14 老齢年金の繰上げ・繰下げ

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老齢年金の繰上げ

 実際に繰上げを選択されている方は、令和2年度で、老齢基礎年金が約400万人(全体の11.7%)、老齢厚生年金が約13万人(全体の0.5%)であり、老齢基礎年金では人数、受給権者全体に占める割合ともに減少傾向にあります。 
(令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況/厚生労働省年金局)

 また、繰上げでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰上げなければならないのが、繰下げでの取り扱いと大きく異なる点です。(繰下げでは、それぞれ別時期の請求手続きが可能)

   

【老齢基礎年金の繰上げ】

 60歳になれば、繰上げ受給ができ、繰上げの請求を行った翌月分から繰上げた月数に応じて減額された年金が支給されます。
 年金の減額率は、繰上げ1か月当たり0.5%で、1年で6%、5年で30%が最大の減額率です。その月数は、繰上げ請求をした月から65歳になる前月まででカウントします。

 繰上げ受給をした場合、本来であれば65歳になるまでできる手続きができなくなったり、特定の年金が受け取れなくなってしまうといったことがいくつかあります。


 一つ目は、65歳までは遺族厚生年金、遺族共済年金と繰上げ受給の老齢基礎年金を同時に受け取ることはできず、いずれか一つのみの受給となることです。
 遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4であり、生計を同じくしている18歳未満の子などがいない場合には、65歳までの間は中高齢寡婦加算もあるため、繰上げ支給の老齢基礎年金を上回る額になるケースは多く出てくるものと考えられます。


 二つ目は、障害基礎年金の「事後重症による請求」ができなくなることです。
 これは、障害はあるがその程度が障害基礎年金の支給対象である1級、2級には該当しない方(3級以下の方)について、症状が悪化して1級または2級に該当したときに年金の請求を行うもので、本来であれば老齢基礎年金の支給開始年齢である65歳になるまで可能な手続きです。

 三つ目が、寡婦年金が受け取れなくなってしまうことです。
 寡婦年金は、10年以上婚姻関係にあった夫が死亡した場合で、その夫が国民年金の第1号被保険者(自営業者・農業者とその家族、学生など)で保険料を10年以上納付等していた方であったときに、その妻に60歳から65歳までの5年間支給されるものです。

 最後四つ目が、国民年金への任意加入や保険料の追納ができなくなることです。
 これは、繰上げの請求をした時点で、減額前の老齢年金支給額に対応する保険料納付済月数等が確定するためです。

    

【老齢厚生年金の繰上げ】

 60歳から特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢までの間であれば、繰上げ請求ができますが、年金の減額率は、老齢基礎年金と同じで、その月数は、繰上げ請求をした月から特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢になる前月まででカウントします。繰上げ支給の老齢厚生年金の額は、65歳からの本来支給の老齢厚生年金の額に減額率を乗じて算出します。
 なお、複数の老齢厚生年金(一般の企業、公務員、私学教職員など)を受け取れる場合は、そのすべてについて同時に繰上げ請求をすることとなります。

 参考ですが、昭和36年4月2日以降に生まれた男性、昭和41年4月2日以降に生まれた女性については、特別支給の老齢厚生年金の支給はなく、65歳からの本来支給の老齢厚生年金のみとなります。

 繰上げをした場合には、障害厚生年金の「事後重症による請求」はできなくなり、また、65歳までは遺族厚生年金、遺族共済年金と繰上げ受給の老齢厚生年金を同時に受け取ることはできず、いずれか一つのみの受給となります。

 今年4月から、1か月当たりの減額率が0.4%に引き下げられ、年で4.8%、5年で24%となりますが、繰下げの検討にあたっては、これまで見てきたようなデメリットや、在職老齢年金制度も考慮していく必要があるでしょう。

   

老齢年金の繰下げ

 老齢年金の繰下げ受給は、現行は、65歳から70歳までの最大5年の繰下げが可能で、その場合の増額率は42%(1月あたり0.7%)です。

 今年4月から老齢年金の受給開始年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられ、最大10年の繰下げが可能となりますが、この場合の増額率は84%(1月あたり0.7%×120ヶ月)です。なお、この変更は、今年4月1日以降に70歳に達する方(昭和27年4月2日以降生まれの方)に適用されます。

 この繰下げ受給の仕組みでは、繰下げの申出は66歳以降に可能となります。
 また、厚生年金や共済組合等による年金のうち老齢・退職給付以外のもの、遺族基礎年金(老齢基礎年金ではこれらに障害基礎年金も加わる)の受給権が、66歳までの間に発生した場合には、繰下げ自体ができず、65歳時の本来請求の額での受給のみとなります。
 そして、66歳以降にそれらの受給権が発生した場合は、その時点で繰下げ月数と増額率が固定されます。

 老齢基礎年金、老齢厚生年金それぞれ別の繰下げ期間を選択できますが、複数の老齢厚生年金(退職共済年金、日本年金機構から支給される年金、基金等からの年金)がある場合は、それらの老齢厚生年金について同時に繰下げの申出をする必要があります。


 繰下げ受給のデメリットに、繰下げ後の年金支給開始までの間(繰下げ待機期間中)は加算額も支給されず、増額の対象にもならないことがあります。具体的には、老齢基礎年金の振替加算額、老齢厚生年金の加給年金額のことです。

 この他に、繰下げで注意しておくべき点は、65歳以降も仕事を続けて厚生年金保険に加入している場合で、老齢厚生年金の在職支給停止額が生じるときの取り扱いです。
 この場合は、停止額を差し引いた年金額が、繰下げによる増額対象となりますが、

具体的には、繰下げ加算額に平均支給率を乗じて算出します。
 平均支給率 = 月単位での支給率の合計 ÷ 繰下げ待機期間
 月単位での支給率 = 1 -(在職支給停止額 ÷ 65歳時の老齢厚生(退職共済)年金額)

 停止額は、賃金(ボーナス込み月収)と老齢厚生年金(月額)の合計額が47万円を上回った場合に、その上回った額の2分の1の額となりますが、65歳以降の収入によっては。繰下げ受給を行うメリットが小さくなっていくことがあります。