51 パワハラ指針とパワハラ6類型について

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職場におけるパワーハラスメントの定義

 職場におけるパワーハラスメントは、次のイ~ハにすべて該当するものと定義されています。
  イ 優越的な関係を背景とした言動
  ロ 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  ハ 労働者の就業環境が害されるもの

   

イ 優越的な関係を背景とした言動

 「優越的な関係」は、上司など職場で上位の地位にあるものに限らず、

 ・業務上必要な知識や豊富な経験を持っているため、業務処理上の協力を得なければならない同僚・部下とのもの
 ・抵抗又は拒絶することが困難である同僚・部下の集団とのもの
 を含みます。
   

ロ 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものには、社会一般の常識から見て(社会通念に照らして)、業務上必要性がないことが明らかなもの、業務目的を大きく逸脱したものなどを含みます。

 具体的な例として挙げられるのは、
 ・業務上明らかに必要性のない言動
 ・業務の目的を大きく逸脱した言動
 ・業務を遂行するための手段として不適当な言動

 ・当該行為の回数、行為者の数など、その状態や手段が社会一般の常識から見て許容される範囲を超える言動
      

ハ 労働者の就業環境が害されるもの

 「就業環境が害される」とは、その言動から労働者が身体的・精神的な苦痛を受けることで、就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるといったように、就業する上で見過ごすこと(看過)ができない程度の支障が生じることです。
 その判断は、言動を直接受けた者の感じ方を基準とした判断ではなく、その他一般の労働者が同様の状況でその言動を受けたときに、就業する上で無視できない支障が生じたと感じるどうか(平均的な労働者の感じ方)を基準に行います。 

   

パワハラ6類型

 指針の中で、職場におけるパワーハラスメントのうち代表的な言動として次のイ~への6つの類型、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害が挙げられています。

 指針では、「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」を、その差が明確になるように示しており、
双方の間のグレーゾーンについては、該当するしないは個別に判断、場合によっては、裁判によるという形になっています。(→同一労働同一賃金ガイドラインと同じ提示の仕方)
   

イ 身体的な攻撃

殴打や足蹴りをしたり、物を投げつけたりするなど、暴行・傷害にあたるものです。

【×】該当すると考えられる例
   ・ 殴打、足蹴り

   ・相手に物を投げつけること

【〇】該当しないと考えられる例
   ・誤ってぶつかること

ロ 精神的な攻撃

脅迫、名誉棄損、侮辱やひどい暴言にあたるもので、人格を否定するものであったり、必要以上の長時間にわたる叱責、他の労働者の面前で大声で威圧的な叱責を繰り返すなどです。

【×】該当すると考えられる例
   ・人格を否定するような言動

    (相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動も含む)
   ・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返すこと

   ・他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返すこと
   ・相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の
    労働者宛てに送信すること

【〇】該当しないと考えられる例
   ・遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない

    労働者に対して一定程度強く注意をすること
   ・その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して

    一定程度強く注意をすること。

ハ 人間関係からの
  切り離し

隔離、仲間外しや無視にあたるもので、意に沿わない者を仕事から外して長期間別室に隔離する、特定の者を集団で無視し孤立させるなどです。

【×】該当すると考えられる例
   ・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離し
    たり、自宅研修させたりすること
   ・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること

【〇】該当しないと考えられる例
   ・新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施

    すること
   ・懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、

    その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること

ニ 過 大 な 要 求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害にあたるものであり、長期間の過酷な環境下での勤務に直接関係のない肉体的苦痛を伴う作業、業務に関係のない私的な雑用の処理の強制などです。

【×】該当すると考えられる例
   ・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を
    命ずること
   ・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標
    を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること
   ・労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること

【〇】該当しないと考えられる例
   ・労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること
   ・業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度

    多い業務の処理を任せること。

ホ 過 小 な 要 求

業務上の合理性なくその者の能力・経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、気にくわない者に仕事を与えないことで、管理職を退職させるために誰でもできる業務をさせる、嫌がらせのために仕事を与えないなどが当てはまります。

【×】該当すると考えられる例
   
管理職である者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること
   ・気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと

【〇】該当しないと考えられる例
   ・労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること

へ 個 の 侵 害

私的なことに過度に立ち入ることであり、職場外での継続的な監視や私物の写真撮影、労働者の機微情報(性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の個人情報)の本人了解なしでの暴露などが当てはまります。

【×】該当すると考えられる例
   ・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること
   ・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該
    労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること

【〇】該当しないと考えられる例
   ・労働者への配慮を目的に、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと
   ・労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な
    機微な個人情報にいて、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促
    すこと。

   

事業主が雇用管理上講ずべき措置

 事業主が雇用管理上講ずべき措置については、次のイ~ハの3つの措置に加えて、「イ~ハとあわせて講じるべきもの」も明示されています。また、それぞれの措置の具体例が挙げられています。
  イ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  ロ 相談・苦情への適切な対応のための体制整備
  ハ パワーハラスメントに対する事後の迅速かつ適切な対応

   

イ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

a) 職場におけるパワーハラスメントの内容とそれをを行ってはならない旨の方針の明確化
  その方針の管理監督者を含む労働者への周知・啓発

具体的な実施例
  上記の方針、職場におけるパワーハラスメントの内容、発生原因や背景について、
  ・就業規則などで方針を規定し、それらを周知・啓発すること
  ・社内報や社内HPなどに記載・配布すること
  ・それらについて周知・啓発するための研修、講習などを実施すること

  

b) 行為者に厳正に対処する旨の方針と対処内容を就業規則等に規定
  その方針等の管理監督者を含む労働者への周知・啓発

具体的な実施例
  ・就業規則等に、行為者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること
  ・行為者は、現行の就業規則などで規定されている懲戒規定の適用対象となる旨を明確化して、労働者に

   周知・啓発すること
  

ロ 相談・苦情への適切な対応のための体制整備

a) 相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知

具体的な実施例
  ・相談に対応する担当者をあらかじめ定めること
  ・相談に対応するための制度を設けること
  ・外部の機関に相談対応を委託すること

  

b) a)の相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること

具体的な実施例
  ・担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、担当者と人事部門が連携を図ることができる
   仕組みとすること
  ・担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点等を記載したマニュアルに基づき対応すること
  ・担当者に対し、相談時の対応についての研修を実施すること

  

ハ パワーハラスメントに対する事後の迅速かつ適切な対応

a) 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること

具体的な実施例
  ・相談窓口の担当者、人事部門や専門の委員会等が、相談者と行為者の双方から事実関係を確認すること
  ・事実関係の確認が困難な場合などに、労働施策総合推進法に基づく調停の申請のほか、中立な第三者機

   関に紛争処理を委ねること
  

b) a)により、パワハラが生じた事実を確認できた場合は、速やかに被害者に対する配慮のための措置を
  適正に行うこと

具体的な実施例
  ・事案の内容や状況に応じ、次の措置を講ずること
     被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助
     被害者と行為者を引き離すための配置転換
     行為者の謝罪
     被害者の労働条件上の不利益の回復
     管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応など

  
  ・労働施策総合推進法に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して
   講ずること
  

c) a)により、パワハラが生じた事実を確認できた場合は、速やかに行為者に対する措置を適正に行うこと

具体的な実施例
  ・就業規則等での規定に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること
   あわせて、事案の内容や状況に応じ、次の措置を講ずること
     被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助
     被害者と行為者を引き離すための配置転換
     行為者の謝罪など

  ・労働施策総合推進法に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して
   講ずること
    

d) 改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を
  講ずること (パワハラが生じた事実が確認できなかった場合も、同様の措置を講ずること)

具体的な実施例
  上記の方針、職場におけるパワーハラスメントの内容、発生原因や背景について、
  ・社内報や社内HPなどに記載・配布すること
  ・それらについて周知・啓発するための研修、講習などを実施すること

    

ニ 上記イ~ロの措置とあわせて講ずるべきもの

a) パワハラの相談者・行為者等の情報は、それらの者のプライバシーに属するものであることから、相談や
  パワハラの事後の対応に当たっては、それらの者のプライバシー保護のため必要な措置を講ずるとともに、
  その旨を労働者に対して周知すること。
  (それらの者のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれる)

具体的な実施例
  相談者・行為者等のプライバシー保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、窓口担当者
   が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応するものとすること
  ・相談者・行為者等のプライバシー保護のため、窓口担当者に必要な研修を実施こと
  ・相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシー保護のために必要な措置を講じていることを、

   社内報や社内HP、啓発のための資料などに記載・配布すること
  

b) 労働者がパワーハラスメントの相談等をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を
  定め、労働者に周知・啓発すること

具体的な実施例
  ・就業規則などに、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされ
   ない旨を規定し、労働者に周知・啓発すること
  ・社内報、社内HP、啓発のための資料などに、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇
   等の不利益な取扱いをされない旨を記載・配布すること
  

上記の「パワーハラスメントの相談等」にあたること

職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたこと
・事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと
・都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと
・調停の出頭の求めに応じたこと

  

嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたことによる精神障害の労災認定事例

イ 上司による嫌がらせ、いじめの例

 Aさんは、金融機関に営業職として勤務していたが、発症の1か月前から、同僚の長期欠勤により、担当する仕事量が急激に増えたために、業務がうまく進まなくなった。その状況の中、直属の上司から「早くしろアホ」「死んでしまえ」など業務指導の範囲を超えた発言を繰り返し受けるようになり、うつ病を発症した。
  

ロ 同僚等による嫌がらせ、いじめの例

 Bさんは、建設会社にパート社員として入社し、事務職に従事していた。入社直後から、先輩社員複数名から、無視をされる、陰口を言われるなどの行為を受けるようになった。その後、Bさんが正社員になったことを契機に嫌みや無視などの嫌がらせがひどくなり、上司に相談をしたが解決されず、これらの行為が執拗に繰り返されたため適応障害を発症した。
  

ハ 暴行を受けた例

 Cさんは、運送会社で仕分け作業に従事していたが、仕事でミスをしたところ、上司から罵声を浴びせられながら、ペットボトルを顔に投げつけられた後、頬を平手打ちされてケガをしたため、病院を受診し、治療を受けた。
 Cさんはこの暴行を受けた当日に、外傷後ストレス障害を発症した。

(出典:第5回 職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会資料/H29.10.19実施)