44 事業再構築補助金のちょっとした話 16~20

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【メモ16】 日本標準産業分類と事業再構築の定義 (R3.7.16)

 この補助金の申請をするときに見る機会が多くなるのが、日本標準産業分類です。
 これは、総務省が政府の統計調査の結果を産業別に表示するために作った区分で、日常生活ではそれほど縁はない類のものです。昭和24年10月に設定されてから、13回の改定を経て70年余り使われ続けてきています。
 この分類は、生産される財又は提供されるサービスの種類などに着目したもので、大分類、中分類、小分類、細分類の4つのレベルで設定されています。

 分かりやすくするため、「マチの個人経営のパン屋さん」を日本標準産業分類で分類すると次の図のようになります。

 


 この店で再構築後の一番の稼ぎ頭の事業が、大分類で見て、再構築前の「I 卸売・小売業」から変わると、「業種転換」になります。
 分類を下って行って、同じく再構築後の一番の稼ぎ頭の事業が、中分類は「58 飲食料品小売業」、小分類は「586 菓子・パン小売業」、小分類は「5863 パン小売業(製造小売)」のいずれかで見て、違う分類に属するものになった場合は、「事業転換」になります。


 例えば、オフィス街の個人経営のベーカリーが、テレワークが一気に増えたことなどで売上が大きく落ち込んだため、郊外の住宅街に移転して再オープンするのに合わせて、それまで扱っていなかった洋菓子を店に置くようにした場合で、それを店一番の稼ぎ頭に育てるのであれば、細分類が「5861 菓子小売業(製造小売)」もしくは「5862 菓子小売業(製造小売でないもの)」に変わりますので、事業転換に該当します。

   

【メモ17】 事業再構築の定義は3人組と2人のぼっち (R3.7.17)

 事業再構築の定義は、5つそれぞれに見るのではなく、新分野展開、事業転換、業種転換の3つを一括りにして見て、あとは業態転換を見るだけでいいと考えています。

 事業再編は、合併、株式譲渡、事業再編などの組織再編を実施した上で、新分野展開、事業展開、業種転換、業態転換のうちのいずれかを行うという合わせ技的な作りになっています。ですから、組織再編をしないのであれば最初から横に除けておいていいのです。
   

■ 新分野展開、事業転換、業種転換の括りで見る

 一括りにした3つの定義での「事業」とは、新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することです。
 そして、新規性要件で見るものは、製品等の要件と市場の要件です。
 ここでいう「新規性」とは、申請企業での新規性であり、ものづくり補助金における新製品・新サービスが地域内での革新性を求められているのとは異なります。また、時期的には、2020年4月以降に新たに取り組んでいる事業でこの補助金の事業計画を組み立てた場合は「新規性」があるとみなされます。
 製品等の新規性で求められるのは、①自社で製造や提供をしたことがない、②現有のものとは異なる設備の導入、③数値で既存品との性能などの違いが示せること(計測可能な場合のみ)の3つです。
 市場の新規性は、既存品と共食いにならないこと(市場が重ならないこと)です。具体的には、既存品の売り上げが減少しないことや、むしろ相乗効果で増加することを事業計画で示します。 2つの新規性に該当していれば、売上高の要件(10%要件、構成比要件)を見ます。

 売上高10%要件は、新製品やサービスの売上高が申請企業の総売上の10%以上になる計画かどうかということ。売上高構成比要件は、新製品やサービスが属する事業(又は業種)が申請企業で最も売上構成比が高い事業等になるかどうかということです。
 事業と業種は、日本標準産業分類に当てはめて見ますが、その内容は前回7月16日付けの投稿(日本標準産業分類と事業再構築の定義)でご確認ください。

 その判定のパターンは、次のとおりとなります。

  
     

■ 業態転換

 業態転換は、①製品の製造、②商品やサービスの提供の方法を相当程度変更することで、それぞれ要件が異なります。
 ①製品の製造では、自社では過去に実績のない製造方法を用いること、自社での製造実績がない製品であること、売上高10%要件を満たすことの3つです。
 ②商品やサービスの提供では、自社では過去に実績のない提供方法を用いること、売上高10%要件を満たすことに加えて、次のいずれかに当てはまることが求められます。
 ・その商品またはサービスが自社で提供した実績がないこと
 ・今回の再構築に伴い、既存設備の撤去、既存店舗の縮小といった設備の撤去を行うこと

 業態転換では、売上高構成比要件を満たすこともあり得ますし、事業再構築の手引きでも、次のコメントがなされています。「10%は申請するための最低条件です。新たな製品の売上高がより大きな割合となる計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。」

 事業再編は、ケースとしてはごく少ないと考えられますので、最初にお話ししたとおり意識して見る必要はないでしょう。

 定義のクリアと並行して、事業実施後3~5年度の付加価値の増加を早い段階でクリアすることも重要です。
   

【メモ18】 建物・不動産で補助対象になるもの、ならないもの (R3.7.20)

 この補助金の相談を受けていると、建物・不動産がらみで補助対象になるかどうかを早い段階で聞かれることが結構多いです。

 この補助金の特徴の一つが、専ら(もっぱら)補助事業のために使用する建物の建設・改修に要する費用を補助対象経費として認めていることです。(ここでの、「専ら」は、100%補助事業専用ではないが、ぼぼ専用であると言える状態と考えてください)
 また、補助事業に必要となる建物の撤去費用や賃貸物件の原状回復費用は、建物の建設や改修とセットで行う場合に限って、補助対象となります。
 ちなみに、ものづくり補助金では、工場建屋、ビニールハウスのような簡易建物自体の取得や組立部材の取得費用、補助対象となる機械設備の設置場所の整備や基礎工事の費用まですべて補助対象外となっています。このことからも、事業再構築補助金の補助対象の幅が広いことがわかります。

 事業再構築補助金でも、建物や土地の購入費、土地の造成費用、賃貸(事務所等の家賃)、保証金や敷金、仲介手数料は、補助対象外となります。

 例えば、個人営業の酒屋を廃業して、事業転換をして同じ場所でコンビニエンスストアを開業する場合を考えてみます。(補助上限額に収まるかどうかの話はここではしません)
 現在の店舗の改築で対応する場合は、その改築費用が補助対象となります。
 次に、現在の店舗は必要な面積に大きく足りず、しかも老朽化が著しい場合は、現店舗を解体し、土地を追加取得して造成し、そこに新店舗を建築せざるを得ません。
 このとき、補助対象となるのは、現店舗の解体撤去費と、新店舗の建築費になります。店舗面積拡張のための土地取得費や土地造成費は補助対象外です。

 この補助金は、中小企業者等の通常枠の従業員20人以下でも、補助上限額4,000万円、事業費ベースで6,000万円までカバーできる可能性があるので、投資額を積み増す方向への誘因が働きがちですが、できるだけ早い時期での投資額の回収を考えた施設規模と内容、運営コストの低減を考えた構造の採用などを検討していき事業の実現可能性を高める対応が必要と考えます。

  

【メモ19】 第3回公募での売上高等減少要件の大幅変更 (R3.7.31)

 昨日夕方に第3回の公募が始まりましたが、売上高減少要件が大幅に変更されています。

 原則は、次の2つを満たすことを求めています。

① 2020年4月以降の連続する6か月のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の3か月の
  合計売上高から10%以上減少していること
② 2020年10月以降の連続する6か月のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の3か月の
  合計売上高から5%以上減少していること

 といっても、通常起こりうるケースは3つですので、図に整理してみました。



 図の3つのケースのうち、要件どおりでひねりのないのが、ケース①のパターンです。
 (a)は2020年4月、(b)は2020年10月からそれぞれ6か月間で設定して、減少率の要件は、(a)が10%以上、(b)が5%以上で、両方とも判定します。
 ケース②では、(a)の期間が2020年10月以降にまたがっていますが、減少率の要件は、ケース①と同じく(a)、(b)両方を見ます。
 ケース③では、(a)の期間がすべて2020年10月以降で、10%以上減少していました。この場合は、(b)をしても、実質的に(a)と重複しますので、申請の際の資料提出は(a)の分だけとなります。

 第3回公募からは、売上高に加えて付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費の合計)でもこの要件を判定できるようになっています。
  

【メモ20】 新しいテーマは賃上げと雇用 (R3.8.4)

 7月30日に公開された第3回の公募要領での新しいテーマは、賃上げと雇用です。
 事の始まりは7月中旬に、令和3年度の地域別最低賃金額改定の目安を、全国一律28円、3.1%増とする答申が取りまとめられたことです。昨年は、全国平均1円増に止まりましたが、全国平均1,000円までの早期引上げのために、年3%程度の引上げ軌道に今年一気に戻したということです。

 各企業での最低賃金引上げへの国の支援としては、厚生労働省の業務改善助成金がありましたが、対象は従業員数100人以下の企業に限られています。今回の新設された「大規模賃金引上枠」で従業員数101人以上の企業への国の支援ツールができたことになります。

 この枠では、通常枠の要件に加えて、①事業場内最低賃金の年額45円以上上げること(賃金引上要件)、②従業員数を年率平均1.5%以上増員(初年度1.0%以上)すること(従業員増員要件)が求められます。 補助額の上限は1億円、補助率は通常枠と同じです。

 事業場内最低賃金が適用されている人数の制限はありませんから、少人数でも申請できるといえます。
 ただ、その企業での最低賃金を4~6年にわたって年45円(年率では3~4%台)引き上げ続けた場合の給与体系全体への影響や、毎年1.5%の従業員増員による給与原資への影響を考えると、ハードルは高いと言わざるを得ません。

 第3回公募では、もう一つ「最低賃金枠」が新設されています。

 通常枠に加えての要件は、①2020年4月以降のいずれかの月の売上高が前年または前々年比30%以上(付加価値額の場合は45%以上)減少していること(最賃売上高等要件)、②2020年10月~2021年6月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること(最低賃金要件)の2つです。
 こちらの枠では、大規模賃金引上枠とは異なり、賃上げ幅や従業員増員の要件はありません。最賃売上高等と最低賃金の2つの要件を満たす企業にそれを求めた場合、申請可能な企業が限られてくるであろうことがその理由として考えられます。
 これと別に、従業員1人当たりの生産性(さらに突き詰めると人時生産性)が低く、加えて、労働分配率は8割超の水準で、この先の最低賃金の底上げに対応するのが難しい企業に、生産性向上を促すために設けた枠ではないかというのが私の見方です。
 まずは、事業再構築での選択と集中、生産性向上で、厳しい経営状況を脱して事業の持続可能性を高めて、できれば労働分配率を下げつつ、賃金の底上げが行われることを期待しているのかもしれません。

 第3回公募要領で、最低賃金枠は、加点措置を行い、緊急事態宣言特別枠に比べて採択率において優遇されるとなっています。また、緊急事態宣言特別枠自体も、予算に限りがあり、今回の公募で終了する可能性があるというコメントもあります。 この先は、あくまでも特別枠としての位置づけである緊急事態宣言特別枠から、中期的な政策課題に対応する最低賃金枠への移行という流れになる可能性があります。

  

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東コンサルオフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和