この事業は、中小企業庁所管の事業で、その名のとおり「早期経営改善計画」の策定を支援するものです。
支援の方法は、経営改善計画作成費用と、計画策定1年後の実施状況のモニタリングへの補助であり、その補助率2/3、補助上限額は20万円(事業費ベースで30万円)です。
この支援事業での経営改善計画策定をきっかけに、行政が申請企業での取り組みを期待しているのは、
● 資金計画の策定と運用による資金繰りの改善
● 自社の状況を把握して、今後の対応策を数値目標、アクションプランを
伴った経営改善計画にまとめること
● 経営改善計画に盛り込んだアクションプランへの継続的な取り組み
などであると見られます。
中小企業庁のサイトでは、【こんな人におすすめ】と銘打って4つ挙げています。(以下原文のまま)
● ここのところ、コロナの影響などで資金繰りが不安定になっている。
● コロナなどの影響で売上が減少し、先行きが分からず不安だ。
● 自社の状況を客観的に把握し、今後の取組事項を整理したい。
● 初めてお願いする専門家に、いきなり高額の費用は払えないので、
まずは1度お試しで計画を作りたい。
この4つの例示から、この支援事業には、経営の先行きに売上面、資金面などで何かしらの不安があるが、具体的な金融支援を必要とするところまでは至っていない企業での、早めの対策立案と取り組みを促す狙いがあるものと考えられます。
この支援事業の流れ
この支援事業では、申請者となる中小企業や個人事業者のほかに、申請者の関係金融機関(メイン行または準メイン行)、外部専門家(認定経営革新等支援機関)、都道府県単位で設置されている経営改善支援センターが関わります。
支援事業の流れは、次の図のとおりです。
上の図で目立つのは、申請者の関係金融機関の位置づけです。この支援事業において、資金繰りとその管理の改善が重視されていることや、経営改善のためのアクションプランの実施もあり、関係金融機関と、企業の現状と経営改善のアクションに関する情報を共有することが、重要となっています。
申請者となる中小企業や個人事業者にとって、補助対象となる費用について、支援機関への直接の支払いは1/3だけです。経済産業省の補助事業のように、いったん全額払いして立替えて、後日補助金を受けるといったことでの負担感はありません。
早期経営改善計画の内容
この計画は、認定経営革新等支援機関の支援を受けて策定する簡潔な計画で、次の4つを含みます。
➤ ビジネス俯瞰図
自社を中心に、仕入先、販売先、金融機関や関係先、経営体制等を一枚のペーパーにまとめて
その会社のビジネスモデルを見える化したもの。
➤ 資金実績・計画表
過去2期の月別データの分析などを参考に少なくとも6が月先までの資金計画の月別見通しを作成。
従来からあったサンプルでは、売上高、借入、返済、借入金残高、預貯金残高の5項目の計上に
とどまっていましたが、ポストコロナ持続的発展計画のひな型(資金繰りの実績及び予定)では、
項目は損益計算書の科目に近くなって簡易CFも算出し、見通しも1期12か月分となっています。
計画は従来のひな型で提出するとしても、その後の見通しと計画のずれを早期に把握して必要な
対策を行うためには、ポストコロナのひな型をあらかじめ作っておくことをおススメします。
➤ 損益計画
計画策定の前期(直近期)、計画策定をした期(計画0期)、今後2期の見通し(計画1、2期)
を作成。こちらも、ポストコロナのひな型は、より細かい科目で月別の実績と見通しで計画できます。
月別に、需要の繁閑や原材料などの仕入れ価格の季節変動などを反映した計画にできますので、
こちらの様式も合わせて作ることをおススメします。
➤ アクションプラン
サンプルでは、主な経営課題を3つ挙げて、それぞれの改善のためのアクションプランを立案して、
実施時期や社内での担当者、計画策定をした期(計画0期)と計画1期以降の改善効果(数値)を
記載します。
このようなアクションプランを立てる際は、3つでは足りないとなりがちですが、まずは候補にな
りそうなものを規模の大小などにかかわらずすべて挙げたうえで、実行したときの資金計画や損益の
見通しへの影響、社内の実行体制、資金的な制約などを考慮して、3つ程度に絞り込むのがよろしい
と考えます。
■ モニタリングの内容
金融機関に早期経営改善計画書を提出した日(金融機関の受取書等の日付)から1年経過後の最初の決算期に合わせて行います。
策定した計画どおりに経営改善が進められているかどうか、認定機関が、実績の検証、申請した事業者へのヒアリングなどを行います。 このとき、計画と実績の乖離があれば、その原因の分析や対策への助言も行います。
事業者は、モニタリングの結果と税務申告書を合わせて金融機関に報告するのが望ましいとされています。
支援対象となる事業者等の範囲
中小企業・小規模事業者、個人事業主(開業届を提出している者)、医療法人(常時使用する従業員が
300人以下)は、この事業の支援対象となります。
それ以外の、次に挙げる法人などは、支援対象外です。
・社会福祉法人 ・特定非営利活動法人
・一般社団・財団法人 ・公益社団・財団法人
・農事組合法人 ・農業協同組合
・生活協同組合 ・LLP(有限責任事業組合)
・学校法人
補助金額の上限
計画策定、モニタリングを合わせて、補助上限20万円。うちモニタリングは、5万円が上限。
補助率2/3であり、事業費ベースでは、それぞれ30万円、7万5千円です。
私見になりますが、計画策定のベースになる財務や生産、営業、販売関係のデータが必要最低限のレベルは揃っており、計画策定の際のヒアリングなどが一通りできる場合であれば、前記の金額の範囲内で計画の策定とモニタンリングを行うことは十分可能です。
【この投稿の執筆者】
札幌・新道東コンサルオフィス代表
特定社会保険労務士 塚田 秀和