44 事業再構築補助金のちょっとした話

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SWOTをするときの注意点(R3.5.18)

  
 事業再構築補助金の事業計画の検討でSWOTをやるときには、弱み(W)を一番後にすることをお勧めします。弱みは、放っておいてもどんどん出てくることが多いので、まずは、S(強み)を絞り出すことです。
 そして、O(機会)とT(脅威)を余分な評価や感想を交えずに淡々と並べていきます。
 また、SWOTに慣れていない場合には、「〇〇の評価が高い」といった結果をSで並べてしまいがちですが、並べるのはあくまでも、その結果を生み出すのに貢献した要素になります。
 例えば、「××の技術で製造した製品〇〇の評価が高い」という場合には、Sは「××の技術」といった具合です。
  

事業実施体制(R3.5.19)

   
 補助事業実施の社内での役割分担は、どのようになっているでしょうか?
 社長か特定の役員がほとんどカバーするような体制だと、事業計画の実現可能性に「?」マークがつく可能性が高くなります。また、現実問題として、今の仕事に補助事業の仕事を上乗せしてやっていけるかという問題もあります。(特に経営判断に時間をどれだけ割けるのかという視点)
 現在の主力分野を縮小するのですから、社員を再配置して人材育成(将来の役員候補育成)も考えて社内体制を組んで行く方がより現実的です。

 
 社長や特定の役員が多くを担うのであれば、現在の主力分野でのプレイヤーとしての仕事を大胆に整理して、社員に任せるようにしないと新事業、現在の主力分野のどちらも中途半端になります。人件費は補助対象にならないですが、全額持ち出しになっても新分野に精通した人材を確保しておく方がよろしいです。
 その時、週5日のフルタイム勤務にこだわることなく、リタイアして間もない方や、健康で意欲はあるが介護・子育てなどでフルタイム勤務できない方も視野に入れることをお勧めします。短時間正社員が専門職や管理職になってはいけないということはありません。勤務時間の長短よりも、自社に何を伝えてくれるのか、期間内に成果を出せるのか、コミュニケーションを取れるかの方が重要です。
  

補助事業終了後で補助金返還があるケース(R3.5.25)

 
 事業再構築補助金の活用を考えられている事業主と話しているときによく出てくるのが、「3~5年後の付加価値額年3%アップが達成できなかったときに、補助金の返還やペナルティがあるのか」というものです。
 
 私は、「通常枠では、ありません」と答えています。中小企業の卒業枠や中堅企業のグローバル枠は、2つ合わせても500社、国の採択目標5万社の1%です。そこの話をしてもその事業主の役には立ちません。
 
 その後、続けて話すことが多いのは、
「社長が、補助金抜きで新事業をするときは、最初と見込み違いがあれば、軌道修正をするか、よほど悪ければ、見切りをつけて撤退されますね?」


「もちろんそうだ。」

「補助事業は、その軌道修正や見切って撤退というのが難しいんです。」

「どういうこと?」or「それはそうだろうね」

「補助事業の終了後5年間で事業計画書の事業をやめる場合は。50万円以上で取得したものは、事業をやめた時点の簿価か、譲渡していればその額に補助率をかけた額の返還になります。この補助金は、設備投資がメインの補助金ですから、それなりの返還額になるのではないでしょうか。」
「また、軌道修正についても、微調整ならともかく、大きくハンドルを切るようなのは、事務局の承認を得られないでしょう。」

 その後、必要に応じて50万円以上の財産取得(設備投資)の際の相見積りの話などをさせていただきます。

事業再構築補助金とフランチャイズ(R3.5.28)

 
 事業再構築補助金の公募要領の中で、補助対象とならない経費として、フランチャイズ加盟料が挙げられていたので、まとまった件数が出てくるのかと思っていたところ、私のところにも、ぽつぽつと相談がありました。
 確かに、フランチャイズは、自分で一から勉強してやるのとは異なり、営業開始までの道のりは最短距離で進んで行けます。市場調査付きでそのフランチャイズ本部の勝ちパターンを移植してもらえますから、的外れなことをしてしまうリスクも小さくなります。
 ただ、フランチャイズでやる位なので、現在の本業とは全く関係がないか、遠い業種・業態となりがちです。そうなると、現在の本業との相乗効果(シナジー)は期待しにくくなります。
 事業再構築補助金の事業計画は、その会社、ひいてはこれまでの本業の強み、弱みと事業環境の把握をベースにおいて進めていきます。
 ですから、①現在の強みでフランチャイズ事業に生かせるものがあるかどうか、②現在の弱みについて、フランチャイズ事業を実施するために克服するべきものがあるかどうか、フランチャイズ事業では弱味とはならないものがあるかといったところは、明確にしておくことになります。

新規事業者の特例(R3.6.1)

   
 今回の第2回の公募要領を初めて見たときに「!」と思ったのは、売上高減少要件のところで、2020(令和2)年4月から12月までの新規事業者が特例的に支援対象になる場合があるとされたことでした。
 
 第1回の公募要領が公表される前の、今年の2月下旬から3月中旬にかけて、「創業してそれほど経っていないけど対象になるだろうか」という質問を複数受けていました。
 そのとき、私の方からは、「この補助金は、これまで続けて来た本業が大きいダメージを受けたので、新分野展開などを進めていくという作りであるし、対前年の売り上げ比較の要件もあるので、新規事業者という切り口は今のところなさそうです。ただ、この先に公表される公募要領で特例が打ち出されるかどうかはわからないですが、あまり期待はできなさそういです」と話をさせていただきました。 そして、第1回の公募要領には、新規事業者の特例はやはりなかったので、いま「!」となったわけです。

 今回は、事業計画書に、①コロナ以前から創業計画を有していたこと、②コロナの影響で売り上げが減少していることの2つを示すことが求められています。
 ②は公的な統計データを探してくるとして、①は融資の書類があれば一番いいのですが、その場合は補助金の話とは別に面倒事が出てきます。
 
 売上高比較は当然するのですが、平時における事業実績がないため、①当初の創業計画は妥当なもので、平時であれば、売上・利益目標は十分達成可能であったこと、②コロナの影響による急激かつ大幅な需要減少から一定の回復があっても、当初の創業計画での売上目標は達成困難であることの2つを数字を交えて事業計画で説明してから、新事業の話になると考えています。
 新規事業者の再構築は、それ以外の会社よりも難易度が高いというのが私の実感です。
   

再構築後のいまの本業は?(R3.6.22)

   
 事業再構築という語感からすると、再構築後は本業の体制を縮小しなければならないように感じますが、実際にはそこまで求められてはいません。

 よくある質問【事業再構築指針全般】の中に「既存の事業を縮小又は廃業することは必要か。」という問いと、その答えとして、
「必ずしも必要ではありません。」
「ただし、業態転換のうち、提供方法を変更する場合であって、商品等の新規性要件を満たさないときには、設備撤去等要件を満たすことが必要となります。」
があるのをご覧になった方も多いかと思います。


 とはいっても、いまの本業の体制をそのままにしての再構築には、そうする理由を組み立てておくことが必要です。
 その際に考慮する要素として、考えられるものを挙げていくと、
 〇 本業の業種自体が、成長期、衰退期などのいずれにあるのか
 〇 商圏内での中長期的な需要の見込み
 〇 商圏内の競合企業の動向
   (商圏内需要が縮小傾向でも残存者利益獲得の可能性はあるか、逆に競争激化の方向に向かうか)
 〇 価格、品質、デザイン、使用により得られる満足感(効用)といったもののうち、
   どれで勝負しているか
 〇 老朽設備更新や新商品開発の投資を行う場合、現在の事業規模で回収できるか
 〇 ベテラン社員の退職後に、正社員を補充するのに見合う事業なのか
 〇 新事業とのシナジー効果があるのかどうか
などが出てきます。

 ただ、この補助金の目的や作りから考えると、「既存事業の縮小・整理+大胆な新事業への転換」の方が、あるべき姿により近いといえますし、既存事業の温存は、再構築の必要性・緊急性の点から説得力が弱くなるリスクは避けられないと考えられます。
     

他の補助金との並行申請(R3.6.23)

   
 事業再構築補助金サイトのトップに、次のような注意書きが出ています。(6月23日現在)

 「第1回公募で採択を発表した案件の中に、重複案件と思われる事業が発見されましたので現在調査中です。不正が判明次第、厳正に対応いたします。公募要領4.(7)⑩にありますように、他の法人・事業者と同一又は類似内容の事業については、厳正に対応いたしますので、十分ご注意ください。」

 同一又は類似の事業計画を複数の事業者で申請する重複案件は、不採択又は交付取消となります。これは、過去の事業計画との関係でも同じです。


 では、同一又は類似の事業計画を複数の補助金(例えば、事業再構築とものづくり)に並行して申請できるか?
 結論から言えば、可能です。

 公募要領(第2回)において、「同一法人・事業者が今回の公募で複数申請を行った事業」は不採択又は交付取消となるとされています。
 ですが、要件を満たしている限りにおいて、並行して別の補助金に申請することについては、同様の定めはなく、当然にそうであると読み取れる記載もありません。
 ただし、並行して申請している補助金のいずれかで、採択された場合は交付申請を行い、その後、残りの案件について採択通知が出ても交付申請はしないという対応になります。
(申請している補助金の審査結果がすべて出揃ってから、どの補助金を受給するか判断するという考え方もありますが、それぞれの決定のタイミングのずれなどの問題もありますので、この投稿では、このような記述としています)
  

製造方法等の新規性要件(R3.6.24)

 
 よくある質問の【業態転換、事業再編】で、
「内製化は「製造方法等の新規性要件」に該当するか」という問いがあり、その答えは、
「満たしうると考えられます。」となっていました。

 新規性要件に関する3つの事項を順に見ていくと、

 「①過去に同じ方法で製造等をしていた実績がないこと」については、過去に内製化していた実績がなければ、クリアできるでしょう。
 例えば、創業から同じ製品やサービスを提供し続けている企業で、創業時に資金や人的体制の制約から、その一部を外注としたのがそのまま続いていたのを今回、内製化する場合などが考えられます。

 「②新たな製造方法等に用いる主要な設備等を変更すること」については、①の事例で、製造設備やサービス提供のための装置を新規導入するのであれば、クリアできるでしょう。
 ただし、社内の生産体制の改善により、既存施設の稼働率が下がり余裕が出たので、外注品を既存設備を使って内製化するといった場合は、クリアできません。

 「③定量的に性能又は効能が異なること」については、自社生産のデータを時系列でしっかり把握している企業であれば、数字で示すことは可能でしょう。

 内製化で難しいのは、製造方法等の新規性要件より、製品の新規性、商品等の新規性要件をクリアする方ではないかというのが私の実感です。

 例えば、食品加工の切り口で見ると、内製化による製造日数の短縮、温度管理のレベルアップ、生産数量調整の容易化などで、従来は賞味期限の壁に阻まれて実現できなかった製品を今回の再構築で市場投入するといったことなのかと考えます。

経産省補助金の流れと事前着手(R3.6.25)

 
 経済産業省の補助金に共通する仕組みを今一度確認してみると、

①まず最初に事業計画の申請

 国が補助金を支出する根拠となる事業内容と経費の積算などを事業計画という形にまとめて申請者が申請します。

②審査の結果、評価の高いものから採択

 ここでの高評価は、あくまでも、特定の公募における優劣のことです。ですから、同じ内容の申請であっても、その公募における他の申請のレベルによって、申請全体の上位何パーセントに位置するかは、変わってくる可能性があります。
 一度不採択となっても、事業実施を3カ月程度後倒しすることによるリスクを許容できるなら、事業計画を再度磨き上げての2度目の申請を検討して見て良いのではと考えます。

③採択・交付申請後に事業着手

 採択通知は、国がその申請を、補助金を支出する事業計画として認めたという意思表示です。
 採択通知を受けたことに対して、申請者が交付申請を行います。
 交付申請に対して、国が補助事業の実施を認めるのが、交付決定です。ここで、補助事業として実施できることとその範囲、実施に必要な経費(補助対象経費)の上限額が確定します。(当初の交付決定後に、変更の交付申請と交付決定により、事業内容などを変更する場合は除きます)

 ですから、交付決定がなされる前に契約や支払いを行ったものは、補助対象にはなりません。
 実施できることも、その範囲も決まっていない中で、フライングでやってしまったことだから対象外という扱いです。

 ③の例外が、「事前着手」です。
 今回のコロナ対応のように、さかのぼって補助事業を行う必要性や緊急性などがある場合に、申請前の事業着手を認める特例措置です。
 あくまでも特例措置ですから、事前着手の必要性や緊急性を含めて事務局に示したうえで承認を得る必要があります。

事前着手対象期間の開始前に契約したものは対象外ですが、業者に相見積もりを提出させるなど、契約の準備行為に当たることは問題なく行えます。

④事業完了後の補助金支払

 事業完了後に、補助事業実施・実績報告で、実施内容と経費の支出実績を報告します。これについて、国は、交付決定(変更交付決定)どおりの内容での事業実施と経費の支出が行われたかどうかを確認(確定検査)したうえで、補助金の支払額(交付額)を決定して、申請者に通知します。
 申請者の補助金支払いの請求により、国は指定口座に補助金を振り込みます。
 ④の例外が、「概算払」です。

複数の新事業に取り組むということ(R3.6.27)

 
 再構築補助金では、一つの事業計画書の中に複数の計画を盛り込むことが可能です。
 ただ、2つの計画を盛り込んだ事業計画が、この補助金の事業として強い説得力を持つものとなるかどうかはまた別の問題です。

 企業が業績面で困難な時にあえて2つの新事業を行うことで、リスクを高めてしまい、実現可能性の点でも不利になるという一般的な見方はあります。
 この件について、私がより重要視するのは、この補助金での再構築の基本的な考え方と合わないのではということです。
 具体的には、第2回の公募要領の表2:審査項目の(3)再構築点の③で、
「市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取り組みであるか。」とされていることとの兼ね合いです。
 つまり、市場環境(外部環境)と自社の強みを掛け合わせ、自社のリソースの制約も考え併せて、1つの新事業に絞り、投資を集中し、現在の本業の縮小・整理もセットで行うのが、この補助金での再構築の基本的な考え方に沿ったやり方です。

 そのことが分かったうえで、2つの計画を盛り込んで、実現可能性が高く、説得力もあるケースはないかとなると、次のケースが考えられます。

 製造業の企業で、現有の設備とは異なる設備を導入して、これまで製造実績がなく、既存品と市場が重複しない新製品を製造する事業がメイン事業(1つ目の事業)。
 そして、メイン事業の新製品の製造工程で生成される副産物や、製造後に残る残渣(ざんさ/残りかす)から、メイン事業とは異なる設備を用いて、別の素材や製品を製造するサブ事業(2つ目の事業)というのであれば、2つの事業を一つの事業計画に無理なく盛り込むことができます。
 ただ、副産物や残渣でサブ事業が1つ作れるのですから、メイン事業はそれなりの規模になり、リソースも多く割く必要があります。その裏返しで、現在の本業の大胆な縮小や整理をセットで行わざるを得ないでしょう。

自社の人材を活用した、全く異なる業種での新事業(R3.7.1)

 
 第2回の公募要領の表2:審査項目に、私から見ると両立させるのが結構難しそうな項目が並んでいます。

 一つは、(2)事業化点の④で、「…その際、自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取り組みとなっているか。」
 もう一つは、(3)再構築点の①で、「…また、まったく異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。」

 多くの中小企業が抱えている問題は、ヒト・モノ・カネのリソースの制約が大きいことです。だから、本業の縮小・撤退、選択と集中といったキーワードが出てきているのです。

 モノ(設備)やカネ(資金調達)は、この補助金の採択を受ける、他の公的支援制度を活用する、スポンサーを見つけるといったことで対応できます。
 ヒト(人材)の制約の解決を企業外に求めるとき、特に、特定の職種の資格者や職人を揃える必要がある場合は、そこで事業を諦めざるを得ないケースも出てきます。

 そうならないためには、まず最初に、社員の現職のスキルだけではなく、今使っていない資格やスキル、趣味、関係する人や団体などを幅広く見て、活用できるものを探すことが考えられます。
 事例は、かなり苦しいですが、地方の建設会社で、大都市圏をターゲットにした果物・野菜のハウス栽培を新事業として行うとき、社員の実家である同じ作物を栽培している農家の技術指導のもと、事業化を進めていくといったところです。

束ねた事業計画(R3.7.5)

 
 事務局ホームページにアップされている動画をご覧になった方も多いかと思いますが、その中で出てきたキーワードです。

 束ねた計画がどのようなものについては、公募要領(第2回)の表2.審査項目、(4)政策点の⑤を、自分の周辺に当てはめて考えればわかりやすいでしょう。

 ちなみに、その全文はこのようなものです。
「⑤異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。」

 例えばになりますが、素材製造企業と、その素材を加工して製品を製造する企業が協働して、素材からの新製品開発を行う事業というのが考えられます。

 この事業では、新素材がその製品専用で他に転用できないのであれば、2社共同で一つの事業計画を申請せざるを得ないでしょう。
 その一方で、その素材が他にも転用でき、それ自体商材となるのであれば、2社別々の事業計画で申請できる余地が出てきます。

事業市場規模の推計は避けて通れない(R3.7.10)

 
 事業計画を作っていくには、定量・定性両面からのアプローチが必要です。
 このうち定量での把握で重要なものの一つが、製造する製品や、提供する商品・サービスに対する需要が商圏内にどの程度の規模で存在するのかということです。

 私も2月からこの補助金の相談を受けてきていますが、採算ラインの販売数量の見込みに加えて、商圏内(投入する市場)の需要のおおよその規模まで把握している方は少数派です。
 もっとも、皆様それぞれの再構築の事業計画にぴったりの数字を拾えるケースは少ないでしょうから、そうなるのも無理はないことです。

 ただ、数字とロジックで組み上げていく事業計画で、商圏内(市場)の需要が分からないのは、その計画の説得力を大きく削ぐことになります。
 つまり、こういう特色があり、このレベルの性能でユーザーにこのような便益を提供できる製品を、この地域を市場として投入する場合、潜在的な需要はこれだけあり、この手段と、あの手段でアプローチすることで、そのうちの〇〇%のシェアを獲得でき、売上はこれだけ、利益と付加価値はこれだけという一連の流れで説明できないと、社外の人を納得させるのは難しいということです。

 数字がなければ、推計して作るだけです。
 推計した場合、その推計値の精度の問題は避けて通れませんが、実際に事業を始めてから分かることがありますから、それらを織り込んで数字の精度を上げていけば良いのです。
 精度を気にして需要の推計をしないで進むほうがより高リスクな行動です。

 事業プランを伺っていると、「これはこの地域では初めて」「やっている会社は見たことがない」といったフレーズが出てくることが結構あります。
 少々意地が悪いですが、そのような時の私のスタンスは、「大なり小なり競合はいるか、近いうちに出てくるだろう」です。
 その事業プランに着目する引き金となった情報やデータは、多くの人がアクセスできるものであるのがほとんどなので、他に目を付けている人はいるということです。ですから、市場の需要を推計して、そのうちどれだけ取っていくかと進めていく方が無理がなく、実現可能性が高い計画になります。市場の半分を握るということはそう簡単には起こりません。
 また、怖いのが、あまりにもニッチすぎて事業化して5年、10年と続けて行けるだけの市場規模がなかったという見込み違いです。これも何とか避けたいところです。

 この市場規模の推計をサポートするのも、計画の策定に関与する認定経営革新等支援機関の重要な仕事と私は考えています。

 話は変わりますが、コロナ融資が一段落して、金融機関の融資への姿勢が厳しくなっていく中で、会社の10年後のために必要な事業展開や設備投資が出てきて融資を受けなければならなくなった時にも、この推計スキルは役に立つものと考えます。

日本標準産業分類と事業再構築の定義(R3.7.16)

 この補助金の申請をするときに見る機会が多くなるのが、日本標準産業分類です。
 これは、総務省が政府の統計調査の結果を産業別に表示するために作った区分で、日常生活ではそれほど縁はない類のものです。昭和24年10月に設定されてから、13回の改定を経て70年余り使われ続けてきています。
 この分類は、生産される財又は提供されるサービスの種類などに着目したもので、大分類、中分類、小分類、細分類の4つのレベルで設定されています。

 分かりやすくするため、「マチの個人経営のパン屋さん」を日本標準産業分類で分類すると次の図のようになります。

 


 この店で再構築後の一番の稼ぎ頭の事業が、大分類で見て、再構築前の「I 卸売・小売業」から変わると、「業種転換」になります。
 分類を下って行って、同じく再構築後の一番の稼ぎ頭の事業が、中分類は「58 飲食料品小売業」、小分類は「586 菓子・パン小売業」、小分類は「5863 パン小売業(製造小売)」のいずれかで見て、違う分類に属するものになった場合は、「事業転換」になります。


 例えば、オフィス街の個人経営のベーカリーが、テレワークが一気に増えたことなどで売上が大きく落ち込んだため、郊外の住宅街に移転して再オープンするのに合わせて、それまで扱っていなかった洋菓子を店に置くようにした場合で、それを店一番の稼ぎ頭に育てるのであれば、細分類が「5861 菓子小売業(製造小売)」もしくは「5862 菓子小売業(製造小売でないもの)」に変わりますので、事業転換に該当します。
   

事業再構築の定義は3人組と2人のぼっち(R3.7.17)

 
 再構築補助金では、一つの事業計画書の中に複数の計画を盛り込むことが可能です。

 事業再構築の定義は、5つそれぞれに見るのではなく、新分野展開、事業転換、業種転換の3つを一括りにして見て、あとは業態転換を見るだけでいいと考えています。

 事業再編は、合併、株式譲渡、事業再編などの組織再編を実施した上で、新分野展開、事業展開、業種転換、業態転換のうちのいずれかを行うという合わせ技的な作りになっています。ですから、組織再編をしないのであれば最初から横に除けておいていいのです。
   

■ 新分野展開、事業転換、業種転換の括りで見る

 一括りにした3つの定義での「事業」とは、新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することです。
 そして、新規性要件で見るものは、製品等の要件と市場の要件です。
 ここでいう「新規性」とは、申請企業での新規性であり、ものづくり補助金における新製品・新サービスが地域内での革新性を求められているのとは異なります。また、時期的には、2020年4月以降に新たに取り組んでいる事業でこの補助金の事業計画を組み立てた場合は「新規性」があるとみなされます。
 製品等の新規性で求められるのは、①自社で製造や提供をしたことがない、②現有のものとは異なる設備の導入、③数値で既存品との性能などの違いが示せること(計測可能な場合のみ)の3つです。
 市場の新規性は、既存品と共食いにならないこと(市場が重ならないこと)です。具体的には、既存品の売り上げが減少しないことや、むしろ相乗効果で増加することを事業計画で示します。 2つの新規性に該当していれば、売上高の要件(10%要件、構成比要件)を見ます。

 売上高10%要件は、新製品やサービスの売上高が申請企業の総売上の10%以上になる計画かどうかということ。売上高構成比要件は、新製品やサービスが属する事業(又は業種)が申請企業で最も売上構成比が高い事業等になるかどうかということです。
 事業と業種は、日本標準産業分類に当てはめて見ますが、その内容は前回7月16日付けの投稿(日本標準産業分類と事業再構築の定義)でご確認ください。

 その判定のパターンは、次のとおりとなります。

  
     

■ 業態転換

 業態転換は、①製品の製造、②商品やサービスの提供の方法を相当程度変更することで、それぞれ要件が異なります。
 ①製品の製造では、自社では過去に実績のない製造方法を用いること、自社での製造実績がない製品であること、売上高10%要件を満たすことの3つです。
 ②商品やサービスの提供では、自社では過去に実績のない提供方法を用いること、売上高10%要件を満たすことに加えて、次のいずれかに当てはまることが求められます。
 ・その商品またはサービスが自社で提供した実績がないこと
 ・今回の再構築に伴い、既存設備の撤去、既存店舗の縮小といった設備の撤去を行うこと

 業態転換では、売上高構成比要件を満たすこともあり得ますし、事業再構築の手引きでも、次のコメントがなされています。「10%は申請するための最低条件です。新たな製品の売上高がより大きな割合となる計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。」

 事業再編は、ケースとしてはごく少ないと考えられますので、最初にお話ししたとおり意識して見る必要はさほど大きくはないでしょう。

 定義のクリアと並行して、事業実施後3~5年度の付加価値の増加を早い段階でクリアすることも重要です。   

   

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東コンサルオフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和