非正規雇用については、正規雇用と比較して、不安定な雇用、低賃金、能力開発の機会の少なさが課題となっています。その課題解決のために行う有期契約労働者などの企業内でのキャリアップの取り組みを促進する目的でキャリアアップ助成金、人材開発支援助成金が活用されています。
このガイドラインでは、それらの助成金を活用するにあたって、配慮するよう努めることが望ましい事項などが示されています。
助 成 措 置
事業主が、次の正社員化支援もしくは処遇改善支援を実施したときは「キャリアアップ助成金」、人材育成支援の実施では「人材開発支援助成金」での助成の対象となります。キャリアアップ助成金の対象となる支援の実施にあたっては、事前に企業内に「キャリアアップ管理者」を置いて、支援措置とその内容を記載した「キャリアアップ計画」について(都道府県)労働局長の認定を受ける必要があります。(助成金の申請にあたっては、要件の確認が必要)
1.正社員化支援
次の雇用区分の転換を行った場合が助成対象となりますが、自社の労働者に限らず、キャリアアップ計画により受け入れた派遣労働者を直接雇用しての支援も対象となります。
〇 有期契約 ➤ 正規雇用、無期契約
〇 無期契約 ➤ 正規雇用
ここでいう「正規雇用」には、勤務地・勤務限定正社員、短時間正社員といった「多様な正社員」(ジョブ型正社員)を含みます。
2.処遇改善支援
【賃金規定等改定】
基本給について賃金規定などを作成して一定の期間(3か月以上)運用した上で、改めて有期契約労働者などのすべて又は一部の基本給を増額改訂すること。(2%以上の増額改訂)
【健康診断制度】
労働安全衛生法で義務化されている以外の健康診断制度を設けて実施すること。(延べ4人以上の実施)
【賃金規定等共通化】
正規雇用労働者と共通した職務などに応じた賃金規定等を設けて適用すること。(労働協約または就業規則の定めによる実施)
【諸手当制度共通化】
正規雇用労働者と共通した諸手当の制度を設けて適用すること。(労働協約または就業規則に定めて実施)
【社会保険の選択的適用拡大導入時処遇改善】
労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置により、新たに被保険者とするとともに、基本給の増額を行うこと。(3%以上の基本給の増額を実施)
【短時間労働者の社会保険適用に向けた所定労働時間の延長】
短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長して、新たに社会保険適用とすること。(所定労働時間延長後に手取り収入が減少していないことを、一定の要件(基本給の昇給額または昇給率)をクリアしているどうかにより判断して、助成対象になるか否かを決める)
ただし、1時間以上5時間未満の延長でも、前記の賃金規定等改訂または選択的適用拡大導入時処遇改善をあわせて実施した場合には、助成対象の支援となります。
3.人材育成支援
一定のOFF-JT又は「OFF-JTとOJTの組み合わせ」を実施すること。
助成措置を活用する上で配慮することが望ましい事項
1.キャリアップに向けた管理体制の整備
事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を置いて、事業所内に周知するなどの管理体制整備を行うこと。
2.計画的なキャリアアップの取組の推進
〇 対応方針案の検討は、社内の人材確保などの現状分析、キャリアアップでの課題についての有期契約労
働者などの意見も考慮して行うこと
〇 対応方針、正規雇用などへの転換や処遇改善の実施内容を前提とする「キャリアップ計画」を作成して
取組を進めること
〇 この計画は、対象者や目標、期間、事業者が行う措置、対象者の具体的で明確なキャリアパスを示すも
ので、作成にあたっては労働者代表から意見を聴くこと
〇 行うことが有意義なものとして、事業所内への周知、必要に応じた見直しなどが挙げられています。
3.正規雇用労働者等への転換
〇 有期契約労働者など(派遣労働者の直接雇用を含む)の希望や能力に応じて、正規雇用または無期雇用
契約への転換を進めること
〇 有期契約労働者について、契約更新により契約期間が5年超になる前(3年以内)に無期転換が可能な
制度の整備と転換後の適正な処遇への配慮を行うこと
〇 行うことが有意義なものとして、若者に転換の可能性を与える仕組みの検討、転換希望者のモチベーシ
ョンの維持・向上に配慮した制度内容とすることなどが挙げられています。
4.処遇改善
〇 有期契約労働者などについて、職務の内容やその能力を職務分析・職務評価をはじめとする手法や基準
を使うなどして評価すること。そして、その評価結果の賃金その他の処遇への反映では、正規雇用労働
者との均等・均衡に配慮すること。
また、職業訓練実施後には、その能力を確認して処遇を検討すること
〇 有期契約労働者などについて、待遇に関する制度の正規雇用労働者との共通化を進めること
(法定外の健康診断制度、賃金規定、諸手当の制度)
〇 短時間労働者について、より正規雇用労働者に近い働き方が可能となる制度の整備
〇 行うことが有意義なものとして、個人面談の導入、相談窓口の設置などが挙げられています。
5.人材育成
〇 有期契約労働者の能力や希望などに応じた計画的な職業訓練の実施
〇 若者については、ジョブ・カードを活用したより実践的な職業訓練実施の配慮をすること
〇 行うことが有意義なものとして、人材育成を進めるにあたっての情報提供、相談機会の確保及び配置な
どの雇用管理上の配慮、業務遂行能力が向上した者の更なるキャリアアップへの配慮、正規雇用などへ
の転換時の知識や技能習得のための職業訓練での配慮などが挙げられています。