43 事業再構築補助金のちょっとした話 11~15

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【メモ11】 複数の新事業に取り組むということ (R3.6.27)

 再構築補助金では、一つの事業計画書の中に複数の計画を盛り込むことが可能です。
 ただ、2つの計画を盛り込んだ事業計画が、この補助金の事業として強い説得力を持つものとなるかどうかはまた別の問題です。

 企業が業績面で困難な時にあえて2つの新事業を行うことで、リスクを高めてしまい、実現可能性の点でも不利になるという一般的な見方はあります。
 この件について、私がより重要視するのは、この補助金での再構築の基本的な考え方と合わないのではということです。
 具体的には、第2回の公募要領の表2:審査項目の(3)再構築点の③で、
「市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取り組みであるか。」とされていることとの兼ね合いです。
 つまり、市場環境(外部環境)と自社の強みを掛け合わせ、自社のリソースの制約も考え併せて、1つの新事業に絞り、投資を集中し、現在の本業の縮小・整理もセットで行うのが、この補助金での再構築の基本的な考え方に沿ったやり方です。

 そのことが分かったうえで、2つの計画を盛り込んで、実現可能性が高く、説得力もあるケースはないかとなると、次のケースが考えられます。

 製造業の企業で、現有の設備とは異なる設備を導入して、これまで製造実績がなく、既存品と市場が重複しない新製品を製造する事業がメイン事業(1つ目の事業)。
 そして、メイン事業の新製品の製造工程で生成される副産物や、製造後に残る残渣(ざんさ/残りかす)から、メイン事業とは異なる設備を用いて、別の素材や製品を製造するサブ事業(2つ目の事業)というのであれば、2つの事業を一つの事業計画に無理なく盛り込むことができます。
 ただ、副産物や残渣でサブ事業が1つ作れるのですから、メイン事業はそれなりの規模になり、リソースも多く割く必要があります。その裏返しで、現在の本業の大胆な縮小や整理をセットで行わざるを得ないでしょう。
  

【メモ12】 自社の人材を活用した、全く異なる業種での新事業 (R3.7.1)

 第2回の公募要領の表2:審査項目に、私から見ると両立させるのが結構難しそうな項目が並んでいます。

 一つは、(2)事業化点の④で、「…その際、自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取り組みとなっているか。」
 もう一つは、(3)再構築点の①で、「…また、まったく異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。」

 多くの中小企業が抱えている問題は、ヒト・モノ・カネのリソースの制約が大きいことです。だから、本業の縮小・撤退、選択と集中といったキーワードが出てきているのです。

 モノ(設備)やカネ(資金調達)は、この補助金の採択を受ける、他の公的支援制度を活用する、スポンサーを見つけるといったことで対応できます。
 ヒト(人材)の制約の解決を企業外に求めるとき、特に、特定の職種の資格者や職人を揃える必要がある場合は、そこで事業を諦めざるを得ないケースも出てきます。

 そうならないためには、まず最初に、社員の現職のスキルだけではなく、今使っていない資格やスキル、趣味、関係する人や団体などを幅広く見て、活用できるものを探すことが考えられます。
 事例は、かなり苦しいですが、地方の建設会社で、大都市圏をターゲットにした果物・野菜のハウス栽培を新事業として行うとき、社員の実家である同じ作物を栽培している農家の技術指導のもと、事業化を進めていくといったところです。

   

【メモ13】 束ねた事業計画 (R3.7.5)

 事務局ホームページにアップされている動画をご覧になった方も多いかと思いますが、その中で出てきたキーワードです。

 束ねた計画がどのようなものについては、公募要領(第2回)の表2.審査項目、(4)政策点の⑤を、自分の周辺に当てはめて考えればわかりやすいでしょう。

 ちなみに、その全文はこのようなものです。
「⑤異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。」

 例えばになりますが、素材製造企業と、その素材を加工して製品を製造する企業が協働して、素材からの新製品開発を行う事業というのが考えられます。

 この事業では、新素材がその製品専用で他に転用できないのであれば、2社共同で一つの事業計画を申請せざるを得ないでしょう。
 その一方で、その素材が他にも転用でき、それ自体商材となるのであれば、2社別々の事業計画で申請できる余地が出てきます。

  

【メモ14】 市場規模の推計は避けて通れない (R3.7.10)

 事業計画を作っていくには、定量・定性両面からのアプローチが必要です。
 このうち定量での把握で重要なものの一つが、製造する製品や、提供する商品・サービスに対する需要が商圏内にどの程度の規模で存在するのかということです。

 私も2月からこの補助金の相談を受けてきていますが、採算ラインの販売数量の見込みに加えて、商圏内(投入する市場)の需要のおおよその規模まで把握している方は少数派です。
 もっとも、皆様それぞれの再構築の事業計画にぴったりの数字を拾えるケースは少ないでしょうから、そうなるのも無理はないことです。

 ただ、数字とロジックで組み上げていく事業計画で、商圏内(市場)の需要が分からないのは、その計画の説得力を大きく削ぐことになります。
 つまり、こういう特色があり、このレベルの性能でユーザーにこのような便益を提供できる製品を、この地域を市場として投入する場合、潜在的な需要はこれだけあり、この手段と、あの手段でアプローチすることで、そのうちの〇〇%のシェアを獲得でき、売上はこれだけ、利益と付加価値はこれだけという一連の流れで説明できないと、社外の人を納得させるのは難しいということです。

 数字がなければ、推計して作るだけです。
 推計した場合、その推計値の精度の問題は避けて通れませんが、実際に事業を始めてから分かることがありますから、それらを織り込んで数字の精度を上げていけば良いのです。
 精度を気にして需要の推計をしないで進むほうがより高リスクな行動です。

 事業プランを伺っていると、「これはこの地域では初めて」「やっている会社は見たことがない」といったフレーズが出てくることが結構あります。
 少々意地が悪いですが、そのような時の私のスタンスは、「大なり小なり競合はいるか、近いうちに出てくるだろう」です。
 その事業プランに着目する引き金となった情報やデータは、多くの人がアクセスできるものであるのがほとんどなので、他に目を付けている人はいるということです。ですから、市場の需要を推計して、そのうちどれだけ取っていくかと進めていく方が無理がなく、実現可能性が高い計画になります。市場の半分を握るということはそう簡単には起こりません。
 また、怖いのが、あまりにもニッチすぎて事業化して5年、10年と続けて行けるだけの市場規模がなかったという見込み違いです。これも何とか避けたいところです。

 この市場規模の推計をサポートするのも、計画の策定に関与する認定経営革新等支援機関の重要な仕事と私は考えています。

 話は変わりますが、コロナ融資が一段落して、金融機関の融資への姿勢が厳しくなっていく中で、会社の10年後のために必要な事業展開や設備投資が出てきて融資を受けなければならなくなった時にも、この推計スキルは役に立つものと考えます。

   

【メモ15】 第三者承継と事業再構築補助金 (R3.7.13)

 事業再構築の類型の中で、他と毛色が異なるのが「事業再編」で、会社法上の再編行為と他の事業再構築の類型(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換)との合わせ技的な作りとなっています。

 よくあるご質問の【業態転換、事業再編】のカテゴリーに、
「事業再編型で、合併を行う場合には、合併により消滅する会社の事業が合併存続する会社にとって新たな製品等で新たな市場に進出するものである場合は、「その他の事業再構築要件」を満たし得ると考えられます。」というQ&Aがあります。

 例えば、地方の小規模なバス会社を同じ地域の運送会社が合併して一事業部とすれば、その他の事業再構築の要件を満たしますが、株式譲渡で経営権を承継して子会社化するだけならば、要件は満たさないことになります。その後、子会社化されたバス会社が、それまで手掛けていなかった福祉タクシーに進出するというのであれば、売上高10%要件をクリアすれば、子会社の事業再構築となります。

 もう一つ、卸売業の企業が、川上展開のためにマッチングサイトでのM&Aで食品加工会社の株式譲渡を受けた場合は、次のようなケース分けができます。


 ①食品工場の既存設備で既存製品を製造した場合、事業再構築の要件(製品等の新規性要件)は
  満たさない。
 ②食品工場の製造品目を見直して既存設備の余力を生み出して新製品を製造した場合も、要件
  (製品等の新規性要件)は満たしません。 
 ③新たな設備を導入して既存製品との市場の重なりが少ない新製品を製造した場合は、売上高
  10%要件をクリアすれば、事業再構築となります。
 
 ①、②のケースでは、事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用型で、M&A支援業者に支払う手数料、デューデリジェンスにかかる専門家費用など補助対象になる経費がないかどうかを検討していくことになると考えられます。

   

   

【この投稿の執筆者】
  
 札幌・新道東コンサルオフィス代表
    特定社会保険労務士 塚田 秀和

代表 塚田秀和