37 有期労働契約の「無期転換ルール」について

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 今から10年ほど前、特段の支障のない限り更新を繰り返すことを前提として有期労働契約を利用する企業も少なくなく、有期契約労働者の雇止めの不安が解消されないことなどが問題とされていました。そのような問題への対策として、有期労働契約の更新により通算契約期間が5年を超える場合に、有期契約労働者から使用者への申込みにより無期転換させる仕組み(無期転換ルール)が設けられました。
 関係法令が施行されてから5年経過した2018(平成30)年4月に無期転換申込権が発生し行使できる環境となり、それからもうすぐ4年となります。

  

有期契約労働者の「無期転換ルール」とは?

無期転換申込権を得るための要件・行使できる時期

 有期労働契約が1回以上更新され、同一の使用者(※)による通算契約期間が5年を超える場合に、無期契約転換権が生じます。 
 その申込権を行使できる時期は、その期間中に通算契約期間が5年を超えることとなる「労働契約の初日から契約満了日までの間」です。


 (※) ここでいう「同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であるもの。
    例えば、法人や個人事業主の単位で判断します。

    

無期転換申込権の行使の方法とその効果

 行使は、無期転換申込権を持つ有期契約労働者から使用者への無期労働契約締結の申入れという形で行います。
 この申し込みは、口頭でも法律上有効ですが、後日の紛争防止などの観点から、有期契約労働者からの書面での申込みとそれに対する使用者からの書面での承諾という形を取ることが望ましいといえます。


 無期労働契約締結の申込みをした時点で、使用者はそれを承諾したものとみなされ、申込み時点での有期労働契約が満了した日の翌日から始まる無期労働契約が成立します。
 例えば、1年契約で更新してきた場合には、5年目までは有期契約、6年目からは無期契約になりますが、2年契約の場合は、6年目まで有期契約、7年目から無期契約になります。 
    

無期転換後の労働条件

 法律(労働契約法第18条第1項)では、無期転換後の労働契約について無期転換申込時の有期労働契約と期間の定めの有無を除いて同一の内容の労働契約としています。
(無期転換ルールが雇止めなどによる雇用の不安を解消することを目的としているためと考えられます。)

 なお、有期労働契約と異なる労働条件を労働協約や就業規則であらかじめ定めておいたり、個別の労働契約により使用者・労働者間で合意した場合には、それらで定めたり合意した労働条件とすることができます。
    

無期転換申込権を行使しなかった場合

 無期転換申込権が生じている有期雇用契約期間中にあえて行使しなかった場合でも、契約が更新されれば、新しい有期雇用契約期間中に新たな無期転換申込権が生じますから、そこで改めて行使するか否かを判断することになります。
  

契約期間通算のルール

 同一の使用者との一連の有期労働契約について、 前後の契約の間に1か月以上の空白(無契約期間)がある場合でも、右表のいずれかに該当しない限りは、無契約期間の前後の契約期間を通算する仕組み(クーリングオフ)となっています。
(無契約期間が1か月未満の場合は問題なく通算する)

 就業の実態が変わらないにもかかわらず、 無期転換申込権を生じさせないようにする意図で、派遣や請負の形をとって労働契約の当事者を別の使用者に切り替えた場合は、同一の使用者による契約が継続しているものと解釈され、契約期間は通算されます。
    

無期転換ルールに関連した雇止め・解雇などについて

 〇 無期転換ルールの適用を避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働
   契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。

 〇 有期労働契約の満了前に使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けたとしても、それらの効力が
   無効とされる可能性があります。
   なお、更新年限や更新回数の上限設定自体が禁じられているのではありません。

 〇 無期転換申込権の行使後に、最後の有期労働契約の期間満了時点での雇止めしようとする場合は、すでに発生
   している無期労働契約(最後の有期労働契約の満了日の翌日からの契約)の解約を行う必要があります。
  

 〇 無期転換申込権が発生する有期契約への更新前に、無期転換申込権の放棄を更新条件として、有期契約労働者に
   権利放棄を認めさせても、その労働者の放棄の意思表示は公序良俗に反するものとして、無効と解釈されます
   (民法第90条)。そのため、無期転換申込権の放棄を条件として更新した有期労働契約の期間中に通算契約期間
  が5年超となる場合は、無期転換請求権が生じます。

   

他の法律に違反する行為について

 〇 離職した労働者を、離職の日から1年経過する日までに派遣労働者として受け入れる行為は、労働者派遣法違反
   となります。
   (労働者派遣法第40条の9(離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止))
     

 最後に、無期転換ルールの導入から9年、無期転換申込権が発生し得る環境となってからほぼ4年が経ちましたが、現在、無期転換ルールの見直しと多様な正社員の雇用ルールの明確化等について、厚生労働省の検討会で報告書とりまとめに向けて議論が行われていますので、そのうちに今後の制度見直しの方向が見えてくるのではないでしょうか。
  

「無期転換ルールへの対応状況等に関する調査」(JILPT)

 独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施したこの調査は、「無期転換ルール」により有期契約労働者が無期転換申込権を獲得し始めたタイミング(2018年4月以降)での状況を把握することを目的としたものです。
 
 調査は、2018(平成30)年11月1日現在の状況について、同年11月~12月に実施。

 有効回答企業数は4,685社、有期契約労働者等が4,215人でした。
  

無期転換ルールの認知度

 無期転換ルールの具体的な内容(5項目)のうち1つでも知っているのは3社に2社(63.8%)
 逆に、「何も知らない・聞いたことがない」は14.1%。

   

有期労働契約で雇用している理由

 複数回答で、多いものから順に、
 ① 労働者が正社員とは異なる働き方(パートタイム等)を希望しているため  49.7%
 ② 日常的な業務量の変動に応じて、柔軟に雇用者数を調整するため      28.2%
 ③ 正社員として正式に採用できるかどうか、人物や適性を見極めるため    28.0%
 ④ 労働者が有期労働契約を希望しているため                26.5%
 ⑤ 人件費を抑制するため                         22.8%
 ⑥ 高齢者を(健康状態等を見極めながら)活用するため           22.2%

であり、このうち、③の業務量に応じた雇用調整、⑤人件費抑制は、企業規模が大きくなるほど高まる傾向があります。
  

有期契約労働者の契約更新に際した上限の設定状況

 正社員とほぼ同じ所定労働時間である「フルタイムでの有期契約雇用」、正社員より短い所定労働時間である「パートタイムの有期契約雇用」を行っている企業等(以下、それぞれ「フルタイム」「パートタイム」という。)について、

 〇 契約の更新回数や通算の勤続年数に上限を設けている企業は、フルタイムで11.9%、パートタイムでは8.5%。
 〇 1回あたりの契約期間は、「1年」がフルタイム、パートタイムいずれも6割超。
 〇 上限設定の方法については、フルタイム・パートタイムいずれも「通算の勤続年数」が「契約の更新回数」を

   大きく上回っています。勤続年数の設定は、いずれも「4年6 ヶ月超~ 5 年以内」が6割超。
   

無期転換ルールへの対応状況・方針

 〇 何らかの形で無期転換できる機会を設けている企業等の割合
    フルタイム 77.0%、パートタイム 73.8%
 〇 契約期間を通算して5年(あるいはそれより短い期間)を超えることのみを要件としている企業
     フルタイム 43.8%、パートタイム 48.6%
 〇 通算の契約期間を要件とする場合に加えて、従前からの正社員転換制度など他の機会もある企業
     フルタイム 20.1%、パートタイム 13.2%

   

採用した有期契約労働者のうち、結果として無期転換に至る割合

 〇 フルタイムの有期契約労働者
    分からない(28.7%)、「0% 超10%未満」(11.9%)、「80%以上100%未満」 (11.5% )の順
 〇 パートタイムの有期契約労働者
    分からない(33.7%)、「いない(0%)」(15.4%)、「0% 超10%未満」(12.3%)の順
   

無期転換できる機会の規定・説明等状況

 〇 無期転換できる機会を就業規則で規定している企業が2社に1社(52.5%)、
   対して、「規定していない・今後の予定もない」は5社に1社(19.6%)。

 〇 無期転換できる機会の内容について、有期契約労働者に説明しているのは6割(60.8%)、
   対して、「説明していない・今後の予定もない」は13.7%。
   

無期転換を希望しない場合の措置

 〇 無期転換を希望しない場合には、契約期間を通算して5年を超えても有期契約労働者として働き続けられる
   仕組みになっている企業が約9割(89.8%)

  

無期転換後の形態

 有期労働契約時の働き方や賃金・労働条件と比較した転換後の形態について(複数回答)

 〇 フルタイムの有期契約労働者
    働き方も賃金・労働条件も変化しない「無期契約社員」   65.7%
    「正社員」  27.4%
    働き方は変化しないが賃金・労働条件については若干改善する「無期契約社員」  14.0%
    働き方が変化し賃金・労働条件も改善する「限定正社員」  10.5%
 〇 パートタイムの有期契約労働者
    働き方も賃金・労働条件も変化しない「無期契約社員」   72.1%
    「正社員」  18.1%
    働き方は変化しないが賃金・労働条件については若干改善する「無期契約社員」  11.2%
    働き方が変化し賃金・労働条件も改善する「限定正社員」   9.0%