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  3. 55 「労使協定方式」での派遣労働者の待遇決定について

 令和2年4月施行の改正労働者派遣法での待遇決定方法の1つである「労使協定方式」(労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式)が今回のテーマです。派遣先均等・均衡方式は投稿52で扱っています。

 この方式は、派遣労働者の賃金を「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金水準」と同等以上で決定するなどの要件を満たす労使協定を派遣元で締結し、その内容に基づいて待遇決定を行うものです。「同種の業務に従事する一般労働者」とは、同じ職種、同じ地域に属し、同程度の能力・経験を有する無期雇用かつフルタイムの労働者のことを指します。また、ここでいう待遇には、基本給、賞与、手当などすべての賃金、福利厚生施設、教育訓練などすべての待遇が含まれています。

待遇決定と派遣までの一連の手続きの流れは、次のとおりとなります。

  1. 通知で示された最新の統計で、同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金水準を確認。そして、派遣元においてそれ以上の賃金水準を内容とする労使協定を書面により締結して、①労働者への周知、②行政への報告、③労使協定における賃金の定めの就業規則などへの記載を行う
  2. 比較対象労働者の待遇情報の提供(派遣先から派遣元)
  3. 派遣料金の交渉(派遣先は派遣料金に関して配慮)
  4. 労働者派遣契約の締結(派遣元及び派遣先)
  5. 派遣労働者に対する雇入れ時及び派遣時の説明(派遣元)

※厚生労働省本省ウェブサイトで労使協定のイメージ(令和2年1月14日版)が公表されていますので、リンクを置いておきます。

 この方式での手続きの前提として、派遣元に過半数労働組合がない場合には、過半数代表者を投票や挙手などの民主的な方法により選出しておく必要があります。なお、労使協定の定めを就業規則に記載する(就業規則を作成し、又は変更するときに該当)にあたっては、該当する事業所で雇用する派遣労働者の過半数を代表すると認められる者の意見を聴くよう努めることとされています(努力義務)。

上記の一連の手続きの流れについて、キーワードを見ていきます。

  • 「通知で示された最新の統計」とは、派遣労働者の賃金決定のベースとなる「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金水準」に関するもので毎年6~7月に厚生労働省が職業安定局長通達として公表します。(その詳細は次回の投稿56で触れます)
  • 「派遣元において書面により締結する労使協定」に定める事項は、次のとおりです。なお、①書面以外での協定締結、②必要な事項が定められていない協定、③過半数代表者の選出の不備のいずれかに該当する場合には労使協定方式は適用されず、代わって派遣先均等・均衡方式の適用が求められます。
  • 労使協定の「労働者への周知」は、①書面の交付など(FAX、電子メールなどを含む)、②労働者がパソコンで常時確認できるようにする(イントラネットの活用など)、③派遣元事業所への常時掲示又は備え付けの3つの方法のいずれかで行うものです。
  • 「行政への報告」は、派遣元事業主が毎年提出する事業報告書に労使協定を添付して行います。
  • 「待遇情報の提供」の対象は、①教育訓練、②福利厚生施設である食堂、休憩室、更衣室の利用の2つのみです。

 改正法の規定は、施行日である2020 (令和2)年4月1日をまたぐ労働者派遣契約にも適用されますから、決定方式にかかわらず早急な対応が必要となります。