ここ数年で、それぞれの企業を取り巻く環境が急速に大きく変わり、この先も変化が続いていくと見られる中で、直接的なダメージはまだだが先行きに不安を感じる企業、これまで事業継続の前提としてきたものが揺らぐ企業や、直接的なダメージはまだだが先行きに不安を感じる企業が多くなってきているようです。
それらの不安や揺らぎへの対策は、 生産性のさらなる向上や、これまでと一線を画した製品・サービスの投入などの組み合わせによる「本業強化」 、新事業や思い切った業態転換といった方法での「事業再構築」など、企業によってさまざまです。
その資金調達については、本業強化、事業再構築いずれでも、最善は全額自己資金、次善は5~10年の無理のない返済計画での金融機関からの融資の併用ですが、そのいずれも難しい場合が多いことも事実です。
債務超過ではなく、不良在庫や手つかずの売掛金などの古傷がなければ、廃業や株式譲渡、事業譲渡という方法もありますが、それは最後の手段です。
そうした場合の第三の手段が、補助金や公的な認定計画といった公的な支援制度の活用です。
その活用で、資金調達面でのリスクと負担を大きく抑えることができます。ただし、制度を活用しようとするときに避けられない2つの問題を知っておく必要があります。
問題の一つ目は、事業実施の自由度が大きく制限されることです。
全額自己資金であれば、当初と見込み違いがあればすぐに事業計画を変えて軌道修正ができますし、場合によっては、撤退も選択肢に入ってきます。そして、設備投資をしているのなら、一部もしくは全部を処分することになります。融資との併用の場合は、それなりの厳しさがありますが交渉の余地はあります。
対して、補助金の場合は、大規模災害や今回のコロナ禍のようなケースは別として、事業内容を大きく変更したり、事業継続を断念することに伴い、設備投資で取得していたものを補助事業終了後5年以内に処分した場合には、補助金返還という問題が出てきます。
補助金を導入して行った事業が、予期しない外的要因以外の理由によりかなりの不調となったときの見切りは、難度が高い経営判断です。
二つ目は、事業計画の作成、申請や事業実績関係の書類作成と保存、 補助事業期間中の補助経費とそれ以外を分けての出納処理などに、多くの時間と労力を割かざるを得ないことです。
そのような点を知ったうえで使うのであれば、公的支援制度は企業の設備(モノ)、資金(カネ)を改善強化して、事業再構築や本業強化の成果を上げるのに大きく貢献します。また、事業計画が公的支援の対象として認められたこと自体が、その企業の信用度に好影響を与えます。
【この投稿の執筆者】
札幌・新道東コンサルオフィス代表
特定社会保険労務士 塚田 秀和