前回の投稿56の基本給・賞与・手当、通勤手当に続き、今回は退職金、協定締結の注意点を見ていきます。

■退職金

 退職金の決定方法は、①退職金制度の方法、②退職金前払いの方法、③中小企業退職金共済制度等への加入の方法の3つです。その選択方法には自由度があり、労働者の区分ごとに①~③をそれぞれ選択する内容の労使協定を結ぶことや、一人の協定対象派遣労働者に②と③を併用することも可能です。

①退職金制度の方法(退職手当制度で比較する場合)

 退職手当制度の指標となる項目について国が示した複数の調査結果から任意のものを選択して、それを一般の労働者の退職手当制度であるとして、各社の認定対象派遣労働者の退職制手当制度と比較する方法です。

 国が提示している調査結果の概要は次のとおりです。

  • 「退職手当の受給に必要な所要年数」……受給資格を得るまでの最低年数について、①期間区分(1年未満、その後3~5年まで1年刻み、3ないし5年以上)、②退職原因(会社都合、自己都合)の2つの要素を組み合わせた表に、セルごとに該当する企業の割合を整理したもので3種類を提示している。
  • 「退職手当の支給月数」……支給月数について、勤続年数、最終学歴、職種(総合職・一般職など)、退職理由(会社都合・自己都合など)といった要素を組み合わせた表に、セルごとに支給月数を整理したもので4種類を提示しているが、それぞれが採用している要素、勤続年数のレンジなどが大きく異なっている。
  • 「退職手当の支給金額」……支給金額について、勤続年数、最終学歴、職種(総合職・一般職など)、退職理由(会社都合・自己都合など)といった要素を組み合わせた表に、セルごとに支給金額を整理したもので5種類を提示しているが、それぞれが採用している要素、勤続年数のレンジなどが大きく異なっている。
  • 「退職給付等の費用」……企業の負担額について、従業員別企業規模、負担費用の項目(労働費用総額、現金給与額、現金給与以外の労働費用及び退職給付等の費用)といった要素を組み合わせた表に、セルごとに費用負担額を整理したもので1種類を提示している。

②退職金前払いの方法(一般の労働者の退職金に相当する額と「同等以上」を確保する場合)

 この方法では、派遣労働者の退職手当相当額を時給換算して、派遣労働者の賃金に加算して支給する制度を導入します。この方法で比較するのは、協定対象派遣労働者に賃金の上乗せとして支給する退職金相当の額(時給換算)と一般退職金です。ここでいう一般退職金は、一般基本給・賞与等に定率6%(労働者の現金給与額に占める退職給付等の費用の割合)を乗じて算出します。

③中小企業退職金共済制度等への加入の方法

 協定対象派遣労働者が中小企業退職金共済制度等に加入している場合です。この方法では、派遣労働者の掛金額と②の一般退職金を比較します。なお、前記の中小企業退職金共済制度等の「等」は、確定給付企業年金、確定拠出年金、派遣元事業主が独自に設けている企業年金制度などのことです。

■基本給・賞与・手当等、通勤手当、退職金の全部又は一部を合算する場合の取扱い

 基本給・賞与・手当等、通勤手当、退職金 の全部又は一部を合算したものを用いて一般賃金・手当等との比較を行う場合の組み合わせは、下表の3つのパターンに限られます。

■協定締結の注意点

 局長通達本文及びQ&Aからいくつか見ていきます。

  • 現に協定対象派遣労働者の賃金の額が一般賃金の額を上回っていることを理由に、賃金を引き下げることは 、派遣労働者の待遇改善という改正労働者派遣法の目的に照らして問題である。通勤手当等を支給する一方で、基本給を引き下げ、派遣労働者の賃金総額の実質的引き下げを図ることも同様である。
  • 施行日前から締結している労働者派遣契約については、施行日までに、労働者派遣契約の変更等により、新たに労働者派遣契約の締結事項となった「派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度」及び「派遣労働者を協定対象派遣労働者に限定するか否かの別」を労働者派遣契約に定めておかなければならない。
  • 派遣先の希望などにより、個別に、協定対象派遣労働者の待遇決定方式を派遣先均等・均衡方式に変更することは、派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理を行うという労使協定方式の目的からして適当ではない。
  • 労使協定には、派遣労働者の賃金の額のほか、その比較対象となる一般賃金の額を記載する必要がある。
  • 労使協定には具体的な内容を定めず、就業規則、賃金規程等によることとする旨を定めても差し支えない。その場合には、事業報告書に該当する就業規則、賃金規程等も労使協定本体とあわせて添付しなければならない。
  • 労使協定の有効期間中に、一般賃金の額が変わったときの取扱いについて、派遣労働者の賃金額が一般賃金額未満となった場合は、労使協定を締結し直す必要があるが、一般賃金額以上である場合には、同額以上の額であることを確認した旨の書面を労使協定に添付すればよい。
  • 一般基本給・賞与等の基準値を決定するのに必要な職種の選択にあたっては、職種について解説している「賃金構造基本統計調査の「役職及び職種解説」」又は「第4回改訂 厚生労働省編職業分類職業分類表改訂の経緯とその内容」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)を参照すること。
  • 退職金について、③中小企業退職金共済制度等への加入の方法を選択する場合は、協定対象派遣労働者が中小企業退職金共済制度等に加入する旨を定めること。

■独自統計等の利用

 一般基本給・賞与等、一般通勤手当及び一般退職金について、局長通知に示す統計以外の統計(独自統計等)を用いることは要件を満たせば可能です。独自統計等を用いる場合は、その理由を労使協定に記載します。

※厚生労働省本省ウェブサイトで労使協定のイメージ(令和2年1月14日版)が公表されていますので、リンクを置いておきます。