54 健康福祉確保措置について考える

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 「健康福祉確保措置」は、1か月45時間(限度時間)を超えて時間外・休日労働をした者について、過重労働による健康障害の防止を図る観点から行うものです。
 特別条項付の36協定において、定めなければならない事項の一つであり、 健康福祉確保措置の実施状況に関する記録について、当該36協定の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存義務が使用者に課せられています。

(特別条項付36協定を締結しない事業場は、この確保措置の対象外です)

 その措置内容として、以下の見出しの9項目が挙げられています。
  

1.労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること

 労働安全衛生法上の「長時間労働者への医師による面接制度」で面接指導の対象となるのは、「時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者」であり、その対象となる労働者が申出ることにより面接指導が実施されます。

 この確保措置でいう「医師による面接指導」は、労働安全衛生法の基準を上回る独自基準により行うものです。
 その具体例として、面接対象者の基準を1月当たり45時間超80時間以下の任意の時間数まで引き下げる場合があります。
  

2.労働基準法第37条第4項に規定する時刻の間(深夜)において
  労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること

 この項目は、改正労働基準法に関するQ&A(Q2-12)で取り上げられています。
 その回答では、目安となる回数について、労働安全衛生法での自発的健康診断(※)の要件である「自発的健康診断を受けた日前6か月の深夜業の月平均が4回以上」を参考とすることが考えられるとしています。
 また、この制限の対象には、所定労働時間内の深夜業(交代制勤務など)の回数制限も含まれるものであり、その場合には、事業場の実情に合わせて深夜業の回数制限以外の健康確保措置を講ずることが考えられるとしています 。


  (※) 深夜業に従事する労働者が法定の健康診断(6か月に1回)に加えて自発的に受診する健康診断のこと。
 

3.終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること

 この項目は、改正労働基準法に関するQ&A(Q2-13)で取りあげられています。
 そこでは、「休息時間」を使用者の拘束を受けない時間と定義した上で、休息時間の長さを含めた具体的な取り扱いは、各事業場の業務の実態等を踏まえて協定すべきとしています。
 この休息時間とは、労働時間等設定改善法で事業主の努力義務とされた「勤務間インターバル制度」でのそれです。
  

4.労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること

 「代償休日」は、長時間労働などの実施後に、その代償措置として年次有給休暇とは別に付与するものです。
 「特別な休暇」とは、特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度で、その目的や取得形態を労使協議により任意で設定できるもので、この場合は、リフレッシュ休暇やボランティア休暇などが該当します。
 代償休日、特別な休暇のいずれも、法定外休暇になります
  

代償休日と割増賃金

 「代償休日」(いわゆる代休)は、休日勤務や長時間勤務の実施後に、代償措置として特定の労働日の労働義務を免除するものであるため、休日の振替の場合とは異なり、実施済みの休日勤務や時間外労働の時間数相当の割増賃金の支払いが必要となります。

 「休日の振替」は、就業規則などで定めたとおりに、勤務予定の休日と特定の労働日を事前に振替(入れ替え)するものです。
 勤務予定の休日は、事前に労働日に振り替えられているため、休日労働(所定休日の場合は時間外労働)にはなりません。また、その日の実労働時間が法定労働時間8時間を超えない限り、割増賃金も発生しません。(※)

 (※) 所定労働時間が8時間未満であり、所定労働時間を超えた労働時間に対して割増賃金を支払う
   規定としている場合を除く。

5.労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること

 法定の健康診断(年1回の一般健康診断など)に加えて、長時間勤務者を対象とした臨時の健康診断制度などを就業規則等に定めて実施することです。
  

6.年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を
  促進すること

 ここでの取得促進の施策は、他の項目と同様に特定条項付36協定で定める措置事項であることから、その内容を就業規則もしくは労使協定などに定めておくのが望ましく、年度途中の社長発案で任意に実施した取得促進キャンペーンなどは該当しないものと考えられます。
  

7.心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること

 この項目は、改正労働基準法に関するQ&A(Q2-37)で取り上げられています。
 その回答によれば、窓口を設置することで、法律上の義務は果たしたことになります。その際、労働者に対しては、相談窓口が設置されている旨を十分周知し、当該窓口が効果的に機能するよう留意します。
 この場合の記録の保存については、相談窓口を設置し、労働者に周知した旨の記録を保存するとともに、当該36協定の有効期間中に受け付けた相談件数に関する記録も併せて保存します。

 Q&Aでは、窓口の具体的な内容や取組み例は示されていませんし、既存の他の相談窓口と兼ねて設置することが禁止されている訳でもありません。
 実施へのハードルは比較的低い項目であると見ていますが、それだからこそ「対象者はいるのに窓口利用はゼロ続き」とならないように、心理的な負担なく利用できるような環境づくり、利用促進のための定期的な周知の必要があると考えられます。
 

8.労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に
  配置転換をすること

 対象労働者の健康確保、時間外・休日労働削減につながる抜本的な対策となり得ますが、中小企業にとっては実施へのハードルが高い項目と考えられます。
  

9.必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による
  保健指導を受けさせること

 「産業医等による助言若しくは指導」は、産業医等が使用者又は衛生管理者等に対し 、対象労働者の健康管理等について、 助言・指導を行うことです。
 「保健指導」は、医師又は保健師により実施されるものです。その方法としては、面談による個別指導、文書による指導等の方法があり、また、その内容としては、日常生活面での指導、健康管理に関する情報の提供、再検査又は精密検査の受診の勧奨、医療機関で治療を受けることの勧奨等があります。

  

前記9項目以外の確保措置

 関連する指針では、措置事項はこれら9つの項目のうちから選んで協定することが望ましいとしていますが、その他の措置を行うことも可能ですし、36協定届の様式では「⑩その他」という選択肢が設定されています。
 ただ、その具体例は指針やQ&Aという形では示されておらず、36協定の記載例で⑩の具体的内容として「職場での時短対策会議の開催」が例示されている程度です。

 
  実務上、これらの措置をいつまでに行えば良いかという疑問が生じるかと思いますが、改正労働基準法に関するQ&A(Q2-36)では、この措置は原則として限度時間を超えるたびに講じる必要があり、その措置の実施時期については、措置の内容によって異なるとしながらも、例示として、医師による面接指導は、1か月の時間外労働時間を算定した日(賃金締切日など)からおおむね1か月以内の実施が望ましいとしています。
 

   

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東コンサルオフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和