53 改正労働基準法Q&Aを読む(時間外上限規制関係)

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 中小企業にも適用されている時間外・休日労働上限規制に関連して、厚生労働省の改正労働法Q&A(平成31年4月1日版)の「2 時間外労働の上限規制関係」40問からいくつか見ていきます。

36 協 定

36協定の2つの期間について (Q2-1)

〇 「対象期間」は、時間外労働や休日労働をさせることができる期間で、1年間に限定
    ⇒ 時間外労働や休日労働時間数の上限規制が、1年の時間数で定められているため

〇 「有効期間」は、その協定が効力を有する期間で、最短で1年間(対象期間と同じ)

    ⇒ 1年未満で事業が終了するのが確実な場合でも例外措置はなく、1年間での締結です。
      また、Q&Aでは、36協定の定期的な見直しの必要からも1年とするのが望ましいとされています。
      現時点では、1年を超える有効期間は禁止されていませんが、実務上は1年とするのが妥当です。

   

3か月を超える1年単位の変形労働時間制との関係 (Q2-3)

 対象期間(1年間)に「3か月を超える1年単位の変形労働時間制」の対象期間が3か月超含まれる場合は、
「月42時間、年320時間」が限度時間となります。
    ⇒ 含まれる期間が3か月以下の場合は、月45時間、年360時間の原則の限度時間
     

対象期間の途中で36協定を破棄・再締結する場合 (Q2-5)

 Q&Aでは、いったん締結した協定を破棄・再締結して対象期間の起算日を変更することは原則として認められないとしたうえで、やむを得ず再締結する場合として、複数の事業場がある企業で、対象期間を全社統一するために行う事例を挙げています。
 新協定締結後の旧協定の取り扱いについては、そこで協定した上限時間数、労働基準法での上限規制(単月100時間未満、2~6か月の平均80時間以内など)を超えることがない様に、その対象期間が終了するまで労働時間管理を続けることとしています。(新旧協定での重複管理期間は避けられない)


 実務上で考えられる事例としては、有効期間・対象期間ともに起算日4月1日で締結した36協定について、給与計算の締切日(例えば、毎月20日)の翌日(例えば、4月21日)を起算日として再度締結する場合があります。

 この事例では、再締結した年に限っては、旧協定、新協定それぞれの時間管理を重複して行う期間が生じるため、労働時間管理の取扱いは複雑になりますが、その翌年からは、36協定の起算日と月々の給与計算の起算日が同一日となることによる実務上のメリットが享受できます。
     

同一企業内で事業所間の異動をした場合 (Q2-7)

 これは、異動前後で実績を通算するものとしないものに分かれます。

〇 通算するもの

時間外・休日労働の月100時間未満、複数月平均80時間以内

〇 通算しないもの

36協定(一般条項)での時間外労働の上限時間(年360時間以内)
特別条項付き36協定での時間外労働の上限時間(年720時間以内)

 通算しないものは、いずれも36協定で定める時間外労働時間の上限に関するもので、労使協議での各事業所内の決め事です。
 通算するものは、時間外労働と休日労働を合わせた時間数を制限するものです。
 この規制は、労働者個人の実労働規制であり健康確保のためという意味合いが強いものですから、勤務する事業所や会社が変わっても、前後で通算する取り扱いになります。


 右の図で、それぞれの規制の関係をご確認ください。

  


  

特別条項での延長期間の定め方について (Q2-29)

 特別条項で、1か月または1年のうちいずれかのみで限度時間を超える延長時間を定めることは可能。
 ただし、1年のみで定める場合は、月45時間超の時間外労働を行わわせることができる回数(月)は、「0回」と協定することになります。

  

所定労働時間を基準に時間外労働時間を管理している事業場での協定 (Q2-33)

 そのような事業場で、法定労働時間を基準とした延長時間を協定した上で、「所定労働時間を超える時間数」を併せて協定することは可能。
 ただし、所定労働時間ベースのみの協定は不可。
  

  

健康・福祉確保措

深夜業の回数制限について (Q2-12)

 深夜業の回数制限の健康確保措置の対象に、所定労働時間内の深夜業の回数制限も含まれる。
 目安となる回数について、労働安全衛生法での自発的健康診断の要件である「自発的健康診断を受けた日前6か月の深夜業の月平均が4回以上」を参考とすることが考えられるとしています。
  

休息時間の定義について (Q2-13)

 「休息時間」を使用者の拘束を受けない時間と定義しています。
   ⇒ 労働時間等設定改善法で事業主の努力義務とされた「勤務間インターバル制度」でのそれと同義

 休息時間の長さを含めた具体的な取り扱いは、各事業場の業務の実態等を踏まえて協定すべきとしており、目安となる時間数を示してはいません。
  

心とからだの健康問題についての相談窓口 (Q2-37)

 窓口を設置することで、法律上の義務は果たしたことになりますが、その際、労働者に対して、相談窓口が設置されている旨を十分周知し、当該窓口が効果的に機能するよう留意します。
 窓口関連の記録については、相談窓口を設置し、労働者に周知した旨の記録と、その36協定の有効期間中に受け付けた相談件数に関する記録をあわせて保存します。

  

健康福祉確保措置の実施について (Q2-36)

 原則として、限度時間を超えるたびに定められた措置を講じる必要がある。
 その実施時期は、措置の内容によっても異なる。
   ⇒ 例えば、医師による面接指導は、各月の時間外労働時間の集計をした日(賃金締切日など)から
     おおむね1か月以内の実施が望ましい。

   

勤務間インターバル制度

 この制度は、「勤務の終業時刻から翌日の始業時刻までの間、一定以上の休息時間を設ける」ことを企業内の勤務時間管理の仕組みとして定めて運用するものです。
 令和3年1月時点(厚生労働省調査)での導入率は約5%、導入予定や検討意向がある企業を含めても2割程度です、1企業平均間隔時間(※)は、おおよそ11時間(10時間57分)で、企業規模が大きくなるほど短くなる傾向があります。

 ちなみに、勤務間インターバル制度導入を支援する厚生労働省の助成金(※)では、新規導入の場合で9時間以上を助成要件としています。

 (※)働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

   

健康福祉確保措置の9項目

 健康福祉確保措置は、月45時間の限度時間を超える時間外労働を行った労働者にその都度実施することとされています。具体的には、指針で示されている次の9項目から一つ以上協定で定めるのが望ましいとされています。

① 労働時間が一定時間を超えた労働者への医師による面接指導の実施
② 深夜業の回数を1箇月について一定回数以内に制限すること
③ 終業から次の始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること
④ 労働者の勤務状況や健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること
⑤ 労働者の勤務状況や健康状態に応じて、法定外の健康診断を実施すること

⑥ 年次有給休暇について、まとまった日数の連続取得を含めた取得促進をすること
⑦ 心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
⑧ 労働者の勤務状況や健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
⑨ 必要に応じて、
  ・産業医等による助言・指導を受けること
  ・労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

     

36協定の届出(様式の記載関係)

労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻 (Q2-30)

 それらの時刻の欄には、原則として始業及び終業の時刻を記載しますが、それが困難な場合は、労働時間数の限度を記載しても良い。
  

チェックボックス (Q2-31)

 時間外・休日労働の合計で、1か月100 時間未満、2~6か月平均80時間以内の要件は、その36協定での特別条項の有無などにかかわらず協定する事項であるため、協定届の「時間外労働及び休日労働を合算した時間数」に関するチエックボックスには必ずチエックしなければならない。

     

そ の 他

長時間労働者への医師の面接指導(労働安全衛生法)の要件との関係 (Q2-25)

 労働基準法の上限規制、労働安全衛生法の医師の面接指導の原則となる考え方は、それぞれ次のとおりです。

〇 労働基準法の時間外上限規制
   ⇒ 法定労働時間(週40時間)超の労働時間数の上限規制
     (単月100時間未満、2~6か月平均80時間以下)

〇 労働安全衛生法の医師の面接指導の要件
   ⇒ 1か月の労働時間の状況について、1週間当たり40時間を超える時間が80時間を超えた

     労働者で本人の申出があった場合

 時間外上限規制に関しては、変形労働時間制、事業所外みなし労働時間制、フレックスタイム制などを導入した場合に、原則とは異なった方法で時間外労働時間数を計算します。
 これに対して、医師の面接指導の要件となる時間数については、上記のような制度を導入した場合でも例外はなく、あくまでも原則どおりに実際の労働時間で計算します。
(労働者の健康管理のための措置である面接指導の性格上、実労働時間ベースで要件を判断せざるを得ない)

  

法律違反となる場合 (Q2-26)

 次の場合、労働基準法違反であり、罰則(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象にもなります。

〇 36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合
〇 36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合
〇 時間外労働と休日労働の合計時間が、単月100時間以上もしくは、2~6か月の平均のいずれかが
  80時間を超えた場合

     

     

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東社労士オフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和