7 労働時間の把握方法について

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 時間外・休日労働の上限規制や長時間労働者への医師の面接、健康福祉確保措置などへの対応もあり、労働時間の適正な把握がこれまで以上に重要となっています。
 その労働時間を把握する方法については、2017(平成29)年にガイドラインが示されています。(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)
 そのガイドラインでは最初に、労働者が労働時間を自己申告する仕組み(自己申告制)がその不適切な運用などにより法違反となる長時間労働や割増賃金未払いにつながっている状況が見られることを問題視した上で、労働時間の考え方、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置などを明らかにしています。
  

労働時間の考え方

 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。

 また、労働時間として取り扱うべき場合の例として、次の3つを挙げています。

イ 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や

 業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない
 状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行って
 いた時間
   

労働時間に該当しない事例

 ガイドラインでは触れられていませんが、逆に、労働時間に該当しない事例には次のようなものがあります。

 (上記イに関連して)
  制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めている場合の労働時間の前後の更衣
  時間

 (上記ロに関連して)
  週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅
  した後は、自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間

 (上記ハに関連して)
  終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないこ
  とについて不利益な取り扱いもしない勉強会の時間

   

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

始業・終業時刻の確認及び記録

 使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
 (労働日ごとの労働時間数の把握のみでは足りない)
   

始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

 確認・記録の方法は、原則として次のいずれかであり、自己申告制は原則的な方法によることができない場合に用いる方法という位置付けになっています。
 
〇 使用者自らによる現認
   ……使用者の責任において始業・終業時刻を直接的に確認する方法

〇 客観的な記録(タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間など)を根拠とする確認
   ……客観的な記録を基本情報とし、必要に応じて、使用者の残業命令書及びこれに対する報告書といった労働時間

     算出のために持っている記録と突合することにより確認する方法
  

自己申告制により行う場合の措置

 原則の把握方法によることができずに、自己申告制による把握を行う場合に使用者が講じるべき措置が示されています。
 自己申告制による報告と客観的な記録を併用して把握を行っている場合でも、これらの措置は必要です。
 
〇 対象労働省への説明
  
 ……ガイドラインを踏まえた労働時間の考え方、自己申告制の具体的内容などについて説明

〇 実際に勤務時間を管理する者への説明
   ……自己申告制の適正な運用に加え、ガイドラインを踏まえた労働時間の考え方などについて説明


〇 必要に応じた実態調査の実施
   ……自己申告制は、あいまいな労働時間管理となりがちであるため、労働時間が適正に把握されているか否か定期
     的に実態調査を行うのが望ましい。

〇 自己申告した時間を超えて事業者内にいる時間についての労働者からの報告の取り扱い
   ……自己申告制による報告と客観的な記録を併用して把握を行っている場合において、自己申告と客観的な記録の
     乖離の理由などの報告があれば、その内容が適正であるか否かの確認を行う必要があること。

〇 労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置の禁止

   ……労働者が自己申告できる時間数に上限を設けることや、割増賃金の予算枠や時間外労働の目安時間を超過した者
     への賞与減額などの不利益な取り扱いを禁止。

     加えて、次の点についての確認と必要な措置を求めています。
      ・時間外労働時間削減の社内通達や時間外労働手当の定額払といった措置が、適正な申告の阻害要因となって
       いないか。
      ・法定労働時間や36協定の定めを超えた労働をした際に、記録上はそれらを遵守したこととする取り扱いが
       慣習的に行われていないか

  

賃金台帳の調製、関係書類の保存

〇 賃金台帳の調製
 労働基準法第108条で使用者に調製が義務付けられている賃金台帳に、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。
 賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法に基づき、30 万円以下の罰金に処される。

〇 労働時間の記録に関する書類の保存
 使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109 条に基づき、3年間保存しなければならない。
 ここでいう「労働時間の記録に関する書類」には、出勤簿やタイムカードの他に、使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、残業命令書及びその報告書、労働者が自ら労働時間を記録した報告書などがあります。

   

ガイドラインが適用される労働者の範囲

 次に挙げる以外の労働者すべてがガイドラインの適用範囲となります。

 〇 ガイドラインが適用されない労働者
   ・農業者
   ・畜産、養蚕及び水産の事業に従事する者
   ・管理監督者
   ・機密の情報を取り扱う者
   ・監視又は断続的労働に従事する者
    (以上、労働基準法第41条に定める者)

   ・事業場外事業場外みなし労働時間制の対象者
     ……事業場内での労働時間については、ガイドラインに基づく把握が必要
   ・専門業務型裁量労働制の対象者
   ・企画業務型裁量労働制の対象者
   ・高度プロフェッショナル制度の対象者
     ……別の指針で定める健康管理時間の把握を行う