によるのが原則ですが、事業
  の運営上、そうすることが困難である等の場合は、指名競争や随意契約によるこ
  とができます。

〇 契約予定額が10万円以上の随意契約については、同一条件で二者以上の見積もり

  もり(相見積)を取り、価格が安い者と契約するのが原則です。

〇 経費の支出は振込払いが原則とされています。
  なお、クレジットカード、小切手などで支払いを行い、交付決定があった年度の
  3月31日までに口座から引き落とされていない場合は、該当する経費が助成対象
  外となります。

 助成金支給後に、賃金を引き上げてから次のいずれか遅い日までの期間における
  解雇等の有無や引き上げ後6か月の対象労働者の賃金についての状況報告書を提

  出します。
  ・助成金の支払請求手続を行った日の前日
  ・賃金を引き上げてから6月を経過した日


同一年度内に2回までの申請が可能です。
  例えば、年度当初に助成金を活用した賃上げを行い、10月以降に最低賃金改定

  対応の賃上げを重ねて行う場合など。

【今後のスケジュール】

 令和4年度の申請期限は令和5年1月31日、事業完了期限は、今年3月31日であり、事業完了気期限までに賃金の引上げと設備投資の実施、経費の支払いまでを完了しておく必要があります。
 また、実績完了報告書の提出期限は、事業実施計画の完了日から起算して1か月(最終:令和5年4月10日)であり、引上げた賃金の実際の支払いも完了報告書の提出までに行います。
   

相見積を取ることができない場合の取り扱い

 二社以上から見積もりを取ることが困難で、一社随契を行い、理由書を提出する取扱いとできる事例として次のものが挙げられています。

 ・特殊な機械であって、製造業者が他になく、かつ、メーカー直販もしくは販売代理人がその地区で
  1社に限られる場合
 ・システム改修の場合で著作権上や契約上他の業者に改修をさせることができない場合
 ・申請者がフランチャイジーであってフランチャイズ契約上、フランチャイザーやその指定業者以外
  の者から機器等を購入できない場合等が考えられます。これらのように、二者以上の見積を取るこ

  とが困難な場合

   

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東社労士オフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和