57 雇用保険マルチジョブホルダー制度

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 複数の会社で働いているけれども、それぞれの会社での労働時間が少ないために、これまで雇用保険に加入できなかった「マルチジョブホルダー」について、65歳以上限定で試行的な適用が始まりました。
 ここでは、その試行的な適用の内容を説明していきます。

まず最初に「マルチジョブホルダー」とは?

・複数の事業主(雇用保険適用事業)に雇用され、
・そのいずれの事業主でも、週所定労働時間が20時間未満で、
・複数雇用のうち2つの事業主での週所定労働時間を合算すると20時間以上となる

 労働者のことです。

  

65歳以上限定の試行的な適用開始までの経緯

 前記のマルチジョブホルダーは、その雇用される事業所での週所定労働時間が20 時間未満であるため、雇用保険に加入できず、失業時のセーフティーネットの問題がありました。
 しかし、マルチジョブホルダーへの雇用保険適用を、現行の所定週20時間以上の適用基準引き下げ(基準引下げ方式)により行うと、現在の雇用保険制度の原則(※)を崩してしまい、現在の保険加入者の給付水準の引き下げにもつながります。
 そのため、現在の雇用保険制度の原則を崩すことなく、より実現可能性の高い「本人からの申出を起点に合算方式で適用」する方式(合算方式)で進めていくことにしたのが、この「雇用保険マルチジョブホルダー制度」です。


 (※)自らの労働で生計を維持する者として保護の対象とすべき労働時間は、週所定労働時間20時間以上である。

 ただ、合算方式での対応でも、適用拡大による対象者の行動変化や複数事業所の労働時間を把握・通算する方法など検証するべき問題があることから、全労働者への一括適用ではなく、まずは一部の層に試行することになりました。
 試行的な制度適用の対象に65歳以上が選ばれたのは、本業も副業も雇用者である者の伸びが相対的に高いためです。

  

対象となる方の要件

 次の要件すべてに該当する者(マルチジョブホルダー)が対象となります。

〇 2つ以上の雇用保険適用事業(事業所)に雇用される65歳以上の者
各事業での週所定労働時間が5時間以上20時間未満
各事業での週所定労働時間の合計が20時間以上
各事業で継続して31日以上の雇用が見込まれること


※同一事業主の別事業場での雇用では該当しません。それぞれ異なる事業主に雇用されることが
 必要です。

  

給付の内容

 高年齢求職者給付金、育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付などで対象となります。
 例えば、高年齢求職者給付金では、給付額額の算定方法や額の決定について、マルチ高年齢被保険者でない高年齢受給資格者と同じ取り扱いです。ですから、被保険者期間が1年未満の場合は基本手当の30日分、1年以上の場合は50日分が支給されます。

   

資格取得(保険加入)の手続

 雇用保険は、要件に該当する方に強制適用され、手続きは事業主が行うのが基本ですが、この制度は、 マルチ高年齢被保険者となることを希望するマルチジョブホルダーの任意加入であるため、手続きはマルチジョブホルダー自らが行います。
   

申出の方法

 マルチ雇入届をマルチホルダーが住む地域のハローワークに来所又は郵送により提出。なお、本人が来所できない事情がある場合、代理人による提出も可ですが、電子申請は不可となっています。  

  

事業主の対応

〇 マルチジョブホルダーの依頼に応じてマルチ雇入届を作成し、その記載内容を証明する書類を交付

〇 雇用保険加入の際に通常は事業主が作成する「取得届」は、この制度ではマルチジョブホルダーからの申出の内容
  によりハローワークが作成する。(事業主の対応はない)

申出を行ったことを理由として、マルチジョブホルダーに解雇や雇止め、労働条件の不利益変更など、不利益な取
  取扱を行うことは法律上禁じられています。

  

被保険者になる日

 ハローワークに申出をした日にマルチ高年齢被保険者となります。
   

3つ以上の適用事業に雇用され、要件を満たす組み合わせが2つ以上ある場合

 申出の対象とする2つの適用事業は、賃金や賃金支払基礎日数を検討して、マルチジョブホルダー自身が選択します。
   

申出書に記載の事業所が、適用事業所設置の届出をしていなかった場合の対応

 その事業所の所在地を管轄するハローワークを通じて、事業主に加入手続きを行うよう指導が行われます。この場合の適用事業所設置日は、マルチジョブホルダーが届出を行った日となります。   

   

資格喪失の手続き

 マルチジョブホルダーが資格喪失の原因に該当したときは、マルチジョブホルダー自らが資格喪失の手続きを行います。

資格喪失の原因

 資格喪失の主な原因としては、次のものがあります。

適用事業(事業所)の両方またはいずれか一方を離職(死亡退職を含む)したこと
   →離職(死亡)した日の翌日に資格喪失)

1つの適用事業(事業主)での所定労働時間が20時間以上となったこと

   (→その事実のあった日に資格喪失。高年齢被保険者等へ移行)

〇 2つの適用事業での週所定労働時間の合計が20時間未満となあったこと
    (→その事実のあった日に資格喪失)

  

申出の方法

 マルチ高年齢被保険者でなくなった日の翌日起算で10日以内にマルチ喪失届をマルチホルダーが住む地域のハローワークに来所又は郵送により提出。なお、本人が来所できない事情がある場合は代理人による提出も可ですが、電子申請は不可となっています。

  

事業主の対応

マルチジョブホルダーの依頼に応じてマルチ喪失届を作成し、喪失届の確認書類及び離職証明書を交付。

資格喪失の際に通常は事業主が作成する「喪失届」は、この制度ではマルチジョブホルダーからの申出の内容に
  よりハローワークが作成する。(事業主の対応はない)

死亡その他やむを得ない理由(行方不明、失踪等で連絡が取れない場合)によりマルチ高年齢被保険者でなくなっ
  たときは、そのマルチジョブホルダーを雇用していた2つの適用事業の事業主がマルチ喪失届を提出することにな
  ります。
  

3つ以上の適用事業(事業所)で雇用されているマルチホルダーの離職

 離職時点で、残りの適用事業で週所定労働時間20時間以上の組み合わせがある場合には、 マルチ高年齢被保険者の資格があるものとして取り扱います。

(例)A事業(週所定15時間)、B事業(10時間)、C事業(7時間)に雇用されている
   マルチジョブホルダーの場合
    当初、A、B事業の組合せ(25時間)で、マルチ高年齢被保険者として資格取得
      B事業離職後もA、C事業の組合せ(22時間)で適用要件を満たしている
    

マルチ高年齢被保険者の離職理由の、雇用関係助成金の支給への影響

 マルチ高年齢被保険者の離職理由は、雇用関係助成金の支給には影響しません。