32 成年後見制度の現状と見直しの議論

  1. ホーム
  2. 事務所ブログ
  3. 32 成年後見制度の現状と見直しの議論

 成年後見制度は、
〇 自らの判断能力が十分である時点で、判断能力が低下した場合に備えて任意

  代理人を決め契約しておく「任意後見制度」
〇 判断能力が不十分となった後に、はじめて申立により家庭裁判所が成年後見人

  等を選任する「法定後見制度」
の2種類に分かれ、約23万2千人が利用しています。(令和2年12月末現在)

 令和2年(1~12月)の概況(※1)を見ると、
〇 後見人等選任の申立件数

   37,235件で過去5年(平成28年~令和2年)では約9%増 

〇 申立の種類別
   任意後見監督人選任(あらかじめ契約していた任意代理人の監督人選任の申立)は738件で全体の2%、
   過去5年でも横ばいで、申立ての大部分が法定後見となっています。


〇 法定後見の3つの区分では、
   最も多い後見開始(判断能力が全くない場合) 26,367件で過去5年では微減

   次いで、保佐開始(判断能力が著しく不十分な場合) 7,530件(同41%増)
       補助開始(判断能力が不十分な場合) 2,600件(同100%増)


〇 家庭裁判所への申立人
   最多が市区町村長で23.9%、続いて、子が21.3%、本人20.2%

〇 後見開始の原因は、認知症が最多で64.1%、次いで、知的障害9.9%、統合失調症9.0%

  (※1)成年後見関係事件の概況―令和2年1月~12月―(最高裁判所事務総局家庭局)

 平成29年度から利用促進基本計画に基づいて、利用者がメリットを実感できる成年後見制度の運用改善、地域連携ネットワークづくりなどが進められてきましたが、その一方では、成年後見人等が意思決定支援(※2)や身上保護(※3)を重視しない場合があり、利用者の不安や不満につながっていること、この制度や相談先等の周知がまだ十分でない、特に小規模な市町村で地域連携ネットワークなどの体制整備が進んでいないといった問題が残されているのが現状です。

  (※2)意思決定支援とは、特定の行為に関し本人の判断能力に課題のある局面において、本人に必要な情報を提供し、
      本人の意思や考えを引き出すなど、後見人等を含めた本人に関わる支援者らによって行われる、本人が自らの
      価値観や選好に基づく意思決定をするための活動をいう。

     (意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン/令和2年10月30日:意思決定支援ワーキング・グループ)

  (※3)身上保護とは、介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認などのこと。

 厚生労働書所管の専門家会議で取りまとめられた来年度からの新たな基本計画案には、それらへの対応策が盛り込まれています。
 その中には、次のようなものがあります。

〇 本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透
  (意思決定支援などの専門職のアドバイザー育成、公共団体の専門的助言でのオンライン活用支援など)

〇 家庭裁判所による適切な後見人等の選任・交代の推進
  (本人の状況の変化等を踏まえ、後見人等の柔軟な交代が行われることを可能とする必要があるとする)

〇 不正防止の徹底と利用しやすさの調和等
  (後見人の不正防止や財産管理の負担軽減のメリットがある成年後見制度支援信託、成年後見制度支援預貯金の普及

   など)

〇 権利擁護支援(※4)の地域連携ネットワークづくり
  (地域に暮らす全ての人が、尊厳のある本人らしい生活を継続し、地域社会に参加できるようにするため、地域や

   福祉、行政などに司法を加えた多様な分野・主体が連携するしくみづくり)

  (※4)権利擁護支援とは、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な人たちの権利を守るために、
      以下のような目的でなされる支援
       ①「人権」としての権利:必要に応じて、適切になされる権利の回復(救済)
          【例】老人福祉法 32 条、知的障害者福祉法 28 条、精神保健福祉法51条の11の2に基づく市町村長

             による申立て
       ②「契約(当事者間の合意)」に基づく権利:必要に応じて、適切になされる権利の行使
          【例】福祉サービスや施設入所などの契約

       (地域における成年後見制度利用促進に向けた体制整備のための手引き/
        平成30年3月:成年後見制度利用促進体制整備委員会)

 今後については、令和4年1月頃の パブリックコメントの実施などを経て、同年3月頃に「次期基本計画」閣議決定というスケジュールになっています。