5 勤務間インターバル制度

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 この制度は、「勤務の終業時刻から翌日の始業時刻までの間、一定以上の休息時間を設ける」ことを企業内の勤務時間管理の仕組みとして定めて運用するもので、生活時間や睡眠時間の確保による労働者の健康への配慮でもあります。
 この投稿記事では、制度導入の検討に際して参考となる点を説明します。

  

インターバル(休息時間)の長さ

 この制度で確保するインターバル(休息時間)の長さについて、法令での具体的な定めはありません。
 実務上は、その企業の部門ごとの業務内容とその進め方、顧客との関係などを把握した上で、9時間から12時間の間で企業内統一の休息時間を設定」「部門ごとの実態に合わせて複数の休息時間を設定」のいずれかにより運用していくことになると考えられます。
    

勤務間インターバルの導入状況

 令和3年1月時点の調査で、導入済は5%、今後導入予定などを含めると5社に1社という状況です。
 1企業平均のインターバルは、ほぼ11時間(10時間57分)で、企業規模別で最も短い1,000人以上でもほぼ10時間(9時間55分)。

(出典:令和3年度就労条件総合調査(厚生労働省))

  

インターバルが翌日の始業以降に及ぶ場合の対応

 深夜まで時間外勤務を行った後に休息時間を取った場合には、その時間帯が翌日の始業時刻を超えて所定労働の時間帯に及ぶことが起こり得ます。
 そのような場合の対応方法は、次の(1)、(2)のいずれかになります。

(1) インターバル時間と翌日の所定労働時間の重複部分の時間数を働いたものとみなす方法
(2) 翌日の勤務終了時刻を繰り下げる方法

 ここでは、分かりやすくするため、
 ・所定労働が9時~18時までの8時間(休憩1時間)
 ・勤務間インターバル(休息時間)が10時間
である企業において、24時まで6時間の時間外・深夜勤務を行い、「休息時間の終了時刻=翌日の勤務開始時刻」が翌日10時となる事例で説明します。
  

(1) インターバル時間と翌日の所定労働時間の重複部分の時間数を働いたものとみなす方法

 この方法では、翌日の10時勤務開始で所定労働時間働いた場合に勤務終了時刻(終業時刻)が19時となるところ、本来の終業時刻である18時で勤務終了とします。
 そして、18時から19時までの1時間、つまり、インターバル時間と所定労働時間が重複する部分(9時~10時)に相当する時間数については、働いたものとみなして就労義務を免除します。
(→翌日の労働時間は7時間で把握)

 この就労義務を免除した1時間分の賃金について、ノーワーク・ノーペイの原則により控除するのか、その例外として控除しないのかは、各企業が制度の導入内容を検討する際に決めておきます。
 ここでいうノーワーク・ノーペイの原則とは、労働者からの労務の提供がない場合は、使用者の賃金支払義務も生じないという考え方のことです。
  

(2) 翌日の勤務終了時刻を繰り下げる方法

 この方法では、翌日の10時勤務開始で所定労働時間をそのまま働いて勤務終了時刻(終業時刻)は19時です。
(→翌日の労働時間は8時間で把握)
 そのため、賃金計算や労働時間把握で(1)のような手間は生じません。

 ただし、この方法を採用する場合は、(1)の方法に比べて累計の実労働時間が長くなりますし、2日以上連続して適用した場合は、本来の始業・終業時刻からのずれが大きくなるため、別途リセットする必要が生じます。

  

適用除外の規定

 実務上、勤務間インターバルを厳格に適用したことで、企業活動に支障が生じてしまうことがあります。
 そのような弊害を防ぐためには、事前に想定可能である次のようなものを「インターバル(休息時間)を確保できない」場合として適用除外にする旨を就業規則等で定めておく対応が有効です。

(1) 重大なクレーム(品質問題・納入不良等)に対する業務
(2) 突発的な設備のトラブルに対応する業務
(3) 予算、決算、資金調達等の業務
(4) 海外事案の現地時間に対応するための電話会議、テレビ会議
(5) 労働基準法第33条の規定に基づき、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要が
  ある場合

 これらの項目のうち(1)~(3)は、一般条項の36協定での「時間外労働、休日労働をさせる具体的理由」や、特別条項付36協定での「臨時に限度時間を超えて労働させることができる場合」とも重なるものです。
 このような適用除外を設ける考え方は、勤務間インターバルと同様の効果が期待される方法である「一定の時刻以降の残業や一定の時刻以前の始業の一律禁止」を導入する場合にも有効なものです。  

  

制度普及に向けた課題

 この制度を普及させる上での課題として、制度自体の認識度に加えて次のものが挙げられています。

(1) 制度導入に当たっての手順

 特に中小企業においては、どのように 労使の話合いの場を作り、どのように制度の具体的内容を決めていくかといった導入手順が十分につかみ切れていないことが考えられます。
  

(2) 事業場における経費負担

 制度導入に向けた就業規則整備の外部専門家への依頼や、労働時間管理のためのクラウド型勤怠管理システム導入などで一定の経費が必要と考えられます。 
  

(3) 代替要員の確保

 適用除外の定めがない勤務間インターバル制度を導入した後に、突発的な事情で残業を余儀なくされて次の出勤時刻を遅らせる場合に、その分の代替要員の確保が困難であるといった労務管理上の課題が考えられます。
  

 これらの課題についての国の対応ですが、
 (1)については、制度の導入・運用の取組の全体像やその手順、導入事例などをまとめた「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」が全業種版、IT業種版の2種類公開されています。
 (2)については、勤務間インターバル制度導入の取組を対象とした助成金「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」が設けられています。この助成金は、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを新規導入するなどした事業主に対して、制度導入の取組である研修や外部専門家のコンサル、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新の経費を助成するものです。令和3年度分は申請数が多く予定よりも早く申請の受付が終了しており、広く活用されていると見られます。