43 令和4年度の厚生労働省助成金はどう変わったか?

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令和4年度に新設されたり、要件や助成内容が大幅に変更された厚生労働省助成金のうち、育児、高齢者雇用、キャリアアップ、教育訓練の4つのテーマに関するものを紹介しています。  

両立支援等助成金

出生時両立支援コース

 男性社員の育児休業取得などを支援する事業主を支援するこのコースは、令和4年度以降は、中小企業主限定となり、内容も大幅に見直されています。

 今年度のこの助成金では、まず、右図のように「第1種」として事業主の社内環境整備の取り組みと男性社員の育休取得を支援します。
 その後、第1種での取り組みの成果として、3年以内に男性社員の育休取得率30%以上アップを達成した企業に「第2種」として2回目の助成を行います。


 第1種で求められる取り組みは、今年4月の改正育児・介護休業法で事業主に義務付けられたものを超えるレベルです。

 また、第2種の成果達成への助成では、達成までに要した期間(年数)が短いほど助成金額を高額にしています。

第1種、第2種の助成内容

【第1種】

1.支給要件

〇 育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を2つ以上行っていること

〇 育児休業取得者の業務代替労働者の業務見直し規定を策定し、それに基づく業務体制の
  整備をしていること

〇 男性社員が、連続5日以上の育児休業を取得したこと
   ⇒ 子の生後8週間以内に開始し、所定労働日を4日以上含むもの

2.代替要員加算

〇 新規雇用または新規の派遣受け入れにより、育休取得者の業務代替要員を確保した場合
  の加算措置

〇 原則として育休取得者と同一の事業所及び部署での勤務、勤務期間などの要件あり

2.助成額

1事業主1回限りで、20万円

〇 代替要員加算は20万円(代替要員が3人以上の場合は、45万円)

【第2種】

1.支給要件

〇 第1種の助成金を受給していること

〇 男性社員の育休取得率が、第1種を受給した事業年度から3事業年度以内に30%以上

  上昇したこと

〇 第1種申請後に育休取得した男性社員が2名以上あること
   ⇒ 子の生後8週間以内に開始し、所定労働日を4日以上含むもの

3.助成額

育休取得率の30%以上上昇が、
 1事業年度以内  60万円(生産性要件該当 75万円)
 2事業年度以内  40万円( 〃 65万円)
 3事業年度以内  20万円( 〃 35万円)

出生休業等支援コース

 令和4年度から「業務代替支援」への助成が次の内容で新設されています。

〇 新規雇用 : 育休取得者の業務代替要員を新規雇用や新規派遣受け入れで確保した場合
        ・令和3年度までの「代替要員確保時」の助成が移行したもの
        ・助成額は変わらず、1人あたり 47.5万円(生産性要件該当 60万円)

〇 手当支給等 : 育休取得者の業務について、業務見直し等の取り組みを行ったうえで、
        既に雇用中の社員に代替させて手当を支払った場合
         ・令和3年度までの「職場支援加算(職場復帰時)」が移行したもの
         ・助成額は減額変更され、1人あたり 10万円(生産性要件該当 12万円)

※上記のいずれも、有期雇用労働者加算の対象となり得ます。

   

65歳超雇用推進助成金

65歳超継続雇用促進コース

 65歳から先への定年延長、継続雇用、定年廃止といった取り組みを支援するこの助成金では、今年度3つの大きな変更がありました。

1.対象者数ごとの支給区分と支給額の見直し

 この助成金では、定年延長、継続雇用、定年廃止といった取り組みの対象となる「60歳以上の雇用保険被保険者数」によって支給額が決まります。
 昨年度(令和3年度)は、その区分が10人未満、10人以上の2区分であり、対象の被保険者数5人以下の企業に手厚くなっていました。
 今年度は、10人未満の区分が3区分に細分化され、支給額も見直されました。また、70歳以上への定年引上げの支給額もあわせて見直されています。

令 和 4 年 度 支 給 額 一 覧

2.70歳以上への定年延長や継続雇用の上限引上げ、定年廃止の要件見直し

 これらについては、70歳未満からの延長や引上げ、廃止に限定されました。
 例えば、70歳から75歳への定年延長や継続雇用の上限引上げなどが、4月以降は対象外となりました

3.支給申請の受付期間のルール変更

 この助成金の支給受付期間は、昨年度までは定年引上げ等の実施後2カ月以内でしたが、今年度からは、

定年引上げ等の実施の翌月から4カ月の月初から
5開庁日(土日祝日、年末年始除く)

に変更されています。

例えば、定年延長を令和4年4月に実施した場合の交付申請受付期間は、

 ① 令和4年5月2日~11日
 ② 令和4年6月1日~7日
 ③ 令和4年7月1日~7日
 ④ 令和4年8月1日~5日

キャリアアップ助成金

正社員化コース

 このコースでは、これまで対象となっていた3つの転換パターンのうち、「有期から無期へ」の転換や直接雇用に対する助成が廃止されて、「有期から正社員」「無期から正社員」の2つに絞られました。

 これにより例えば、本人の都合でフルタイム勤務ができない有期・パート社員の処遇については、無期契約への転換は助成の対象外、短時間正社員など多様な正社員への転換は助成の対象ということになります。
 なお、障害者正社員化コースでは、「有期から無期へ」の転換等は、今年度も引き続き助成対象です。

 また、今年10月から次の3つの支給要件の変更がある点に注意が必要です。

 1.正規雇用労働者定義の変更

 「同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者」というところは、これまでと同じですが、次の2つの点で定義が厳格化されます。

・「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る
・正規雇用労働者としての試用期間中の者は、転換等したものとはみなさない

  (→ 試用期間中の者の助成対象からの除外規定の厳格化

 賞与については、就業規則等に「原則として支給する」と明記することが求められます。
  (→「原則として支給、業績等によっては支給しないことがある。」は、支給対象となり得る。)
   
 昇給については、就業規則等に客観的な昇給基準に基づいた賃金据え置きや減給の規定を置いている場合は、支給対象となり得ます。

  

 2.対象となる労働者要件の変更

 転換前の有期雇用もしくは無期雇用での6か月以上継続雇用の間、賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受けていたことも新たに要件となります。

 今年10月以降、基本給、賞与、退職金、各種手当等については、いずれか一つ以上で正規雇用労働者と異なる制度を就業規則等に定めていれば、支給対象となり得ます。
 ただし、就業規則等で「個別の雇用契約書で定める」としていた場合は、就業規則等での賃金の額または計算方法の確認ができないため、支給対象外となります。

   

 3.転換前の雇用形態を無期雇用労働者とする場合について

 転換前の有期雇用労働者等に適用される就業規則等に契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態は無期雇用労働者として取り扱うことになります。   

 人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正社員化転換した場合の加算措置については、今年4月新設の「人への投資促進コース」も対象に取り込まれて、対象となる訓練は次のとおりとなっています。

① 特定訓練コースの労働生産性向上訓練のうち、
  IT技術の知識・技能を習得するための訓練 ITSS レベル2~4)

② 特別育成訓練コースにおける一般職業訓練又は有期実習型訓練

③ 人への投資促進コースのうち以下の訓練
  ・定額制訓練
  ・自発的職業能力開発訓練
  ・高度デジタル人材等訓練(高度デジタル人材訓練及び成長分野等人材訓練)
  ・長期教育訓練休暇等制度を活用し、労働者が自発的に取り組んだ訓練
   

賞与・退職金制度導入コース

 令和4年度新設コースで、有期雇用労働者等を対象に賞与・退職金制度を導入して、支給または積立を実施した事業主を助成します。
 助成額は、1事業所あたり38万円で、賞与・退職金の両制度の同時導入には、16万円加算されます。
  (→このコースは生産性要件の対象となります。)
 なお、「諸手当制度等共通化コース」は、令和3年度末で廃止されています。
    

人材開発支援助成金

人への投資促進コースの新設

 今年(令和4年)4月に新設されたこのコースは、国が昨年12月から「人への投資」に関するアイデアを募集した結果を踏まえて制度設計されたもので、大学院からサブスクリプション型サービスまでを広くカバーする5つの教育訓練と長期教育訓練休暇等制度の導入・実施への助成をその内容としています。
    

高度デジタル人材訓練

情報通信業の事業主、それ以外の業種で事業適応計画(産業競争力競争法)または
 DX認定などを受けている企業(事業主)が次の訓練を行った場合に支援。
 (経費助成率:中小企業75%、訓練時の賃金助成あり)

a) ITSSレベル4または3となる訓練
b) 大学での正規課程、科目履修制度(情報科学・情報工学)など

〇 成長分野等人材訓練

大学院(海外の大学院を含む)の正規課程、科目等履修制度などを利用した教育訓
 練を行った事業主を支援。
 (経費助成率:75%、国内大学院での訓練時の賃金助成あり)
   

情報技術分野認定実習
  併用職業訓練

新卒を除くIT分野未経験者を対象に、情報処理・通信技術者として必要な訓練
 OFF-JTとOJTを組み合わせたもの)を行った事業主を支援。
 (経費助成率:中小企業60%、訓練時の賃金助成、OJT実施への定額助成あり)

対象となる業種は、まず情報通信業。それ以外の業種ではIT関連業務を主に担う
 組織やDX推進組織がある事業場に限られる。

・ここでのIT分野未経験者は、文字通りの未経験者に限らず、情報処理・通信技術者

 としての業務経験が概ね1年未満の者まで含まれる。
   

定 額 制 訓 練

・定額制サービスのeラーニングを導入して、就労時間内での業務関連のものの受講
 が一定時間数以上あったときに事業主を支援。(経費助成率:中小企業45%)
  

自発的職業能力開発
  訓練

・業務関連の訓練を就労時間外に自発的に行った者に対して、経費補助(50%以上)
 をした事業主を支援。(経費助成率:30%)

・対象には、大学、海外を含む大学院での自発的訓練も含まれる。
     

長期教育訓練休暇等
  制度

・自発的な教育訓練を行う者に対して、連続30日以上のものを含む長期休暇を与えた
 り、所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除をした事業主を支援。
 (制度導入への定額助成、有給の日単位の休暇への賃金助成あり)
    

 上記の5つの教育訓練のうち、中小企業で最も取り組みやすいと見られるのが「定額制訓練」です。ネットでの定額制の研修サービスは、分野によってはコンテンツが未整備なところもまだ多く残されていますが、教育訓練の必要性は感じているもののまだ手を付けられていない企業などで、一度検討してみる価値はあると思います。

 中小企業での訓練ニーズという観点で、「情報技術分野認定実習併用職業訓練」も目立ちます。
 IT分野の技術者はもともと不足しているうえに、情報通信業で争奪している状態ですから、自社で必要な人材を育成して囲い込む方向に動く企業が出てくることは十分考えられます。

 右の囲みは、この訓練での助成金額例ですが、訓練期間6カ月以上2年以下、年換算の訓練時間850時間以上という助成要件に即した訓練内容例の設定になっています。    

 この訓練の対象年齢は45歳までですから、社内規程上の位置づけが明確になされているIT関連やDX推進の組織、プロジェクトチームがあるなら、若手、中堅層をそこの構成員として育成するという活用が考えられます。

 自発的職業能力開発訓練は、業務の一環としての訓練が充実した企業での次の一手という位置づけになるのでは感じられます。
    

eラーニング・通信制での訓練の助成対象化

 令和4年度から従来の対面での訓練に加え、eラーニング・通信制での訓練で要件を満たすものも助成対象となりました。これにより、従来からの課題であった、対面での訓練への一斉参加で大きかった業務上の負担の軽減や、シフト制の事業所で参加できる者が自ずから限られてしまうことによる訓練効果の問題の解決が進むものと見られています。

 対面での訓練との取り扱いの違いとしては、次のようなものがあります。

・訓練時間の要件の確認は、実際の訓練時間ではなく、そのeラーニング等の「標準学習時間」により行う。
  (→標準学習時間が明示されていない場合は、標準学習期間により判断)

・受講時間の要件の確認は、実訓練時間数の8割以上受講の要件による確認ではなく、訓練機関発行の修了証
 やLMSデータなどによる訓練修了の確認となります。

・経費助成の限度額は、標準学習時間に対応する区分を適用します。
  (→標準学習時間が明示されていない場合は、100時間未満の区分を適用)

・eラーニングに限り、計画期間中に訓練を修了し、修了証が発行された場合は、その修了日の翌日から支給
 申請が可能となります。
  (→支給対象者が複数の場合は、すべての受講が実際に修了した日の翌日から2か月以内に申請する)
 

訓練施設・訓練講師の要件変更

 特定訓練、一般訓練、特別育成訓練の3コース共通の変更で、いずれも要件を厳格化する方向での変更です。

 1.訓練施設の要件の変更

 事業主・事業主団体の設置施設のうち次の4つの施設を対象から除外

・申請事業主(取締役を含む)の3親等以内の親族が設置する施設
・申請事業主の取締役・雇用する労働者が設置する施設
・グループ事業主が設置する施設で、不特定の者を対象とせずに訓練を実施する施設
・申請事業主が設置する別法人の施設

  

 2.訓練行使のうち外部講師の要件の変更

 外部講師の要件を次のとおり変更

・公共職業能力開発施設などに所属する指導員を追加
・指導員免許保有者や1級技能検定合格者以外の者について、「訓練分野の指導員・講師経験

 3年以上もしくは実務経験10年以上」を新たに求める

 前年度までは、その教育訓練の科目、職種等の内容について専門的な知識・技能を有する者でも可でしたから、訓練の質の確保などのための要件厳格化の方向に進んでいます。

   

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【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東社労士オフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和