13 雇用契約締結時などの労働条件の明示について

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 使用者(事業主)から労働者への労働条件の明示で法律上義務付けられているものには、
 〇 労働基準法に基づく雇用契約締結時の労働条件の明示
 〇 パートタイム・有期雇用労働法に基づく雇い入れ時の労働条件の明示
 〇 労働者派遣法に基づく就業条件の明示

がありますが、ここでは、そのうち労働基準法に基づく明示、パートタイム・有期雇用労働法に基づく明示の2つを見ていきます。
   

労働基準法に基づく雇用契約締結時の明示

 雇用契約締結時に、使用者から労働者へ明示しなければならない労働条件は次のとおりです。
 (労働基準法第15条第1項、同施行規則第5条)

【原則書面の交付により明示する事項】

 ① 労働契約の期間
   ……期間の定めがない契約の場合は、その旨を示す
 ② 有期労働契約の更新の基準(有期雇用労働者のみ)
   ……更新の基準として明示することが考えられるのは、

・更新の有無として、
  a) 自動的に更新する
  b) 更新する場合があり得る
  c) 契約の更新はしない など

・契約更新の判断基準として、
  a) 契約期間満了時の業務量により判断する
  b) 労働者の勤務成績、態度により判断する
  c) 労働者の能力により判断する
  d) 会社の経営状況により判断する
  e) 従事している業務の進捗状況により判断する など

 ③ 就業場所・従事すべき業務
   ……雇い入れ直後の就業場所、従事すべき業務を示せば良い
 ④ 始業・終業時刻、所定労働時間超えの労働の有無、休憩時間、休日、休暇、
   2交代制等に関する事項

   ……その労働者に適用される労働時間等を具体的に示す
 ⑤ 賃⾦の決定・計算・⽀払⽅法、賃⾦の締切・⽀払時期

   ……示すのは労働契約締結後初めて支払われる賃金に関するものであり、具体的には

・基本賃金の額
  (出来高払では、出来高に対する基本単価、保障給)
・手当の額、支給条件
・時間外、休日、深夜労働の割増賃金率について、特別の率を
 定める場合はその率
・賃金の締切日
・賃金の支払日

 ⑥ 退職(解雇を含む)に関する事項
   ……退職の事由とその手続き、解雇の事由などを示す

 (※) ④のうち所定労働時間超えの労働の有無以外の事項と⑥について、明示すべき事項が膨大
   となる場合は、就業規則のうちその労働者に適用される関係条項名をすべて示せば良い。  

【書面の交付までは求められていない事項】

 ⑦ 昇給に関する事項(明示方法の違いから、もともと⑤に含まれていたものを別表示した) 
 ⑧ 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算や支払の方法
   退職手当の支払時期
 ⑨ 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与、第八条各号に掲げる賃金、最低賃金額

・臨時に支払われる賃金
  a) 臨時的、突発的事由により支払われるもの
  b) 結婚手当などの様に支給条件はあらかじめ確定されているが、
    支給事由の発生が不確定であり、かつ非常にまれに発生する
    もの


第八条各号に掲げる賃金
  a) 精励手当
   (一か月を超える期間の出勤成績により支給されるもの)
  b) 勤続手当
   (一か月を超える一定期間の継続勤務に対し支給されるもの)
  c) 奨励加給または能率手当

   (一か月を超える期間での事由により算定されるもの)

 労働者の実費負担等(食費、作業用品その他に関する事項)  
 ⑪ 安全及び衛生に関する事項
 ⑫ 職業訓練
 ⑬ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
 ⑭ 表彰及び制裁
 ⑮ 休職


 (※) ⑧~⑮の事項で、その使用者が該当事業所で定めていないものについては、明示の義務は
    ありません。

明示の方法について

 労働者に交付する書面の様式は自由ですが、厚生労働省がモデル労働条件通知書としてひな形を公開しています。また、その労働者に適用する部分を明確にして就業規則を渡す対応も可能です。

 この他に、労働者からの希望があったときに限り、
 〇 FAX
 〇 Eメール、Yahoo!メール、Gmail等のWebメールサービス
 〇 LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージ機能 など
の方法により明示することができます。

   

明示した内容が事実と相違するときの対応

 労働者は、使用者から受けた明示の内容と事実が相違していた場合には、即時に労働契約を解除することができます。(労働基準法第15条第2項)
 そして、その労働者が就業のために住居を変更していて、解約解除の日から14日以内に帰郷する場合には、必要な旅費を使用者が負担しなければなりません。その旅費には、その労働者の就業のために移転していた家族の帰郷旅費も含みます。 (労働基準法第15条第3項)
    

パートタイム・有期雇用労働法に基づく雇い入れ時の明示

 短時間・有期雇用労働者の雇い入れ時に、前記の労働基準法に基づく明示のほかに、短時間・有期雇用労働者にとって重要な「特定事項」について、事業主が文書の交付などの方法で明示しなければならないとされています。
 パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項、同施行規則第2条)
 ここでの「雇い入れ時」は、最初の有期労働契約の時に止まらず、その更新時も含みます。

【特定事項】

 ① 昇給の有無
   ……一つの契約期間の中での賃金の増額を指す

     (契約更新時の賃金改定は、これに該当しない)
 ② 退職手当の有無
   ……労働契約などであらかじめ支給条件が明確であり、退職により支給されるものを指す

     (一時金、年金など支給形態は問わない)
 ③ 賞与の有無
   ……定期又は臨時に支給され、その支給額があらかじめ確定されていないものを指す
 ④ 相談窓口に関する事項

   …… 事業主が労働者からの苦情を含めた相談を受け付ける窓口を指す
      明示内容の具体例として、担当者の氏名、役職、担当部署などが考えられる

 (※) 上記の4項目以外の明示は、努力義務とされています。
   (昇給や退職手当の内容、時間外・休日労働に関すること、賞与等に関することなど)  

 この明示については、労働基準法に基づく明示と併せて行うことや、就業規則の交付で特定事項などが明示される場合にその交付を行うことでも、履行したことになります。
  

明示の方法について

 書面の交付を基本として、労働者からの希望があったときに限り、FAX、Webメールサービス、SNSメッセージ機能などの方法によることができます。
   

FAX、Webメールなどでの明示について

 文書の交付以外に明示の手段として使用できるのは、その受信者を特定して情報伝達するものであり、次のような第三者の閲覧や第三者への情報伝達ができるものは、明示の手段には含まれません。
 〇 明示対象の労働者が開設しているホームページなどへの書き込み
 〇 SNSの対象労働者のマイページへのコメントの書き込み など


 Webメール、SNSメッセージなどFAX以外の方法については、対象労働者がその記録を出力して書面を作成できるものに限られます。また、書面作成を念頭に置いていないSMSなどのサービスは、明示の手段としては例外的なものという位置付けになります。

 文書の交付以外の方法による明示は、次の時点で対象労働者に到達したものとみなされます。
 〇 FAX使用
   ……対象労働者が使用するFAX装置で受信した時
     (対象労働者が希望するときは、対象労働者以外の者が所有する装置を含む)
 〇 Webメール、SNSなどの通信方法を使用

   ……対象労働者が使用する通信端末等で受信した時
     必ずしも通信端末等に到達しない方法を使用する場合は、明示に関するメール等の送信があったことが、
     受信履歴などにより(通常であれば)認識できる時
     (対象労働者が希望するときは、対象労働者以外の者が所有する通信端末等を含む)

  

法律違反の罰則

 〇 労働基準法に基づく雇用契約締結時の明示
   ……労働条件の明示義務(労働基準法第15条第1項)もしくは、

     法第15条第2項により労働契約を即時解約した労働者の帰郷旅費の使用者負担(法第15条第3項)
     に違反した場合、30万円以下の罰金。

 〇  パートタイム・有期雇用労働法に基づく雇い入れ時の明示
   ……特定事項の明示義務(パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項)違反の場合、10万円以下の過料。