56 「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金水準」との比較による派遣労働者の賃金決定について(基本給・賞与・諸手当、通勤手当)

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 前回の投稿55(「労使協定方式」での派遣労働者の待遇決定について)に関連して、労使協定で定める賃金決定方法について、今回は基本給・賞与・手当等、通勤手当を、次回は退職金、協定締結の注意点をそれぞれ見ていきます。
   

同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金水準(一般賃金)の考え方

 協定の対象である派遣労働者の賃金と比較する「一般賃金の額」は、次の4つにあてはまる者の平均的な賃金の額になります。

 ・雇用区分 ………… 無期雇用かつフルタイムの労働者(一般の労働者)
 ・就業する地域 …… その派遣労働者の派遣先事業所その他就業場所の所在地を含む地域
 ・従事する業務 …… その派遣労働者と同種の業務
 ・保有する能力や経験 …… その派遣労働者と同程度

 一般賃金の範囲は、下図「一般賃金のイメージ」のとおり、「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」となります。 そして、協定対象派遣労働者に支払う賃金額は、一般賃金と同額以上になるものでなければなりません。

 一般賃金と協定対象派遣労働者の賃金の比較方法には、
 ・「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」を個別に比較
 ・「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」の全部又は一部を合算した額での比較
の2つがあります。

 
  【一般賃金に含まれない手当】
   時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日勤務手当、宿日直手当、交替手当
 

 一般賃金の算出に必要な統計データや算出の考え方は、毎年6~7月に厚生労働省が局長通達(※)として公開しますが、その通達には4つの別添資料があります。
 ・賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)
 ・職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)
 ・職業安定業務統計による地域指数
 ・退職手当制度

 (※)令和2年度分として公開済みの局長通達名は、『令和2年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者
    の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の
    額」」等について』です。
   

基本給、賞与、手当等

 各地域における一般基本給・賞与等(基本給・賞与・手当等)は、次の計算式で算出します。
職種別の基準値(0年)、基準値に能力・経験調整指数を乗じた値はいずれも全国計のものなので、該当する地域の地域指数を乗じて補正する必要があります。
  
 
  

  • 職種別の基準値

 職種別に、能力及び経験の程度(経験年数)で区分され時給換算された額が、
 ・賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金
 ・職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額
の2つの政府統計を利用してまとめられています。(下表は令和2年度適用分の一部です)

 「労使協定方式によるQ&A」によると、協定対象派遣労働者の職種が、2つの統計のいずれにもある場合は、それぞれの統計における職種の具体的な内容を確認した上で、労使で十分に議論していずれの統計の職種によるかを決定することが求められます。
 また、協定対象派遣労働者の賃金引き下げなどを目的として、職種ごとに2つの統計を使い分けることは労使協定方式の趣旨に照らして適切ではなく、認められない。そして、一つの労使協定で2つの統計の使い分けをするときは、その理由を労使協定に記載することとされています
 
 

 
  

  • 職種別の基準値(0年)×能力・経験調整指数

 実務上では、上の2表の「基準値に能力・経験調整指数を乗じた値」の方を使います。
 Q&A及び局長通達によると、この基準値の区分である1、2、3、5、10及び20の各年数は、派遣労働者の勤続年数を示すものではない。協定対象派遣労働者の能力及び経験が、一般の労働者の勤続何年目相当に該当するかを考慮して適切なものを選択することとされています。
 また、協定対象派遣労働者の能力及び経験がいずれの年数にも当てはまらない場合には、労使協議を十分に行って、その当てはまらない年数に相当する額を算出することも差し支えない。その算出額は、1~20年の各年数のうち、その当てはまらない年数の直近下位に相当する年数の額を超えるものでなければならないとされています。
 

  • 地域指数

 全国計を100として地域の物価水準などを反映した指数であり、都道府県別、公共職業安定所の管轄地域別の2種類が公開されています。
 Q&Aによると、いずれの地域指数を選択するかは、基本的には労使の選択によるものであるが、協定対象派遣労働者の賃金引き下げなどを目的にして恣意的に地域指数を使いわけることは、労使協定制度の趣旨に照らして適切ではなく認められない。そして、一つの労使協定で指数の使い分けをするときは、その理由を労使協定に記載することとされています。
 また、協定対象派遣労働者を複数の地域に派遣する場合に、その複数の地域の地域指数の平均値を使った賃金決定はできない。派遣先の事業所等ごとに その所在地の地域指数を乗じて算出した一般賃金と同額以上になるよう賃金決定をすることとされています。


 このようにして算出した地域別の一般基本給・賞与等と、協定対象派遣労働者の基本給・諸手当・賞与の額(時給換算)を比較します、(下図のイメージ)

 
 
  上図の個々の派遣労働者の賃金のうち賞与・諸手当は、平均額で代替できますが、その平均額は、賞与・諸手当等を
  支給していない協定対象派遣労働者も含めて算出します。
  

通勤手当

 一般賃金のうち通勤手当(一般通勤手当)と「個々の協定対象派遣労働者の通勤手当」の比較方法については、次の①、②のいずれかもしくは両方を労使協議により選択します。
 ここでいう一般通勤手当は、労働時間1時間あたり72円に設定されています。

実費支給により同等以上を確保する場合

 派遣就業の場所と居住地の通勤距離や通勤方法に応じた実費を支給するときは、一般通勤手当(時間あたり72円)と同額以上とすること。
 実費支給の上限額を設定するときは、その上限額を協定対象派遣労働者の平均的な所定内労働時間で除した額(労働時間1時間あたりの通勤手当上限額)が一般通勤手当の額以上になるようにすること。なお、実費支給として算出した額(時給換算)が一般通勤手当額未満のときは、②の方法(定額支給)を選択しなければなりません。

一般の労働者の通勤手当に相当する額と「同等以上」を確保する場合(定額支給)

 定額支給する通勤手当額を協定対象派遣労働者の所定内労働時間で除した1時間当たりの通勤手当額が、一般通勤手当額以上となるようにすること。

※厚生労働省本省ウェブサイトで労使協定のイメージ(令和2年1月14日版)が公表されていますの
 で、リンクを置いておきます。