3 時間外・休日労働の上限規制について

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 この上限規制が行われる至った背景には、健康確保の問題に加え、仕事と家庭生活の両立を困難にして、次のような問題につながっているという行政の認識がありました。
 ・少子化
 ・女性のキャリア形成の阻害
 ・男性の家庭参加の阻害

 また、労働基準法で「1日8時間、週40時間」の法定労働時間は定められているものの、時間外労働の上限については、法的強制力のない厚生労働大臣告示に基づく指導ができるに止まっていました。そして、特別条項付きの36協定を締結して労働基準監督署に届け出れば、臨時的な特別の事情がある場合は、上限なく時間外労働ができる状態でした。

 この上限規制を設けたことにより、ワーク・ライフ・バランスの改善を進めて、女性や高齢者も仕事につきやすくして、労働参加率の向上に結び付けることを行政は意図しています。
   
 労働基準法での時間外・休日労働時間数の上限規制と、36協定の関係を次の図に整理しています。

 
 
 その事業所で雇用する労働者に、法定労働時間を超える時間外労働を行わせるにあたっては、事前に労使間協議に基づき「36(さぶろく)協定」を締結して、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出ておく必要があります。
 この協定締結と届け出により、法定労働時間を超えて労働させても協定の範囲内であれば労働基準法違反に問われることはなくなります。これはあくまでも、労働基準法についての免罰効果であり、民事上の責任などはこれとは別に問われる可能性はあります。

  

■ 36協定での時間外労働の上限 (図の青枠)

 「通常予見される時間外労働」とは、ある程度の頻度で発生する短期間の業務集中、イレギュラーな事案などにより必要となる、短期間もしくはスポット的な時間外労働を指すものと考えられます。具体的には、受注の集中、製品不具合への対応、月末の決算事務などが挙げられます。なお、恒常的な時間外業務は含まれません。
 ここでの「月45時間、年360時間」の上限は、もともと厚生労働大臣告示で定められていたもの(限度時間)を法律に格上げしたものです。

 定額残業代については、年360時間を12か月で除した30時間が一つの目安となりますし、限度時間である月45時間を超えた設定は、無理があるものといえます。
    

■ 特別条項付き36協定での時間外労働の上限 (図の赤枠)

 通常予見することのできない業務量の大幅な増加などにより、臨時的に月45時間の限度時間(図の青枠)を超えての時間外労働の必要がある場合には、労使間協議に基づき「特別条項付き36協定」を締結して届け出る必要があります。
 特別条項付きの36協定で定めることができる時間外労働の上限は年720時間、月45時間超の時間外労働を行えるのは年6回(6月)までです。この年6回の制限は、限度時間超えはあくまでも臨時的に行うものという考え方からきています。
 通常予見することのできない業務量の大幅な増加などの例としては、突発的な仕様変更、製品トラブル・大規模なクレームへの対応、機械トラブルへの対応といった、時間的余裕がない又は大規模な顧客対応、生産プロセスの大きな支障となるものが挙げられています。

 月45時間の時間外労働は、完全週休2日制でも1日2時間の時間外を続ければ到達する水準ですから、残業が日常化している事業所では、限度時間越えは年6回までの規制が一番対応しにくいものになる可能性があります。

   

■ 時間外・休日労働の上限規制

 時間外労働の上限規制に加えて、現在の労働基準法では「時間外労働+休日労働」の時間数での上限規制が次のとおり定められています。

 ● 時間外労働、休日労働合計で月100時間未満とすること
 ● 時間外、休日労働合計の2~6か月平均時間が80時間を超えないこと

 ここでの「2~6か月平均」とは、過去2か月、3か月、4か月、5か月及び6か月の5つのパターンでの平均すべてで80時間を超えないことを求めるものです。

 前の2つの時間外労働の規制は、事業所ごとに労使間協議を行って締結した36協定での決めごとですが、この時間外・休日労働の規制は、労働者の健康確保を目的として労働者別で労働時間の上限の管理を求める法規制です。ですから、労働者が事業所間で異動した場合も、この月100時間、平均80時間のカウントは異動前後を通算して行います。

 実務上の対応では、現状でも時間外、休日労働が多くなっている企業では、これらの時間外労働、時間外労働+休日労働の上限規制をすべてクリアする形で、年間の繁閑差を見越して人別・月別に時間外労働、休日労働の上限を割り付けていく作業が必要になります。それをしておかないと第3四半期までで月45時間超が6か月に達することになりかねません。
 Excelでまとまった人数の時間外・休日労働の管理をしているのであれば、総務管理担当がパンクしないように勤怠管理アプリの導入も含めた労働時間把握の体制見直しも必要になってきます。

  

■ この上限規制の適用除外・適用猶予

● 適用除外
 該当するのは、「新技術・新商品等の研究開発業務」のみです。
 この業務についても、時間外・休日労働が月100時間超となった時の医師の面接指導が義務化(労働安全衛生法)されています。

● 2024(令和6)年3月末までの適用猶予 
 該当するのは、①自動車の運転業務、②建設事業、③医師、④鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業の4つです。

   

■ 上限規制に違反した場合の罰則

 これらの時間外労働の上限規制、時間外・休日労働の上限規制に違反した場合には、罰則(6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦)が科されることがあります。
   

■ 脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の
  認定基準について

 この認定基準は、労働者の脳・心臓疾患が業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症したもの(業務に起因することの明らかな疾病)かどうかを認定するためのものです。
 このうち、長期間の過重業務という観点での具体的な評価のため、労働時間について次のような考え方が示されています。

① 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働
  が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働
  時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

② 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当
  たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと
  評価できること