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  3. 52 「派遣先均等・均衡方式」での派遣労働者の待遇決定について

 2020(令和2)年4月施行の改正労働者派遣法での待遇決定方法の1つである「派遣先均等・均衡方式」に関するQ&Aが12月27日に厚生労働省から公表されました。今回は、この派遣先均等・均衡方式についてです。

 この待遇決定方法の目的は、派遣労働者と派遣先の通常の労働者(正社員、無期雇用のフルタイム社員)との間の差別的な取扱いや不合理な待遇差を解消して、均等待遇もしくは均等待遇の状態にすることにあります。

■待遇決定と派遣までの一連の流れ

 待遇決定と派遣までの一連の流れは、次のとおりとなります。ここでいう待遇には、基本給、賞与、手当などすべての賃金、福利厚生施設、教育訓練などすべての待遇が含まれています。

  1. 比較対象労働者の待遇情報の提供(派遣先から派遣元)
  2. 派遣労働者の待遇の検討・決定(派遣元)
  3. 派遣料金の交渉(派遣先は派遣料金に関して配慮)
  4. 労働者派遣契約の締結(派遣元及び派遣先)
  5. 派遣労働者に対する雇入れ時及び派遣時の説明(派遣元)

■派遣先からの情報提供

 比較対象労働者は、先ほどの通常の労働者から派遣先が選定します(選定の手順は後で触れます)。そして、派遣先は比較対象労働者に関する次の5つの情報を提供します。なお、この情報提供がないときは、労働者派遣契約を締結してはならないとされています。

  • その労働者を選定した理由
  • その労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲並びに雇用形態
  • それぞれの待遇の内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む。)
  • それぞれの待遇の性質、その待遇を行う目的
  • それぞれの待遇を決定するにあたって考慮した事項

■待遇の比較

 情報提供された派遣先の通常の労働者の待遇と派遣労働者のそれを、まず「職務の内容」と「職務の内容及び配置の変更の範囲」の2つの要素で比較します。

 このうち「職務の内容」は、業務の内容とその業務に伴う責任の程度のことです。このうち、「業務」は継続して行う仕事であり、「責任の程度」は、業務遂行のために与えられている権限の範囲(単独決済可能な契約上限額、部下数、決裁権限など)、業務の成果について求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応、ノルマなどの成果への期待待度といったものです。

 そして、「職務の内容及び配置の変更の範囲」は、人材活用の仕組みとその運用などのことです。具体的には、将来の見込みも含めた転勤や昇進などの人事異動や本人の役割の変化(配置の変更を伴わない職務の内容の変更を含む。)の有無や範囲といったものです。

■均等待遇・均衡待遇

 この2つの要素のいずれも同一であるときは「均等待遇」、いずれかもしくは2つとも相違しているときは「均衡待遇」の考え方で派遣労働者の個々の待遇について判断して、問題があれば該当する待遇を修正します。

 「均等待遇」は、2つの要素のいずれも同じ場合には、基本給、賞与をはじめとするすべての待遇について通常の労働者と同じ取扱いがなされるべきであること。すべての待遇について、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取扱いを禁止するものです。

 そして、「均衡待遇」は、派遣労働者のすべての待遇について派遣先の通常の労働者のそれとの間に不合理と認められる相違を設けることを禁止したものです。不合理な待遇差であるかどうかの判断は、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、個々の待遇ごと(基本給、賞与など)に行います。そして、判断にあたっての原則的な考え方や具体例が指針(同一労働同一賃金ガイドライン)で示されています。なお、その他の事情の具体例としては、職務の成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、事業主と労働組合の労使交渉の経緯などが想定されています。

■比較対象労働者の選定手順

 先に触れた比較対象労働者の選定の手順でも、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲を使い、次の優先順位で選定します。ここで選定するのは1人に限らず、複数人の選定、モデルや就業規則で該当する類型の労働者を選定することもできます。

  1. 職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲のいずれも同じ通常の労働者
  2. 職務の内容が同じ通常の労働者
  3. 業務の内容又は責任の程度が同じ通常の労働者
  4. 職務の内容・配置の変更の範囲が同じ通常の労働者
  5. 1~4に相当する短時間・有期雇用労働者(パートタイム・有期雇用労働法等に基づき、派遣先の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されている者に限る)
  6. 派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合のその仮定労働者

 以上のような待遇に関する詳細な情報のやり取りが必要になることから、一般にはもう一つの待遇決定方式である「労使協定方式」により決定するケースの方が多くなると見られています。ただ、改正法の規定は、施行日である2020 (令和2)年4月1日をまたぐ労働者派遣契約にも施行日から適用されますので、決定方式にかかわらず早急な対応が必要となることには変わりありません。