社会保障審議会(厚生労働省設置)の企業年金・個人年金部会において、今後の企業年金・個人年金制度について今年2月から検討が行われてきましたが、今月25日の第10回でこれまでの「議論の整理」がとりまとめられましたので、以下にその内容を要約します。この部会では、来年度(令和2年度)の制度改正・税制改正に向けて、さらに議論を続けていくこととなっています。

 なお、ここで議論されているのは、確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(企業型DC・個人型DC(iDeCo/イデコ))です。

■拠出時・給付時の仕組み

  • 企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入可能要件の見直しについては、企業型DC独自の要件(60歳以降は、60歳前と同じ事業所で継続雇用の方のみ加入者となる)を撤廃し、厚生年金被保険者(70 歳未満)であれば加入者となれるようにする。
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能要件の見直しについては、iDeCo独自の要件(国民年金第2号被保険者や国民年金の任意加入被保険者であって60歳以上の方は加入者になれない)を撤廃して、国民年金被保険者であれば加入可能とする。
  • 確定拠出年金(DC)の受給開始時期の選択肢の拡大として、開始の上限年齢を75歳に引き上げる。
  • 確定給付企業年金(DB)の支給開始時期の設定可能範囲の拡大として、開始の上限年齢を70歳に引き上げる。
  • 拠出限度額、中途引き出し及び受給の形態については、検討を継続していく必要があるとされています。

■制度の普及等に向けた改善

  • 中小企業向けに設立手続を簡素化した「簡易型DC」や、企業年金の実施が困難な中小企業が iDeCo に加入する従業員の掛金に上乗せして事業主掛金を拠出できる「中小事業主掛金納付制度(iDeCoプラス)」について、制度を実施可能な従業員規模を300人以下(現行100人以下)に拡大する。
  • 企業年金の加入者の資格などについて、「同一労働同一賃金ガイドライン」の「基本的な考え方」を考慮した取扱いをするべき旨を確定給付企業年金(DB)と確定拠出年金(DC)の法令解釈通知に明記して周知する。
  • 企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者資格などの考え方を、確定拠出型企業年金(DB)に合わせることを法令解釈通知に明記して周知する。(厚生年金被保険者(70 歳未満)を加入可能とすることへの対応)
  • 企業型確定拠出年金(企業型DC)加入者が個人型確定拠出年金(iDeCo)にも加入するときの要件緩和として、拠出限度額から事業主掛金を差し引いた残余額の範囲内で、iDeCo(月額 2.0 万円以内)に加入できるように改善する。(現行は、労使合意に基づく規約による事業主掛金の上限の引下げを行っておくことが必要)
  • マッチング拠出(事業主掛金に上乗せして加入者掛金を拠出すること)を導入している企業の企業型確定拠出年金(企業型DC)加入者について、マッチング拠出と個人型確定拠出年金(iDeCo)のいずれも選択できるようにする。(現行は、個人型確定拠出年金(iDeCo)は選択できない。)
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入申込みや変更手続きのオンライン化などの手続き面の改善を行う。
  • 確定拠出年金(DC)の加入者である外国籍人材が帰国する際に、公的年金と同様に脱退一時金を受給できるようにする。
  • 脱退一時金の受給要件(掛金拠出期間3年以下)について、公的年金の脱退一時金の支給上限年数が5年に引き上げられるのにあわせて見直す。
  • 転職時などの制度間の年金資産の移換(ポータビリティ)について、①終了した確定給付企業年金(DB)から個人型確定拠出年金(個人型iDeCo))への年金資産の移換、②加入者の退職時などの企業型確定拠出年金(企業型DC)から通算企業年金への年金資産の移換の移換手続を改善する。ちなみに、通算企業年金とは、 退職などでこれまで加入していた企業年金を脱退した場合などに、それまで蓄えた年金原資を企業年金連合会に預けて、将来年金として受け取る仕組みです。
  • 確定拠出年金(DC)に関する手続の負担を考慮して、事業主・個人・国民年金基金連合会・運営管理機関の 手続の改善を行う。

 以上の他に、確定給付企業年金(DB)などの手続、制度を健全に運営するための体制の整備等(企業年金のガバナンスの確保)、受給権の保護などに関する事項にも言及があります。